Remember11とEver17
※注意
ここから先はEver17の重大なネタバレを含みます。
未プレイの方は、Remember11を楽しむためにも、
是非Ever17をクリアしてからこの先を読んでください。
ここまで考察を進めてきて、
Remember11はEver17と切り離せない物語だと思いましたので、
その関係性について話をさせていただこうと思います。
まず、PSP版特典、Remember11プレミアムファンブックの冒頭の記述を
転載させていただきます。
――「Infinity」シリーズで屈指の難解さを誇る『Remember11』ですが、
まずは本作の企画を思いついた経緯を教えていただけますか?
中澤工氏:当初は「雪山と閉鎖空間にある施設を舞台に、
人格転移現象で人格が入れ替わっていくサスペンス」ということだけが決まっていて、
それを基にプロットを組んでいました。でもそれだけだといまいち深みがない。
どうしても最後のひと味が思いつかなくて、打越鋼太郎さんと飲みに行ったんです。
その時、飲み屋で酔ってふらついた拍子に、頭を天井にぶつけてしまった。
すると、一部始終を見ていた打越さんが「それだ!」と。
僕は、何も頭をぶつけようと思ってぶつけたわけではない。
かといって、ぶつけたのは他ならぬ僕自身。
「なぜやってしまったのかが分からないけど、確かに自分自身がやってしまった」。
そういうのをサスペンスに落とし込もう、というのがすべての始まりでした。
『Ever17』は、ブリックヴィンケルという、プレイヤーと同格の視点をゲーム内に登場させて
問題を解決することで、ゲーム世界に没入しているユーザーを解放する物語でした。
でも、そういう存在がゲームの世界に与える影響はいいことばかりじゃないだろうと。
むしろそういった存在の干渉が先程した話のように、頭をぶつけてしまうかもしれない。
ではそうなった時に、キャラクターたちは『得体の知れない何か』に対してどういう感情を持つだろうか?
これなら『Ever17』と真逆のテーマなので面白くなるだろうと思いました。
>「なぜやってしまったのかが分からないけど、確かに自分自身がやってしまった」
真相を知った今、この通りの物語だったのだと思います。
俺悟の妹を救おうとした行為が、全ての元凶となってしまった。
我々プレイヤーも、あの世界の登場人物を救おうとして行動したはずです。
真実を知ろうとして行動したはずです。
なのに、あの世界を乱し、バッドエンドを増やすことになってしまった・・。
>何も頭をぶつけようと思ってぶつけたわけではない。
>かといって、ぶつけたのは他ならぬ僕自身。
まさにこの通りの物語だったわけです。
そして
『Ever17』と真逆のテーマ
これも、その通りだったのだと思うのです。
Remember11はEver17の真逆、
Ever17がプラスなら、Remember11はマイナスだと思います。
なぜなら、Ever17にあるモノが、Remember11は無い。
もっと言うなら、
Ever17をクリアしたプレイヤーが『期待するモノ』が、
Remember11には無い。
そう思うからです。
「Ever17で良かったと思うところはなんですか?」
こう問われたら、あなたは何を思い浮かべますか?
そして
「その良かったところはRemember11にありましたか?」
と、問われたら、おそらく、無いと思われるのではないでしょうか?
第3視点(BW)、最終章(ココ編)、伏線の回収、大団円・・
私はEver17も大好きですが、Ever17で良かったところが、
感動させられたところが、Remember11には、無い。
それも、あって欲しいと期待するモノが、あるかのように思わせて、無い。
そんな内容になっていたように思うのです。
Ever17は第3視点がゲーム世界へ介入し奇跡を起こしました。
Remember11は、第3視点のような存在『セルフ』が
介入しているかのように思わせて、全て悟が原因でした。
Ever17ではココ編で伏線を見事に回収し大団円を迎えました。
Remember11は、伏線を回収し大団円を迎えた。と思わせて、
あのような終わりが待っていました。ココ編のような解答編はありませんでした。
Ever17の茜ヶ崎空は、AIでありながら心がありました、そして最後には体を得ました。
Remember11のオレ悟は、記憶を失っていました。
記憶は最後まで戻ることなく、それどころか心まで殺され廃人になり、体だけが残りました。
Ever17は、奇跡を掴み取り、infinity loopを覆す物語。
Remember11は、変えてはいけないinfinity loopに翻弄される物語。
infinity loopを守り、繋ぎ止めなければならない物語。
Ever17のプレイヤーは、あの世界の奇跡の担い手。救い主。
Remember11のプレイヤーは、あの世界を乱す異物。邪魔者。
『Ever17』と真逆
実に見事なほどに逆だったのだと、思うのです。
さらに、そのテーマを巧妙に謎に利用していたのではないでしょうか。
Ever17をクリアしてRemember11をプレイする人間はまず間違いなく、
『第3視点は何かやってくれる』と期待する。思い込むはずです。
Remember11は、そんなEver17ファンの期待を逆手にとった
演出と謎になっていたように思うのです。
セルフやアイツという存在と、
その存在によるゲーム世界への介入を示唆しながらも、
全てはゲームキャラである悟の仕業であり、
プレイヤーや超越的な存在の仕業ではなかったという真相。
第3視点は何かやっているのだろう。
プレイヤーがゲーム世界に介入しているであろう。という
思い込みが強ければ強いほど、その真相は見つけにくくなる。
私自身、セルフの正体を見つけるまでにゲームが発売されて16年、
エピローグの真相を見つけるまで、さらに2年。
トゥルーエンドを見つけるまでに、さらに1年かかりました。
Ever17にとらわれているほど、Remember11にもとらわれる。真相が遠くなる。
この物語の謎は、前作プレイヤーの思い込みまでミスリードに利用した、
驚くべき謎だったのではないでしょうか?