ニセクロホシテントウゴミムシダマシ

登録日:2011/04/23 Sat 15:36:04
更新日:2025/05/31 Sat 08:45:07
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ニセクロホシテントウゴミムシダマシは、甲虫目カブトムシ亜目ゴミムシダマシ科に属する昆虫である。
学名は“Derispia japonicola”。
愛称はニセクロテンゴミダマたん。
正直略になってない。


【概要】

日本では、春~秋にかけて北海道と東北の一部を除いて各地で見ることができる。
大きさは3mm~5mmほどであり、見た目はテントウムシによく似ている。
餌はコケや枯れ草等。


《名前について》

一番気になるのは、その名前であろう。


『ニセクロホシテントウゴミムシダマシ』


敢えて漢字で書けば『偽黒星点十塵虫騙し』。…余計分かりにくいか。
「どっちなんだよ」と言う以前に『ニセ』だの『ダマシ』だの何とも可哀相なフレーズが2つも入っているのだ。
当の本人はニセのつもりもダマしてるつもりもないのに。

以下、そんな彼・彼女の誕生の経緯。




まず、『ゴミムシ』と言うムシがいる。(甲虫目オサムシ科)


そのゴミムシに(生態的に)よく似た一族が発見され……『ゴミムシダマシ』と命名された。

この時点で「ダマシ」と入った。
詐欺師呼ばわりも同然である。
重ねて言うが彼らに誰もダマすつもりもなく、愚かな人類が勝手に騙されただけなのだ。


その後、多数の亜種が発見され、ゴミムシダマシを中心としてゴミムシダマシ科が形成された。

そんな中、ゴミムシダマシ科に分類される中にテントウムシによく似た種が見つかりはじめた。

それらはテントウゴミムシダマシと呼ばれた。



2つの種族名が入ってしまった。
しかし、「テントウムシノヨウナゴミムシダマシ」みたいな名前にならなかっただけマシかも知れない。
テントウゴミムシダマシも好き好んでテントウムシに似ているのではない(多分)。

……そのテントウゴミムシダマシ達だが、その中に黒い斑点を持つものがいる。

それらを特に「クロホシテントウゴミムシダマシ」と呼んだ。

それがこれ


テントウムシに関わる名前の部分の方が若干長くなってしまった。
もうテントウムシでいいんじゃないか?

しかし彼らはあくまでもゴミムシダマシなのだ。


研究が進む内に、とんでもないものが発見された。

「クロホシテントウゴミムシダマシ」によく似ているが「クロホシテントウゴミムシダマシ」でないゴミムシダマシ科の虫だ。

とりわけてムシやサカナの世界においては、実によく似た種だけど違う種だと言うものが発見された場合、『ニセ』と名前に付くのが半ば慣例となっている。
当然彼らにも『ニセ』がつくハメとなった。

ニセクロホシテントウゴミムシダマシ

の完成である。


なお、ニセクロホシテントウゴミムシダマシとクロホシテントウゴミムシダマシの違いは「色と模様」のみであるとも言われている。

「クジラ」と「イルカ」の違いは大きさだけだ、とは良く聞く話であるが、それとは話が違う。
なぜならニセクロホシテントウゴミムシダマシについて言えば非常にマイクロな違いである。

にもかかわらず、名前に『ニセ』と付けられてしまった。

繰り返すが当人は『ニセ』のつもりも『ダマし』ているつもりもないのである。

このようなことがまかり通るのであれば「山田太郎さん(仮)」の同姓同名のヒトも「ニセ山田太郎(仮)」だの「山田太郎ダマシ(仮)」とするべきである。

余談だが、似たような経緯を経て悲しい名前を付けられた虫にはトゲアリトゲナシトゲトゲをはじめ、結構いる。



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最終更新:2025年05月31日 08:45