聞きたいことがあるから……
【マイス】
うん。それで、聞きたいことって何?
【マリオン】
ええ、実はね――。
【マイス】
……。
【マリオン】
ん?マイス、妙に深刻そうな顔してるわね。
【マイス】
え!?
いや、それは……。
【マリオン】
何かあるなら先に聞くわよ。
さ、言って。
【マイス】
えっと、その……。
マリオンは、モンスターってどう思う?
そんなに悪いところばかりじゃないと思うんだけど……。
【マリオン】
モンスター?
……ああ、そういうことね。
【マイス】
?
【マリオン】
うーん、そうね……。(あの変身魔法、使ってはみたいけど……)
言葉が通じないのはちょっとね。
【マイス】
いや、中には通じる相手だって――。
【マリオン】
でも、便利なところもあるわよね。
武器もいらないし。
【マイス】
は?いや、便利って……?
【マリオン】
それにしても、やっぱり不思議よね。
どうしてマイスはあんな魔法が使えるの?
【マイス】
あ、うん……。どうしてって言われてもな。マリオンはどうなの?
【マリオン】
私は使えないわよ?
【マイス】
え?いや、使ってるじゃない。
ほら、ダンジョンに行ったときはいつも――。
【マリオン】
なによ、マイス!
私のことそんな風に見てたの!?
【マイス】
ええ!?
【マリオン】
まったく……失礼にもほどがあるわ。
(変身しなくてもモンスターみたいに見えるだなんて)
【マイス】
え?ええ??
【マリオン】
まあ、でも、その……。
嫌いじゃないのよね?……その、私のこと。
【マイス】
それは……うん。
【マリオン】
そ。ならいいわ。
【マイス】
…………。
……ねえ、マリオン。
【マリオン】
なに?
【マイス】
大事な話があるんだけど――。
ラスク、入ってくる
【ラスク】
姉ちゃんが倒れたって本当!?
【マリオン】
え!?
【ラスク】
なんだ、聞いてないのか……。
じゃあゴメン、急いでるから!
ラスク、出て行く
【マイス】
ショコラが倒れたって……まさか。
【マリオン】
ごめん、マイス!話はまた後で!
マリオン、出て行く
【マイス】
僕も――。
マイスが出て行こうとすると[[マージョリー]]が入ってくる
【マージョリー】
おや、大樹の坊やじゃないか。
孫に呼ばれてたのかい?
【マイス】
あ、はい。
でも、ショコラが倒れたって聞いて、その――。
【マージョリー】
なあに、大事ないさ。ちょっとした食あたりだからね。
【マイス】
ああ、マージョリーさんが診てたんですね。よかった……。
でも、ショコラにも食べられないものがあったんですね。
【マージョリー】
ほっほ。そのようだねぇ。
まあ、心配なら顔を出しておやり。
病気のときは、誰でも心細いもんだよ。
マリオンに話しかける
【マリオン】
あ、マイス。
【マイス】
ショコラの具合はどう?
【マリオン】
薬が効いて、ぐっすり眠ってるわ。
鉄なんて食べるから……。
【マイス】
鉄!?
【ラスク】
うん。
今日は寝坊して、朝ご飯を食べる時間がなかったからね。
食材調達の途中でパクッと。
【マイス】
なんで、よりによって鉄なんて……。
【ラスク】
美味しそうに見えたらしいよ。
普段から美味しそうだとは言ってたけど、まさか本気でやるなんて……。
しかも、この幸せそうな寝顔……。
見てるとなんか頭痛くなってくるよね。
【マイス】
はは……。
【ラスク】
ホント、心配して損したよ。
じゃあマリオン、あとはヨロシク。
ラスク、出て行く
【マリオン】
うーん……。
【マイス】
どうしたの、マリオン?
【マリオン】
おばあちゃんの薬が効いてるみたいだけど……。
あの薬だと、体に入り込んだ異物を完全に取り除くことはできないと思うのよね。
【マイス】
え?
【マリオン】
ねえ、マイス。枯草を持ってきてもらえる?
【マイス】
あ、うん。いいけど……。
【マリオン】
じゃあ、お願いね。
ちなみに、枯草は作物を枯らせばできるはずだから。
【マイス】
うん、判った。
枯草を渡す
【マリオン】
あ、これ……!
持ってきてくれたのね!
じゃあ、ちょっと待っててくれる?
えーと……。うん、これでよし!
しばらくすれば、完全に体から異物はなくなるはずよ。
【マイス】
ちょっと意外だったな。
【マリオン】
え?なにが?
【マイス】
マリオンは、ショコラのこと大事に思ってるんだね。
【マリオン】
当たり前よ。
友達なんだから。
【マイス】
その割には、色々と危ない実験に着き合わせてるけど。
【マリオン】
命に別状はないわ。
【マイス】
そういう問題なんだ……。
【マリオン】
…………。
ショコラはね、すごい頑張り屋なのよ。
少し抜けてるところもあるけど。
【マイス】
え?
【マリオン】
私はね、この子のそういうところが好きなの。
ひたむきで、真っ直ぐで、バカ正直で。
要するに、ひたすらバカなところが羨ましいのよね。
【マイス】
実も蓋もないね……。
【マリオン】
でも。
【マイス】
え?
【マリオン】
この子を見てると、バカみたいに頑張ってもいいんだって気がするの。
無理かもしれない、ダメかもしれない、でも試してみよう。
そしたら、いつか鉄だって食べられるんじゃないか――
なんて思ったりしてね。
【マイス】
…………。
……そっか。
【マリオン】
それより、マイス。
アナタ、私に何か話があるんじゃなかったの?
【マイス】
あ……。それは、その……。
【マリオン】
あ、もしかして、ここだと話しにくいこと?
それなら、ショコラが起きるのを待ってから、外で話そうか。
【マイス】
うん……。
【マリオン】
?
広場
【マイス】
ショコラは大丈夫なの?
【マリオン】
もうバッチリよ。
帰る頃には、
グルテンさんの作ったお粥を、これでもかってくらいにかっ食らってたじゃない。
【マイス】
あ、そ、そうだね……。
…………。
(……本当のこと、話さないとな。でも……)
【マリオン】
…………。
そういえば、ショコラに魔法をぶつけすぎて、グルテンさんを起こらせた話、覚えてる?
【マイス】
ああ、トマトのフルコースをプレゼントされた話だね。
【マリオン】
実を言うと、あのとき、おばあちゃんにものすごく怒られたのよ。
【マイス】
もっと人のことを考えろって?
【マリオン】
そう。でも、私には正直、意味が判らなかったわ。
……ううん、違うわね。判ってると思ってたのよ。
だって私は、そのために色々な実験をしてたんだもの。
【マイス】
…………。
【マリオン】
でも、今はちょっとだけ判るの。
考えるっていうのは、『考察する』ことだけじゃなくて、『思う』ことも必要だったみたいね。
【マイス】
……思うこと?
【マリオン】
ショコラのこと、助けたいと思ったの。
そうしたら、体が勝手に動いてたわ。
そのとき、ああ、そういうことかって思った。
【マイス】
…………。
【マリオン】
今も同じよ。
【マイス】
え?
【マリオン】
マイス、アナタのために、私にできることはないかしら?
【マイス】
……僕のために?
【マリオン】
モチロン、アナタの思ってることは判らないけど――
でも、助けたいとは思ってる。
アナタのこと、想ってるからね。
【マイス】
……!
…………。
ありがとう。それと、ごめん……。
実は君に、ずっと隠し事をしてたんだ。
【マリオン】
隠し事?
【マイス】
うん。実は――。
マイス、変身する
【マイス】
…………。これが僕の、もう1つの姿なんだ。今まで隠してて、本当にごめん!
【マリオン】
え!?隠してたの!?
【マイス】
ええ!?知ってたの!?
【マリオン】
えええ!?気付いてなかったの!?
【マイス】
ええええ!?――って、ちょ、ちょっと待って!と、取り敢えず、状況を整理しよう。
【マリオン】
そ、そうね。
【マイス】
えーと、まず、マリオンは僕が変身できることを知ってたんだよね?
【マリオン】
うん。
【マイス】
じゃあ、僕が人間とモンスターのハーフだってことも……?
【マリオン】
そうなの!?それは知らなかったわ。
【マイス】
え!?じゃあ、どこで僕が変身できることを知ったの?
【マリオン】
うーん……。この前、倒れたマイスを看病してたときね。
職務放棄はポリシーに反すると想ってベッドに戻ってみたら、
金のモコモコが寝てたから。
【マイス】
そっか、あのとき……。
【マリオン】
で、すごい魔法を使えるんだなって思って、
それを確かめるためにマイスに一日張り付かせてもらったのよ。
でも、魔法じゃなかったのね?
【マイス】
うん……。僕がモンスターになれるのは、さっきも言った通り、人間とモンスターのハーフだからなんだ。
【マリオン】
ふーん。
【マイス】
…………。
え?それだけ?
【マリオン】
まあ、結果が同じなら似たようなものかなって思って。
【マイス】
全然違うよ!
だって、半分はモンスターなんだよ!?
【マリオン】
うん。
【マイス】
こ、怖くないの……?
【マリオン】
みたいね。
【マイス】
みたいねって……。
【マリオン】
ま、それぐらいの問題ってことよ。
マイスが深刻に考えすぎてただけでね。
【マイス】
……そうかもね。
【マリオン】
ねえ、マイス。
【マイス】
なに?
【マリオン】
ありがとうね。
【マイス】
え?
【マリオン】
本当のこと言ってくれて、嬉しかったから。
【マイス】
……うん。
僕も、受け入れてくれて嬉しかった。
……ありがとう。
【マリオン】
……うん。
依頼を達成しました!
【マリオン】
これからもよろしくね♪
マイス!
【マイス】
こちらこそ!
最終更新:2012年03月22日 19:40