登録日:2020/08/06 Thu 10:36:00
更新日:2025/03/12 Wed 14:56:03
所要時間:約 46 分で読めます
いいか、ひと言忠告しといてやる。
オマエはただのラーメン好きとしては、味を分かってるほうだ。
しかし、プロを目指す身としては、なにもわかってない。
ラーメンのことも客のことも商売のことも、
なにもかもだ。
演:鹿賀丈史(SPドラマ『発見伝』)、鈴木京香(連続ドラマ『才遊記』)
【概要】
「ニューウェイブ系ラーメンの頂点」と評される都内の大人気
ラーメン店
「らあめん清流房」の店主。
同時に他のラーメン屋をプロデュースするフード・コーディネーターを兼業し、「清流房グループ」各支店を纏める社長も務める敏腕経営者でもある。
類稀なるセンスでニューウェイブ系ブームを牽引するカリスマ
ラーメン職人として絶大な人気を誇り、
ラーメン自体の腕に加えてテレビなどのメディア出演の多さからその威名は日本全土に轟いている。
ぶっちゃけ1作目・2作目の主人公2人よりも抜群にキャラが立っており、まず間違いなく主人公2人分合わせたよりも知名度が抜群に高い御方。
その人気は制作側にも伝わっており、彼が活躍する回のみをフィーチャーした傑作選コミックスが出る他、彼の名言と顔がプリントされたTシャツやアクスタといったグッズが販売されるほど。2024年には抽選ではあるものの立体化を果たし、更につままれストラップの販売も決定した。
【人物】
表向きは低姿勢で愛想のいいおじさんだが、本性は冷徹・高慢・陰険、ついでに歯に衣着せぬ毒舌家。
この手のキャラにありがちな「一見悪役ポジだけど根はいい人」では一応あるのだが、かなり歪んだ性格をしている。
まず利益第一主義を貫くリアリストで、料理人でありながら9割の人間の舌を全く信じていない。
そればかりか「大半の人間は単純な味しか理解できない舌バカ」「味の分からない客は製造経費を運ぶための働きバチ」と徹底的に見下し、悪意を持って弄ぶことも躊躇しない。
優れた才能を持つ人や努力を惜しまない人など、「見どころのある人間」に対しては目をかけて情のある所を見せるが、そうでない人間は鼻で笑い、特に「ラーメン評論家」や「ラーメン通」と称する人種を激しく嫌悪している。
劇中の解説役にして屈指の人格者・有栖涼に対しても「評論家にしては味を分かってる方」と認めつつ、裏では「ラーメン膨れのオタクデブ」と陰口を言う場面もある。
ステマという概念の無かった時代にステマ紛いの工作を考案したり(ある意味先見の明があるとも言えるが)、
ラーメンマニアを利用した裏工作も平然と実行したりするなど、グレーな手段も厭わない。
しかし同時に
「自身が求める理想の味の追求と提供を決して怠らない情熱家」としての顔も持っている。
真に味の分かる一握りの客は馬鹿にすることなく尊重し、
「味の分かる客のためにより味を磨きたい」と語るなど、あらゆる客を見下しているわけではない。
加えてダーティな経営戦略も単に辞さないだけで、犯罪行為や他人を貶めるような卑劣な行為などはしておらず、
ラーメンへの向き合い方自体は普通に真摯。敵対関係である藤本の最大の弱点である『副業禁止の会社で屋台を引いていること』をある一件で察してからも、それを種に脅すということもしない。
ただし思いっきりコケにされた場合は
悪意満々な相応の報復を仕掛ける。
また
「あらゆるジャンルに貴賎はない、だが、ジャンルの中には厳然として貴賎が存在する」という村松友視がプロレスのエッセイで残した言葉を己の座右の銘として好んでいる。
それでいて、
表向きはこれらの本性を笑顔の仮面で完全に覆い隠しており、接客時やテレビなどのメディア出演時には
厳しくも優しい人情家のラーメン店主であるかのように振る舞う。
その低姿勢ぶりは、本性を知る人間からは
「白々しい」と悪態を吐かれるほど。
また実はロック音楽と
プロレスが好きで、銭湯のサウナの後に冷えた生ビールで一杯やるのが大好きという意外な一面もある。
同じ道を志したが夢半ばで破れて燻ってる同業者には辛辣なイヤミを言うが、商売人としての領分を超えて奮起させるための叱咤激励やトドメを刺す為の介錯を行う面を見せる。
らーめん再遊記では、ラーメン職人としてのエゴを完全に捨てて客の事だけを考えて再起を目指す宇崎というラーメン業界の先輩に、自費で開店費用を出そうと考えていたりする。
かつては自分の理想のラーメンを分かってくれていたが、現在は完全に老害になり果てたラーメン職人に対しても毒舌は少なく、飲み屋で一人黄昏るという面を見せる。
ラーメンハゲ
ビジュアルは常に愛想笑いを浮かべたスキンヘッドの細身の男性で、キツネ目・薄い唇も相まってかなりの悪人面。
読者からは
「ラーメンハゲ」との愛称で親しまれているが、実際はきっちり剃り上げている。調理中の毛髪混入を万が一にも防ぐためである。
『発見伝』では藤本から
「ハゲオヤジ」と内心毒付かれることもあったが、後に作中でも
低年齢層を中心に「ラーメンハゲ」というあだ名で認知されていることが判明した。
当然ながら面と向かって「ハゲ」呼ばわりされるのは嫌なようで、実際に言われた時には
「オレのはハゲじゃないって言ってるだろっ!!」と声を荒らげている。
決してハゲているわけではないのだ。念のため。
【らあめん清流房】
芹沢が1996年に開いたラーメン屋。新宿に本店を置き、支店は劇中5店舗まで確認できる。
店頭や店内に「鮎の煮干し」を大々的にPRする木製の看板が置かれているのが印象的。
芹沢の職人としての拘りもあってメニューは下記の「淡口らあめん」「濃口らあめん」の他、1100円のチャーシュー麺しか売られていない。
150円追加で大盛りにできるが、餃子や炒飯といったラーメン屋定番のサイドメニューは置かれていないかなり強気な商品ラインナップである。
だが常時2品しかない訳ではなく、たまに期間限定の
ラーメンも限定的に売っていたり、発見伝時代は関係者向けに試作した創作
ラーメンを振る舞う「試食会」も開いていた。
『才遊記』の段階では小型のビル1棟を丸ごと買い上げてフード・コンサルティング会社
「(株)清流企画」が立ち上げられており、そこで清流房各店もまとめて運営しているようだ。
ビル内には専用の調理場もあり、そこで
ラーメンの試作を行うこともできる。
月替わりで芹沢本人が考案した実験的な創作
ラーメンを提供するアンテナ・ショップ。
「(株)清流企画」の1階に店舗がある。
【職人として】
ニューウェイブ系の旗手としてどこまでも既存の構造を疑い、理想の味を追求するフロンティアスピリットと、舌バカ相手だろうと決して手を抜いたラーメンは作らない、プロとしての矜持・芯の強さを併せ持つ。
後述のように店を潰しかけてもなお自分の追い求める理想の味にこだわったり、酒に酔った勢いで「古臭いラーメンを有り難がる連中なんかみんな死ねばいい(要約)」と言い放つなど、クールでシニカルなようでいて、根っこの部分では紛れもなく熱いハートを持った職人気質の男である。
そもそも無化調ラーメンの巨匠と言われてはいるが、『才遊記』終盤で「別に無化調にこだわっている訳ではなく単純に化学調味料の味が好みじゃないから使ってないだけだし、場合によっては使う」と断言している。
かつての部下に言わせれば「冷徹なリアリストに見えて、実はビジネスという鎧で理想を守ってるロマンチスト」。
そんな彼が抱くラーメンの定義とは、(ある人物が掲げた「ラーメンとは偽物」という定義を肯定した上で)「フェイク」から「真実」を生み出そうとする情熱そのもの。
更に『ラーメン』という料理が旨さのみを追求して急進化し続けてきた歴史から「ラーメンにあるべき型など存在しない。常に変化し、進化し続けていかなくてはならない」という持論を掲げて、固定観念を最大の敵とまで言い切っており非常に意識も高い。
これ以上に的確な芹沢の人物評はないと言って良く、まさに「酸いも甘いも噛み分けた」を地で行く人物と言えるだろう。性格と口が悪いのは確かだが。
また、
ラーメン以外にも和洋中の多様な料理や食材の知識に精通しており、大抵の
ラーメンなら一口二口食べただけで構成から隠し味まで見抜いてしまう卓越した味覚を持つ。
『再遊記』では加齢もあっていくつかのパンを食べて満腹になっていたが、
二郎系と家系を同時に食べられるほどの胃袋を持っている(さすがに食べ切るのには一苦労したが)。
『発見伝』主人公・藤本浩平に対しては度々「優秀なラーメンマニア」と皮肉っぽく呼んでからかいつつ、彼の秘めたる素質を評価している。そして「経営者としての視点が足りない」「既存のラーメンの模倣や改良は得意だが独創性に欠けており、新しいラーメンを創作することができない」などの藤本の弱点を的確に指摘し、成長を促していった。
一方で、藤本との衝突を利用し、自らも技量と創作意欲を高めようとする克己的な一面を持つ。
「店をやるということは、常に時代の嗜好の半歩先を行く姿勢が必要だ」という彼が終盤で藤本に入れる喝は、常に自ら体現していると言える。
このため、この手のキャラにありがちな「プライドが高くて自分より下の立場の人間からの意見や改善案を聞き入れない」といった隙も無く、むしろ新しいものや自分にとって未知の領域の知識も、若者から意見を聞いて柔軟に取り入れていく。
そして不味いラーメン屋に対しても、嫌ってはいるものの食べる時はしっかり食べた上で客観的評価を下せる公正さも持っている。
【物語での活躍】
『ラーメン発見伝』劇中では、ふとしたきっかけで主人公の藤本と知り合って以降、事あるごとに対決することになる。
ちなみに初登場時点で42歳。
ラーメン屋としての素質はずば抜けているが、経験が浅く店舗経営にも疎い藤本は、職人としてもビジネスマンとしても芹沢に毎回やり込められてしまう。
名実ともに藤本の最大にして因縁の
ライバルであり、ある意味では師匠的存在。
大抵の
料理漫画には『
美味しんぼ』で言うところの
海原雄山ポジションの人物がいるが、本作では芹沢がその役回りである。
物語中では散々藤本を小馬鹿にしていたが、シリーズ3作目で実は彼も元々は藤本と同じ脱サラ系ラーメン職人だったことが発覚した。
……ついでにバツイチだったことも。
昔はそれなりにいい大学を出て、それなりの優良企業で働き、それなりにいい女性と家庭を持っていた。
しかしラーメン屋になる夢を捨てきれず、衝動的に会社を退職したことで妻に見放され離婚された模様。
おまけにラーメン屋を成功させた経緯もまともに考えて
只のギャンブルであったことも踏まえ、
武田のおっさんからは
「イカれたラーメン馬鹿」とまで評されている。
外伝・スープが冷めた日
今でこそ「日本一のラーメン屋」と呼ばれるほどの栄光を手にしている芹沢だが、実はラーメン屋としての経歴は当初から順風満帆という訳ではなかった。
学生時代から独学で
ラーメンを作っていた芹沢は、就職し結婚してもなおラーメン屋をやる夢を捨てられなかった。
会社員という安定を捨て、妻も消えた中で、
「『大衆料理としてのラーメン』とは一線を画す『何の枠にも囚われない自由な創作麺料理としてのラーメン』」というコンセプトを掲げて1996年に店を開く。
しかし開業当初は「化学調味料を使わない繊細で複雑な味を売りにした理想の
ラーメン」である淡口らあめんが客に理解されず大苦戦、大赤字による不渡りを出して一時は店を潰し掛けてしまう。
「こってり味ばかり求める客への苛立ち」と「もうこのままでは後がないという憔悴」に加え、客から「エサの補給」「コクの無い薄っぺらい味」と不躾に侮辱された結果、完全にキレて一線を超えてしまう。
ヤケクソになり、「そんなに脂を食いたければ食わせてやる!!」と淡口らあめんの繊細な味をぶち壊す大量のラードをぶち込んだこってり系ラーメンを即興で作って客に出すが、芹沢の意図に反してこれが大ウケ。
そしてラード入り淡口らあめんを改良した「濃口らあめん」を売り出してみるとまさかの大ヒットを叩き出し、店を大きく盛り返すことに成功した。
しかし
- 自分の理想を曲げて屈辱的なラーメンを作らなければ店が繁盛しないジレンマ
- 自分の理想の理解者と思っていた友人すらも、鮎の風味など欠片も残っていないはずの濃口らあめんを食べて「鮎の風味を感じる」などと宣う、自身がバカ舌と見下していた客と同レベルの味覚だったことへの失望
- 自身の理想が誰にも理解されないまま現在の地位を築き上げたことへのやり切れなさ
(誰にも理解できない理想のラーメンに、いったいなんの存在価値がある!?)
クックックッ ハーハッハッハッハ!!
悪意は無かったとはいえ、友人からの「裏切り」を受けた芹沢は、「理想と現実は違う」というある種の諦めを胸に刻み付けるようになってしまった。
そうして5年掛けて「日本一のラーメン屋」と呼ばれるまでにのし上がったが、同時にそれ以降は「味を分かってくれる一握りの客に理想の味を提供するために、舌も頭もバカな客に『情報』を食わせて金を稼ぐ」というスタンスを貫くようになる。
(あの頃は、オレも青かったな。うまいラーメンは誰にとってもうまいはずだなどと信じていたんだから…)
(オレの名は芹沢達也。念願かなって、今では日本一のラーメン屋だ──)
ラーメン発見伝
店の看板商品である「濃口らあめん」をめぐる些細なトラブルから主人公である藤本と因縁を結ぶと、実力派フードコンサルタントとして度々登場。
自然食レストラン「大地」における藤本との
ラーメン商品コンペを始め、時には
ラーメン対決のプロデュースを行ったり、
藤本の依頼でラーメン屋の経営立て直しの相談を請けたり、自身の部下の能力を測るための試金石に利用したりと、
腐れ縁にも似たライバル関係を築き始める。
終盤にて
ラーメンテーマパーク「六麺帝」をプロデュースしたことで藤本と完全に敵対。
藤本が勤務するダイユウ商事が手がけた
ラーメンテーマパーク「拉麺タイムトンネル」との6本勝負の大将役を務め、遂に藤本との最終決戦に1910年から始まったと言える日本ラーメン100年目に相応しいラーメンを創作し挑む。
自ら
「畢生の出来映え」と豪語した
『淡口らあめん 極』で勝負をかけたが──
審査員たちの大半が、藤本の
ラーメンに軍配を上げた。
この無惨な結果を受け、劇中で初めて感情的に声を荒げて審査員達に抗議するも、
「鮎の煮干しの味を最大限に引き出したラーメンというコンセプトなのに、
僅かに入れた鶏油が味を損ねている」
と冷静に言い返され、藤本の
ラーメンを食べるよう促される。
食べた後、唐突に自身が客の味覚を信じなくなった経緯を語り出し…
『らあめん清流房』の成功はオレが客を信じることをやめたところから始まったわけだ。
だが、それからラーメン界も変わった。今の客なら、オレの理想の味を理解してくれるかもしれない。
そう考え、今回、『淡口らあめん 極』を編み出したわけだが…
確かに、どうしてオレは鶏油なんか入れてしまったんだろうな?
有栖クンらに指摘されて、気づきかけてはいたんだが…
この藤本クンのラーメンを口にして、オレが余計な鶏油を入れた理由がハッキリ分かった…
藤本クンのラーメンには、一点の迷いも感じられない。
自分がうまいものは、客だって、うまいはずだという信頼感に溢れている…
しかし、いや、やはり、オレは…
客を信じ切れなかった…
オレの……負けだっ!
…自らの敗北理由を悟り負けを認め、2人の因縁に終止符が打たれることになった。
なお、自他共に認める完敗ではあったものの、千葉からは藤本の勝因について「藤本が本当の客の怖さを知らないがゆえ」とフォローされている。
以後は脱サラして開業した藤本の
ラーメンに改良案を出したりと、
毒舌はそのままながら、藤本を案じる素振りも見せた。
藤本もこれまでの自分のラーメン修行に於いて最も影響を齎したものは芹沢に他ならないという覚りに至り、彼に対して宿敵ではなく師匠として心からの礼を送った。
らーめん才遊記
ラーメン発見伝から約2年から3年後。
「らあめん清流房」のセカンドショップとして、創作ラーメンを月替わりで提供する「麺屋せりざわ」店長や、フードコンサルティング企業「(株)清流企画」社長を兼任。
このため、かつてのように表舞台で暴れ回る機会はめっきり減った。
しかし2代目主人公・
汐見ゆとりの上司兼師匠というポジションに就き、『発見伝』と大体同じような立場で活躍する。
超問題児だが食の才能だけは抜群の汐見を、上司として管理し育てることが求められ、振り回し振り回されの関係に。
新たに、自分にとっての師匠というべき
ラーメン職人である石原玄二郎や、右腕として信頼を寄せるも横領に手を染めて自身を裏切った元部下・安本高治などが登場した。
最終話では「汐見がラーメンに目覚めたきっかけの店」として藤本が開業した「らーめんふじもと」に偶然行く機会が発生。
藤本の店に「本物のラーメン屋だ」と最大級の賛辞を送る一場面もあった。
らーめん再遊記
シリーズ三作目にして遂に主人公に。
しかし『発見伝』の初期前後から約20年後、
重度のスランプに陥り、これまであった覇気を完全に失うとんでもなく落ちぶれた姿を披露。
ミドルエイジ・クライシスを患い、これまでの創作意欲と熱意をめっきり失ってしまう。
結果、自身の創作
ラーメン披露の舞台であった「麺屋せりざわ」の業績のみが低迷。
挙句にこれまで自身が忌み嫌っていたはずの
不味くて古臭いラーメン屋に入り浸り、不味いラーメンを満喫しながらダラダラ飲んだくれる醜態を晒し、ファンや読者に強烈なインパクトを与えた。
これは
といった肩書付きで他人から見られ続けるうち、
「そうあらねばならない」というプレッシャーが積もり積もって悪化したものだったが、武田のおっさんが発した言葉を受けて自分がカリスマでもなく天才でもない「イカれたラーメン馬鹿」ということを思い出した。
それにより自身の進退を賭けた
ラーメン対決で勝利、更に今まで自分が背負ってきた名声や肩書を全部捨てて
「自分の好きなようにラーメンを作るだけのラーメンバカに戻る」と宣言、いきなり
社長職引退を決意。
自分以上の才能と発想力と若さを持った
汐見ゆとりを次期社長として抜擢しそのまま退いてしまった。
そして「年を食って衰えた自分にはこれ以上自分の個性を突き詰めたラーメンは創作できない」と悟り、代わりに「醤油ラーメンや塩ラーメンのような、万人に広く愛される普遍的な"ラーメンの形式"を新たに見つけ出す」ことを決意し、新たな人生の目標と定める。
引退後は「広く愛される
ラーメン」に繋がるヒントを得るため、
- 素性を隠し、人気ラーメンチェーン店でアルバイトとして裸一貫働いてみたり
- 大学で客員講師をしたり
- 休日には図書館に繰り出したり
- サウナや昼飲みを満喫したり
など、大学生活を彷彿とさせる自由気ままな半隠居生活をエンジョイするように。
この時見せた「ラーメン屋のアルバイトで上司に笑顔でヘコヘコし、仕事終わりに同僚と仲良く宴会する、外面だけはとんでもなくフレンドリーなラーメンハゲ」という新鮮な姿もまた読者に強烈なインパクトを与えた。
とはいえ、その同僚たちを内心では「愚かな若造ども」「低レベルな人材」と貶していたり、同僚たちの人間関係のトラブルを酒の肴にして気持ちよくビールを飲み干したりなど、(それとなく案じるそぶりも見せてはいるとはいえ)性根の悪さは相変わらずである。
年をとって社長業のような社会のしがらみから解放されたこともあり、以前まであったビジネスに対する過激的な面はやや薄れ、柔軟性を見せるようになった。そのためフットワークも軽くなっている。
また、マニアの域を超え大学教授となった有栖やラーメンYoutuberの『グルタ』こと板倉和文など、以前は徹底的に嫌っていた評論家筋の人物とも行動を共にすることが多くなっている。
また、主人公に昇格したこともあって、今まで描かれなかった芹沢の私生活や庶民的な一面も発覚。
- 学生時代はメタリカ来日コンサートに参加して熱狂
- 嫌なことがあればサウナでストレス発散
- 昔からの大のプヲタであり、プロレス本の中にあったフレーズを座右の銘に挙げる
- 自分でも普通の味と感じてるはずの中華料理チェーン店のタンメンにドハマりして学生時代の頃から通い続ける
- 更には機会があれば聖地巡礼のために本店まで食べに行こうとする。
- 成功してから、一時金持ちらしく生活してみたものの「得るものはあったが、所詮は見栄っ張り」と自分でもガラでもなかったと自虐
- 前々から興味があった電動自転車を購入し、その快適さに大ハッスル
そして交通法規は守っているが米倉の目の前で勢いよくドリフト
- 自分の好きな寿司を10貫ずつ注文して舌鼓を打ちながら「本格懐石の板前からしたら独学でラーメン屋始めた自分なんてコスプレしたこけおどし野郎だ」と過去の自分を顧みる
- 小学生時代は『荒野の少年イサム』を愛読。電子書籍版を大人買いしたものを(風邪ひき予防の対策もかねて)風呂場で読む
- チャルメラを少年時代から還暦を迎えるまでずっと愛食しており、独自の風邪ひき予防を編み出すほどの信者。作中に出てくるラオタのように感情的にこそならないが、チャルメラが不遇な扱いを受けると内心やや不機嫌になる
などなど、割と親しみの湧く過去や好奇心旺盛な一面が明らかになっている。このうち妙にサブカルに偏った趣味趣向についてはだいぶ原作担当の影響が強い。
こうした結果、前作までは基本的に冷静な面持ちか悪辣な笑みを浮かべることが殆どだったが、プライベートにおいては作中のリアクション役である有栖顔負けのオーバーリアクションを行うことも。
また、かつて志を共にしたラーメン職人たちとの過去や敵対した者たちとの確執、そして過去に芹沢が行ったとんでもない外道な仕打ちも同時に明らかとなっていき、それらに対する落とし前を付けることがテーマとなる回も多い。
【作ったラーメン】
代表作
ウチの“淡口ラーメン”なあ、あれはまさにオレの理想のラーメンなんだよ
芹沢が求めた理想の和風
醤油ラーメン。1杯850円。
化学調味料は一切使わずに、高知の水産加工会社から取り寄せた
鮎の煮干し(特注)でダシを取っているのが最大の特徴。
その鮎の煮干しダシのスッキリとした清涼で滋味溢れる風味を軸に、比内地鶏の鳥ガラ・
鹿児島県産黒豚のトンコツ・有機栽培野菜で
スープを取っている。
醤油タレは国産大豆と小麦だけで作った有機醤油、麺は
スープと相性をギリギリまで追求した特注麺を採用。具は自然養鶏卵で作った煮卵、
チャーシュー、ネギ、メンマとシンプルなもの。
3部作全体を通して多くの登場人物に影響を与えたニューウェイブ系ラーメンで、芹沢自身
「本物ばかりの素材の持ち味が絶妙に調和したラーメン」と並々ならぬ情熱を注ぐ。
ただし、その上品で繊細で複雑な味わい故に
一般受けしにくく、一部の舌の肥えた味の分かる人間や、同じく舌の肥えたラーメンに詳しい人間しかその本当の味を理解できない。
いわば
上級者向けのラーメン。
また、この
ラーメンだけでなく「淡い(薄い)」味付けの料理全般に言えることだが、薄い味付けで客が美味に感じる料理を出すには、相当の技量が必要になる。
なので淡口
ラーメンも芹沢本人が全て仕込んで作るのと、支店のスタッフがマニュアルで作るのとでは、鮎の持ち味が全く違うレベルに仕上がる。
『スープが冷めた日』~『発見伝』の時代は「物足りない」「薄っぺらくてコクがない」と大衆からの評価に恵まれず、味を理解してくれる客は10人に1人か2人程度のものだった。
だが『再遊記』の時期にはかつて芹沢自身も語った「客のレベルアップ」もあってか「淡口らあめんの方が好き」と公言するファンがプロ・アマ問わず見られるようになった。
米倉との対決の際の紹介などから、「淡口らあめんこそが芹沢達也の本命」というのもこの頃には広く知られているようである。
良くも悪くも「生まれる時代が早すぎた」というのがこのラーメンの本質だろう。
「らあめん清流房」の看板商品。1杯850円。
上の『淡口らあめん』のスープに
ニンニクを揚げた牛脂を浮かせて作る。
ニンニク風味の牛脂が生む「
ラーメンらしいコッテリとした重厚感」と鮎の煮干しの「鮎の鮮烈で上品な風味」が絶妙に調和し、それらが同時に味わえる極上の和風醤油ラーメン。
……というのは味覚が優れていない人間の錯覚。
どの世界でもいいものを見分けられる人間はホンの一握りだ。
大半の人間は単純で分かりやすい刺激しか、理解できない。
ラーメンで言えば塩っ辛いとか脂っこいとか奇妙な具だとか、な。
そのくせそういう鈍感ヤローに限って、自分はものをわかった人間だと思いたがる。
実際には鮎の風味はニンニク風味の牛脂の強烈すぎる風味と香りでほぼ完全に吹き飛んでおり、そんなものをこのラーメンから鮮明に感じ取るのは99.9%不可能。
鮎の煮干しの風味を本当に味わえるのは、評価の悪い淡口らあめんの方である。
客がそんな風に感じてしまうのは、芹沢の「鮎の煮干し」を大々的にPRした宣伝効果によるもの。曰く「奴らはバカだから、鮎の煮干しという情報を食っている(要約)」。
鮎の煮干しがなくとも成立する代物であることから、『才遊記』では、かつて「濃口らあめん用の煮干しを安価なカタクチイワシにすり替え、芹沢特注の鮎の煮干しを横流しする」という背信行為を働いた部下もいたことが明かされる。
そもそも淡口らあめんは、「鮎の煮干しを業者に特注しなければならないため、ある程度纏まった数を購入する必要がありコストが重い」という大きな欠点を抱えており、この高い維持コストを保ちつつ店を繁盛させるために開発されたのが濃口らあめんだった。
だが欠点はそれくらいであり、芹沢は「(最近のコッテリ指向に迎合して)ヤツらの下品な味覚に合わせた」などと毒付いていたものの味自体は凡百のラーメン屋とは一線を画す逸品。
ライバルであった藤本も「(看板に偽りありとはいえ)これはこれで美味しくはある」と味そのものは認めているし、作中トップクラスの味覚を持つゆとりでさえ、淡口らあめんを食べて比べる前は「コクがあってキレがある絶品の味わい」と評している。
自分の理想の味を侮辱した舌バカのラヲタへの嫌がらせから偶然生まれ、芹沢を成功へと導き、同時に拭えないトラウマと屈辱を植え付けた曰く付きのラーメンだが、「淡口らあめんを支える為に稼ぐ為の舌バカ向けラーメン」としつつもそれはそれでしっかりと絶品のラーメンに仕立て上げているのは芹沢の手腕と言えるか。
2作目の時点でこの欠点にはっきりと気付いていたのも、自身の部下ではそのゆとりを含めた3名のみだった辺りそのレベルの高さがうかがえる。
ただし、ゆとりは「鮎の煮干し風味は稀薄である」とも述べており、皆無とは言っていない。
上述の横流し事件ですり替えられた際には有栖の知り合いのラーメンフリーク複数名が違和感を感じ、有栖に至っては完全に鮎の煮干しを使っていないのを見抜いていた。
よって、優れた味覚を持っていれば、鮎の煮干しが入っているか否かは分かるようだ。
ただ、清流企画のスタッフはカタクチイワシのスープと濃口らあめんのスープの区別がつかなかった他、1作目で藤本とラーメン対決をしてその実力が示されていた岩下大輔すらも、濃口らあめんから鮎の煮干しの風味を感じて食していたことから、気づくハードルが相当に高いことに変わりはない。
そして何より、これに気づいたゆとりもカタクチイワシの煮干しでで十分代用できると判断しているため、「風味は一応感じるが、ほとんど意味がない」という程度のようだ。
また、ニンニクを揚げたヘットではなく、カメリアラードでネギを揚げて作ったネギ油を入れ、鮎の煮干しの風味を残しつつもこってり感もあるラーメンを藤本から提供されており、期間限定メニューとして売り出したこともある。
当初はネギ油が、藤本から店で騒いだ迷惑料として没収した分だけだったため10食限定だったが、ついでにレシピも没収していたためその後も売り続け好評だった様子。
なお誤解されがちだが、芹沢が嫌っているのは「メディアで宣伝した情報を鵜呑みにして濃口を食べ『豊かな鮎の風味が効いている』とドヤ顔で語る客」であり、単純な味の好みで濃口らあめんを好んでいる客のことはそこまで気にしていない様子。
ちなみに濃口らあめんが生まれた経緯に関しては後に雑誌のインタビューで明かしており、『再遊記』時点ではグルタのようなラーメン通には周知の事実となっている。
『発見伝』初出
『発見伝』において、今後長く続いていく藤本との
ラーメン勝負、その始まりの一品。
「塩ラーメン」というお題に対して考案したもので、トッピングに
チャーシューとメンマ、そして細かく刻んだシソと白髪ネギを乗せている。
これまた鮎の煮干しから取った香り豊かな
スープにシソの鮮烈な香りが合わさった洗練された味わいが特徴。
チャーシューは
スープに使われている塩ダレと同じ味付けがなされており、うまく調和しているが、
これは今回の
ラーメン勝負のきっかけとなった藤本の
ラーメンの問題点の指摘も兼ねていた。
自然食レストラン「大地」でのコンペ対決で、「アッサリ系醤油ラーメン」というお題に対して考案した。
材料は淡口らあめんのものに類似しているが豚骨の代わりに牛骨を採用。
醤油ダレに加えて昆布から取った塩ダレを使い、醤油ダレをギリギリまで減らし適切な塩分量を計算して味付けされている。
ただしうっかり希少で安定供給の難しい鮎の煮干しを使ってしまったため勝負はやり直しに。
2度目は味わいを保ちながら安定供給可能な
カレイの干物を代わりに使ってダシを取った。
このため鮎の鮮烈な風味は無くなったが、魚の旨味を凝縮したような重厚な味わいが特徴。
「極上の味わい」と「安定供給」の2つを両立させたプロ意識が光る。
その後の「らあめん大河」では藤本がこの
ラーメンをベースに塩ダレではなく薄口醤油を使い、大地干を炙って香りを出すという改良を行ったものを提供している。
試食会で作られた
ラーメン。
具は煮卵、
チャーシュー、そして推定
野菜炒めらしきものが乗っている。
スープには大地魚干しで取ったダシを使用。味噌ダレと醤油ダレをブレンドすることで味噌の味が支配的にならず、
スープに使われているいろんな素材の旨味を楽しめる品。
「大地」でのコンペ対決で、
「スープを新しく作らない塩ラーメン」というお題に対して考案した。
スープは、既にレストランで調理された複数の
スープをブレンドして作っている。
これは「大地」では多数の品を作る都合上、手間とスペースを取る
ラーメンスープを新たに作る余裕がなかったため。
既存の
スープを混ぜるだけなので、調理スタッフに大きな負担をかけずに新メニューを増やせるのが売り。
この時点で完成度の極めて高かった
スープに、リンゴの木のチップでスモークし香りづけしたフランス産の自然塩を混ぜることで完成。
スープに僅かに足りなかった香りと風味をプラスすることで、より完成度を増した一品。
「大地」でのコンペ対決で、
「夏向きのラーメン=つけ麺」というお題に対して考案した。
「麺とつゆの温度差により料理そのものがぬるく、不味くなる」というつけ麺の欠点に着目。
イタリアンやフレンチのデザートに着想を得、
麺つゆは極端に熱く、麺は歯にしみるほど冷たくすることで温度差を拡大・強調した。
醤油に唐辛子を漬け込んだものをタレに用い、辛味を利かせることで
スープの熱さを強調しつつ夏向きに調整。
表面にラードを浮かせて熱さを封じ込めるという工夫もされている。
加えて麺は表面を高加水、内部を低加水という二重構造にすることで、誰が茹でても絶妙な茹で加減になるようコントロールしつつ、メリハリの利いた独特の食感を実現させた。
自身がプロデュースしたラーメン屋「麺屋 朱雀」で考案した醤油ラーメン。
「スープや麺、タレ、具に工夫するラーメン屋は多くあっても『香味油』に工夫を施す店は少ない」という盲点に着目。
スープはそのままに7種類の香味油によって7種類の味のバリエーションを持たせている。お値段一律700円。
- 煮干し
- カツオ
- エビ
- 唐辛子
- 香味菜(ニンニク、ネギ、エシャロット)
- ホタテ
- 木の実(クルミ・アーモンド・ヘーゼルナッツ)
という7種類の味わいを楽しむことが可能。
これらはスープや具材は変えておらず、香味油を変えるだけなので料理人の腕前が低くても手軽に味を演出できるという利点も併せ持つ。
独創性と発想のスケールの違いを見せつけたものの、店自体は調子に乗ったオーナーが余計な色気を出したことで失敗に終わる。
「大地」でのコンペ対決で、
「夏野菜フェアに適した夏野菜を使った創作ラーメン」というお題に対して考案した。
スペインから輸入したソーダサイフォンを利用して
ホワイトアスパラガス、シシトウ、トマトのムースを乗せた冷やしラーメン。
スープは煮干しや鶏ガラ、トンコツを使った濃厚な醤油
スープ。
香味油は大豆白絞油でニンニクを揚げたものを使っている。
野菜の旨味だけを抽出したきめ細かい3種のムースが甘・辛・酸を絶妙に演出し、
スープと一緒に啜ることで複雑かつ誰も味わった事のない新体験の旨さを味わうことが可能。
藤本とのコンペ対決で
「動物系食材を一切使わないラーメン」というテーマで作ったラーメン。
上質の信州味噌をベースに、調味料、香辛料、果物で味を整えた味噌ダレを使用。
煮干し、カツオ節、アジ干し、アゴの焼き干し、昆布でタップリ出汁を取ることで
スープを作成し、更に小鍋で味噌ダレを
スープを合わせた後エビの頭とアサリを投入しひと煮立ちさせることで強烈な魚介の香りを漂わせた魚介系味噌ラーメン。
コンペ対決は引き分けに終わったが、本質としてはクイズ大会『
ラーメン・マニア・キング』の優勝賞金1000万円を手に入れ浮かれ切っていた藤本に「自分の本当に作りたい
ラーメンがない」という最大の欠点を浮き彫りにさせるための
ラーメンである。
恒例の藤本とのコンペ対決で
「氷を必ず使う冷やしラーメン」というお題に対して考案。
表面にラー油を浮かせた牛コンソメベースの
スープに、甘エビを焼き臭みを取ってから煮込んだ
スープを凍らせた氷をトッピングした
ラーメン。
具には
ローストビーフ、まこも茸の炭火焼、パクチーの薬味を乗せた。
時間差で氷が溶けて
スープと混ざりドンブリ内で調理が行われ、洋風な味からトムヤムクンのようなエスニック風の味に変化していく時間差ダブル・
スープが特徴。
テレビ番組での藤本との対決企画で
「激辛ラーメン」というお題で考案。
濃縮したムール貝のダシに唐辛子、鰹節粉末、煮干し粉末を混ぜたペースト、濃縮した昆布ダシで作った塩ダレ、鶏ガラと煮干しと鰹節から取った
スープを使用。
痛烈な辛さの中に、辛さに負けない重層的で複雑な味わいの濃厚スープが畳み掛けるようなラーメン。
辛味と旨味の精密なバランス取りの結果、ほとんど油分がないにもかかわらず唐辛子の刺々しさがなく、一種の清涼さすら感じさせる点もポイント。
昨今の激辛ラーメンが抱える
「『激辛ラーメン』を謳いながらも実際のところはその店のラーメンに既存の辛味調味料を入れて激辛味に仕立てただけで、基本的な味の構造はどれも似たり寄ったり」という問題への回答として作られている。
ただし分かりやすい味わいの
ラーメンではなく、油分が少ない分コッテリ派には物足りないので、淡口らあめんと同じく優れた味覚がなければその真価は感じ取れない。
ラーメンテーマパークでのイベントにて
「Wテイスト」というお題で考案。
ベースは丸鶏のみからダシを取ったシンプルな塩ラーメン。麺もシンプルな細麺を使用。
具も
チャーシューと
もやし以外見受けられない、極めてシンプルな作り。
最大の特徴はWテイストを生む仕掛けであり、仕組みとしてはドンブリ側ではなく
レンゲの裏面に3重構造のゼラチンが塗りつけられている。
スープの熱でゼラチンが溶けるに従い、最初の丸鶏のシンプルな旨みの味わえる
スープから時間経過で醤油とハマグリの味わいが加わった膨らみのある味わいに変化、最後に柚子の清涼な風味に変化していく。
必要最小限の工夫でスマートに研ぎ澄まされた味と演出を実現。ハマグリの豊かな味を膨らませて最後は柚子の風味と味わいでスッキリとした後味と引き締め効果を狙っている。
ただしこちらも淡口らあめん同様ギリギリまで無駄を削って本質的な部分だけで成立している料理なので、「味の分かる人間」でなければ物足りなく感じてしまう作り。
テレビ局のプロデューサーからの八百長依頼に応えて一般大衆の投票では負けるものの、本当の味では勝利を収めるという
「試合に負けるが勝負には勝つ」ことを体現したこだわりの品。
ラーメンテーマパークでの6連戦の2戦目
「札幌醤油ラーメン対決」で急遽土壇場のテコ入れで作ったラーメン。
ベースは
スープに火入れしたラードを浮かべたトンコツ主体の醤油ラーメン。
醤油ダレに毛ガニの味噌をたっぷり入れて深いコクを演出し、北海道産の地粉で作ったクセのない平打ち中麺を使用。
具にガゴメ昆布の三杯酢あえを使い、ネバネバ食感と磯の香りがアクセントになっている。
元々は毛カニの殻を揚げて作ったカニ風味のラードであったが、藤本の関与した
ラーメンの味を予測した結果自陣が負けると悟ると土壇場でメニューを考案。
山椒、ニンニク、ネギを中華鍋で炒めて作った「山椒風味ラード」を作り、カニ風味ラードから変更することで味のインパクトを高めた。
山椒、ニンニク、ネギの強烈な香りでファーストインパクトを与え、そこから
スープや麺の奥深さを味合わせる仕組みである。
ラーメンテーマパークでの6連戦の最終戦、藤本との最終決戦で「ラーメン誕生100年目に相応しい醤油ラーメンの進化型」という課題を受けて製作した和風醤油ラーメン。
「ラーメン界の店も客もレベルアップしてようやく時代がオレに追いついた」とし、自ら「畢生の出来映え」と豪語した、当時の芹沢の最高傑作と呼ぶべき品。
使用する食材を徹底的に鮎のみに絞っているのが最大の特徴で、スープは鮎の煮干しではなく大量の焼き鮎から取った出汁
のみに限定。
薄口醤油・酒・みりん・うるかを混ぜた醤油タレを使用し、〆に適度なこってり感を加えるべく
鶏油を少し浮かせることで完成した。
具も白髪ねぎと糸唐辛子くらいしか分からないなど極めてシンプル。麺も
スープとの自然な調和を追求すべく北海道産の地紛を使った自家製麺でスッキリとした味わい。
素材を全て鮎に統一することで味の一体感も高まり、淡口らあめん以上の鮎の上品な風味に溢れんばかりの鮎の旨味、鮎の煮干しとは違った鮎の鮮烈さ、うるかの強く深い芯のある味わいが加わる事で、アッサリとしていながら物足りなさや散漫さを感じさせない極上の味わいとなった。
有栖曰く
「必要最低限の調理で最大限の旨味を引き出すことをもって尊しとする『和食の精神』が息づく格調高き味わい」。
その味は芹沢に内心反感を抱いていた六麺帝の店主達をも絶句させ、「同業者として脅威以外の何ものでもなかった」「あんな凄い
ラーメンと戦わなきゃならない相手に同情する」とまで言わしめたほど。
しかし過去のトラウマから客の舌を最後まで信じられず、最後に加えた鶏油が蛇足となって統一感が乱れ、味の完成度が「99.99…%」といった具合に極僅かに下がってしまっており、それに気が付かなかった事が敗因になった。
なお続編には全く出てこない事をたまに突っ込まれるが、明らかに「鮎を使いすぎで採算が取れない」「味が繊細で調理が難しい」「淡口
ラーメン同様一般ウケが狙いにくい」
ラーメンなので、あくまで「勝負」用なのだと思われる。
また、「客を信じきれずに負けたことの反省として封印している」という可能性も考えられる。
『才遊記』初出
「麺屋せりざわ」で出した創作
ラーメン。
たっぷりの鶏と豚のミンチを煮込んで卵白と鶏胸肉でしっかりアク取りして仕上げた本格派清湯
スープに、国産小麦100%のストレート細麺を合わせた
ラーメン。
肉の旨味が凝縮され、一切の無駄が排除されたシンプルで研ぎ澄まされた上品な味わいを持つ。
ただしベクトルとしては淡口らあめんに近いものがあったため一部改善の余地があった点を汐見に突かれている。
こちらも「麺屋せりざわ」での創作
ラーメン。
自家製ゴマフグ干しから出汁をとり沖縄産の海水塩で味付けした塩ラーメン。
スープに少々浮かせた
オリーブオイルで、フグ鍋のような贅沢かつ気品ある味わいが特徴。
寂れた
中華料理屋の再建に考案した
ラーメン。
ゆとりの初めてのコンサルタントのヘルプ時、
「コンサルタント予算3万円」という制限の中、既存のメニューを片っ端から味見し、光る所のあった「もやしめん」をアレンジしたもの。
ラードで
もやし、各種野菜、豚挽き肉を炒め、塩胡椒醤油で味付けした
もやし炒めを鶏ガラベースの薄い
スープと合わせたシンプルな構成。
元々店にあったもやしめんと比べて
野菜炒めの量を大幅に増量、コッテリ感とメリハリの効いた味わいを実現させ、旨みが大幅に増した。
高齢かつ力量も高くない店主でも扱える程度のアレンジで現在流行りの「ボリューム系(二郎とか)
ラーメン」らしさを演出し、原価率の問題も品数をもやしめん・
ラーメン・餃子の3品に絞ることでクリア。
店自体も徹底的な清掃と、古い内装を活かしたシンプルな装飾にとどめることで「レトロをコンセプトとした店」と演出した。
濃口らあめんの欠点である
「鮎の必要性の薄さ」を突かれたカッコウ戦術を打ち破るために開発。
昔デパートの
ラーメンフェアで3日間だけ販売し、以後作る事は無かったという「伝説の
ラーメン」がベースになっている。
最大の特徴は
骨抜きした鮎の身と腹ワタを丸ごと磨り潰したものを醤油とみりんと一緒に煮て一週間熟成させた醤油ダレ。
これにより味わいの統一感を崩さず、従来の濃口らあめんではほとんど感じられなかった鮎の煮干しの風味を強烈に打ち出すことに成功している。
更に香味油に鮎料理から着想を得た蓼油を採用しており、鮎の煮干しダシの複雑さ、鮎ダレの濃厚さ、蓼油の鮮烈さが緻密に構成された逸品。
加えて価格設定をあえて
950円に引き上げることで高級感を演出し、見事カッコウ戦術を打ち破るヒットとなった。
なお、その過程でゆとりの決め台詞「ピッコーン!」を決めポーズごと真顔で披露してゆとりをドン引きさせている。
鮎の煮干しを安価なカタクチイワシのものに変更した、廉価版(700円)の濃口らあめん。
従来の濃口らあめんをこのメニューに替えることで、値上げした「解」の穴埋めをし、非合理的だった煮干しの使用を廉価版という名目できっぱりと廃止。
芹沢の
黒歴史の象徴であった濃口らあめんを乗り越えると共に、安本のカッコウ戦術を完全に叩き潰した。
『再遊記』初出
スランプに陥った芹沢の職人人生を賭けた、
「お酒を使ったラーメン」という課題に対する起死回生の一品。
醤油の代わりにスタウトビールで豚肉を煮込んで豚の旨味を移し塩を入れ、醤油と同じ塩分濃度にした
ビールタレを採用。
IPAを適量入れた鶏ガラとカツオ節ベースのスープを作り、
チャーシューにはスタウト
ビールで煮た豚肉をランビックに漬けこんだものを使っている。
ランビックはベルギー産だが、IPAとスタウトは知り合いから特注したものを使用。麺も風味豊かな全粒粉を使い相性も抜群である。
ウマ苦、甘苦を軸とした複雑で中毒性の高い新感覚の味わいが楽しめる。
※これ自体は芹沢が考案したメニューではないが、後述の内容に関わる為記載
芹沢が引退後にアルバイトとして入ったラーメン店「ベジシャキ豚麺堂」の看板メニュー
あっさり目の茶濁豚骨スープに加水率高めで伸びにくい中太ちぢれ麺をベースに、チャーシューと一緒に塩・味噌・醤油・カレー・オイスターソース・激辛版の塩/味噌/醤油の合計
七種類もの味の野菜炒めを選んでトッピングする。
原理としてはかつて芹沢が作った「7つの味の香味油」の
野菜炒めバージョン。
あっさり味の
ラーメンに野菜炒めの味が上乗せされる仕組みで、野菜炒めの味が
ラーメンに溶け出し味の変化を愉しむことが可能。
日々の食事としてのラーメンに主観を置いており、ボリューミーな内容と近年のヘルシー志向に綺麗にマッチング。
とびきり旨い訳ではないが、マニュアルに従えばバイトであっても作れるくらいに調理が容易と、
マニア向けでない、普段の食事としてのラーメンとしては芹沢も
「正解」と認めるクオリティを誇る。
「ベジシャキ豚麺堂」の創作
ラーメンコンペに飛び入り参加した際に考案した一品。
具に肉味噌ではなく細かく切った牡蠣を使った
担々麺。
「近年流行り出した担々麺専門店もダシには注力していない」という着眼点から追いガツオの要領で牡蠣のダシと鶏白湯スープを合わせている。
小鍋一杯分の鶏白湯
スープをレンジにかけ、細かく切った大量の牡蠣を
スープに投入、牡蠣の風味を限界まで引き出してから芝麻醤と辣油を入れて仕上げた
スープが最大の売り。
芝麻醤と辣油と鶏白湯というアクの強い食材を調和させつつも牡蠣だしの風味が3食品を従えるような存在感を発揮。
立体的でメリハリの効いた旨さを実現した。
審査をした社長曰く
「ゴマ風味の豊かな芝麻醤と、花椒を効かせたシビカラ味の辣油を使い担々麺の王道の味わいは抑えつつ、ベースとなるダシが未だかつて味わったことのないもの」。
なお、創作ラーメンコンペに飛び入り参加した理由は「険悪な関係にあった若者二人を焚きつけてコンペで対決させてみたら、二人が想定以上に成長して爽やかなライバル関係になった」ことを「なんか、つまらんな…」と感じてもとい叩きのめしてやりたくなったから。
早い話が有望な若手連中をちょっとイジメたくなったのだ。尤も、二人ともコンペの結果から良い刺激を得て更なるやる気を見せることになったのは不幸中の幸いと言えるのだが……。
自販機茶屋での
「自販機で作れるラーメン」という課題によるラーメン対決で考案した醤油ラーメン。一杯400円。
ラーメンを作る自販機の設計上、作られる
ラーメンが非常に限定され、多くても最大2種類しか作れないのが特徴。具はシンプルな焼豚一枚のみ。
メインとなる
ラーメンは鶏ガラ、かつお節、昆布から出汁を取ったシンプルながらも上品で味わい深いあっさり味。麺は平打ち縮れ麺を採用している。
そして最大の特徴は
別の自販機で別売りの追いスープ(価格は100円)を購入して好みの味へと自由に味変させることが可能な点。
これにより自販機でありながら
5種類のラーメンの提供に成功した。
追い
スープの変化の内容は
- 味噌スープ:山椒の効いた味噌ラーメン
- 魚介豚骨スープ:旨味たっぷりのドロっとした魚介豚骨醤油ラーメン
- 麻婆スープ:流行りのシビカラ麻辣味ラーメン
- 海老香味油:エビの風味たっぷりの魚介系ラーメン
になり、ベースとなるあっさり醤油
スープも存在感が消えることなく、しっかりと味の引き立て役になっている。
加えてどの追いスープを入れてもチグハグ感の一切無い
「完成度の高い美味しいラーメン」が成立しており、知らなければどの味も全く違うラーメンにしか感じられないほどのクオリティの高さを有している。
自販機という厳しい縛りの中でも創作性と商業性が両立した芹沢らしい
ラーメン。
その昔トラブルで犬猿の仲になってしまった背脂チャッチャ系ラーメン店の店主との和解も兼ねて提案した
チャーハン。
そもそもラーメンではなくチャーハンを提案したのは
「店主は惰性でラーメンを作っていただけなので、別にラーメン屋に拘る必要はない」「(店に近い)駅周辺のラーメン店はもう店が増えすぎて過当競争気味であり、客もラーメンに対して食傷気味」という身も蓋もないシビアな視点によるもの。
なので再建案もラーメン屋としての再建ではなく
「チャーハン専門店への転向」が主体。
ちなみに店主も内心は
中華料理人志望で
中華料理に愛着を持っていたこともあり、この方針転換には非常に意欲的だった。
またこれまでのラーメン屋としてのノウハウも活かせる上に、普通に中華料理店をやるよりも費用が安上がりで済むなど多くのメリットを持っている。
肝心の味は、香ばしいニンニク醤油風味の黒チャーハンにたっぷりの白い背脂が振りかけられているのが特徴。
チャーハンの塩辛さに背脂のまろやかさが絶妙に調和、食欲をそそる甘辛コッテリ味という食べ盛りの若者向けの味付けになっている。
物珍しさから客によるSNSでの拡散も行われ、背脂チャッチャ系が元々持つパフォーマンス性の高さや、店主のチャーハンの腕前の良さも相まって見事大盛況の売上を博した。
外食コンサルタント・小宮山との
「小宮山が10年前に作った牛清湯らあめんの改良作」というお題で作成したラーメン。
ビジュアルは牛清湯らあめんに黒と赤の2色の餡が掛かっている
あんかけ麺。
黒い餡は「カツオ節が効いた濃厚魚介風味の醤油餡」、赤い餡は「中華スパイス満載の四川火鍋風の激辛餡」の2種類。
具は餡の他は
チャーシュー代わりの
ローストビーフのみ。
牛ミンチをコンソメの技法で煮込んだ和風コンソメ風の上品な醤油
スープが持つ、牛の風味と旨味を純粋抽出したかのような深みのある上品な味をベースとし、
黒い餡と一緒に食べると強烈な魚介風味が加わり複雑で奥行きのある味わいに、赤い餡と一緒に食べるとスパイシーな激辛味を
スープの旨味が下支えする立体的な味わいに変化。
そして最後は2つの餡が混ざり合い、動物系+魚介系の旨味たっぷりのスパイシーな醤油ラーメンへと変化する
4つの味変ギミックを備えた脅威のラーメン。
3つの異なる味わいが混ざり合っても散漫にならず調和するようまとめられた優れたバランス感覚の光る逸品である。
「昨今の町中華ブーム故に、これまで異端だったあんかけ麺もラーメンの1つとして認められ始めている」という発想から作成された。
雨に打たれて風邪をひきかけた際、風邪対策として作った
インスタントラーメン。
ベースとなるのはそのまんま
袋麺のチャルメラ(しょうゆ味)で、仕上げにチューブのニンニクとショウガ、コショウとラー油、九条ネギのみじん切りなどの薬味がたっぷり投入されている。
作り方自体は袋に記載されている通りだが、本来あらかじめ丼に入れておく粉末
スープを沸騰中の鍋に投入することで、湯気とともに立ち上がる粉末
スープの香りを楽しむという工程(?)が存在する。
これを日本酒の熱燗と一緒に摂取した後、布団蒸し状態で寝ることで大量の発汗を促し、引き始めの風邪を徹底的に体内から追い出すのが若い頃から続けている芹沢流の風邪予防対策。
しかし現実にはこうした大量発汗による風邪予防は身体に負担をかけるだけで意味がないとも言われており、芹沢自身も「あくまでも自己流の荒療治であり、真似して何かあっても責任は負えない」とカメラ目線で読者に予防線を張って忠告している。
余談だが芹沢自身は小学生時代から50年以上もの間チャルメラを啜っており、熱心なチャルメラ信者であることが明かされた。
そのため人気袋麺トップ10でチャルメラが7位だと知った時は「何かの間違いでは?」と心の中でボヤキながら眉をしかめた。
創作ラーメンフェスへの参加を要請された際考案した、芹沢のあくどさが久々に爆発した醬油ラーメン。
これまでの章でピックアップされた「ブランドイメージにより感じる味の変化」「乾麺技術の発達」に着想を得て、「これまで日本に定着してしまった乾麺の固定観念を破壊する」という目論見で立案された実験的作品。
具体的には
- 「いかにも長い歴史を感じさせる長ったらしい謳い文句」でブランド感をアピール。なお歴史に関してはギリギリ嘘ではないが本当ではないグレーゾーンの謳い文句。
- 料理人経験のある売れない舞台俳優(50歳フリーター)をアルバイト店長として雇って熟練の職人感をアピール
- 乾麺を「干麺」という謳い文句にして、ブランド麺に見せかけアピール
といった感じでほぼ大部分を虚構で塗り固めた、創作
ラーメンの皮を被った羊頭狗肉の一品。
麺はブランドでもなんでもない
ディスカウントスーパーで買った無名メーカーの安物。1kg350円と馬鹿みたいに安い。
一方
スープは芹沢が手掛けており、自然養鶏の丸鶏をベースにしたシンプルな醬油
スープは万人受けしやすい味わいで有栖達にも好評だったが、麺はハイレベルどころか安物だったのでコシも滑らかさもイマイチと酷評された。
これも
「安物をポジティブなイメージで塗り固めたらどうなるのか」という芹沢の意図によるもの。
虚構のイメージに騙された一般客はありもしない味を感じて満足しており、イベントでのアンケートも21店中4位と中々の好成績。
虚構の情報を喰らい満足している客を見た芹沢は「いいお客さんだ…」と下衆染みた顔でニヤニヤしていたが、言うまでもなく事情を知る者や味の分かる者からすると詐欺同然の品としか感じられないのが問題点。
芹沢も自ら負けを認めるほど独創性の塊だった、原田という元ラーメン職人と対決するために制作。
上品で洗練されたラーメンを旨とする芹沢らしからぬ大ぶりなドンブリにギリギリまで脂っこい醤油スープで満たして、麵も具もとことん入っている一品で、一見では荒々しくジャンクなテイストを感じさせる。
熱々のスープに熱熱のラードで蓋をして湯気の無い激熱ラーメンが特徴で、コッテリしていて旨味も強烈、麺はツルツルしてすすり心地よく具もどっさりで食べ応えがある。
トンコツ、鶏ガラ、煮干しなどを煮込んだダシにたまり醤油を使ったタレと合わせた真っ黒なスープは旨味とコクがある。
作中で主流である新世代系ラーメン店にある切立丼とは違い、玉丼にスープを並々と注ぐ事によりスープが少ないという客への不満もカバー。
主流になった新世代のラーメンは小さくまとまりそうな気配を見て、しかもそのブームに乗っかっただけの低レベルな店を鑑みた結果、作り上げたダイナミズムなラーメン。
なお、このラーメンの美味さを支えるのは化学調味料である。すなわち再遊記以前のニューウェイブ系だった芹沢を知る者にとってあり得ない一品。
そして芹沢の真の目的は『普通のジャンクなラーメン』という型の中でも味を追求したハイレベルな品を作る事ができると証明し、独創的である事に縛られラーメンが作れなくなった原田に引導を渡すことであった。
【名言】
- 「ヤツらはラーメンを食ってるんじゃない。情報を食ってるんだ!」
- 「よく覚えておけ。ラーメンは伝統料理と違って、セオリーもマニュアルもない。“常識”に囚われているようでは、まだまだだな」
- 「ラーメンの場合、下手なマスコミの記事よりネットを信用する“情報バカ”が多い」
- 「なんの制約もなければ、素人でもそれなりにうまいものを作ることはできる。だが、どんな状況でも最善を尽くしてうまいものを作るのがプロだ」
- 「助けてほしければ金を出せ」
- 「『うまいラーメン』で満足しているうちは、アマチュアに過ぎない。『うまい店』を目指してこそ、プロなのだ」
- 「新しい何かとは、構造を疑い破壊することなくしては生まれないのだ!」
- 「行列で迷惑をかけたから店を畳む?そんな根性なしはとっととラーメンから足を洗うといい」
- 「馬鹿を言うな!!ラーメンに枠などない!!」
- 「要するに、オマエには本当に作りたいラーメンがないんだよ」
- 「勝負を決めるのは、ラーメンの腕だけじゃない」
- 「店をやるということは、常に時代の嗜好の半歩先を行く姿勢が必要だ」
- 「いいものなら売れるなどというナイーヴな考えは捨てろ」
- 「料理をうまいと感じる際、そこには 未知への感動と、既知への安堵という両側がある」
- 「お客様は神様などではありません。お客様とは…人間です」
- 「『やる』というクライアントに『やるな』という助言だけはしてはならないのだ」
- 「『金を払う』とは仕事に責任を負わせること、『金を貰う』とは仕事に責任を負うことだ。金の介在しない仕事は絶対に無責任なものになる」
- 「ラーメンとは…フェイクから真実を生み出そうとする情熱そのものです」
- 「ここなら昔一度、来たことがある…。いい店だ。本物のラーメン屋だ」
- 「武田のおかげで目が覚めた!!俺はカリスマでも天才でもない!!好きなラーメンを好きに作りたいだけの、イカれたラーメン馬鹿だっ!!」
- 「俺は社長も社員も同じだと思ってる。報酬と労働を交換しているだけなのだからフィフティフィフティ…役割が違うだけで、上下関係もない対等な人間関係だ」
- 「若き日の小さな勲章は、時として大いなる呪いと化します。その者を増長させ、自己評価を歪めさせ、進む道を誤らせる」
- 「自惚れた勇者よりも、賢い臆病者の方が強いんです」
- 「商売ってのは、どれくらいの儲けで手を打とうが、それで成り立っている限りはみんな正解なんだ」
- 「こいつらは誰かさんと違って、最後の1台が無くなるその日まで1杯25秒のラーメンを作り続けるでしょうね」
- 「いくら手が動いても頭を動かせない者にオリジナルないいものは作れない」
- 「やはり…全ては昔話か…」
- 「お前の改良は、実験的な失敗作の角を丸め、ありがちな佳作に小さくまとめたに過ぎない、いわば妥協の産物…。だが俺なら、失敗作のエッジを尖らせ、画期的な傑作へと昇華させんと挑む。それこそがニューウェイブ系の精神だ」
- 「「やりたいこと」と「やれること」がズレている時、人はやりたいことをやれる様努力する訳だがそうそう上手くはいかない…極端な例が「野球選手になりたい」「サッカー選手になりたい」とかだ。いくら頑張ろうが、恐らくは99%の子供達、若者達の夢は呆気なく潰える。そんな失敗確率の高過ぎる『夢』なんぞに賭けるより、「やれること」をやり続け、成功体験を歓び、自信を積み重ね、それを「やりたいこと」に変えて行った方がよはど上手くいく」
迷言
- 「オレよりうまいラーメンを作り、オレより儲けてる奴がいるなら、お目にかかってみたいものだ」
- 「いいか?行列店にわざわざクレームをつけてくるようなヤツは、無能ゆえに暇を持て余していて、そのくせ無闇にプライドだけは高く、嫉妬深いクズのような人間だ」
- 「オレのはハゲじゃないって言ってるだろっ!!」
- 「(あんのクソアマッ!!トンコツで袋叩きにしてやりたいっ!!)」
- 「そんなことは、ま っ た く あ り ま せ ん。」
- (社長としてこんなことを思ってはいけないのだが…汐見ザマァ〜〜ッ!!!こいつの泣きっ面がこんなに気持ちいいとは…!!)
- 「ピッコーン。」
- 「私は別に、見知らぬ女の子たちがスポーツで勝ったからといって何も感じませんでしたけどね」
- 「ラオタにはマザコンが多いからな」
- 「殺してこい」
- (ロクな食材も使ってないしうまくもまずくもないが、それがいいんだ。もう"複雑で奥行きのある味わい"とか、"こだわりの高級食材"とか、疲れたよ…)
- 「日本中のラーメン屋はこれから夜営業だというのに…。愉快、愉快!!俺はさながら上級国民だっ!!」
- 「(現実を前にして夢は無残に破れ、恋人たちの明日への誓いは儚く潰える…か…)青春の蹉跌は、蜜の味だな♪」
- 「俺のお膳立てによって、悩める若者たちは救われ、和解する理想的展開に…」
「なんか、つまらんな…」
- 「3年前に板倉さんはこんなことおっしゃってましたよねぇ。『(中略)大江戸せあぶら軒は今や本店支店で全10店!!らあめん清流房の10倍繁盛しているんだから10倍うまい!!』と。
ウチは今日3162杯売れたんですが、10倍おいしい大江戸せあぶら軒さんなら…31620杯くらい売れたんじゃないですかぁ?」
- 「俺の店に向かって土下座して詫びろ。地べたに額をこすりつけてな。そしたらスタッフは戻してやるよ」
「クッ…ククッ…ヒャ~~ッハッハッハッ!!ハハハハ〜〜!!ヒャハッ!!ヒャハッ!!ヒャハハハ〜〜ッ!!ヒャハハハ〜〜ンッ!!ハ〜〜ンッ!!」
- 「いやー俺も歳だな。人を土下座させておいて完全に忘れているとは…。」
- 「映画やドラマではよく『復讐なんて虚しいだけ』なんてセリフが出てくるが、あんなのは良い子ぶったタワゴトだ。完膚なきまでの復讐ほど気分爽快、ストレス解消、かつ自己の尊厳を回復させるものはない」
- (俺や米倉のようなラーメン屋が、どれだけ苦労してラーメンを創作料理の域にまで高めたと思っている!!お前らは一生、安物を食い続け、無知と怠惰の楽園の中で死ぬがいい!!)
- 「うぇーい!!」
- 「あいつらはラーメンを食う以外は何もできない原生動物の一種だ。学名はラオタ」
- 「富士山に電動アシスト用のサイクリングロードを作るべきだ!!」
- 「女でもナンパしてチョメチョメしてるんじゃないか」
「チョメチョメしてたのか?」
- 「やっぱり、あいみょんでも聴くか」
- 「ふっふふ…。ビッグ・ストーンが奴隷商人たちを皆殺しにするシーンは今読んでもシビれるぜ」
- 「俺の荒療治を正当化するつもりはないし、真似をして何かあっても責任は負えないのでそのつもりでな(カメラ目線)」
- 「クッ クッ クッ いいお客さんだ…」
【余談】
一時期ネット上で流行した
「ハゲメガネモード発動」のbokete画像の男性こそがこいつである。
作中では、芹沢が他の登場人物を極めて冷徹かつ現実主義的な正論でぶった切るシーンがいくつも登場するのだが、
某大手BBSで
料理漫画を語るスレが建つと結構な確率でそのようなシーンの画像が貼られ、その説得力溢れる話術などから原作未見の人間からも「正論」「ハゲのくせに有能」と評価されることが多い。
さらに最近ではSNS上にも彼のセリフ画像がアップされ、大きく拡散されることがちょくちょくある。
2000年代に描かれた漫画で、後に社会問題となる「
金の介在しない仕事は絶対に無責任なものになること」や「
伝統という言葉を盾に新規事業制度を開拓しないこと」が触れられているのだから、原作者の先見の明が極めて優れていた証左だろう。
なおドラマ2作目『行列の女神 ~らーめん才遊記~』ではまさかの女体化を果たした(演:鈴木京香)。役名は「芹沢達美」。
「スキンヘッドの中年男性が若い女性を正論でいびる」というのは漫画ではともかく、実写ではパワハラっぽさが出てしまう色々キツい表現に見えるが、それを女性にすることで絵面をマイルドにし、原作を知らない視聴者も受け入れやすくする無難な選択だったと言える。
このような大きい設定変更は普通なら何かと炎上しがちだが、この作品に限っては
- 「原作のラーメンハゲはクレームをつける人間をボロクソに貶している」
- 「原作のラーメンハゲならマーケティングの都合上ドラマで自分を女体化することも平然と認めるはず」
という説得力のある意見が大勢を占め、ファンからは概ね受け入れられたようである。
変更したのは外見設定だけで、言動自体は概ね原作を再現していたのも大きいだろう。
でもそれはそれとして実写版の男性ハゲ(本当の坊主頭)を見たいという声もあったりする。いつか実現するだろうか。
追記・修正とは…
クソ項目から良項目を生み出そうとする情熱そのものです。
- ↑3芹沢さんはどっちかって言うと秀才型の人間だから、感覚で勝負する天才肌の人間は相性悪いんじゃない -- (名無しさん) 2023-05-09 13:06:47
- ただの正論おじさんかと思ったら、普通につらい過去持っててびっくりした -- (名無しさん) 2023-05-09 20:34:41
- モブに淡口らーめん評価されてるとこ見て表情緩ませるとこ好きだわ -- (名無しさん) 2023-05-10 08:31:40
- ラーメンハゲってもう還暦迎えたお爺ちゃんって本当? -- (名無しさん) 2023-05-11 22:35:04
- ↑今回の話でチャルメラが出たときから食べ続けていたって言ってたから還暦を迎えててもおかしくはない -- (名無しさん) 2023-05-13 09:41:53
- 行列店にわざわざクレーム云々はちゃんと話の前後読むと名言どころか迷言では? -- (名無しさん) 2023-05-19 11:22:31
- 印象深いキャラだがこのキャラだけではここまでの人気は出なかったと思う -- (名無しさん) 2023-06-04 22:25:17
- ラーメンハゲのアクスタとかTシャツとかグッズ出てきて草。そのうち淡口らあめんと濃口らあめんが食べられる日も来るのかな? -- (名無しさん) 2023-07-12 15:27:07
- ……やっぱこのハゲ強すぎない?(最新刊見て) -- (名無しさん) 2023-08-05 13:46:55
- 今年の夏コミでは彼に扮したコスプレイヤーがいた模様 -- (名無しさん) 2023-08-22 01:46:54
- 最新話見てると後付けとはいえ濃口らあめんが生み出した業が芹沢個人にとって余りにも深すぎる…。万人に受け入れられた代わりに夢を語らった友人を失ったらそりゃ捻くれるわな -- (名無しさん) 2023-11-11 05:52:38
- 友人は淡口らあめんが好きだったんでなく夢と理想を追いかける芹沢に惚れたんじゃないかな -- (名無しさん) 2024-01-19 09:10:01
- ラーメンへの情熱失ったかと思いきや「新たなラーメンの形式」を生み出そうとするとか生粋のイカれたラーメン馬鹿だよね -- (名無しさん) 2024-04-24 12:57:42
- 続編でバツイチだった事が発覚したけど実は元妻に引き取られた子供がいるとかないかな? -- (名無しさん) 2024-06-08 19:26:43
- 立ち塞がる巨大年長ライバル役、厳しくも温かく導く上司役、老いから再生志す主人公、それぞれは他作品にもいるが、1人で全部やるのはハゲが唯一無二でスゲエと思う -- (名無しさん) 2024-06-09 00:54:18
- 雄山、芹沢サン、薙切えりなのグルメ漫画三大ツンデレ -- (名無しさん) 2024-06-16 12:32:22
- もう「普段やってない、やりそうにないこと」をやってる絵面だけで笑えてくるキャラになってる -- (名無しさん) 2024-09-10 00:47:19
- なんだかんだでラーメンからは離れることができないのが本当にバカ ラオタだのとバカにしつつも手は抜かないし -- (名無しさん) 2024-10-14 05:00:39
- もし再遊記が実写化したら昼間からビールをイッキしてサウナにいそしみ陽気にサイクリングするおもしれー中年女な芹沢さんを見る羽目になるのか…? -- (名無しさん) 2024-12-12 19:39:31
- ちょっと思ったんだけど、淡口らあめん極って事前に試作しなかったのだろうか?試作して味見していたら鶏油がいまいち合わないってのがわからない人ではないと思うんだけど… -- (名無しさん) 2025-01-07 22:22:16
- ↑多分鶏油入れない状態で作って、その後に客を信じきれない恐怖心から足したんだと思う。後多分「完全に調和していた藤本のラーメンと食べ比べたから」浮き彫りになっただけで、ハゲの味方だった6店の人気店店主も事前に喰って気付いてないからね? -- (名無しさん) 2025-01-10 10:01:53
- ハゲの弱点ではあるが。世のインスタントラーメンの進化にさっぱり気づいてなかったりする -- (名無しさん) 2025-01-18 13:08:07
- 高級な寿司屋より好きなネタをひたすら食うのをやって見たかったという小市民的おじさん -- (名無しさん) 2025-01-31 19:24:12
- ↑2でもインスタントを完全馬鹿にして食べてないイメージあったから、チャルメラ半世紀愛好家だったのは好感度上がったな -- (名無しさん) 2025-02-01 08:05:13
- 無料公開中なので読んでいるのだが、この人、あまりにも藤本くんとイチャイチャしすぎだろ……ヒロインそっちのけじゃねえか!!!!! -- (名無しさん) 2025-02-02 12:23:28
- 色んなところで言われてるけどヒロインとライバルと師匠を一人でやる男だから…… -- (名無しさん) 2025-02-03 13:52:46
- ↑ 才遊記まで読み終えたんだけど、こ、この人、藤本くんへのあのしっとりした絡み方、藤本くんにしかしてねえ! やめろ、ヒロインとしてもライバルとしても師匠としてもあまりにも強すぎるだろうが!!!!!!! -- (名無しさん) 2025-02-03 17:23:19
- 鹿賀丈史版の芹沢サンは演者の関係かかなりのナイスミドルだけど原作同様の皮肉屋かつ原作以上の人情家として描かれてたね。原作での岩下に相当する部下(演:ガッツ石松)ともほぼ対等みたいな関係だった -- (名無しさん) 2025-02-22 21:26:51
- 実写の配役もハゲなら多分こうしてると思うからなんか納得(性別違うけど)。 -- (名無しさん) 2025-04-15 20:05:52
- 作者的にはあんま好きじゃないかやり切ってもう作れない可能性も有るけど、こうも藤本君と絡み無いと芹沢さん的には彼はもう過去の人的な扱いなのかなあ、と不安になってしまう -- (名無しさん) 2025-04-23 16:35:59
最終更新:2025年03月12日 14:56