パワーハラスメント

登録日:2012/04/20 Fri 01:18:54
更新日:2025/03/10 Mon 08:14:49
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パワーハラスメント(パワハラ)とは、社会生活の場である職場において、立場が上の者が下の者に対して行う、権力をふりかざしての嫌がらせである。

■概要

立場が強い者が弱い者に対して高圧的になると言うのは昔からあった問題だが、殆どが「上司から部下への指導」の範囲であると見なされ表面化する事は稀だった。

2000年代以降、企業で女性へのセクハラ対策が進むようになると「男性は無理難題があっても何も言えない」という意見が出てくるようになり、調査が進むとそこで肉体的・精神的苦痛を訴える者が増加し、それがマスメディアなどで露呈することで社会問題として取り沙汰されるようになった。
これがエスカレートすると、被害者に耐えがたい苦痛が生じてしまうのはもちろん、職場全体の雰囲気が悪くなり業務にも支障が出てしまう。

実際に行われているパワハラの類型としては。
  • 大勢の前での叱責、人格否定
  • 感情むき出しで怒り狂う
  • 暴言や名誉棄損
  • 殴る・蹴るなどの暴力
  • 脅しを含めた退職勧奨
  • 退職させるべく他メンバーにも無視命令
  • ワザと困難な仕事を与えて評価を落とす
  • 本人にとって明らかに過大・過小な仕事を突き付ける
  • 役職を与えずあからさまに干す
  • 訴えの聞き流し
が挙げられる。

■主なパワハラ上司

パワハラが生じてしまう理由は、やはり上司自体のマネジメント能力、コミュニケーション能力の低さが問題である。
このような「モンスター上司」の存在こそがやはり最大の原因であるのは間違いない。
現在、以下のタイプに分類されている。

◆恐怖統治型

実質的な職場の頂点に立つNo.1の人間が、自分の機嫌次第で職場自体の雰囲気を良くしたり悪くしたりしてしまうタイプ。
部下達はその人間のご機嫌を必死に窺う形になってしまう。

◆張り子の虎型

実力は無いがそれを隠す為、「叱責、指導、管理」を徹底するタイプ。
些細な事も見逃さず、「それが会社にどれだけ損害をもたらすか」を力説し、「あなたの為」を連呼するが、実際は自分の力の無さをごまかす為に過ぎない。
人のミスを常にチェックしている。
本人は上記を自覚せずに「自分は仕事を真面目にやってるだけ」と思い、悪意は無い。

◆自我癒着型

職場も職場の人間も全てが自分の身体の一部や手足の延長と思っているタイプ。
職場の人間には自ら指導はせず、それを「他部署」に相談したりしてしまう
自分で指導はせずに何故か外の人間にお願いしてしまうこのような上司も割りといたりする。

◆リモコンコントロール型

目をつけた部下を可愛がりながらも自分の言うことを忠実に守るロボットにしてしまう。
だが、「自分のものである」ロボットが少しでも意に添わない事をするとあからさまに態度を変えて嫌がらせに転じる。
リモートコントロールで無いのは、「リモコンでコントロールするかのような」上司だからである。

◆立場の勘違い型

本来やるべき仕事そっちのけで別の仕事に熱中し、それで「一生懸命」やっていると思い込み、指摘されると逆ギレして嫌がらせをしてくるタイプ。
目の前に大量の仕事が舞い込んでいる中で「業務の自動化、IoT化」に取り掛かろうとするなど、本人は「みんなが少しでも楽になるように」と悪意はない。

◆指示待ちお膳立て型

「自分の命令のみ聞け」
「自己判断はするな」
と、口でこそ言わないが遠回しにそうなるように仕向けるタイプ。
それに歯向かうと怒り狂い、失敗すると逆ギレ。

◆責任転嫁型

責任者の立場でありながら仕事の実行者である部下が失敗したらその部下のミスのみを追求し、自らの責任を出来うる限り回避しようとするタイプ。

■対処方法

今までは「職場の空気」「暗黙の了解」等で見逃されていたこれらだが、労働環境の改善や鬱病等のストレスが原因の病気等の蔓延により、近年、ようやく対策が打たれつつある。

それまで泣き寝入りが主だった上司の過ぎた叱責等も、そこに「人格攻撃」をはじめとした理不尽なものを感じたならば、
「自分が悪いから」等とばかり思わずに労働組合や労働基準監督署等に相談しよう。
この時、音声まで録れとは言わないが、その都度メモ等も取っておくといい。しかし、先述の音声・メモに限らず証拠はなるべく残した方が良いだろう。

確かに、社会で生きるには我慢も必要だが、どうしても耐えられなければせめて相談出来る相手を探そう。
訴える云々でなくとも、少なくとも心の負担は軽減できるはず。
独りで抱え込むのはダメ、ゼッタイ。

職場側も、実は懲戒免職以外であなたを一方的に辞めさせる権限は無い。
威光を傘に着る連中に耐えられなくなったら、戦う勇気も必要なのだ。

でも、戦うからと言って暴力や破壊行為で報復するのは絶対ダメ。
「同じレベルに下がってはいけない」という精神面ではなく、単純に暴行や器物損壊罪が適用され逆に加害者に転落してしまう可能性があるから。

大企業では2020年から、中小企業では2022年から法律によりパワハラの防止措置義務が課せられることになった。
未だに罰則規定は無いものの、理不尽なパワハラを抑止させる法律ができたことは(特に立場の弱い側の)労働者には心強い。


■逆パワハラ

立場が下の者から上の者に対してハラスメントを行うことを「逆パワハラ」と呼ぶ。立場が下の者が優位性を持つ場合に起きる。
事例としては立場が下の者が知識や技術などで優位性を持っている場合に上司を馬鹿にするなどが挙げられる。

近年、時代が「年功序列」から「能力至上主義」に変わった関係か、はたまたネットニュースなどで「老害」の言葉を使うようになった関係か、
「仕事が出来ない上司を遠慮なく罵って良い」という空気の会社が増加している。
とある心療内科の先生曰く「歳下の部下に関する相談が年々増えてきている」とのこと。

例として、入社して早々に職場の5S活動を行おうとした、中途採用のおじいさんのエピソードがある。
5S活動は業務の効率化のために絶対に必要なことであり、「やり過ぎる」ことで業務に支障をきたすことはあれど、
「ゼロからはじめること」は決して悪いことではない。ましてや、仕事中にものが散乱していたり、工具を必要以上に何度も買い換えることを抑えるならば、立派な経費削減・効率化である。
ただ、現場で働いている人間からしたら、「意味がない」「いいからロボット導入やIoTで作業の効率化しろ」と主張し、
嫌がらせの限りを尽くして中途採用のおじいさんを追い出した…という話がある。
働いている社員のレベルがあまりにも低過ぎるがあまり、有能な上司への逆パワハラがまかり通ってしまったのだ。

また、上司や政治家などに「老害」「無能」などという言葉を使ってきた世代が、いよいよ人の上に立つ世代になってきた。
現場作業以外の経験などないのに、同期は転職や出世していたため気がついたら自分が職場で一番年長になっており本社から職場の管理職を命じられた、なんて話もある。
その結果、自分が陰口叩いていた言葉がそっくりそのまま帰ってきたという理由で、別に部下から何も言われず逆パワハラを受けなくとも病んでしまった人も多数でるようになった。

こればかりは、若者に負けないように社会人になった後でも最新の技術情報についていけるよう、日々勉強する努力を怠らぬようしていくしかない。

…余談だが、「ラーメン発見伝」という漫画にて、老舗のラーメン屋の社員たちを、体育会系若手従業員による正論マウントのパワハラで追い出したというエピソードがある。首謀者はもちろん、かの有名なラーメンハゲ
ただ、その社員がラーメンハゲをして「怠惰と詭弁と責任転嫁だけで生きている腐りきった俗物」「口をパクパクあけて餌を求めるしか能のない輩は人間というより養殖魚」などとボロクソに貶すのにはちゃんとした理由があり、お人好しの主人公たちですらそれを聞いて納得するのであった…!
そして、厳しいパワハラに耐え抜いた若手店員はラーメンハゲの元で修行することを選び、傾いた老舗のラーメン店は再び活気を取り戻すのであった。
決して洗脳したとかそんなのではない


■パワハラ冤罪

実はパワハラなど受けていないのにパワハラを受けたと主張したり、常識の範囲内の叱責をパワハラだと主張するケース。
痴漢冤罪などと同じパターンであり、気に入らない上司を追い出そう、金をせびろうという悪質なもの。

こういった人間が一人でも現れると「この人の被害報告も冤罪、でっちあげなんじゃないか」と調査委員会の人たちも疑ってかからなければならなくなるため絶対にあってはならないことだが、現に実際にそういう事件が起きているのだ。

酷いものになると、「新人研修以来まともに出社していない市役所職員を叱責したら、次の日に市長の元に弁護士を連れてやってきた」という事件も起きている。給料泥棒どころか税金泥棒

また、通報者の匿名性は守られるべきである一方で、パワハラの証拠を提出する=通報者が特定される問題も抱えてしまう。
ログが双方共に残っているLINEの会話なんかがいい例だろう。
それを理解しているブラック上司は電話や通話でパワハラしてくるが、今現在はスマホなんてタップ一回で録音できる時代である。
「調査委員会や世間一般、マスコミが私のことを疑ってくるから、パワハラを受けたことを証明するためにログを公開したい」…となってしまうが、ちょっと待って欲しい。
「嘘八百の通報で私は名誉が損害された!賠償金払え!」とパワハラ相手が訴訟を起こす可能性だって十分にある。
被害者に疑いの目を向かざるを得ない状況や、そういった訴訟が蔓延するのを防ぐ意味でも、パワハラ冤罪など絶対にあってはならないのだ。*1

宮部みゆき原作のドラマ「ペテロの葬列」では、
いかにもうだつが上がらない、仕事の出来なさそうな独身おじさん(演: 千葉哲也)が、主人公より受けてもいないパワハラを主張して場を掻き乱し、視聴者のヘイトを稼ぎまくったことで話題を呼んだ。

最近では、コンプライアンス違反を匿名通報から調査してくれるという下請け会社が現れるようになった。
いくつかの大企業がその機関と提携し、企業洗浄に精を入れている。
この手の企業は、匿名だからといっていい加減な通報をすることを許してもらえないため、
具体的な日時、場所、内容、録音音声、撮影動画が含まれた通報を提供する必要があり、それを下請け企業が情報提供者が特定されない程度にうまいことまとめた上で、会社の人事部など担当者に情報提供してくれる。
そして、匿名だからと虚偽通報を行った、情報のねつ造を行った人間に対しては、通報制度の悪用として徹底的な厳罰処置が行われる


■正当な叱責?

叱る行為と叱責行為は同一視されがちだが、本来は全く異なるものである。
日本では他人とのコミュニケーションについて経験則やその場の雰囲気、当人の気分が重視される傾向が強く、論理的なシステムが確立されていなかったことも背景にある。
近年は「パワハラと訴えられるのが怖くて叱ることが出来ない」という上司が増えつつあるが、これもその裏返しと言えよう。

実は大声で(正当な注意であっても)怒鳴りつける行為はよろしくない(パワハラと訴えられたら反論できない)という知見が広がりつつある。
周りでその叱責を聞いているだけでもクリエイティブな思想をする能力が50%以下にガタ落ちするのだとか。

更に、日本アンガーマネジメント協会の2016年に発表したアンケート調査では、怒られた部下が上司に対してパワハラだと思う割合が53.8%に対し、反対に上司が部下に対して怒ったことはパワハラだと思う割合が16.7%だった。
さらに、上司の約6割は怒った後数分程度で感情を回復できるが、部下の5人中1人は怒られたことを1年以上引きずっている。
怒られた部下の内、怒られる以前のように人間関係を回復できた割合がわずか7.6%。
上司の怒り方が変われば仕事に対するモチベーションに影響が無かったと思う部下は70.4%に上った。

以上の結果より、部下は自らを怒った上司に対する恐怖心や嫌悪感を簡単には拭えない人が多い。そして、仕事を進める上でも怒りがモチベーションダウンにつながる。上の立場の者が下の立場の者に「怒る」のはそう簡単にしてはならないだろう。

「最近の若者は弱すぎる」と思う上司もいるかもしれない。
だが、時代によって物事の感じ方が変わるのは当たり前なのだ。自社が提供する商品やサービスを時代に応じて変化させるのと同様に、部下への指導方法も時代に応じて変化させる必要がある。
「パワハラ」と認識するしきい値は低くなっている傾向にある。近年は転職が従来より簡単に行われるようになっているため、上司が軽く叱責した部下がすぐに退職してしまうことも。
特に新卒で採用した社員への教育はお金がかかるというが、社員が辞められてしまっては会社に大きな損失になる。それも将来有望な社員が辞めようものなら・・・。


仕事中に重大なミスをした相手に対して、時には厳しく注意をする必要はあるだろう。しかし、その時でも別室で諭すように注意するのが理想的。感情をぶちまける前に一回深呼吸してみませんか?
一方で、部下においても正当な叱責をたやすくパワハラ扱いするのは早計なことがある。叱責を受けた際は反省しなければならない点を冷静に考えてみよう。

最後に、立場の上下に限らず、お互いにストレスを最小限に減らせるようにして仕事することを目指してみよう。




自分が部下を持ったらけしてパワハラはしないと誓いつつ、追記、修正お願いします。

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最終更新:2025年03月10日 08:14

*1 とある近年のパワハラ問題でも、パワハラ発覚「後」に自殺者を生み出してしまった関係で「被害者を守る義務と権利」が掲げられるも、その関係でマスコミにパワハラ加害者の録音音声やログを公開することが出来なくなった