登録日:2025/09/21 Sun 09:32:07
更新日:2025/09/21 Sun 10:46:23NEW!
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この美しい海は、私のような美しい生き物のものであるべきた。
概要
初登場は昭和シリーズ第7作『
ガメラ対深海怪獣ジグラ』。次回作にして昭和最終作の『
宇宙怪獣ガメラ』に新しい怪獣は登場しなかったため、
昭和シリーズの最後を飾った怪獣である。
地球から480光年先にあるジグラ星からやってきた魚介類型知的生命体であり、外見は銀色かつ刺々しいお魚さん。デザインのベースはミツクリザメで、名前はクジラの捩り。最初はエイを元にデザインされていたのだが、作劇上の都合でボツになったという。
科学文明の発達によってジグラ星の海は汚染され、ジグラは故郷を捨てて新天地へと旅立った。ジグラ星自体は健在であり、他のジグラ星人がどうなったのかは不明。
ようやく約七割が海という当たり物件こと地球を見つけたのだが、地球人が自分たちと同じく環境を汚染していることを知り、「これ以上美しい海を汚染させないよう、地球を植民地化する」ことを決意する。
額ではなく口の上に第3の目があり、そこから
- 地震を誘発するレッド光線
- 物質を空間転移させるグリーン光線
- 細胞活動を一瞬でとめてしまうオレンヂ光線
を照射する。
また、背びれはそのまま刃物としても使え、ガメラの腹部に切れ目を入れる程度には鋭い。あんま効いてなかったけど。
だがこの背びれ、終盤で思わぬかたちで仇となることに…。
ジグラ星においては生態系の頂点に立つ種族であり、水中ではなく陸上の生き物を好んで食べる。
解剖図によると胃袋が3つあって、食べた物によってどの胃が機能するか変わる。ちなみに第1胃が「人間用」、第2胃が「猿、ゴリラ用」、第3胃が「象、牛用」とされているのでジグラ星にもそういった生物が存在するらしい。
水棲生物のため、当然陸上は苦手。一応尾ひれを脚代わりにして直立することはできるが、歩くことはできず向きを変えるのが精一杯である。
また、深海怪獣の別称の通り深海での生活を好むため、強い光には怯む。
総合的には「怪獣としてはかなりピーキーな性能」。光線は当たれば強いが、陸上ではほぼ無力。おまけに昭和シリーズの怪獣で唯一ガメラの火炎放射で普通に燃えるという防御力の低さなので、陸上に引っ張りあげることさえできれば人類の兵器でも倒すことは可能だと思われる。
性格は高慢なナルシスト。自分で自分のことを「美しい」と言ったり、宇宙船に自分の頭頂部を模した装飾があったり、
誰にも気づいてもらえなかったが宇宙船内部の巨大なモニターの上にでかでかと鎮座していたりしている。
そのわりには声がめちゃくちゃ野太い。あと、ガメラシリーズで最も美しいと名高いイリスと出会ったらどんな反応をするのやら。
このナルシストぶりが劇中に登場した個体に限るのか、ジグラ星人全員がそうなのかは不明。
また、
変なところで律儀かつ真面目、そしてまわりくどて間抜けな一面がある。
活躍
というわけでこのジグラ、侵略者としてやる気は十分なのだが、最序盤と終盤以外全部計画通りだった
バイラスに比べると
しくじったり、空回りで終わったり、思わぬ事態に振り回されたりすることが多い。
以下、いろんな意味でちょっと可哀想に思えてくるジグラの軌跡。
手始めに月面基地を襲撃し、研究員のちか子を拉致して洗脳。メッセンジャーのX1号とした。
その後、地球へ降り立ち正体を隠しながら地震を起こして地球人への攻撃を開始したが、相手が地震大国日本だったため「最近なんか多いな~」みたいな感じで流されてしまった。
宇宙船で鴨川シーワールドの近海に移動し、その光景を目撃して様子を見に来た海洋学者の洋介と
なんかバルゴンに食べられてたようなトム、洋介の息子の健一と、トムの娘のヘレンをボートごと宇宙船に拉致。ちか子を通して地球を侵略しに来たこと、ジグラ星の科学技術を示すために東京にマグニチュード13の地震を起こすことを伝え、そして洋介とトムに人類への降伏を促すことを要求する。人類に食料としての価値を見出だしていたジグラは、できるだけ人類を殺したくなかったのだ。
そして地震は実行に移されたのだが、洋介とトムはジグラに立ち向かうべきだと声高に宣言。人類との全面対決が決まってしまう。
洋介とトムはちか子が催眠術で黙らせたものの、健一とヘレンが逃げながら船内の装置をいじった結果、偶然にもちか子が機能停止。更に健一が状況をよく観察していたため、どの装置をいじれば脱出できるかも見抜かれてしまった。
なお、
この間ジグラは上から見てるだけだった。おいおい…。
こうして宇宙船から脱出した健一たち。もちろんジグラは宇宙船で追いかけようとするのだが、ガメラが助けに来たため失敗。ちか子を起こして宇宙船のことを知りすぎた健一とヘレンの抹殺を命じたのだが、ちか子がガメラシリーズでも類を見ないレベルのドジっ子だったため、ただの視聴者サービス要員で終わった。
その一方で、ジグラは戦闘機と宇宙船のドッグファイトで圧勝を決める。
だがガメラ相手ではそうもいかず、宇宙船を破壊された上に地球とジグラ星で海の水圧が違った影響で巨大化。それでもガメラに応戦しようとするが、完全に困惑を拭うことはできず、隙をつかれて陸上へと引っ張りあげられてしまう。
しかし、運良くオレンヂ光線がガメラにクリーンヒット。ガメラは頭から水没し足だけ水面から飛び出すスケキヨ状態になってしまった。
九死に一生を得たジグラは海中へ戻り、地球人に降伏を迫るのだった。状況的に追い詰められてるのは自分の方なのに。
その後、洋介たち4人が潜水艇バチスカーフでガメラの様子を見に来たのでこれを襲撃。助けてほしければ降伏しろと再度地球人へ迫る。
これを受けて、ジグラ対策本部の隊長は彼らの命には代えられないと、ジグラの要求を飲むことを決断。するとジグラは約束通り4人を助けようとしたのだが、洋介が最後の抵抗でバチスカーフのライトを全開にしたためやむを得ずオレンヂ光線で黙らせた。
地球人が降伏したことに安心したのか、そのまま眠りにつくジグラ。だがこの時、ジグラどころか誰もが予想しなかった事態が起きる。
なんと水面から飛び出していたガメラの足に、雷が直撃したのである。これによって目を覚ましたガメラはバチスカーフを回収するべくジグラの元へと向かう。
ガメラが投げた岩が直撃したにも拘わらず、一度は目を覚ますも「何だ? …ままええわ」みたいな感じで二度寝を開始するジグラ。投石したガメラもちょっと驚いてる。
こうしてバチスカーフは回収され、中の4人はオレンヂ光線のおかげで窒息死を免れた。
そして迎えたガメラとの二度目の対決。背びれでガメラの甲羅に切り傷を刻むも、ジグラはやっぱり陸上へと引っ張りあげられることになる。しかも今回は空高く持ち上げられたため空圧で第三眼が破損してしまった。
それでも諦めずガメラに立ち向かおうとするジグラだったが、ガメラが投げた岩が顔の先端に突き刺さってバランスを崩してダウン。
万策尽きたジグラを前にして、ガメラは何故か背びれを叩いてガメラマーチを演奏し、更に踊り出す。えぇ…。
そして放たれた火炎放射によって全身を丸焼きにされ、ジグラは息絶えた。
ジグラ星と地球で地上と水中の生き物の立場が違うことを知りながら、地上に住む人間に「自分の食料」としてでしか歩み寄ろうとしなかったジグラが、あれほど海を求めたのに陸上で焼け死ぬという皮肉な最期を迎えたのは当然の結果と言えるだろう。
ただ、ジグラの「地球人に自分たちと同じ轍を踏まさせない。これ以上海を汚したくない」という気持ちだけは洋介とトムから高く評価され、物語は「ジグラ(とガメラ)はそれを我々に教えるために来た」と健一とヘレンに諭すかたちで締められている。
多少なりとも報われた…のかもしれない。
体長 |
130m |
体重 |
2000t(3000t) |
水中航行速度 |
200ノット以上 |
本作では宇宙人ではなく、10万年前に栄えた超古代文明が作り出した怪獣の一体。
ギャオスとは分岐・派生種の関係にある。
なんとボツになった「エイがモチーフのデザイン」というアイデアが再利用されており、外見は顔の先端と頭部が尖っていること以外完全に別物化した。
デザイナーによれば「ストーリーや世界観に合わせるために舞台や戦い方を明確に変えたかったから」こうなったらしい。
姿が変わったことにより、能力も原典から大幅に変化。
超振動とプラズマエネルギーによって自身を水泡で包み込むことでスーパーキャビテーションを発生させ、水中を200ノットを余裕で超える超スピードで泳ぐことが可能。
更にエコーロケーションによる探知機能を持つ。
武器は胸部から放つ液状弾と、伸縮可能な長い尻尾による刺突と締め付け。
また、陸上においてはひれを前足のように使って這って移動することが可能であり、原典よりかはマシになった。
劇中では、ギャオスの襲撃を受けたニューギニアの生存者を運ぶユースタス財団の大型客船を襲撃するかたちで初登場。大型客船を轟沈させ人間を捕食した後、ボコたちが乗るセルケト号を狙う。
ちなみにこの時、しれっと約5000㎞を短時間で移動したことになる。
液状弾を使って執拗に攻撃をしかけるが、駆けつけたガメラの妨害にあい熾烈な水中戦を繰り広げる。
ガメラの捨て身の電磁衝撃波を食らい、一時的に方向感覚を失いつつも、何とかガメラを退けたジグラは、セルケト号に備え付けられていた潜水艦に乗り換えたボコたちを追うのであった。
が、ガメラシリーズきっての頭脳派小学生ジュンイチを敵に回したのが運の尽き。これまでのジグラの行動からある程度の生態を理解した彼女は、ジグラを対馬の浅茅湾の送信局までおびき寄せ、ガメラの電磁衝撃波を模倣した電波によって攻撃する作戦にうって出る。
陸上に上がっていたこともあり、まさかの反撃に大きな痛手を食らうジグラ。しかも復活したガメラがやってきてしまう。
ジグラは水中からの尻尾の刺突と、空中に跳び跳ねてからの液状弾による連続攻撃をしかけるも、ガメラは両方を受けきった上で火炎弾を発射。直撃を食らったジグラは大炎上を起こして絶命し、死骸は
ギロンのエサになった。
余談
実は『対ジグラ』でのガメラは、健一が本格的に助けを求めるまで一切ジグラに手を出していない。それどころか、ジグラに攻撃をしかけるも返り討ちにあい困っている人類をよそに、東京で地震によって発生した火を食べていた。
『
大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』以降、積極的に敵怪獣に攻撃をしかけていたガメラとしては異例の姿である。
『対ジグラ』が制作された1971年、同じく環境問題をテーマに盛り込んだ怪獣映画『
ゴジラ対ヘドラ』が公開されているため、ジグラと
ヘドラを比較する向きもある。
かたや東京でマグニチュード13の地震、かたや約1000万人を有毒ガスと硫酸ミストで殺害・発病と、それぞれのシリーズでトップクラスの被害を出した怪獣同士だが、インパクトではヘドラが圧勝したことは言うまでもない。
だって地震で東京が壊滅する直接的なシーンが無いし。
『Rebirth』での怪獣は増えすぎた人類を「浄化」、要するに間引くために作られたのだが、水棲怪獣のジグラでどうやって人類を「浄化」するのかは不明。
ただ、上記の通り『Rebirth』でのジグラはギャオスの派生種のため、ギャオスのように特殊な変異をするのかもしれない。
『
小さき勇者たち~ガメラ~』のノベライズ版には「Gジグラ」が登場…したのだが、なんと
ミズウオがギャオスの肉片を食べたことで怪獣化したという設定。ミツクリザメじゃないんだ!?
Wiki籠りに告ぐ。追記・修正せよ、追記・修正せよ。
- 宇宙怪獣ガメラではサメの背びれのような形状の宇宙船の襲撃シーンがジグラの背びれによる攻撃という形に編集。実際、鋭いのでああいう攻撃も可能。 -- 名無しさん (2025-09-21 09:54:16)
- 昭和で唯一の火炎放射が決定打になった怪獣。というか他の怪獣は火が苦手なギャオスがちょっと嫌がってたくらいなんで、最後の作品で火炎放射の面目躍如と言えるかも。ガメラの火炎放射が弱いというか、昭和作品はゴジラも放射火炎はほぼ牽制技みたいなもので肉弾戦メインだったからそういう時代って話なのかもしれないけど。平成以降はガメラもゴジラも飛び道具がメインウェポンになってるし -- 名無しさん (2025-09-21 10:46:23)
最終更新:2025年09月21日 10:46