・Remember11ドラマCD 第3話 Replay
(ゆに、独白)
僕は本当は、とっても弱い人間なんだ・・。
だから、TBに頼ってばかりいる。
TBがいなかったら、きっと僕はどうにかなっちゃってただろうな。
TBは僕の友達、僕を安心させてくれる。
ちなみにね、僕の友達はTBだけじゃないよ。
僕のポケットの中には、WRっていう子もいるんだ。
WRは僕の友達の友達。
ある人から預かっているんだ。
WRの持ち主と出会ったのは、一年くらい前の事だった――
一年前、僕は病院にいた。
気がついたら、そこにいたんだ。
その頃の僕にはTBもWRもいなくて、独りぼっちだった。
何がどうなっているのか全然わからなくて、ただおびえていた・・。
知らない場所、知らない人達。
怖かった。すごく怖かった・・。
そんな僕の前に、あの女の子は現れたんだ。
(コンコンコン、コン)
ゆ に「!? だ、誰・・?」
???「あけて、あけてよぉぅ。」
ゆ に「誰なの?」
???「ぐすぅ、怖いよぅ。ぐすっ、一人は嫌だよぅ・・。」
ゆ に「・・?」
(コンコン、コン)
???「お兄ちゃん、あたしを置いていかないでよぅ・・。」
(コンコンコン、コンコンコン)
???「ううっ開けてよぅ。お兄ちゃん・・。」
ゆ に「僕は、君のお兄ちゃんじゃないよ?」
???「ううっ、ぐすっ、うううう・・。」
(ロック解除、ドアの開く音)
???「お兄ちゃん!」
ゆ に「う、うわっ!」
???「お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん・・。ぐすっ、やっと会えた・・。怖かったよぅ・・」
ゆ に「ちょっ、ちょっと待って!」
???「え?」
ゆ に「ほら、よーく僕の顔を見て。」
???「・・あれ・・?」
ゆ に「僕は、君のお兄ちゃんじゃないでしょ?」
???「うん・・。」
ゆ に「わかったら、離れてくれないかな。・・重いんだけど・・。」
???「あ・・。お兄ちゃん、どこ?」
ゆ に「わかんないよ・・。」
???「あたし、独りぼっち・・。」
ゆ に「僕だって独りぼっちだよ。」
???「そうなの?」
ゆ に「うん・・。」
???「うううっ、ぐすっ・・。」
ゆ に「僕だって泣きたいよ!」
ゆ に「なんか君、子供みたいだね?いくつ?」
???「10歳ぃ・・」
ゆ に「そうなの!?ふぅん・・(僕より年下・・?そうは見えないけど・・・)」
ゆ に「名前はなんていうの?あ、ご、ごめんっ。名前を尋ねるときは、まず自分から名乗らないとね。それがルール。」
ゆ に「僕、楠田ゆに。生年月日は1999年10月19日、11歳天秤座、血液型はAB型。」
???「ぐすっ、ぐすっ・・」
ゆ に「き、君は?」
???「ぐすっ、ぐすっ・・」
ゆ に「ねぇ、泣いててもわかんないよ。」
???「ご、ごめんなさい・・。」
ゆ に「別に怒ってない。名前を聞いてるだけ。」
???「名前・・・。」
ゆ に「どうしたの?」
???「名前・・名前、名前・・・。」
ゆ に「大丈夫?」
???「いやだ、いやだっ。ごめんなさいごめんなさい。許してぇ。もうしませんっ・・。」
ゆ に「ねぇ、落ち着いてっ」
???「いやだぁっ、お兄ちゃん!お兄ちゃん!アリスを助けてぇ・・。」
ゆ に「大丈夫!大丈夫だからっ。」
???「ごめんなさい・・ごめんなさい・・。」
その子はとってもおびえていた。何度も何度もごめんなさい。って謝っていた。
そんな状態だったから、僕は彼女を落ち着かせるのに必死で、
いつの間にか、さっきまでの恐怖を忘れてしまっていた。
ゆ に「落ち着いた?」
???「うん・・ごめんなさい。」
ゆ に「それ、やめようよ。」
???「え?」
ゆ に「ごめんなさいは、今後禁止。」
???「うん。ごめんなさい。・・あっ」
ゆ に「へへっ。君ってアリスっていう名前でしょ。」
アリス「!どうして知ってるの?」
ゆ に「僕にはすごい力があるのさっ。」
アリス「力?」
ゆ に「うんっ。君の心が読めるんだよ。すごいでしょっ(なぁんて嘘だけど。さっきアリスが自分のことをそう呼んだからわかっただけ。)」
アリス「わぁ、すごいねぇ。でもね、それはあたしの本当の名前じゃないの。」
ゆ に「本当の名前は?」
アリス「・・わかんない。病院の先生が、あたしのことそう読んでいるのを聞いたから。」
ゆ に「そうなんだ。」
アリス「お兄ちゃんなら、あたしの本当の名前知ってるかもしれない。ねぇ、お兄ちゃんはどこ?」
ゆ に「僕に聞かないでよ。はぐれちゃったの?」
アリス「うん、ずっと捜してるんだけど全然会えないの。」
ゆ に「そうなんだ。」
アリス「ぐすっ、お兄ちゃんに会いたいよぅ」
ゆ に「うーん・・。あのさ、どこではぐれたの?」
アリス「わかんない。」
ゆ に「この病院のどこか?」
アリス「わかんない・・。」
ゆ に「アリスってこの病院に入院しているの?」
アリス「・・わかんない。」
ゆ に「じゃお兄ちゃんが入院しているの?」
アリス「わかんないっ。」
アリス「何にもわかんないの。お兄ちゃんを捜していたら、いつの間にかここにいたの。」
ゆ に「ねぇ、元気出してっ。こういうときは、楽しいことを思い出すんだ。」
アリス「・・楽しいこと?」
ゆ に「うん。・・そうだなぁ、アリスがお兄ちゃんと遊んでいたとき聞かせてよ。」
アリス「お兄ちゃんのこと?」
アリス「お兄ちゃんは、とっても優しくて、いつもあたしを守ってくれたの。」
ゆ に「へぇ、頼もしいね。」
アリス「お兄ちゃんだけはあたしの味方でいてくれたんだ。」
ゆ に「だけ。って?」
アリス「あのね、お父さんとお母さんはいつもあたしをぶったの。」
アリス「どうしてぶたれるのか、わかんないの。どんなに謝ってもやめてくれないの。」
アリス「・・すごく、怖くて・・、痛くて・・・。あたしはいつも泣いてるの・・。」
アリス「でもねっ、その時に、お兄ちゃんが頭をなでてくれるんだよ。」
ゆ に「そっか・・。」
アリス「お兄ちゃんはとっても優しいの。あたしが寂しくないようにってお友達もくれたよ。」
ゆ に「お友達?」
アリス「うんっ。えっと・・あれ?おかしいな・・。ポケットに入れておいたのに・・。」
ゆ に「そのお友達ってポケットに入る大きさなの?」
アリス「うん。キーホルダーのウサちゃん」
ゆ に「なるほど。アリスを不思議の国に迷わせた、白ウサギだね。」
アリス「ない・・・。」
ゆ に「なくしちゃったの?」
アリス「どうしよう・・。お兄ちゃんからもらった大切なお友達なのに。・・どうしよう・・。」
ゆ に「どこかで落としたんじゃない?」
アリス「わかんない・・・。ううっ、ぐすっ。」
ゆ に「うーん・・・。じゃ、一緒に探しに行こう!」
アリス「え?」
ゆ に「白ウサギを追って不思議の国を大冒険!ってこと。」
アリス「いいの?」
ゆ に「大切なお友達なんでしょ?」
アリス「うん。」
ゆ に「それに白ウサギを見つけないと、アリスがいつまでも泣き止んでくれないからね。」
アリス「ごめんなさい・・。」
ゆ に「だからそれはやめようって。」
アリス「うん。ごめんなさい。」
ゆ に「・・ま、まぁいいや。それじゃ行こうっ。」
アリス「うんっ!」
病院内は静まりかえっていた。
どこにも人の気配が無くて、すごく怖かった。
でも、アリスが震えながらしがみついてくるから、僕が怖がるわけにはいかなかった。
アリスのお兄ちゃんほどじゃないにしても、
ちょっとは頼りがいのあるところを見せなくっちゃって気持ちになっていたんだ。
だから僕は、アリスの手を握りしめてあげた。そうすることで僕もまた勇気が出た。
僕たちは誰もいない病院の中をあちこち探し回った。
アリス「ウサちゃん、どこにもいないよ・・。」
ゆ に「うん・・。」
アリス「お兄ちゃんだけじゃなくて、ウサちゃんまであたしのことおいてっちゃうの・・?そんなのいやだよぅ・・。」
ゆ に「大丈夫だって!僕が絶対に見つけてみせるから。」
アリス「でもぉ・・。」
ゆ に「僕にはすごい力があるって、さっき言ったでしょ。」
アリス「え?」
ゆ に「探し物だって見つけちゃうんだから。」
アリス「ほんとぉ?」
ゆ に「うん!だから大丈夫!」
アリス「ゆにちゃん、ありがとう・・。」
ゆ に「お礼はウサギを見つけてからだよ。」
アリス「うん。」
アリスを泣き止ませるためにそんなこと言ったけど、正直なところウサギを見つける自信なんて無かった。
僕たちはあちこち歩き回った。
でも、肝心なウサギは全然見つからない。
そして、ある部屋に入ったとき
アリス「あ。」
ゆ に「どうしたの?」
アリス「あたし、この部屋見たことある。」
ゆ に「え?ほんと!?」
アリス「うん」
ゆ に「もしかしてここ、アリスの部屋なのかな?」
アリス「わかんない・・わかんないけど、見たことある!」
ゆ に「じゃここにウサギがいるかもしれない。」
アリス「ウサちゃん、どこ?」
ゆ に「おーい、ウサギー出てこーーい!」
アリス「ウサちゃん、出てきて。お願い!」
ゆ に「ウサギぃぃぃ。」
ゆ に「あっ!」
アリス「えっ?」
ゆ に「見つけた!ウサギのキーホルダー!」
アリス「ほんとっ?」
ゆ に「ほらっ」
アリス「よかったぁ・・ゆにちゃん、ありがとう!」
ゆ に「これでもう泣かないね。」
アリス「うんっ」
アリス「でも・・」
ゆ に「今度は何?お兄ちゃんを探しに行く?」
アリス「ううん。そうじゃないの。そうだけど、そうじゃないの」
ゆ に「じゃあ、何?」
アリス「あたしにはウサちゃんって友達がいるけど、ゆにちゃんは独りぼっちのまんまだね。」
アリス「ゆにちゃんにもウサちゃんみたいなお友達がいればいいのに。」
ゆ に「へ、平気だよ。僕はアリスと違って泣き虫じゃないもんね。」
アリス「そうだ!ウサちゃん、貸してあげる。」
ゆ に「いいの?」
アリス「うんっ。」
ゆ に「だって、白ウサギがいないと、またアリスが泣いちゃうじゃないか?」
アリス「えへっ、うんとね、もう大丈夫」
ゆ に「なんで?」
アリス「だって、あたしにはゆにちゃんっていう新しいお友達ができたもんっ」
アリス「だからね。もう寂しくないよ。」
アリス「それに、ゆにちゃんにもウサちゃんのお友達になってほしいっ」
アリス「・・ダメ、かな?ダメだよね。ごめんなさい・・。」
ゆ に「そんなことないよっ!」
アリス「・・ほんと?」
ゆ に「うん。僕も白ウサギとお友達になりたい。」
アリス「良かったぁ。じゃ、貸してあげる。」
ゆ に「ありがとう。アリス。」
アリス「ねぇ、ゆにちゃん。」
ゆ に「なに?」
アリス「もしあたしが泣いていたら、助けてくれる?」
ゆ に「もちろん!」
アリス「すっごい力で、助けてくれる?」
ゆ に「もちろん。」
アリス「で、ギュッて握ってくれる?」
ゆ に「もちろん。」
アリス「ありがとう、ゆにちゃん!だーいすきっ!」
ゆ に「えっ?う、うわっ。」
アリス「えへっ。いつか、あたしとお兄ちゃんとゆにちゃんの三人で一緒に遊ぼうね。」
ゆ に「うんっ。」
その時僕は誓ったんだ、こんな女の子だってがんばっているんだから、僕もがんばらなきゃ。って
僕もがんばらなくちゃ。って
その後疲れた僕たちは、一緒に丸まってベッドで眠りについた。
ウサギのキーホルダーを握りしめているだけで、不思議と勇気がわいてきた。
これからがんばるぞ。って素直に思えたんだ。
アリス「かーごめかーごめ、かーごのなーかのとーりーは・・」
ゆに「おやすみ・・アリス・・・。」
(終)