苛立たしい小悪魔/Vexing Devil(MtG)

登録日:2012/06/05 Tue 22:33:57
更新日:2025/01/28 Tue 15:01:00
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マジック:ザ・ギャザリングに登場するクリーチャー。初出セットは2012年春に発売された『アヴァシンの帰還(AVR)』。

苛立たしい小悪魔/Vexing Devil (赤)
クリーチャー ― デビル
このクリーチャーが戦場に出たとき、どの対戦相手も「これは自分に4点のダメージを与える」を選んでもよい。いずれかのプレイヤーがそうしたなら、このクリーチャーを生け贄に捧げる。
4/3

1マナながら4/3と破格のP/Tを持っており、さすがにそんなP/Tでは当然デメリットが――





――あれ?たいしたこと無くね?



4点のプレイヤー火力になるか4/3のクリーチャーとして召喚されるかを相手が選ぶという事だが、ぶっちゃけにとっては大した問題ではない。
本体は上述したように破格のP/Tだし、プレイヤー限定とはいえ1マナ4点は《稲妻》以上の高火力。
肝心な所で役に立たないという意見も確かにあるだろう。
しかし、「どんな状況でも役に立つ」というクリーチャーがいるであろうか? 答えは否である。
4点与えて退場してしまうのは痛いことだと思えるが、16点のライフで赤の相手をするのは相手としても非常に辛い話である。
さらにコイツの収録されたブロックはイニストラードブロック、スタンダードで共存するのは
  • どの色でもたった2ライフで使用出来る便利極まるファイレクシアマナの存在するミラディンの傷跡ブロック
  • たったライフ2点払えば序盤の色事故知らず、基本土地タイプもあるためM10ランドと極めて相性の良いショックランドの再録されたラヴニカへの回帰ブロック
と来たもんで、つまりほとんどのデッキが序盤に2点や4点は支払うこと前提で組まれている。
こちらの1ターン目に苛立たしい小悪魔、相手は涼しい顔で4点払う。
→返したターンに相手はファイレクシアマナなりショックランドなりで2点払う。
→そこから返ってきたターンでこちらが苛立たしい小悪魔2体目を出したりした日には
相手としては大分苦い顔をせざるを得ないだろう。


さて、このカードはよく「バーン以外では役に立たない」と言われる。
というのもTCG全般においてしばしば「相手に選択権のあるカードは弱い」とされ、これはその返答でプレイヤーとしての質が分かるほど有名な話である。
一見どちらも強力な択ではあるが、処理されやすい方(相手の都合のいい方)のモードでしか扱えないのは大きなデメリットになりうる。
例えば、速さよりも4打点クリーチャーによるプレッシャーがほしい序盤では4ライフペイの最小限のリスクに抑えられ、かといって火力で押しきりたい終盤にクリーチャー化されて延命された挙句に除去呪文で対処されてしまったり。
見た目ほど簡単に強力なカードではない。
上記「肝心な所で役に立たない」というのはこの辺も勘案しての評価であろう(相手に選択権がある以上「このカードが劣勢をひっくり返す」ことはほぼ有り得ないと言って良い)

しかし実際にはバーンに限らず様々なデッキに地味ながら採用を試みられている。
マナ総量が1なので、モダンでは《イーオスのレインジャー》のサーチを前提に採用するデッキがあった。
使用感に非常に癖があるため嫌う人も多かったものの、赤がタッチ程度にしか入っていないデッキから突然つきつけられる理不尽な二択は慣れていないプレイヤーの判断ミスを誘い、勝利に貢献した。
最近では《スカイクレイブの災い魔》と組み合わせて相手のライフにガンガン圧力をかけていくタイプのデッキも増えてきている。こういうデッキだと、どっちを選んでも相手にとっては地獄である。
場合によってはあの《夢の巣のルールス》で使いまわして脅威を押し付けるプランを取ることも。
むしろ数年前からは本家バーンから抜けることの方が増えてきており、使用者のセンスが問われる名カードとなってきている。

これらのデッキにおける採用思想を考えてみると、
  • どちらを選ばれてもそれを最大限に利用できる*1
  • 何回もしつこく選ばせれば、トドメこそさせないが相手はどんどん不利になっていく
といったところ。序盤はともかく中盤以降は、対戦相手がどちらを選ぶかが分かり切っている状況も多いので安定した運用ができる、というわけ。

ただし結局のところ、最終的な選択肢は相手が選ぶことによる不安定さがあり、そこを嫌うプレイヤーも少なくない…というか多数派である。
たとえば自分が圧倒的に不利な状況では絶対に何もしてくれない。その状況を極限まで削れる、常につばぜり合いを行うデッキを組んでいるからこそ採用できるのである。
逆に言えば、「相手に選択権があるという弱点」があるからこそ許されたカードであるといえる。
1マナ4/3のカードは許されるだろうか?否。
1マナ4点火力のカードは許されるだろうか?否。
そういう意味で、よくデザインされたカードである。



追記、修正は相手を焼き殺してからお願いします。

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最終更新:2025年01月28日 15:01

*1 「相手に選択肢のあるカード」は、これができるものが採用実績を残している。《怒鳴りつけ》《危険因子》《溶岩のあぶく》《ゼナゴスの狂信者》など。