妖精

登録日:2024/08/08 Thu 15:52:00
更新日:2025/06/07 Sat 01:30:46
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妖精とは、特に欧米における超自然的な存在の総称。
英語ではFairy(フェアリー)と呼ぶがその語源は古いフランス語でfaerieという言葉だと言われている。
似ている単語には、「公平な~」を意味する“fairly”や、フェアリー社でも有名(?)な人名の“Fairey”などもあるため、混同に注意。
いわゆる典型的(ティピカル)な妖精のイメージについては妖精(文学記号)を参照。



【概要】

妖怪と同様に、世界各国に妖精、或いはそれに準じた存在はいるが、
当項目では妖精の本場とも言える西洋……即ち欧米諸国における妖精を優先して解説する。

元々妖精とは、キリスト教が根付く前のアイルランドやイギリスを中心とした古のヨーロッパに伝わる伝承に登場する存在であり、
神とまではいかずとも、それに近い人智を超えた存在で当時のヨーロッパでは不可解な現象は妖精の仕業として扱われ、
畏れられつつも時には人間の手助けをするとも言われ、親しまれる存在であったという。

本来精霊とはほとんど同一存在であるが、精霊が正に神の一歩前ともいえる存在であるなら、
妖精はどこかメルヘンかつファンシーなイメージとなる傾向にあるか。

その為、天使と同じく可愛い外見の動物や子供の比喩として「妖精のよう」と表現することがある。



このように、『妖精』といえば『ピーターパン』に登場するティンカーベルのように小さくて可愛らしい姿か、
今日では様々なファンタジー系作品に登場し、一つの種族として確立される事があるエルフのように人に近い姿で容姿端麗なイメージが強いだろう。

実際にイギリスにはピクシーという小さな妖精がおり、今日における妖精のイメージ確立のきっかけになったと思われる。

しかしながら実際のところ、欧米における妖精は日本でいう妖怪の概念に近く、
  • 猫の姿をしたケット・シー
  • 小柄でイタズラ好きな今日では絶賛蹂躙役兼竿役として引っ張りだこなゴブリン
は序の口で、
  • 人を襲いその血で帽子を赤く染めるレッドキャップ
  • 岩のようにゴツゴツとした肌と巨体を持つトロール
  • 普段は小柄だが縄張りに人が近づくと巨大化して襲い掛かるスプリガン
  • 首無し騎士のビジュアルで知られるデュラハン
  • 生皮を剥いだような見た目のナックラヴィー
などのように凶暴な性格の妖精がいたり、もはやアンデッドじみたおぞましい姿の妖精もいたりと、その姿はかなり多種多様である。

つまり、西洋における妖精は我が国における妖怪とほぼ同じ存在と言っても過言ではなく、
故に、西洋における「妖精」と「魔物」……即ちモンスターとの境界も実は曖昧といってもいい。

なので日本の妖怪について描かれた書籍等が海外に輸出された際には妖精、つまりフェアリーとして翻訳される事も珍しくないのだ。
???「天狗とは、日本に古来から存在するフェアリーの一種であり、赤く長い鼻を持ち、空を飛ぶという」


【妖精史 起源から現在の妖精の確立まで】

現在でこそ、欧米諸国はキリスト教を信仰する国が多数派であるが古い時代にはその限りではなかった。
寧ろ、かつての日本のようにアニミズムやシャーマニズムといった民間伝承を信仰する国の方が多数派であり、
今日まで語られる多種多様な妖精達もその時代に生まれたと言われている。

しかし上で述べたようなティンカーベルのようなチョウに似た羽の生えた小さな妖精のイメージが確立されたのは、後述する通りに実は17世紀頃と、人類史で見れば比較的最近の事。
それ以前の妖精は目には見えない超自然的な存在で、その姿も先述したような小さな人の姿とは限らないものであったという。

その妖精伝承の発祥の地として知られるのがイギリスやアイルランドといったケルト文化の栄えた国であり、事実上の本場とも言えるのだ。

その正体に関しても諸説あるのだが、実のところ妖精の何割かは現在の人々よりも前にヨーロッパの地に住んでいた先住民であると推定できるものがおり、
この点も古代日本で時の朝廷に反抗した「まつろわぬ民」が正体と言われるものもいる妖怪と似通った部分がある。

そんな中、現代における妖精の「小さくて可愛らしい」というイメージを確立させたのが、17世紀以降にイギリスで描かれた妖精画という絵画である。
そこで描かれた数々の妖精の絵画が後世における妖精達のイメージに強い影響を与えているとされ、今日におけるメルヘンチックな存在としての妖精を確立させたとも言われているのだ。

更に言えば16世紀のイギリスの作家ウィリアム・シェイクスピアの「夏の夜の夢」や「テンペスト」といった妖精の登場する作品も、
後世における妖精のイメージを確立させたものとして無視できない存在だと思われる。

尚、日本では『魔王』と翻訳されているフランツ・シューベルトがゲーテの同名詩を元に作曲した楽曲は、原義的には『妖精王』と訳されるのが正しい。



★主な妖精

「シー」という言葉はアイルランド語において「〇〇の妖精」という接尾詞的な意味がある。
このため、北欧の妖精には「〇〇シー」という名前のものが非常に多い。

Pixie(ピクシー)

イングランドに伝わる伝承に登場する妖精。
小さな子供のような姿をした文字通りのザ・妖精とも言える存在。
今日において妖精と言われて多くの人が連想するであろう「メルヘンチックで可愛らしい妖精」の代表ともいえる。

イタズラ好きな性格であり、家に住み着いては家具を勝手に動かして驚かせるのはまだ序の口で、
時にはチェンジリングといって人間の子供と妖精の子供をすり替えたり、人を狂わせて一晩中踊らせたりといったシャレにならないイタズラを働くことも。
しかしリンゴなどを与えるとイタズラをやめて手伝いをしてくれることもあるらしい。
その正体は洗礼を受けずに幼くして亡くなってしまった子供だという。

日本で有名なピクシーといえば、まず間違いなくコイツコイツ、あとこいつだろう。


Elf(エルフ)

スウェーデンやノルウェー等の北欧地域に伝わる妖精。
元々はアールヴと呼ばれ、人間とほとんど変わりない姿と体格だが遥かに強大であったという。
今日では耳が尖っている美男美女として描かれがちだが、実は原典においてはそんな特徴はなかったりする。
何なら今の和風ファンタジーにおけるドワーフと似た体躯の男性もいるなんて話もあったりする。

耳の尖ったエルフが主流となったのは、アメリカ生まれのTRPGである『D&D』や、和風ファンタジーの大家であるグループSNEの『ソードワールド』以降と言われる。
特に当時SNE所属だった水野良の『ロードス島戦記』に出てくるハイエルフのディードリットはエルフのテンプレとして今なお名高い。

人間に近い体格で、眉目麗しい、亜人種としての妖精」を代表する種族と言ってもいい。

詳しくは個別項目参照。


Goblin(ゴブリン)

上述したピクシーが「小さく可愛らしい妖精」の、エルフが「亜人種に近い美しい妖精」のそれぞれ代表格だとすれば、
「邪悪で怖い妖精」の代表格として名前が上がるのがこのゴブリンであろう。

人間より遥かに小柄な体格で、鋭いカギ爪と大きな鼻を持った醜い姿をしているとされる。
性質も邪悪で狡猾とされ、人間、特に子供を好んで襲うとされる。

昨今のファンタジー作品では、コボルトと並ぶ最弱の妖魔として登場することがほとんど。
ゴブリンスレイヤー』等、ゴブリンを一般人、特に女性や子供にとって身近な脅威として描く作品であっても、
上位種であるならまだしも、通常のゴブリンは大抵「最弱クラスの魔物」と認識(設定)されている。
一方のコボルトはワンコ扱いで人間と友好的な作品もあるが、ゴブリンはほぼ敵扱いが定着している。

詳しくは個別項目参照。


Banshee(バンシー)

アイルランド・スコットランドに伝わる妖精。
人が死ぬ直前に姿を現しては、この世を去る人を想って泣くという。
その泣き方に関しては伝承によって異なり、すすり泣くような静かなものとされたり、逆に飛ぶ鳥を落とすほどの凄まじいものとされたりと、バラつきがある。
出産して間もなく亡くなったり、処女のまま亡くなった女性がその正体と言われ、
スコットランドでは老婆、アイルランドでは少女と異なる姿をしているが、どちらの伝承においても赤い目をしている点で共通している。

名前は古代ケルト語で女の妖精を意味しており、古代の泣き女と呼ばれる風習を妖精化したものではないかとも言われている。

詳しくは個別項目参照。


Dullahan(デュラハン)

こちらもアイルランド・スコットランドに伝わる妖精。
西洋鎧を身につけ、自らの首を小脇に抱え、その状態で首なしの馬に乗っている……という姿で有名。
バンシー同様に人の死に前後して出現する妖精であるが、こちらはバンシーと違い、自ら命を刈り取りに来るという恐ろしい存在。
ここまでの説明が物騒極まりないが、これでもちゃんと「妖精」である。
意外なところでは「川を渡ることが出来ない」という弱点があり、デュラハンに追われた場合、
川を横切って渡るか川に掛かった橋を渡りきることができれば撒くことができ、死からも逃れられるという。

こちらも項目があるので詳しくは個別項目参照。


Troll(トロール)

エルフと同じくスウェーデンやノルウェー等主に北欧地域に伝わる妖精。トロルと呼ぶことも。
妖精ではあるが非常に巨大であり、岩のようにゴツゴツとした肌をしている。
一説には北欧神話に登場する霜の巨人ことヨトゥンの一種、或いは末裔とも言われている。

最近のゲームなどでは凶暴な性質な事が多かったりするが、元は巨躯の割に大人しいと性格と伝えられており、
スウェーデン系フィンランド人による『ムーミン』シリーズの主役・ムーミンの識別名称が「ムーミントロール」なのがその典型だろうか。
ちなみにムーミンの作者は若かりし日、「黒いムーミントロール」なるムーミンっぽい輪郭だが禍々しい妖精の絵を描いていたが、
小説として「ムーミントロール」を綴っていく中で、少しずつ現在知られる愛嬌のある妖精へと変容していった。
また、「力は強いが愚鈍」とされることも多く、敵として登場した際には頭の悪さを利用されて撃退されることもしばしば。

一番有名なのは絵本「三びきのやぎのがらがらどん」だろう。
橋で獲物を待ち構えていたがよりにもよって暴力の化身「がらがらどん」に遭遇したことが災いし、
目玉を串刺しにされ、肉も骨もバラバラに踏み砕かれ、谷川へ突き落される哀れな最期を迎えた。オーバーキルにも程がある


Spriggan(スプリガン)

イングランドのコーンウォール地方に伝わる妖精。
普段はドワーフに似た小柄な姿をしているが、縄張り意識が強く、人間が自分の住む領域に侵入するとそれを排除する為に襲い掛かる。
その際には巨大化するのだが後述の伝承からこちらが本来の姿なのかもしれない。
また、妖精の中でも好戦的なようで他の妖精達を守る際に戦うとも言われている。

その正体はかつてイギリスがアルビオンと呼ばれてた古の時代にいたとされる巨人族の成れの果て、或いはその幽霊であるとも。


Cait Sith(ケット・シー)

二足歩行の猫の姿をした妖精。名の意味もまんま「(ケット)妖精(シー)」。「長靴をはいた猫」の原型とも言われる。
彼らはどこかにある国の貴族や王族らしく、人の言葉を話しマナーも高いとされる。
アニヲタ的には占い用猫型ロボのイメージが強いだろうか。


Cu Sith(クー・シー)

上で述べたケット・シーがネコの妖精ならばイヌの妖精は?と疑問に思う人もいるかもしれない。
答えは存在する。それがこのクー・シーである。名前は文字通り「犬の妖精」を意味している。
子牛ほどもある大きな犬の姿をした妖精で妖精たちの世界を守る番犬的な存在であるとされ、侵入した人間を追い払うという。


Leannan-Sidhe(リャナンシー)

イギリスやアイルランドに住む淫魔的な妖精。リャンナン・シー、リアノーン・シーとも。
ブリテン島とアイルランド島の間にあるマン島という多くの妖精伝承で知られる島では、黄色い絹のローブを纏った美女の姿で男の前に現れ性的に誘惑してくるとされる。
誘惑を拒否するとその後奴隷のようにその男性に尽くしてくれるが、応じると情熱的な恋人となり、
いずれ恋人となった男性はリャナンシーに精気を吸い付くされ、枯死してしまうという。

またアイルランド島のリャナンシーは詩人や芸術家、戦士に取り憑くと言われ、
取り憑かれた者は優れた才を発揮するようになるが、やはり代価として精気や血液を吸われ早死してしまう。

ちなみにアイルランド島とマン島のリャナンシーは同種の存在ではあるが、名前の綴りは微妙に違っている。
Leannan Sidhe(アイルランド)
Lhiannan Shee(マン島)

詳しくは個別項目参照。


Silky(シルキー)

イングランドの伝承で語られる、旧家に現れる女性の妖精。
灰色か白のシルクのドレスを着ており、動いたときにそれが擦れてさわさわと音を立てることから、その名前で呼ばれることになった。
普段はお手伝いさんとして家の主人に給仕するが、ひとたび機嫌を損ねてしまうといたずらの限りを尽くして追い出してしまう。
また家を守護することもあり、害を及ぼそうと近づく人間は殺してしまうこともあるという妖精らしい危険な一面も持っている。
伝承や出演作品によっては幽霊扱いされたり、ただのメイドとして主人公に奉仕する。一方で、主人公を無断で人体改造したり。
伝説の産廃しるきぃ☆も名前の由来はここから。


Kelpie(ケルピー)

スコットランドの伝承に伝わる妖精……というよりモンスターの一種。
馬の形をしており人間や動物を水に引き摺り込み溺れさせるといわれている。
もし従わせる事が出来れば最高の駿馬として忠実に働いてくれる。
同地域には同じく馬の姿をしたアハ・イシュケという妖精もいるが性格は異なる。

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』では、劇中に登場するファウンデーション王国にて、
同国の近辺に出没する謎の存在がケルピーなのではないかと現地民やパイロットの間で噂されていたが、その正体は...


Each Uisge(アハ・イシュケ)

こちらもスコットランドに伝わる妖精の一種。
上記のケルピーと同じく馬の姿をした妖精だが、ケルピーが淡水に棲むのに対し、こちらは海に棲んでいる違いがある。
その性格も非常に獰猛で背中に乗せた人や動物を溺れさせるだけでなく食い殺してしまうという。
しかし肝臓だけは嫌いらしく、食べ残したそれが海岸に流れ着く為、人間はそれで初めて犠牲者が出た事を知るのである。
また美男子に化けて乙女を誑かし、食い殺すとも言われている。


Nuckelavee(ナックラヴィー)

スコットランドの伝承に登場する妖精。
これまたケルピーのように馬のような姿だが、真っ赤な単眼と鯨のように大きく裂けた口を持ち、
背中からは異様に腕の長い人間の上半身が生え、オマケに全身の皮膚が存在しないという。
筋繊維剥きだしのケンタウロスもどきのような、妖精の中でも屈指のグロい姿をしているのが大きな特徴。ネクロモーフかコイツは。

海から現れては人を襲ったり、毒の煙を口から吐いて野菜を枯らせる等の悪事を働くが、弱点は淡水であり、これを掛けられるとたまらず退散するという。
また海藻を燃やした際に出る煙も嫌うが、こちらはナックラヴィーを怒らせてしまう方法でもあり、馬に呪いをかけられてしまうらしい。

……ここまで見てお気づきの方もいるかもしれないが、スコットランドにはやたら馬に関係する妖精が多い。


Baobhan-Sith(バーヴァン・シー)

こちらもスコットランドの妖精。
緑衣をまとった美女の姿をしており、夜に出歩く人間や森に迷った人間の前に現れては、
彼らに笑顔で話しかけ、「こっちにおいで」と自分達に付いてくるように促してくる。
だが、その誘いに乗れば最期。この妖精の正体は凶悪な吸血鬼で、彼女らに騙された人間は血液を一滴残らず吸いつくされて殺される事になる。

日本では『FGO』に登場した某人権ぶっ壊れメスガキアーチャーで一気に知名度を上げた。
が、例によって特殊な事情でその姿は伝承にあるバーヴァン・シーとは似ても似つかない姿である。
ただ、色々な意味でそのFGOのバーヴァン・シーが有名になってしまったため、画像検索するとこちらの方が多く表示されるように。


Leprechaun(レプラコーン)

アイルランドの伝承に登場する妖精。堕落した妖精と伝えられることも。
かなりのいたずら好きだが他の妖精の靴を修繕している伝承もあるという。
目に砂を撒く妖精と呼ばれ、彼らに砂をかけられると眠りに落ちると言われる。
英語読みだと「レプラカーン」。人によっては同名のオーラバトラーが真っ先に思いつくだろう。


Rusalka(ルサールカ)

ロシア及び東欧にその名を残す水の妖精。
月明かりの晩に水辺や森を歩く男性の前に現れ、全裸で現れ歌や艶めかしい踊りで魅了し、水の中に引き摺りこんで「快楽を伴う死」に導く。
彼女の外見は場所によりかなり違い、金髪ロン毛の全裸の美女から緑髪で青白い肌をした老婆や下半身が魚の姿まである。
ルサールカは不幸な死に方をした処女が変化して生まれる存在とされる。

なお男にとっては大変危険な妖精だが、妖精らしく基本的には無邪気で享楽的であり、川岸で雑談を楽しむJKのような生態もある。
また女性から洋服やスカートの一部を切り取って渡されるとたいへん喜ぶという一面もある。

5月末から6月中旬には「ルサーリィ週間」という時期があり、ルサールカが一番活発になる期間がある。
ルサールカの機嫌を損ねないように行動する週間という事だが、恐らく水難事故が多い時期だから気をつけろ的な意味合いがあったと思われる。


Baba Yaga(バーバ・ヤーガ)

スラブ民話に伝わる魔女だが妖精とする記述も。「バーバヤガー」や「ババヤガ」など横棒や中黒が有ったり無かったり色々表記揺れがある。
非常にやせ細った身体であるらしく森の中で鶏足付きの家に住んでいる。
細長い臼に乗って空を飛び子供を攫って食べることで知られるが、伝承によっては悪役だけでなく良い役でも登場する。
ロシア圏ではよくないことが起きた際悪態をついたりするときの台詞として出てくるらしく、
第二次大戦で不利な戦局を伝えられたソ連軍が「バーバ・ヤーガに呪われちまえ!」と返した記録が残っている。
「くそ!魔女のバアさんの呪いか」
アクション映画で伝説の殺し屋の異名として知られるようになった。


Jack o' Frost(ジャック・フロスト)

イングランドの伝承に出てくる妖精。雪だるまや老人の姿をした、霜の精。
妖精らしくいたずら好きで人間をからかって遊ぶとされるが、一度怒らせると豹変し対象を氷漬けにして惨殺するとも言われている。
日本ではメガテンのマスコットたるヒーホーなアイツで有名。


Gremlin(グレムリン)

世にも珍しい、軍用飛行機に憑くとされた妖精。
軍用飛行機にイタズラをし、誤作動を起こすよう仕向けるとされ、当時の飛行機乗りの中には魔除けとしてお酒をお供えする者もいたらしい。
日本において、エンジニアが「サーバーが故障しないように」と、サーバー室に神棚を作ってそこに御神酒をお供えしていることがあるが、アレと似たようなもんである。
名前の由来は、当時流行していたお酒「フレムリン」と「グリム童話」のかばん語から来ている。
同名の映画は人によってはトラウマ作品。


Jinn(ジン)

中東の伝承に伝わる妖精。
アラジン』のジーニーとかはこれに相当する。
もっとも、中東伝承においては「ジン」は妖精全般を指す概念のようなものでいわゆる超自然的な現象を指し、特定の固有種を指す名前ではないという。
ちなみにジンは男性型、ジーニー、あるいはジンヤーナ、ジンニーヤは女性型の妖精のことを指す。上記アラジンのジーニーは男性だが。
また、強大さを目安に階級が存在しているようで、彼らの上位種となる強大な種がかのイフリートである。


Duende(ドゥエンデ)

イベリア半島の妖精たちの総称で、中南米諸国やフィリピンでも様々な妖精の総称として用いられている。
その名前は「Dueño de casa(家の主)」が縮まったものだと言われ、見た目や性質はゴブリンやレプラコーンなどに近い感じ。
また、スペインの芸術文化、特にフラメンコ文化に深く関わる概念でもあり、「魂を揺さぶるほどの神がかった状態」「根源的で強い感情や神秘的な力」とされる。
詩人ガルシア・ロルカによると、「天使は優美さとひらめきを、ミューズは英知を象徴し、ドゥエンデは内面から発生するもの」だという。


Brownie(ブラウニー)

主にスコットランド地方で伝承されている妖精。茶色いぼろきれ衣装を纏っていることから「茶色いの(ブラウニー)」と呼ばれている。
民家に住み着き、家人のいない間や夜中にこっそり家事を済ませてくれるという。妖精の中でも人間に対してかなり好意的。
ただしお礼に綺麗な衣装を贈ったり、仕事ぶりに難癖をつけると、家から出て行ってしまうらしい。
お菓子のブラウニーとはまんま同じ綴りだが、こちらもチョコレートで茶色になっていることからこう呼ばれている。
ドラゴンクエストシリーズではDQⅤから登場。原典通り人間に好意的なのか、スライムと並んで仲間になりやすい。


【妖精と名の付くあれこれ】

  • フェアリーペンギン
オーストラリアに固有のペンギンの一種。
ペンギンの仲間でフェアリーの名に恥じぬ最小の体格だが、小柄な体格故なのかその性格は極めて凶暴。

  • フェアリージャパン
野球の「侍ジャパン」や女子サッカーの「なでしこジャパン」のように、日本代表チームには愛称が付いている事が多いが、
この「フェアリージャパン」は「女子新体操日本代表」の愛称。

  • フェアリーモスラ
インファント島の守護神獣・モスラの小型の眷属。
ゴジラVSスペースゴジラではモスラが作り出した立体映像のようだったが、
平成三部作ではモスラが死んだり過去にタイムスリップしても普通に活動しており、独立した生命体と思われる。
その名の通り人間から見れば妖精サイズ。小型の光線を出したり、同作の小美人であるエリアス姉妹を乗せて飛び回る。

  • フェアリーテイル
「妖精(Fairy)」のような不思議なものの「お話(tale)」。
つまり「おとぎ話」という意味の英熟語。

我らがガチムチ兄貴。
「だらしねぇという戒めの心」「歪みねぇという賛美の心」「仕方ないという許容の心」からなる「妖精哲学の三信」を掲げている。

  • 春の妖精
  1. 春先にのみ花をつけ、あとは地下で越冬する植物の総称「スプリング・エフェメラル*1」の別名。
    具体例はカタクリやニリンソウ、ショウジョウバカマなど。
  2. 千葉ロッテマリーンズ所属の野球選手、荻野貴司のこと。
    俊足を武器に活躍する選手なのだが、「春先に大ケガをして離脱→翌年には戻って来る」を繰り返したため、
    「ロッテファンが春だけ見る事ができる幻想か何か」と連想され、そう呼ばれるようになった。

  • 取り替え子(チェンジリング)
ヨーロッパの伝承で、「妖精が攫った人間の子供の代わりに、その親の元に置き去りにする妖精の子供」を指す。
伝承によって異なるが、攫われた本当の子供を取り返すためには、置き去りにされた妖精の子供を冷酷に扱えばよいとするものが多く、
実際に自分の子供を「取り替え子」だと疑った母親が、自分の実子をオーブンで焼死させ、裁判沙汰になったこともあるという。
また、生まれつき身体が不自由だったり、アルビノで生まれてきた子供を疎んだ親が、この伝承を利用して、
「この子供は『取り替え子』であり、自分の子供ではない」と言い張り、無下に扱ったり、捨ててしまうこともあった。

医療が今ほどは発達しておらず、このような事情のある子供を養う経済的余裕も、そのための福祉制度もなかった頃の話とはいえ、残酷な話である。

  • ラリーの妖精
妖精とは言うが、その実体は単なるラリーを見に来た観客のこと。
ラリーには、
  • 「競技中にクルー(チームスタッフ)以外の人員から手を借りてはいけない」
  • 「さらにスペシャルステージ中とリエゾン中はクルーの手は借りてはいけない*2
というルールがあり、競技中にトラブルが発生した場合、基本的にはその車のドライバーとコ・ドライバー(ナビゲーター)しか対処できず、
とりあえず2人で自走できる状況までは修理し、そしてサービスエリアまで車を運びクルーに修理してもらう必要がある。
仮にそれ以外の部外者が特定の箇所以外で車に触った場合はペナルティ扱いになる。

当然ながら観客も部外者なので、どんなスキルを持っていようが競技中の車に触れば基本的にドライバーにペナルティが課される。
が、コースアウトしてしまった場合に限っては、例え周囲の観客がその車をコースに押し戻しても、
「トラブルが起こった車に観客が手助けするのは自然現象なのでペナルティの対象にはならない」という理屈で、観客の手を借りることが事実上黙認されている。
そこから、「自然に出てくる人のような物体」→「妖精」という連想で、手助けする観客がこう呼ばれているとか。

ただ、あくまでも自然現象=勝手に観客が押しに来るという理屈で黙認されているだけで、本来は違反であるため、
コースアウトした際に、ドライバーやコ・ドライバーが観客を故意に呼びつけたと判断されるとペナルティをもらう。
また、ラリー1規格の車はハイブリッド故に高電圧のバッテリーを積んでいたため、下手に触ると感電の危険があった(2025年からバッテリーは外されているので安全)。
仮にデモランで2024年以前のラリー1車両が走ってコースアウトしてしまった場合は、車両に付いている漏電感知インジケーターが緑ランプなのを確認してから押しましょう*3

円卓の鬼神の頼れる相棒。
元々「pixy」というTACネームで、乗っていた戦闘機の右主翼を戦闘で喪失しても生還したというエピソードを持っている事から「片羽の妖精」と渾名されるようになった。

ラストオリジンに登場する、農地や庭園の管理を得意とする農業用バイオロイドシリーズ。名前に違わず全員が翅を模したユニットを装備しており飛行能力を持つ。
植物への水やりや害虫駆除、果ては気象操作と、農業に関わる様々な能力や役割が与えられている。

こちらもラストオリジンより。一般産業用バイオロイドシリーズ「パブリックサーバント」内の、森林保全を目的として開発されたエルフ型バイオロイドの総称。
森林伐採用バイオロイド「ランバージェーン」とは運用目的が真逆であるため衝突が絶えなかったらしい。
昨今のステレオタイプのエルフっぽく、いわゆるエルフ耳が標準装備。しかしそれ以外の外見や性格はまちまちで、一見するとエルフっぽくないエジプト神話の女神モチーフまでいる。
全員妊娠してなくても母乳が出る体質らしく、「エルブンミルク」なる謎のミルクを売り歩いている。しかも色んなフレーバーがある


【創作における妖精】

西洋系ファンタジーではお約束のように登場するが、その多くに共通するのが、「伝承のような超越的・超自然的な存在」としてではなく、
一つの種族として確立された、言わば亜人種として登場する事である。

作品にもよるが、大まかな特徴として
というものがある。

中でもあらゆるファンタジー作品で引っ張りだこなエルフ、ピクシーあたりは正にその好例であり、
どちらかが洋風ファンタジー要素持ちの常連としてよくモチーフにされている。

一方でゴブリンやデュラハン、トロールといった原典においては妖精として伝わる存在でも、
凶暴な性格だったり、恐ろしい姿をしているものはその限りではなく、純然たる魔物として扱われることが多い。


ミルモでポン!』における妖精

妖精が主題の少女漫画作品。
「妖精と人間のパートナー同士の絆」「楓と結木くんの恋」が主題のラブコメで、3年半という長期アニメ化もされた。

妖精を感知出来るのは基本的に妖精とパートナー契約した人間だけで、他は生まれつき魔力のある人間(原作のみ)、ダアクに操られている人間(アニメのみ)であり、
普通の人間には妖精は見えず、声も聞こえない。基本的に妖精のパートナーのみが、妖精を感知し、交流する事が出来る。

お菓子が大好きで、各妖精それぞれに好物のお菓子が違う。
ミルモはチョコレート、リルムはシュークリーム、ヤシチはかりんとう、ムルモはマシュマロ、パピィは飴、パンタは羊羹が好物。

また、マグカップの色や魔法の色(通常は有彩色、無彩色は黒魔法を使うワルモ団(黒)、幽霊妖精のパンタ(白)のみ)も妖精によって異なる。
人間がその妖精のマグカップに対応する飲み物を注いで願う事で、パートナー契約が成立する。
ちなみに、対応する飲み物はミルモはマグカップの色は青でホットココア、リルムは濃いピンクで牛乳、
ヤシチは黄色で麦茶、ムルモは薄い紫でトマトジュース、パピィは山吹色で苺ミルク、パンタは墨色で生きた蛸である。

本作の妖精は「本作のマスコットであり、人間と友達になれる存在。
人間の善の心から生まれた性善説の種族であり、本当に悪い妖精は存在しない」として描かれている絶対善の種族。
妖精は神格化された扱いであり、「一般人には邂逅する機会も無い、特別な存在」として描かれている。

実際に『ごおるでん』終盤で黒幕のダアクが、
「妖精は人間の善の心を呼び起こす邪魔な存在だ、この世の全てを闇に染める為に一人残らず消えて貰う」
と言っており、ダアクの目的は人間に幸せを与え善の心を増幅させる妖精を、妖精界を消す事で、全滅させる事だった。
「妖精が善の種族で、悪い心を持たない」というのは、ダアクに洗脳されて配下にされていた、アクミやワルモ団も例外ではなく、
彼らも元々は魔力が強かったり、イタズラ程度の悪事しかできない妖精であり、アクミは普通の女の子で、ワルモ団はイタズラ好きな程度だった。

ただ、1期の頃はまだそんな設定が無かった為、ワルモ団は完全悪として扱われ、ワルモ団は楓の街の妖精や人間達を洗脳したり、ミルモの里を乗っ取るなど酷い悪事をしていた。
2期序盤の頃はダアクの存在を伏せる為にアクミが悪事をしていたが、『ごおるでん』終盤でダアクが「妖精は絶対善の存在」と公言した為、
「悪いのは全部ダアクであり、アクミとワルモ団は洗脳されて悪事をさせられていた被害者」とフォローされた。
ダアク消滅後はアクミとワルモ団から黒魔法の紋章が消えて、ダアクの呪縛から解放された。
その後はアクミは普通の女の子に戻り、パートナーを見つけて悪事から足を洗った。
ワルモ団もイタズラ好きな程度の妖精に戻り、相変わらず悪事は働くものの、前のようなひどい悪事はしなくなった。

それは『妖精と人間の絆、共生』を描く本作で、「妖精を、世界を滅ぼす完全な悪や敵にする」ことは避けたかった為、
妖精の完全な敵として、ダアクという妖精でない存在を黒幕にしたからだと思われる。

人間側の主人公兼ヒロインの楓は、アニメでは妖精に対しては恋のライバル・安純のパートナーで、
ワルモ団の幹部見習いであり(アニメでは後に子分達を連れて、ワルモ団から脱退)、ミルモに危害を加えたり、酷い妨害工作をしてくる当初のヤシチや、
自分の命を狙ってきた当初のアクミすらも気にかけ、当初の洗脳時のワルモ団除き、妖精に理解があり、敵視する事は無かったが、
ダアクに対しては「妖精を消そうとする完全悪で、妖精の完全な敵」として捉え、敵視しており、同情する事は無かった。
後にタコスやはるかにダアクの事件について説明する際、「妖精と妖精界を消そうとした悪いヤツ」と説明しており、現在も彼女の中ではダアクは「ただの悪いヤツ」である。

「妖精と人間のパートナー同士の絆」を主題とする本作で妖精を消そうとするのは絶対に許されない所業であり、
妖精に対しては敵であれ同情する事もある寛大で純粋でお人好しな楓が、はっきり「妖精を消そうとした悪いヤツ」と言い切っている。
妖精のパートナーとしては当然だが、彼女がそう言い切れるほど、それほどダアクが完全悪で、ミルモ達妖精とは相容れない悪辣な存在である事と言える。


電波人間のRPG』シリーズにおける妖精

電波人間と共存するもう一つの種族。電波人間の隣人的存在(メイン隣人は地底人、サブ隣人は妖精)。性別は女性のみ
本作の名モブ兼ガイド役は95%位地底人達が担っている事と、住む場所が妖精の里など限られている事、
大人の地底人には妖精が見えず(電波人間と子供の地底人には妖精が見える)、彼らとは交流出来ない事が原因で、彼らと比べると、出番も隣人ポジションも大きく劣る。

ナンバリングシリーズでは一般妖精はピンク水色黄色のドレスを着ており、白いドレスを身に着ける事が出来るのは女王のみという設定だったが、
外伝の『FREE!』では設定変更されている為、白いドレスを着ている一般妖精も存在する。
妖精の中には電波人間を「下等な種族」として見下す者もいるものの、地底人同様、電波人間の隣人としての関係は良好である。


東方Project』における妖精

公式資料書籍「東方求聞史紀」によれば、妖精は「自然現象そのものの正体」と定義されている。
気温の変動や気候現象、草花が育つなどの季節現象、そういった物の一つ一つに妖精が宿るとされている。
人間の背に蝶やトンボのような翅を持つ姿が一般的。大きさはピンキリで、下は手のひらに載る程度から、上は10歳にも満たない幼子程度までとかなりの個体差がある。
服装は様々な色のエプロンドレスが基本。作品によっては向日葵の花を抱えている者*4、ウサ耳が生えている者、銃らしき武器とヘルメットで武装している者などもいる。
自然がある場所ならどこにでも生息しており、特に人間や妖怪が集まる騒がしい場所を好むという。

総じて短命だが、死んだり全身がバラバラになるような重傷を負ってもすぐ同じ姿で復活してくる。ゆえに厳密には死ぬ事がない。
食事を摂る必要もないようだが、人間の食事を真似て人間と同じ物を食べる。とりわけ人間の食べ物を奪って食べるのが好きなようだ。

性格は総じて好奇心旺盛で子どもっぽく無鉄砲、イタズラ好きな者が多い。
歩いている人を道に迷わせたりお茶に塩を混入するくらいなら可愛いもので、酷い時は後先考えずに崖から突き落とす、背中に火を点けるなど命に関わるイタズラを仕掛ける場合もある。
ただし注意深い人間には妖精も近付かないようなので、日頃から周囲に気をつけて過ごしていればこのようなイタズラの被害に遭う事もないという。
また、もし捕まえる事に成功したら「日頃の鬱憤を晴らすと良い」と公式が言っちゃってる。大人であれば簡単に勝てるくらいの強さしかないらしい。*5

シリーズで著名な妖精と言えば氷の妖精チルノ、春を告げる妖精リリーホワイト、いつも三人でつるんでいる、地獄の妖精クラウンピースなど。


《妖精が登場する作品(一例)》




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最終更新:2025年06月07日 01:30

*1 ephemeral:つかの間の、儚い等

*2 電話で相談を受けたり、修理箇所を口頭で指示するのは可能。またもうちょっとルールがおおらかだった時代は「クルーが工具を現場まで持って行ってその辺にばらまく、ドライバー達はなんか知らんけど落ちてる工具を使って修理。たまたま誰か(バレバレ)が落とした工具は使っているけど手はだしてないのでノーペナルティ」というのもあった。

*3 緑なら平気、赤は漏電中、消灯時はもっと深刻なトラブルの可能性があるので近づかない。

*4 他の妖精よりも体や翅が一回り大きい

*5 チルノやクラウンピースなど、例外的に強い力を持つ妖精もいるにはいる