アットウィキロゴ

夏の夜の夢(戯曲)

登録日:2012/03/19 Mon 23:22:39
更新日:2026/04/30 Thu 14:24:03
所要時間:約 6 分で読めます





A Midsummer Night's Dream(夏の夜の夢)

●概要

ウィリアム・シェイクスピアによって執筆された喜劇形式の戯曲。
全5幕からなり、アセンズ(アテネ)の森を主な舞台とする。
互いに恋い慕う2組の男女や森の妖精を中心に、滑稽な、時には叙情豊かな人間模様が軽妙な筆致で描かれている。
物語の下地として、ケルトの妖精伝説やギリシャ神話が扱われている。
またシェイクスピアが最晩年に他の作家と共に執筆したとされる戯曲『二人の貴公子』*1でも「テセウスとヒポリタの結婚」話題が入っており、『二人の貴公子』の方はジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』「騎士の話」が原作のため、そっちの影響も指摘されている。

いちいち書くのも面倒になるくらい日本でも上演されており、1991年には『ちびまる子ちゃん』のTARAKOがハック役を演じたバージョンもあった。

《タイトルについて》

原語の“midsummer”の意味は「真夏」ないしは「夏至」なのだが、本作の作中時期はどちらでもない4月末である
このため、summerはともかくなんでmidってつけたんだろうな?と昔から不思議がられていたり。
まあ、とにかく『真夏じゃないんだから邦題は「夏の夜の夢」が適切なのではないのか』と言われたり、初夏の夜の夢のほうが近いけど
『いやいや真夏の燃えるような暑さのごとき騒ぎを描いたから“midsummer”なのだろう「真夏の夜の夢」の方が実態に近いんじゃね』などと、喧々諤々議論されている*2
ひとまずここでは「夏の夜の夢」で統一する。


●あらすじ

アセンズ(アテネ)の大公シーシアスは、夏のただ中、新月の宵に執り行われるアマゾン族の女王ヒポリタとの婚儀を間近に控えていた。
その折り、老人イジアスによって、また別の婚儀に関する相談と申し出を受けることになる……

●第一幕 第一場

舞台はシーシアスの宮殿。

ハーミアは父イジアスより貴族デメトリアスとの婚約を取り決められていたが、もう一人の貴族ライサンダーへの深い懸想から、この婚約に異を唱える。
しかし、父のイジアスがこれを承諾するわけもなく、「デメトリアスを選ぶか、石女(うまずめ)の生涯を選ぶか、さもなければ法に則り死刑にしてやってください」と、シーシアスに申し出る。
一方ハーミアはライサンダーと逢うために家を抜け出しアセンズの森へ……

●第一幕 第二場

舞台はクィンス(大工)の家へと転換する。

大工のクィンス、機屋のボトム、オルガン修繕屋のフルート、鋳掛屋のスナウト、仕立屋のスターヴリング、指物師のスナッグの計6人は、来たる大公の婚儀に向け、文字通り一芝居打とうと計画を練り、練習のためアセンズの森へ出向くのであった……

●第二幕 第一場

舞台はアセンズの森へと転換する。

妖精の王オーベロンは、どうやら妖精の女王タイタニアに仕える、可愛らしいインド人の小姓を手に入れたいらしい……
しかし、女王はこの小姓を大層気に入っていて、頑として手放そうとはしない……
こういった訳で、王と女王の間にはいさかいが絶えず、森中が怯える事態になってしまったのだった。
しかし、それでも諦め切れない王は小姓を手に入れるための一計を案じ、悪戯好きの妖精パックに任を託すのだが……?

と、ここまでで主要な登場人物が出尽くしましたので、続きは実際に『夏の夜の夢』をお読みになるか演劇を鑑賞されるかして、お確かめ下さい。


●主な登場人物

  • シーシアス
「いくらよいものでも、芝居は芝居」

アセンズの大公。名前の元ネタはギリシア神話のアテネ王「テセウス」から。
出番が少ない為、目立たない。
事態がひと段落した後、結婚式用に予定されていた数々の催しの中から、フィロストレイトの反対を押し切って職人仲間による素人芝居を選び上演させた。

  • ヒポリタ
「こんな馬鹿馬鹿しい芝居ははじめて」

アマゾン族の女王。名前の元ネタはギリシア神話でテセウスと結ばれた「ヒッポリュテ」。
シーシアスの婚約者。
出番がry

  • イジアス
「わしのものは、わしの気に入った男にやる」

ハーミアの父。
頑固爺で死刑厨。
そもそもこの爺さんが娘の意見に折れていれば、場面が森に移ることもなかった。

  • フィロストレイト
「ここにおります」

従者。ほぼモブ

  • ライサンダー
「どいてくれ、このエチオピアめ!」

ハーミアとは相思相愛の仲だが、オーベロンとパックの凡ミスにより、手の平を返した様にヘレナを口説くようになる。

  • デメトリアス
「何もかも小さく霞んでゆくようだ」

ヘレナから度重なるアプローチを受けるが、本人はハーミアのことが好き。
ヘレナのことを寧ろ疎んじてすらいたが、オーベロンの画策により最終的には相思相愛?になる。

  • ハーミア
「魔術師よ、あなたは、花を蝕む毒虫、恋盗人!」

イジアスの娘。
小柄で黒髪の美女でライサンダーとは相思相愛の仲。
興奮すると結構口汚い。


  • ヘレナ
「このいかさま師、操り人形!」

デメトリアスを慕っているが、邪険にされる。
…が、それを悦ぶあたりMっ気があるかもしれない。
ハーミアよりは冷静。
長身で金髪の美女。
なお、ハーミアとヘレナは幼なじみ

  • クィンス
「自分はお月様の役をやっつける……いや、その、やってのけるってな」

大工。
職人仲間のリーダー的存在。
劇中劇『若きピラマスと恋人シスビーとの長たらしく短かき出会い、涙ぐましくもおかしき一場』では、シスビーの親父役を請け負う。
……筈なのだが実際はナレーションしかしてない。

ちなみに職人仲間パートは、当時の英国の職人たちの様子をモチーフにしているとされる。

  • ボトム
「思いきって公然猥褻に稽古が出来るというもんだ」

機屋。
少々でしゃばりだが、芸達者で男前、おまけに美声……らしい。
劇ではピラマス役を請け負う。
パックによって驢馬頭にされたり、オーベロンの策略の飛び火を受けてタイタニアに慕われるなど、不幸体質。
ただし本人はとても楽天的。

  • フルート
「吾がいとしの君!そなたはわらわの恋人、らしい」

オルガン修繕屋。*3
やや知的。
劇ではヒロインのシスビー役を請け負う*4

 ・スナウト
「たまたま、それがし、スナウトなるもの、石垣の役をば演じます」
鋳掛屋。
劇ではピラマスの親父役……ではなく石垣役を請け負う。

  • スターヴリング
「この提灯は角形の三日月をあらわしてまして―」
仕立屋。
劇ではシスビーのお袋役を請け負うと思わせて、例によって月の役を請け負う。
台詞が少ない。

  • スナッグ
「うおう!」

指物師。
劇ではライオン役を請け負う。
劇中劇の締めを担当。

  • オーベロン
「仕合わせを祈るぞ、森の精」

妖精の王。
インド人小姓をめぐって女王と喧嘩中。
大体こいつのせい
でも恋のキューピッド的なこともしてる。
人間には姿が見えない。

  • タイタニア(ティターニア)
「あれは天使の声かしら」

妖精の女王。
インド人の小姓を大変可愛がっている。*5
薬によって、一時的に驢馬頭のボトムを恋い慕うように……
人間には姿がry
Sa・Ga2最強ランクの妖精のネタ元はこれ。あとモビルスーツとか。


  • 豆の花/蜘蛛の巣/蛾の精/辛しの種
「ようこそ!」

妖精。モブ。

  • パック
「今宵は、これにてお寝みなさいまし。ごひいきのおしるしに、お手を拝借。いずれ、パックが舞台でお礼をいたします」

本名:ロビン・グッドフェロー。
悪戯好きな妖精。
ボトムの頭を驢馬に変えたり、椅子に化けて尻餅をつかせたり、薬酒の林檎に化けて老婆に一泡ふかせたりした。
所謂トリックスターで物語を引っ掻き回し、エピローグにおいて物語を締めくくる。
人間にはry
因みに、漫画ベルセルクのパックは彼がモデル。








これは夢なのか現実なのか…








「この追記・修正を選ぶか、追記・修正を選ぶか、それこそ、追記・修正が、まさにこの場合、ものを言いますので」

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2026年04月30日 14:24

*1 21世紀に日本で上演されたミュージカル『ナイツ・テイル』の原作。

*2 日本の音楽界でも野口五郎や松任谷由実がそれぞれに『真夏の夜の夢』なる曲を発表している。

*3 この時代のオルガンはふいごに溜めた空気を放出して音を出すため、楽器の分類としては「気鳴楽器」に当たる。フルートは正確にはオルガンのふいご部分の修理屋なのでflute(吹く)というのはれっきとした職業にかけた名前である。

*4 一応当時の芝居は本作含め大抵男性のみの出演で、女性役は女装した少年が演じていた事が殆どだったとされる。

*5 ちなみにこの少年は取り替え子