三枚のおふだ

登録日:2012/05/16 Wed 20:32:21
更新日:2024/01/03 Wed 22:28:42
所要時間:約 4 分で読めます




『三枚のおふだ』とは日本の昔ばなしの一つである。
青森県や埼玉県に伝わっているものが有名であろうか。
認識ある方は多分、幼稚園のころに貰った本や図書館の本などにあるだろう。


▼大まかな物語▼

むかしむかし ある所に小さな寺があって、そこにお師匠さんと、弟子の坊主がすんでいた。

ある日、山へ柴刈りへいった坊主だが、道に迷い、日もくれてしまった。

「まいったな、どないしよ」

と、そこに小さな家があった。嫌な予感しかしないが

「こりゃ有り難い 一晩止めてもらおう」

とばかりに その家へ上がった。中には老婆がいて、

「あらあら、道に迷ってしまったかね。一晩泊まっていきなされ」

と言われ、食事を頂いたり、布団をしいて貰ったりした。さらに嫌な予感しかしない



…その夜、寝ていると、どうも尻がむず痒い。
坊主は何事かと思い眼を覚ますと、なんと…

老婆が長い舌でケツを嘗めていたのだ。

「うへへへ 旨そうな尻だ。寝ている間に食っちまおうか…」

老婆の正体は山姥(ヤマンバ)だったのだ。
ヤマンバギャル(死語)がショタ坊主を「食べちゃおっ♡」な話ではないよ

慌てた坊主、

「やっぱり。もう帰りますから許してくだせぇ」

と、帰るそぶりをしたが、時、既に遅し。

「正体がばれちまったら、もうお前に選択肢は無い。後はわかるな…」と言わんばかりに、老婆は、長い舌でしつこく弟子の尻を嘗めてくる
流石にヤバイと感じた坊主だったが、老婆にケツを嘗められた挙げ句に食われて死ぬわけにはいかない。 そこですかさず、

「お腹の調子がわるい。雪隠(せっちん)*1へ行かしてくれねぇか?」

と行った。が……

「お前、そういって逃げるわけじゃないだろうな」

と老婆は言う。便所は外の小屋にあったのだ。それでも坊主は行きたいと願う。そこで、坊主に縄をくくったのだ。

「どないしよ」と坊主は悩んでいると、便所のうえに神様がやってきて こういった。

「三枚のおふだをお前に托す。それを使って逃げなさい」

と。 そして、坊主にかかっていた縄を別の場所にくくりつけ、坊主をにがした。

山姥は気づいていないが、いい加減にプッツンときた山姥が無理矢理縄を引くと、

\どんがらがっしゃ~ん/

と、便所の屋根が落ちてきたのである。

「野郎、逃げやがったな!!」

と、キレにキレまくった山姥は、坊主を追い掛けまくった。
そこで坊主は一枚目の白い札に、

「でかい山になれ!!」

と願いを込めて後ろに投げる すると、平野だった場所はみるみるうちに天を仰ぐような巨大な山となった!!

「なんだこの山は」

とばかりに山姥はいそいで山を駆け登る。

そして、またまた近づいた山姥、坊主は、二枚目の青い札に、

「大川になれ!!」

と願いを込めて後ろに投げる みるみるうちに、山姥の目の前は水でいっぱいになった。

「なんだこの川は!!」

とばかりに、大慌てで泳ぐ山姥。

そしてまた近づく山姥、坊主は三枚目の赤い札に、

「大火事になれ」

と願いをこめて後ろに投げる。山姥の目の前はみるみるうちに炎でいっぱいになった。

それでもかいくぐり、追い掛け回す山姥。

そうこうしてるうちに坊主の寺についてしまった。
坊主はいそいで扉を叩く。

「開けてくだせぇ 師匠様」

と言うが、

「待て待て、まだ慌てる時間じゃない」

と、のんびリーな師匠様。

ようやく開けてもらい、坊主は家に入れてもらう。とその直後お師匠の目の前には例の山姥がいた。

「お前、坊主を引き渡せ 引き渡したら命は助けてやる」

と山姥が言う。 そこでお師匠は、

「なら、俺の要求に答えられたら坊主を引き渡そう。大入道になれ。」

と言った。

「何を、簡単な事を」

と山姥は言うと 天を仰ぐようにでかくなった山姥。 そこで、お師匠様は、

「じゃあ、小さな豆になれ」
とお願いする。

「またまた(ry」

と山姥は言うと、小さい豆になった。お師匠様はその豆を拾って……


……い゙だだぎま゙ぁ゙ず


物語は以上である。めでたしめでたし。


ちなみに味はほんのり甘かったらしい。


▼バリエーション▼

昔話の例に漏れず、地域差により様々なバリエーションがある。
  • お札は神様ではなく、出がけに師匠がくれた
  • 坊主はいたずら好きで、柴刈りではなく遊ぶもしくは栗拾いのために山へ行った
  • 山姥は坊主の尻を舐めず、人骨の転がった台所で包丁を研いでいるところを坊主に見られて正体がバレる
  • 一枚目の札は、「まだ入ってる」と便所で嘘を言う
  • お札は巨大な砂山に変わり、足を取らせかなりの時間稼ぎが出来る
  • お札が変わった大川の水を山姥は飲み干す
  • お札が大火事に変わったら前に飲んだ川の水をゲロッて消火
  • 豆というのはあくまで大きさの比喩で、小さくなっただけの山姥を食べる
  • 最後の小さくなった山姥を師匠は餅にくるんで食べる
  • 山姥を食べた師匠がその後トイレに行き、出した糞から山姥の化けたハエが出て飛び去る
などなど

まあ共通点は
  • 坊主は迷って山姥の家へ
  • 山姥は坊主をタベタイ
  • 三枚のお札で時間稼ぎ
  • お師匠様は山姥を食う
の4つか。


▼神話として▼

この話には元ネタがあり、イザナギがイザナミを黄泉の国から連れ帰る事に失敗した時、イザナミが差し向けたヨモツシコメから逃げるエピソードであるといわれている。
この話ではイザナギは最初に櫛の歯を折ってそれを竹の子に変え、次に髪留めの紐を山葡萄に変えてヨモツシコメの足止めを行い
最後に、黄泉津比良坂にあった桃の木から実を捥いで投げつけ、ヨモツシコメを追い払っている。

アメリカの神話学者ジョーゼフ・キャンベルによれば、世界の様々な神話や英雄譚は一貫して共通する物語構造を持ち、魔術による逃走というプロセスもまた、その中の一部に含まれると述べている。
これは「異界を訪れた英雄が自らに課せられた試練を終えた後、元の世界へ帰還する際に待ち構える苦難を越えるべく、超自然的な庇護者からあらゆる助けを借りる」というもので、前述のイザナギのくだりは勿論、この昔話にもまんま当てはまることが分かる。
詳しくは同氏の著書『千の顔を持つ英雄』を参照。
かのジョージ・ルーカスも映画『スター・ウォーズ』を制作するにあたって大いに参考にした一冊だそうな。


追記、修正は老婆にケツを嘗められながらお願いします

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最終更新:2024年01月03日 22:28

*1 便所のこと