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エメラルドゴキブリバチ

登録日:2010/08/12 Thu 12:28:00
更新日:2026/08/17 Mon 11:57:43
所要時間:約 3 分で読めます




東南アジアやアフリカなど、熱帯の地域に生息するジガバチ(狩猟バチ)の一種。
学名はアンパレックス・コンプレッサ(Ampulex Compressa)。
英名はエメラルド・コクローチ・ワスプ。
和名緑青蜂(ミドリセイボウ)だが、こちらは異名のようなもの。大体の場合は英名を直訳した『エメラルドゴキブリバチ』の名前で呼ばれる事が多い。

見た目は非常に光沢のあるメタリックのエメラルド色(タマムシと同じような色)で、その美しさは空飛ぶ宝石と評される。
現地ではそのままジュエル・ワスプ(宝石蜂)と呼ばれている。

ミツバチやクマバチに代表されるハナバチ(花の蜜や花粉を集める蜂)とは違い、他の昆虫を狩猟しそれを幼虫の餌とする狩猟バチに分類される蜂で、その名の通りゴキブリ(特に大型のワモンゴキブリ)を主に狩猟する。























…の、だが。

この蜂の狩猟法は、他の狩猟バチとは一線を画する。


その狩猟法が、ゴキブリのゾンビ化と洗脳による狩猟である。


通常の狩猟バチは虫の神経節を針で刺して動きを完全に麻痺させ、自分で持ち上げて巣穴に運んで行くのだが、ゴキブリの中でも比較的大型に属するワモンゴキブリは、屈強な上にその動きも素早い。
体長5〜7cmという小柄なエメラルドゴキブリバチ達にとって、狩猟を行うとしても些か手に余る相手である。


そこで彼女らが思い至ったのは、

『相手が暴れるなら、急所を突いてしまえばいいじゃない』

『獲物を持ち運ぶなんて私の性には合わない。仕留めたら自分で歩かせればいいのよ』

と言う発想だった。




【その狩猟方法】

まず獲物になりそうなゴキブリに近付き、素早く襲い掛かる。
鋭い顎で咬み付いて動きを封じるのだが、当然ゴキブリの方も黙ってはいない。

「うわああ!お前はチビミドリ!い、いやだ!おれさまはまだ死にたくないいぃぃ!!」

と言わんばかりに暴れ回る。
その様子は、さながら昆虫同士のプロレス

しかし、どこの世界も逃げてばかりの腰抜けには勝利の女神は微笑まない。
暴れ回るゴキブリの隙を見計らい、彼女は脚の付け根である胸部に初手の麻酔針を撃ち込む。

『食らいなさい!』ブスリ
「あうっ!」

すると、毒針を受けたゴキブリは全身が痺れて動きを鈍らせる。こうなれば最早シメた物。
ゴキブリが大人しくなったことを確認すると、次にゴキブリの頭部を狙い、2本目の針を静かに撃ち込む。
もちろん、これも適当に刺す訳ではない。ゴキブリの『逃避反射』を制御する神経細胞の位置を狙い、そこに毒液を注入するのだ。

『あったあった』ちくり
「あうちっ」

完全ピンポイント且つ繊細な、ぶっちゃけ現代の医療技術にも相当するトンデモ技である。

これを施されたゴキブリは程なくして1本目の毒が切れて体の自由を取り戻すが、2本目の毒針によって自分の意志で動き回る事が出来なくなっている。
その気になれば飛ぶことすらできるらしいのだがその様子もなく、何故か身繕いばかり繰り返すようになる。
自身の持ち味である機敏さも『逃避反射』の神経を破壊されてしまっている為、天敵の前で目を覚ましたのに逃げようとはしない。そんなことよりも体が無性にゾワゾワするのだ。
この後、ゴキブリの触角を掴みやすい長さに切り落としてしまう。こうなると最早ゴキブリの方も逃げる余地はなくなり…

「くそみどり〜、きた こわいかお なんで ふきふき」

そんな不憫な存在と化したゴキブリに、彼女は優しく手を差し伸べる。


ゴキブリの触角を掴み、まるで歩けぬ我が子の手を引くように、自らの巣穴へゴキブリを誘導するのだ。

『上手く歩けないの? こっちにいらっしゃい。私の家へ連れて行ってあげるわ』

とでも言うように。
「いがいと やさしかっ です」

それはさながら、自分で怪我をさせた相手を素知らぬ顔で介抱する魔性
重くて運べないゴキブリをゾンビ化させ、自らの足で死刑台(巣穴)まで歩かせるという逆転の発想である。

巣に連れ込んだゴキブリに卵を産み付けた母蜂はまた、新たな獲物を求めて旅立つ。
卵と共に残されたゴキブリは尚も虚ろな瞳で身繕いを繰り返し、生きたまま蜂の幼虫にじわじわと咀嚼されていくのである。
幼虫はゴキブリの体に潜り込んでシェルター代わりにも利用し、ハチが羽化する頃には中身を綺麗に食べ尽くされて空っぽの抜け殻になっているとか。


『ごはん〜』
「おれ うま」


誰が予想出来るだろうか。
こんなにも美しい蜂が、よもや穢らわしいゴキブリの体を抜け殻代わりに残して生まれてくると言う事実を。


なお余談だが「2度目の針を刺される前まで」であればまだゴキブリ側にも生き残れる可能性のある手段が1つある。
その方法とは最初の麻酔が効く前に後ろ足で次の針を刺そうとするエメラルドゴキブリバチをなんとしても蹴り払う事。一見ただの悪あがきに見えるが成功すればそこそこの確率でゾンビ化を免れ、逃げる事が出来るというデータがある。



歩きながらの追記、修正は危ないので立ち止まってからお願いします。


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最終更新:2026年08月17日 11:57