「ヘリオンだと!?AEUめ…。無作為に第三国に売りまくるから、こういう事になる……!」
「犯行声明だと……?」
「奴ら…本気で武力介入するつもりか?」
「馬鹿な…。一度の軍事介入で、300年以上続いている紛争が終わると本気で思っているのか!?」
「お待ちしておりました、中佐!宇宙は如何でしたか?」
「心地良いな…。重力というものは」
「お察しいたします。では、司令がお待ちです。どうぞ」
「その前にセイロン島へ立ち寄りたい」
「しかし…それでは―――」
「私は自分の目で見たものしか信じない男だ。司令も了承される」
「ハッ!お供致します!」
「イオリア・シュヘンベルグ……」
「ソレスタルビーイングの犯行声明に登場していた、歴史上の人物です」
「名前は知っている。太陽光発電システムの提唱者だったな」
「諜報部はその線から、ガンダムを追いかけているそうです」
「……叩いて出る埃はあるまい。このパーツもそうだ。見せて良い技術は使い捨てている」
「使えるティエレンはあるか?私が出る」
「中佐御自身がですか!?」
「言った筈だ、私は自分の目で見たものしか信じぬとな」
「あれが…ガンダムか……」
「戦争根絶とやらの覚悟を…見せて貰うぞ!」
「肉ならくれてやる!」
「その首……貰ったぁッ!!」
「で、如何だった中佐?ガンダムと手合わせしたのだろう?忌憚の無い意見を聞かせてくれ」
「ハッ。私見ですが、あのガンダムという機体に対抗出来るモビルスーツは…この世界の何処にも存在しないと思われます」
「それ程の性能かね?」
「あくまで私見です…」
「“超人機関”?司令、まさかあの計画が…」
「水面下で続けられていたそうだ。上層部は、対ガンダムの切り札と考えている」
「本日付で、中佐の専任部隊へ着任する事になりました。宜しくお願いします」
「…それにしては若過ぎる……」
「超兵1号は、体内に埋め込んだナノマシンで身体機能を保全、宇宙環境下での長時間活動を可能にしています。
また、各神経系統の間隔増幅処置により―――」
「説明はいい!」
「何か、お気に召さない事でも?」
「貴官は自分達がやっている行為を何とも思わないのかね?」
「思いません。劣悪な宇宙環境に適応する為、少尉の存在は必要不可欠です」
「最大加速時でルート誤差が0.25しかないとは…。これが超兵の力……。しかし、彼女はまだ乙女だ……」
「救助行動に入る!少尉の機体回収班を出させろ!」
「しかし!あれだけの質量の物を―――」
「人命が懸っている!!」
「見捨てるしかないのか?200人以上もの人間を…!宇宙は…何故にこうも無慈悲なのだ!?」
「も、持ち堪えた…!?しかし、ソレスタルビーイングが人命救助とは……!」
「若い…男の声……?」
「聞こえるか?ガンダムパイロット。このブロックは間もなく限界離脱領域に入る。ここまでだ…離れろ!」
「ちゅ、中佐!ガンダムが!」
「救助作業が最優先だ!」
「りょ、了解!」
「……私にも、恩を感じる気持ちぐらいはある……!」
「少尉のスーツに脳量子波を遮断する処置をしました。同じ轍は踏みません」
「それ程までして少尉を戦場に出させたいのか!?」
「ソレスタルビーイングなどという組織が現れなければ、我々の研究も、公にはならなかったでしょう」
「(何かにつけてそれか……)」
「これ以上兵を犠牲にするな、降伏しろ……」
「今回の件は、中佐が関わる様な事ではないと思いますが?」
「多発テロの原因はソレスタルビーイングだ。となれば奴らがこの事件に絡んでくる可能性もある。そういう事だ……」
「特務部隊“頂武”隊員諸君。諸君らは母国の代表であり、人類革新連盟軍の精鋭である。
諸君らの任務は、世界中で武力介入を続ける武装組織の壊滅、及びモビルスーツの鹵獲にある。
この任務を全うする事で、我ら人類革新連盟は世界をリードし、人類の発展に大きく貢献する事になるだろう。諸君らの奮起に期待する!」
「中佐、魚は上手く網に掛かるでしょうか?」
「そうでなくては困るよ、ミン副官。これ程の物量作戦…そう何度も出来はしない」
「少尉にとってこれが初めての実戦になる。この前の様な事は御免被る」
「これがソレスタルビーイングのスペースシップ……。この様な物まで所有する規模が、あの組織にはあるというのか……?」
「本隊の作戦開始時間だ!命を無駄にするなよ!」
「あの時と同じ…若いパイロットの声…。だが何故苦しむ?ピーリス少尉を拒んでいるのか?ハッ!もしや……!」
「ピーリス少尉と同類…!」
「ピーリス少尉としては、物足りぬ初陣となったな」
「味方がいるのが分かっている筈だ。それでも撃つというのか!?」
「4番艦の反応が消えた…!何という事だ……。全ては私の判断ミス……!しかし、手ぶらで帰る訳にはいかん!是が非でもあのデカブツを鹵獲する!!」
「敵の砲撃後、作戦を開始する!死ぬなよ!」
「発射までのタイムラグは承知している!」
「このデカブツは、ティエレン6機の推進力を上回るというのか!?少尉!首でも腕でも構わん!奪い取れ!!」
「これ程の規模と人員を駆使して、1機すら鹵獲出来んとは…!」
「ちゅ、中佐!離脱して下さい!」
「ミン中尉!」
「離脱するぞ、少尉!」
「しかし…!」
「男の覚悟に…水を指すな!」
「中佐、ミン中尉が…!」
「何も言うな、少尉…」
「しかし…」
「言うな!……ガンダム……ッ!」
「私はガンダムのパイロットを、ピーリス少尉と同類と見ている」
「我々以外にも、脳量子波処置を研究している国がある可能性を否定出来ません」
「もしそうだとすれば、この世界は歪んでいるな……!」
「その意見に賛同させて頂きます、中佐…」
「ソレスタルビーイングが全球を襲撃した。目標は、貴官が所属する超兵機関だ」
「な…ッ!そ、そんな…!」
「私も知らされていない研究施設への攻撃…。やはりガンダムのパイロットの中に、超兵機関出身者がいる。
そして貴官はそれを知っていた。違うか?」
「いえ、知りませんでした…」
「私の権限でこの研究施設を封鎖。貴官には取り調べを受けて貰う」
「な…何ですと…?待って下さい!」
「この事件は既に世界に流れている。報告を怠り、我が陣営を不利な状況に追い込んだ。貴官の罪は重いぞ…!連れて行け!」
「ソレスタルビーイングに花を持たせるなど……!」
「今度こそ、任務を忠実に実行します!」
「気負うなよ」
「了解!」
「まさかなぁ…ユニオンやAEUと手を組むことになろうとは……。浮かれおって……」
「どういう事だ!?施設にテロリストが向かっている事に、何故気が付かなかった!?」
「中佐。司令部より、ガンダムを鹵獲せよとの指示が出ました」
「んん……?そうか、これは全て仕組まれた事……。ガンダムを誘き出す為、政府はテロリストの動きを掴みながら、わざと放置したというのか……」
「通信遮断領域の拡大だと?そんな事が出来るなら、何故今迄やらなかった?どういうつもりだ!?ソレスタルビーイング!」
「中佐。ガンダムは…此処にも攻撃を仕掛けてくるでしょうか?」
「可能性はある。奴らの目的が世界を破滅させる事ならばな……」
「頂武GN-X部隊、攻撃行動に移る。虎の子の10機だ、大破はさせるな。かかれ!」
「何という性能だ、やはりこの機体……すぅんごぉい!」
「最早ガンダムなど…恐るるに足らず!」
「これは…どうして?あれだけの被害を受けたというのに……」
「少尉は初めて味わうんだったな」
「んッ?」
「これが…“勝利の美酒”というものだ」
「追わんで良い」
「しかし…!」
「奴らのアジトは叩いた。何れはドライヴの活動限界が来る」
「貴官か、このガンダムを鹵獲したのは……。頂武特務部隊のセルゲイ・スミルノフ中佐だ」
「ッ!ロシアの荒熊から直々に挨拶して頂けるとは……。フランス第4独立外人騎兵連隊、ゲイリー・ビアッジ少尉です。ガンダム掃討作戦に参加させて頂きます」
「聞かせて欲しいものだな。どうやってガンダムを鹵獲したのかね?」
「ッヘヘ、そいつぁ、企業秘密という事で……」
「27機中帰艦出来たのはたったの11機、鹵獲した機体も失ってしまった…。それに…ガンダムの新たな能力……。
マネキン大佐、私は現宙域からの撤退を進言する。このままでは徒に兵を失うだけだ」
「今度こそ…この戦いにケリを着ける!」
「今だ!ピーリス!!」
「何をしている!?私に構うな!戦え、少尉!!」
「出来ません!」
「ッ!」
「…中佐がいなくなったら…私は1人になってしまう……!」
「少尉……!」