巨人(進撃の巨人)

登録日:2013/05/27 Mon 12:59:22
更新日:2025/09/21 Sun 21:53:01NEW!
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進撃の巨人』に登場する謎の生命体。

以下、ネタバレを含みます。



概要


その名の通り、平均3m~15mの巨大な人型で、大半が男性的な姿をしているものの、生殖器は存在せず、繁殖方法は不明。
その巨大さに比べて重量は異常に軽く、動きも機敏。*1

生態は謎の一言に尽き、はっきりしているのは『人間を襲い、食うこと』だけが行動原理という事。
遠方からでも人間の存在を感知できる術を持ち、見つけるや否や襲いかかってくるが、他の生物には何の興味も示さない。
しかも(人間を喰うにも関わらず)消化器官がないため、食事も水分も必要とせず*2、呼吸もしないなど、生物として根本から異常な存在。
だが基本的に日光を遮られると活動が鈍くなるため*3、唯一「日光」が活動に必要と目されている。

またその行動に知性と呼べるものは基本確認できず、半ば本能的に人間を探し、見つけるや思い思いの速度で近づき襲ってくるのが殆ど。
一方で、こうした行動からかけ離れた行動をとる「奇行種」と呼ばれる巨人も確認されている。
近くの人間を無視して遠方にいる人間を襲ったり、夜間にも関わらず日中と変わらず動き回るなど、ただでさえ行動が予測出来ない巨人の中でも輪をかけて脅威である。
因みに夜間でも活動できる奇行種は月光*4で活動しているからではないかと言われており、新月の日は活動を停止するものと思われる。

容貌も大きさも個体ごとでまちまちで、人類と同様その姿形は多種多様。
だが共通して頭部を吹き飛ばしても数分で再生する驚異的な生命力を誇り、現生人類が有する大砲といった火器程度では足止めにしかならない。
が、なぜかうなじ部分を大きく損傷すると再生能力が発揮されなくなり、肉体は時間経過と共に消滅する。
体長の違う巨人でもこの弱点の大きさは同じで、縦1m幅10cm。*5
ただし人間の膂力ではそこまでの損傷を与えることができないため、『うなじ部分を剣で切り取る』ことで撃退している。

ちなみに何故か南方から現れるのだが、この理由も不明。
ひたすらに人間を探し求め、食料としてではなく「ただ食う」だけの為に襲うその姿に、およそ知性と呼べるものも確認できない。だが、中には単に「奇行種」として片づけるにはあまりに奇妙な、それこそ一定の知性が無いと取らないであろう行動を起こすものもおり、総じて謎しかない存在である。



歴史


一体いつどこで、どういった生物進化の果てに生まれたのかは全くの謎。
物語開始のおよそ100年前に突然姿を現し、当時の人類の大半を食い尽くしたとされる。
生き残った人類は、その脅威から逃れるために巨大な「壁」*6を築き、その内部にこもることで平和な生活を手に入れた――というのが、一般的に伝わっている歴史。
その実、人類の大半が死滅した直接の原因は人間同士の争いによるもので、「壁」も人類が海を越えて辿りついた大陸に元々用意されていたものであった。

過去何度も人類は巨人の討滅を試みるも、驚異的な能力を前に敗北を繰り返している。
先述の「うなじを切る」為に編み出した「立体機動装置」をもってしてもその勝率は高くなく、そのため人類は基本「壁」の中で安全な生活を過ごす事を絶対としていた。
人類の中で数少ない対巨人戦闘に特化した調査兵団であっても「巨人とは出会わない、なるべく戦わない」ことを貫いている。*7

しかし、本編開始5年前に超大型巨人によって「壁」が破壊されたことで、再び人類への攻撃を開始する…………。










その正体

その正体は人間
正確には、約2000年前に初めて巨人化の力を獲得した「始祖ユミル」の血を引くエルディア人と呼ばれる人種達(通称、ユミルの民)が、巨人の脊髄から抽出した薬品を投与された果ての姿である。
巨人のうなじの部分の弱点は元々の人間の脳から脊髄にかけての名残と思われ、解剖してもその人間の痕跡はない。
この特性のため、作中世界においてユミルの民の血を引く存在のほとんどは迫害されている*8

ただしこのやり方で巨人化してしまうと自力で元に戻ることはできず、先述の通りひたすら人間を追い求める存在に成り果てる。
例外は後述する「巨人化能力者」のみ。
そちらとの区別のため、これらの巨人は無知性巨人、あるいは無垢の巨人と呼称される。

そして、エレン達から見て壁の外にいる無知性巨人はマーレの国が送り込んだもの。
マーレは巨人化能力を持つユミルの民を支配下に置いた後、罪人となった者をエルディア人が住む島「パラディ島」の海岸線で巨人化させる「巨人化の刑」に処していた。
そしてその場所は、「壁」のある位置から見て南。
つまり巨人が南から来るのは南の海岸線でエルディア人が巨人化されていたからであり
エレン達「壁」の中の住人――パラディ島のエルディア人は、数百年に渡って同胞同士で食い合い殺し合う関係を続けていた、ということでもある。









◆巨人化能力者

その名の通り、巨人化する能力を持った人間のこと。
その数は九つしかなく、それぞれに特異な能力を有する事から「九つの巨人」と特別に称される。

巨人化能力に共通しているのは「自発的に巨人化し、また人間に戻る事が可能」「巨人化していても明瞭な自我を保てる」「驚異的な再生・治癒能力」「能力を継承してから13年しか生きられない」点。

能力者が自分の体を傷つけると、その部分から巨人の肉体が形成され、能力者は巨人体のうなじ部分に埋まる形となる(無垢の巨人の弱点の場所と同じで無垢の巨人の場合、肉体は巨人の肉体と一体化していると考えられる)。
イメージとしては巨大ロボットの様なパワードスーツである。
無垢の巨人と異なり人間としての意識や知性を有しており、思いのままに行動可能。
そして巨人の肉体から離れることで元の人間に戻れる。

ただし巨人化には明確な意思が重要であり、目的があやふやだったり精神に迷いがあると巨人化は出来ない。
また相当の体力を消耗するため乱発は出来ず、特に初めて巨人化する際は意識の混濁や暴走、人間に戻っても記憶障害が生じるケースがある。

巨人特有の再生能力は人間体でも同様に発揮され、再生速度は勿論、通常では自力で治せない四肢の欠損なども治せる。
しかも「損傷の内特定の部位だけ優先的に回復させる」「わざと再生をしない、ないし極端に遅らせる」といった芸当もこなせる。
一方で再生そのものには相応の体力を要する上、ダメージ量によっては回復に体力が持っていかれその間巨人化出来なくなる場合もある。

そして、「九つの巨人」を継承した人間は、その瞬間から数えて13年しか生きられない、という絶対的な制約が存在する。
コレは全ての始まりであるユミルが「巨人化能力を得てから死ぬまでの期間」が関係している模様。
そして能力者が死亡した場合、その力はエルディア人の新生児へランダムで継承される。

ただし、それ以外の方法で巨人化能力を継承させる手段がある。
それは「無知性巨人化したエルディア人が、九つの巨人の継承者を喰らう」事。
作中では基本コレを利用して意図的(一部は偶発的だが)に巨人化能力を別の人物へと継承させている。 
また、継承に成功した場合は能力だけでなく、歴代の継承者の記憶もある程度引き継ぐ事が可能であり、これによって巨人の能力の扱い方を学ぶ場合もある。
実際に20巻でエレンのよく知る「ある人物」にこの処置が行われ、調査兵団は都合2人の巨人化能力者を得ることに成功した。
また、この巨人化→能力獲得の過程でどれほど重傷であろうと回復するため、敵の巨人化能力者を捕縛した後に、通常の治療が間に合わないメンバーの回復手段としても使用可能。


なお、無垢の巨人は能力者を仲間と思っていないのか、対峙した場合は巨人体・人間体問わず襲いかかってくる。
ともすれば「巨人化能力者を食えば元にに戻れる」というのを本能的に知っているからこそ、人間を襲っている可能性もある。


〇起源と経緯
九つの巨人の力、そして全ての巨人の起源は、約2000年前。
始祖ユミルこと「ユミル・フリッツ」という少女が「大地の悪魔」と呼ばれる存在と接触を果たし、巨人化能力をその身に帯びた事に端を発する。
その力で彼女は土地を耕し、道を作り、橋を架け
そして、王の命の下、戦場で数多の敵兵を踏みつぶし、蹂躙し、滅ぼした。
斯くして彼女が属する国「エルディア」は繁栄を極めたが、巨人の力を手にしてから13年後、ユミルは敵国兵の奇襲から王を庇う形で命を落とした。

だが、王はそれを良しとしなかった。
何としてもユミルの持つ巨人の力を欲した王は、過去に「褒美」と称して彼女に産ませた自身の娘三人に、彼女の亡骸を喰わせる事で力の継承を試みたのだ。
この策は功を奏し、娘たちに巨人の力は継承された。
そして、王の遺言に従い更にその血肉を子に喰らわせる事を繰り返し、その結果当初一つだった巨人の力は九つに分かれていった。
以後、この巨人化能力はユミルの血脈を受け継ぐエルディアの民――通称「ユミルの民」の間で継承されていった。

時は過ぎ、エルディアは敵国マーレの国を滅ぼしエルディア帝国を建国。その権勢は絶頂に至っていた。
しかしその巨人の力のうち7つがマーレ側に奪われ、エルディア側は劣勢に。
その後エルディア人の多くは王家とともにパラディ島こと「楽園」の内部に逃げ込み、新たに国を建設。
本国を平定したマーレ人は、巨人戦力を利用するためマーレに服従するエルディア人を「戦士」として利用し、他を収容所に送るという分割統治を敷いた。

斯くして九つの巨人は二つの国家に分けられたが、更なる巨人の力を求めるマーレは、パラディ島への能力奪還作戦を決行。
その過程で「壁」を破壊したことが、物語の始まりとなったのだった。


◆九つの巨人

九つの巨人はそれぞれ固有の名称と能力を持つ。
マーレが奪った7つは進撃の巨人と始祖の巨人以外である。

超大型巨人

継承者:ベルトルト・フーバーアルミン・アルレルト
固有能力【高熱放出】
5年前に突如として現れ「壁」を破壊した60m級の大巨人であり、メタ的な表現をすれば本作の看板(広告塔)のような存在。
その巨体から振るわれる拳や蹴りの一撃は容易に「壁」を叩き壊せる威力を有する。
しかし大きすぎる故に動きは緩慢で硬化もしない(出来ない?)ため、全身から蒸気を噴出して防御する。
これは近寄れない位の高温とアンカーを吹き飛ばす程の勢いがある厄介なものだが、反面、自身の筋肉を燃料にしているようなものなので持続時間有限のその場しのぎでもある。
また、巨人化時にはどの巨人も爆発の様な衝撃を発生させるのだが、超大型巨人はこの威力が尋常ではなく高い。
その破壊力は戦略兵器並みで、周辺一帯を文字通り灰燼に帰すほど。このためウォール・マリア奪還作戦以降はこの能力で周囲を吹き飛ばすことを攻撃手段として使われている。

マーレが送り込んだ巨人の1体で、ウォール・マリア、ウォール・ローゼを破壊。
その後、ウォール・マリア奪還作戦でエレンたちの前に立ちはだかるが、アルミンの決死の行動とエレンの機転により攻略され、生身のエレンに撃破される。
その後、アルミンが捕食したことでアルミンに能力が継承された。


鎧の巨人

継承者:ライナー・ブラウン
固有能力【体表の硬質化】
超大型巨人と共に現れ、「壁」を破壊した巨人。全身に硬質化した皮膚を鎧の如く纏っている。
この鎧の強度は非常に高く、ブレードは言わずもがな巨人のパンチも殴った方が砕ける、噛みついても無傷と文字通り歯(刃)が立たない。
だが機動力保持の為か脇や膝裏などの関節には鎧がないため、刃は通るし巨人による極め技も有効である。

マーレが送り込んだ巨人の1体で、登場当初、エレン達には硬質化した鎧の攻略手段が無かった。
しかし後に雷槍と呼ばれる兵器や、硬質化能力を獲得した巨人のパンチで破壊可能になった。
さらに外国の技術の進歩に伴い、対巨人砲弾により破壊されるなど、話が進むにつれて鎧の強度は信頼出来なくなってしまった。


女型の巨人

継承者:アニ・レオンハート
固有能力【他の巨人能力の発露】
珍しく女性型の肉体をしており、高い格闘能力を持つ。
また「鎧」ほどではないが身体の一部を一時的に硬化することができ、状況に合せて攻防に使用できる
咆哮で他の無知性巨人を呼び寄せる事が可能であり、その誘引性は巨人が持つ「人間を食う」本能を越えて行動させる。
ただしあくまで「呼ぶ」だけで「操る」ことは出来ず、そもそも先述の通り無知性巨人からは普通に襲われるためリスクも孕んでいる。
女型に限らず、巨人化能力者は他の巨人の脊髄液を接種すると、その巨人固有の特性をある程度取り込み発露させる事が出来る*9が、女型の巨人はこの発現率が際立って高い。
無知性巨人の呼集や身体の部分的硬質化といった特性も、こうした各種実験の産物らしく、あらゆる面で汎用性・冗長性が高い巨人と言える。

マーレが送り込んだ巨人の1体で、第57回壁外調査時に調査兵団に襲撃を仕掛けてきた。
後にアニが追い詰められた際に自身を水晶のような硬質化物質で覆い、最終盤まで出番はなくなる。

顎の巨人

継承者:マルセル・ガリアード→ユミル→ポルコ・ガリアード→ファルコ・グライス
固有能力【超硬度の爪と牙】
小柄だがその分他の巨人より俊敏で、機動戦を得意とする。
また硬質化した牙と爪を持ち、これは他の巨人の硬質化した皮膚にも傷を付ける事が可能。
変身者毎に姿が異なり、ユミルの場合は無知性巨人の時と変わらない小型の巨人で牙や爪はあまり目立たなかった。
ポルコの時はライオンの様なたてがみを持ち、強力な牙と爪を持っていた。
ファルコが変身した場合は羽毛の様な体毛を持つ巨人となり、飛行能力を獲得していた。
元はマーレが送り込んだ巨人の1体だったが、本編開始前に無知性巨人だったユミルに捕食され力が移動。
マーレ編以降はポルコ・ガリアードがその力を継承して変身し、最終盤でファルコ・グライスに継承される。


獣の巨人

継承者:トム・クサヴァー→ジーク・イェーガー
固有能力【継承者個人の特性発露】
継承者毎に容貌や性質が大幅に異なる。
先代であるトム・クサヴァーは羊のような頭部をしていたが、ジークは異様に腕の長い猿のような容貌と、「動物のような容姿」という点以外ではかなりの相違がある。
ジークの場合は、その長い腕で「壁」の昇り降りも可能なほか、野球の投球フォームの要領で石礫を大量に投げる遠距離攻撃が可能。加えて巨人形態でも明瞭に人語を発音できるという特徴もある。
そして、ジークが王家の血を引くため、ジークの脊髄液を少しでも飲み込んだユミルの民は彼の咆哮を聞くと無知性巨人に変化する。
咆哮が聞こえなかった場合でも一瞬体がしびれるなどの症状が出る。
彼の脊髄液由来で変化した無知性巨人は夜でも活動できる他、ジークの命令で動く、他の巨人に襲いかかる等の通常とは異なる行動をとるものが多い。

……逆に言うと、「獣の巨人」として有する能力自体は大して無く、マーレ上層部では「九つの巨人」の中ではかなり能力面では低い、と判断されていた。
が、ジークがその「異様に長い腕」を利用した投擲戦法を編み出した結果、並みの砲撃兵器を凌ぐ威力をたたき出すなど、兎にも角にも「継承者次第」で運用が変わる。
また、この「継承者毎で容姿が大幅に変わる」特性は、脊髄液を介して他の巨人化能力者にも引き継がれるので、場合によっては他の巨人にも予想外の能力をもたらす場合がある。



車力の巨人

継承者:ピーク・フィンガー
固有能力【持続性】
他の巨人と異なり、基本的に四足歩行している巨人。
このため背中に荷物を背負って動く事が容易であり、輸送任務は勿論背中に専用の長距離射撃砲や重機関砲などを装備しての射撃攻撃も可能。
また四足歩行による高い運動性能を有しており、総じて戦略的行動に長けた性質が持ち味。
何より、数ヶ月間は巨人体を維持できる、短時間に何度も巨人化を繰り返し行えるという、他の巨人を圧倒する桁違いの持続力・スタミナを有している。
このため長期間の偵察や作戦行動に極めて適しているほか、最終決戦では「敵に襲われる→巨人化を解除して人間体で離脱→即再巨人化して敵を背後から強襲し撃破」を繰り返すというヒットアンドアウェイじみた戦法も可能である。
余談だが、シガンシナ区奪還作戦の時と再登場で顔が違う*10


戦鎚の巨人

継承者:ラーラ・タイバー(ヴィリー・タイバーの妹)→エレン・イェーガー
固有能力【硬質化物質の生成】
最後に出てきた9つの巨人。タイバー家が代々管理している巨人で、マーレ国内でも高い地位を得ている。
鎧の巨人と同様硬質化能力を有するが、こちらは硬質化物質を体外で生成・応用する事に長けている。
名前と同様の巨大な鎚を始め、剣や槍、果ては弓矢といった様々な武器を生成できる。
更には巨人体を硬質化能力で生成し、本体をうなじ以外の場所に隠す事が可能。つまり巨人の絶対的な弱点である「うなじを損耗すると死亡する」というリスクを回避できる強みを有する。
能力者本体も固い水晶で守ることができるなど防御性も高いが、反面消耗が非常に激しく、何度も硬質化を行うとあっという間に限界がきて動けなくなる。
この特性を見抜かれると弱く、エレンに特性を見破られた後は本体を守る硬質化した水晶ごと顎の巨人の顎で叩き割られてしまった。
脊髄液をエレンが飲み込んだことで、能力は彼に引き継がれた。


始祖の巨人

継承者:始祖ユミル→(フリッツ王家)→カール・フリッツ(レイス王)→(レイス家)→フリーダ・レイス→グリシャ・イェーガー→エレン・イェーガー
固有能力【総ての「ユミルの民」への干渉・操作】
ライナー達が「座標」と呼称するものの正体。
壁に逃げ込んだ王家の保持していた巨人。代々フリッツ王家に引き継がれてきており、名前をレイス家と変え、真の王家であることを隠していても始祖の巨人の継承を続けていた。
九つの巨人を含めた全巨人を支配下に置いて操作可能なほか、巨人していないユミルの民の記憶操作や肉体操作・改造が可能。
壁内人類が外の世界に関する記録を失ったのもこの力によるものであり、壁の中の人類が歪な環境下に置かれた元凶とも言える。

ただしこれらの能力は、王家の血筋を引いているもので無ければ発揮することはできない。
一方で王家の血筋たるレイス家の人間が継承すると、145代王カール・フリッツの思想に縛られてしまい、自由意志での能力行使はできなくなる。
能力が制限されるのではなく、使えるが、使わないという選択肢しか選べなくなる。
ただし、始祖を持った人物が王家の血筋を引いた巨人(知性/無知性問わず)と接触することで、初代レイス王の思想に縛られることなく発動可能という抜け道が存在する。


進撃の巨人

継承者:エレン・クルーガー→グリシャ・イェーガー→エレン・イェーガー
固有能力【過去から未来に至る継承者間での記憶の共有・開示】
この漫画のタイトルになっている巨人。
元はマーレに潜入していた「フクロウ」ことエレン・クルーガーが所持していたが、始祖の巨人の奪還のためグリシャが継承、さらにエレンに継承された。
巨人によるトロスト区襲撃の際にエレンが変身し、以降壁内の人類の戦力となる。
クルーガー曰く「いついかなる時も自由を求めて戦った」らしい。
エレンは後に「ヨロイ」と書かれた瓶を飲み込んだ事で硬質化能力を発現する。

その能力は、全ての「進撃の巨人」継承者間での記憶の共有。
前任者の記憶であれば、他の九つの巨人でも記憶を引き継ぐことはあるが、進撃の巨人の場合その範囲が更に広く、過去に限らず未来の継承者の記憶さえも共有できる。
つまり過去を知る事は勿論、その気になれば未来を知る事も可能……というよくある「未来視」では収まらないのがこの能力。

というのも、「どの記憶を共有するか」という選択権その記憶を実際に有する「未来の継承者」側にあり、開示される記憶には一定の任意性が入る。
加えてこの能力は「他者の記憶を垣間見る」だけなので、当然ながら記憶を有する者が知らない情報や知識は取得できない。
つまり、未来を見ているようで、その実は限定的・恣意的な情報のみを与えられているに過ぎない。
「過去から未来の景色を見る」のではなく、「未来から過去に宛てて景色を送る」のが、この能力の実態。
未来の継承者による疑似的な過去干渉こそがこの能力の本質である。

だが、「未来から送られる」という時点で、送り込まれる情報には一定の「確定度」が存在しており、それを回避・変更しようと足掻いても既に「そう足掻く事」自体が「未来」として組み込まれている場合がある。
「自由を求めて戦った」というのも、この記憶に基づいて行動したがゆえのことであるが、それが抗いの行動だろうが従属の行動だろうが、どちらにせよ「定められた未来」に向けての行動に結局落ち着いてしまう、「自由」という言葉とは最も縁遠い存在と言える。

因みに、ジークと接触した際には王家の血筋の関係か直接的な干渉が可能となっており、医者や父親としてレイス家を根絶やしするのをためらったグリシャに対して「何をしてる 立てよ 父さん」「これは父さんが始めた物語だろ」と耳元で囁いて強制させた。
これは「自由の為に前に進み続ける」のではなく、「個人の良心や願いなどを無視してひたすら前に突き進ませる」という、進撃の巨人の能力の本質を表すシーンといえる。


◆その他の巨人


壁の中の巨人

女型の巨人との戦いの際に一部破損した「壁」の内部から姿を見せた巨人。
その正体はかつて巨人の硬質化能力を用いて「壁」を構築した多数の無知性巨人である。
超大型巨人とほぼ同等の体格と、高熱を発する能力を持ち、近づく者を焼き殺すことが可能。
壁の内部に無数に存在している。
始祖の巨人の能力でこの大量のこの大量の超大型巨人を操って進軍し、地上のあらゆる物を踏み潰すことを「地ならし」と言っている。


カルラを捕食した巨人

アニメ1話(原作1巻)に登場した無知性巨人。
シガンシナ区のエレン達の家に現れ、カルラ(エレンの母)を捕食した。
後に再登場し、ハンネスも捕食する。
しかし、エレンがこの巨人にパンチした際に突如「座標」の力が目覚め、他の巨人に襲われ死亡する。
元はダイナ・フリッツと呼ばれる女性でグリシャの前妻であり、ジークの母親。
マーレ政府により巨人化の刑に処され、グリシャの目の前で巨人化した。
つまりエレンは皮肉にも義母を自らの手で葬ったことになる。
フリッツ王家の末裔の一人でもあり、エレンがこれを知ったことで「座標」の力の抜け道に気づくことになる。

ロッドの巨人

ヒストリアに注射器を破壊され、地面に溢れた巨人化薬をロッドが経口摂取して誕生した巨人。
エレンの巨人と違って知性はないが、第二の超大型巨人とも言うべき巨大さを誇り、体から高温の蒸気を常時発している。
巨大だったあまり洞窟を崩壊させ、調査兵団を死の危機に陥れ、地上に出た後はその能力を用いて駐屯兵団を苦しめた。
しかし巨大故にやはり鈍重であること、それを加味しても移動が極端に遅い上に高温であることから爆薬を仕込まれて爆破され、ヒストリアに弱点を切られて死亡した。
ヒストリアに注射し、エレンを捕食させる気だったようだが、こんなのに変身したらロッド自身も危険な上、エレンも捕食される前に死んでいた可能性が高い。

歴代九つの巨人

天と地の戦いにおいて始祖の巨人から生成された無数の巨人。
その正体は過去の9つの巨人であり、能力行使も可能。
自由意志はなく、恐らく始祖ユミルに操られるまま戦う傀儡。
ただし、道を通じて元の継承者を説得し、元の継承者が意識を取り戻した場合、ユミルのコントロールを離れる。

◆関連用語

生も死もない世界(仮称)

エレンがジークと接触した後にいた異空間。
砂地で、中央に枝分かれした光る木があり、その木が「道」と呼ばれる。
全てのユミルの民はこの「道」を通じて繋がっている。
巨人化の肉体はこの「道」を通じて送られる他、ユミルの民の肉体操作も「道」を通じて行われる。
時間の概念が異なり、何年もこの異空間にいても外部では一瞬に過ぎない他、「道」を通じて過去や未来の記憶を見たりもできる。
始祖ユミルは何千年もの間たった一人でこの異空間で砂地から巨人の肉体を作り続けてきた。

光るムカデ(仮称)

首を切られたエレンの頭から出現し、胴体を繋いだ光るムカデの様な生命体で、巨人化の起源。
始祖ユミルと接触し、彼女に巨人化能力を与えた存在。
有機生命体の起源などとも呼ばれるが、その正体は一切分からない。
自分自身の意思があるのか、最終決戦時にエレンと分離した際にはユミルの民を無知性の巨人に変えるガスを放出して身を守ろうとする動きが見られる。


追記・修正は巨人化能力者になってお願いします。

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最終更新:2025年09月21日 21:53

*1 ただし走る際のズシンズシンという重量感、ある程度の質量がなければ説明がつかない破壊力などから見て、10m級でも数百kgはあるはずである

*2 食った人間が溜まると嘔吐する

*3 個体差はある

*4 太陽光の反射によるもの

*5 人間で言えば脳から脊髄にかけての大きさ

*6 地面の下にも張り巡らされているが、偶然にもそれを発見した鉱夫は友人に話した直後に姿を消してしまったらしい。

*7 「長距離索敵陣形」はこれをより素早く行うための陣形で、導入以降、生存率が大幅向上したらしい。

*8 例外は、こうした事実を知らないまま「壁」の中で過ごしてきた人類程度。

*9 実際エレンは咄嗟に掴んだ脊髄液入りの小瓶を経口摂取したことで硬質化能力を得た

*10 再登場時に能力者の人物設定が変更されたため

*11 もっともこれはエレンが「俺が進むのも、アルミン達が抵抗するのも自由」という意向の下、「始祖」の影響力を全ユミルの民に強く発動させる事が無かったが故に成し得ることではあるのだが。