エメラルドゴキブリバチ

登録日:2010/08/12(木) 12:28:00
更新日:2021/03/14 Sun 19:30:42
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東南アジアやアフリカなど、熱帯の地域に生息するジガバチ(狩猟バチ)の一種。
学名はアンパレックス・コンプレッサ。
英名はエメラルド・コクローチ・ワスプ。
和名は緑青蜂(ミドリセイボウ)だが、こちらは異名のようなもの。大体の場合は英名を直訳した『エメラルドゴキブリバチ』の名前で呼ばれる事が多い。

見た目は非常に光沢のあるメタリックのエメラルド色(タマムシと同じような色)で、その美しさは空飛ぶ宝石と評される。
現地ではそのままジュエル・ワスプ(宝石蜂)と呼ばれている。

ミツバチやクマバチに代表されるハナバチ(花の蜜や花粉を集める蜂)とは違い、他の昆虫を狩猟しそれを幼虫の餌とする狩猟バチに分類される蜂で、その名の通りゴキブリ(特に大型のワモンゴキブリ)を主に狩猟する。























…の、だが。

この蜂の狩猟法は、他の狩猟バチとは一線を画する。


その狩猟法が、ゴキブリのゾンビ化と洗脳による狩猟である。


通常の狩猟バチは虫の神経節を針で刺して麻痺させ、巣穴に運んで行くのだが、ゴキブリの中でも比較的大型に属するワモンゴキブリは、よく動く上にその動きも素早い。
体長5〜7cm程度のエメラルドゴキブリバチにとって、普通に狩猟を行う分には些か手に余る相手である。


そこで彼女らが思い至ったのは、

『暴れるなら、大人しくさせればいいじゃない』

『運ぶなんて下賤な蜂のする事。獲物は自らの脚で歩かせればいいのよ』

と言う発想だった。




【その狩猟方法】

まず獲物に近付き、素早く襲い掛かる。
鋭い顎で咬み付いて動きを封じるのだが、襲われればゴキブリも黙ってはいない。「いきなり何さらすねんワリャぁ!」と言わんばかりに暴れ回る。
その様子は、さながら昆虫同士のプロレス。

しかし、どこの世界も逃げてばかりの腰抜けには勝利の女神は微笑まない。
暴れ回るゴキブリの隙を見計らい、彼女はその身体に麻酔を撃ち込むのである。

すると、暴れ回っていたゴキブリは急に動きを鈍らせる。こうなれば最早シメた物。次はゴキブリの頭部に目掛け、2度目の針を撃ち込む。
しかし、彼女も闇雲に刺している訳ではない。突き刺した針で、ゴキブリの『逃避反射』を制御する神経細胞の部位を探し当て、そこに毒液を注入するのだ。

完全ピンポイント且つ繊細な、ぶっちゃけ現代の医療技術にも相当するトンデモ技である。


これを施されたゴキブリは自分の意志で動き回る事が出来なくなり、動きはかなり鈍くなる。
更に自身の持ち味である『逃避反射』の神経も破壊されてしまっている為、ハチの姿を見ても逃げ出す事すら出来ない。

そんな不憫なゴキブリに、彼女は優しく手を差し伸べる。


ゴキブリの触角を掴み、まるで歩けぬ我が子の手を引くように、自らの巣穴へゴキブリを誘導するのだ。

『上手く歩けないの? こっちにいらっしゃい。私の家へ連れて行ってあげるわ』

とでも言うように。


それはさながら、自分で怪我をさせた相手を素知らぬ顔で介抱する魔性
重くて運べないゴキブリをゾンビ化させ、自らの足で死刑台(巣穴)まで歩かせるという逆転の発想である。

巣に連れ込んだゴキブリに卵を産み付けた母蜂はまた、新たな獲物を求めて旅立つ。
残されたゴキブリは、生きたまま蜂の幼虫にじわじわと咀嚼されていくのである。



誰が予想出来るだろうか。
こんなにも美しい蜂が、よもや穢らわしいゴキブリを苗床として生まれてくると言う事実を。


なお余談だが「2度目の針を刺される前まで」であればまだゴキブリ側にも生き残れる可能性のある手段が1つある。
その方法とは棘のある後ろ足で針を刺そうとするエメラルドゴキブリバチを蹴り払う事。一見ただの悪あがきに見えるが成功すればそこそこの確率でゾンビ化を免れ、逃げる事が出来るというデータがある。



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最終更新:2021年03月14日 19:30