とあるの夏(WS)

登録日:2012/05/28(月) 01:30:07
更新日:2018/04/06 Fri 11:01:50
所要時間:約 5 分で読めます





とあるの夏」とは、TCGヴァイスシュヴァルツ(以降WS)において、2011年に「とある科学の超電磁砲」(以降とある)のデッキが大流行した現象のこと。

これ以降WSプレイヤーの間では、ある特定のデッキが強かった時期のことを、「~の夏」「~の冬」と表現するようになった。

とりわけ有名なのが「とある」の流行した2011年前期の「とあるの夏」とニセコイの流行した2014年後期の「ニセコイの冬」である。


WSというゲームは運要素が非常に強いので、本来は作品ごとの差が出にくいゲームデザインなのだが、
この時期はぶっちぎりでこの2つの作品の使用率が高く、大会では右を見ても左を見ても「とある」、ニセコイばかりだった。

この2つの時期をWSの暗黒期と捉えるプレイヤーも多い。


命名の由来はMTGの「ネクロの夏」より。


とあるの夏


2011年2月、「とある」の追加エキスパンション「禁書目録Ⅱ&超電磁砲」が発売。「超能力デッキ」が大幅に強化された。


【強さの理由】

WSにおいて強いレベル3のキャラクターは以下の効果を持つカードである。

1.相手プレイヤーに直接ダメージを与える「バーン」を始めとして、「相手のクロックを増やす」(他ゲーでいうと相手のライフポイントを削る)能力。

代表例:「あなたは相手に1ダメージを与えてよい。」

2.自分のクロックを減らす「回復」能力。

代表例:「あなたは自分のクロックの上から1枚を、控え室に置いてよい。」


RG/W13-052
カード名:一つ屋根の下 美琴&黒子
カテゴリ:キャラクター
色:赤
レベル:3 コスト:2 トリガー:1
パワー:10000 ソウル:2
特徴:《超能力》・《風紀委員》

【自】 このカードが手札から舞台に置かれた時か『 チェンジ 』で舞台に置かれた時、あなたは自分のクロックの上から1枚を、控え室に置いてよい。
【自】[(1) 手札を1枚控え室に置く]このカードがアタックした時、あなたはコストを払ってよい。そうしたら、そのターン中、このカードのパワーを+2000し、このカードは次の能力を得る。「【自】このカードのバトル相手がリバースした時、あなたは相手に1ダメージを与えてよい。」 (ダメージキャンセルは発生する)


上記のレベル3キャラ・通称「屋根下」はこのカード1枚で上の2つの能力を両方とも持っていることがわかるだろう。


またWSにおいては前列に置くアタッカーとそれを支える後列のサポートカードによってゲームを進めることになる。


  • 前列
移動を持つお姉さまへの憧れ 黒子、高パワーの常盤台のお嬢様 黒子、「屋根下」をサポートするパジャマの美琴

  • 後列
高パワーを付与する“多才能力者”木山、生存力を上げる“冥土帰し”


「とある」では前列後列どちらも隙がないことからパワー・手札ともに申し分なく、ゲーム序盤から終盤まで相手を圧倒できた。

このように、優秀アタッカー・それを支えるサポート・強力なフィニッシャーと3拍子揃った非常に強力なデッキが「とある」であった。


【大規模大会での結果とその後】

上述の強さ、そして原作「とある科学の超電磁砲」の人気と相まって使用者は急増し、「とある」は大流行した。

地区大会32枠のうち、14枠が「とある」という結果となった。

全国大会決勝でも参加者30人中16人が「とある」を使用しており、
1〜4位全てが「とある」で占められてしまった。

この為、「“冥土帰し”」は2011/8/18 をもってタイトル限定構築で使用禁止。

一つ屋根の下 美琴&黒子」も同じく2011/8/18 をもってタイトル限定構築で2枚制限となった。

その後も上記のキーカードは引き続きほとんどが制限指定されていき、「とある」は大幅に弱体化した。
(現在では制限緩和の実施・追加パックの発売によって、かつてほどの強さはないものの、ある程度の強さはある)


これ以降はゼロの使い魔が流行した「ゼロ魔の夏」、Rewriteが流行した「Rewriteの夏(冬)」といわれる時期があった。

更に2014年前半期はこれまでのタイトルに対するメタカードを多く取り揃えた艦これが原作人気と相まって流行し、「艦これの夏」といわれた。

それでも大規模大会ではメタを読んだ別のタイトルが入賞することもあり、長らく一強といえるほど弱点のないタイトルは現れなかった。


しかしブシロード内でこれまでWSの担当であったプロデューサーが別の人物にWS担当を交代した後のことである。




その事件は起こった。


ニセコイの冬


2014年8月に発売されたブースターパック「ニセコイ」。その内容に多くのWSプレイヤーが驚愕した。



【流行の理由】

NK/W30-052
カード名:乙女心 万里花
カテゴリ:キャラクター
色:赤
レベル:3 コスト:2 トリガー:1
パワー:10000 ソウル:1
特徴:《警察》・《鍵》

【自】記憶 このカードがアタックした時、あなたの思い出置場の「約束のペンダント」が2枚以上なら、あなたは相手に1ダメージを与えてよい。(ダメージキャンセルは発生する)
【自】[(2) 手札を3枚控え室に置く] この能力は1ターンにつき1回まで発動する。このカードのバトル相手がリバースした時、他のあなたの《鍵》のキャラが2枚以上なら、あなたはコストを払ってよい。そうしたら、このカードをスタンドする。

それでは楽様!また明日学校で!ごきげんよう!!


発売前に情報が出回ったころからすでに「屋根下よりやばい」といわれていたカード。
上述の「屋根下」をバーンに特化させたようなデザインとなっている。

前半のテキストによって「約束のペンダント」があればアタックの度にバーンダメージが発生する。

これだけならまだ何とかなったかもしれないのだが、取り返しのつかないことにこのカードは再スタンド、すなわちWSでは2回攻撃能力を持ち合わせている。

上記の通りバーンダメージはアタックの度に発生するので、このカード1枚で2回バーンダメージの撃てる恐ろしいカードになってしまった。

もちろんこれはあくまで1枚の話なので、当然同名カードを複数並べればその度にダメージはものすごいスピードで増えていく。

この「乙女心 万里花」を利用した戦法は通称「マリオカート」とよばれ、
相手の場に「乙女心 万里花」が並ぶ状況になろうものなら死を覚悟するしかなかった。

フレイバーテキストはもはや相手プレイヤーに別れを告げているようにしか思えない・・・

一応「約束のペンダント」がないと発動しない、という条件がついていたのだが、
効果によって「約束のペンダント」を回収でき、上記の万里花を強力にサポートするニタモノ 楽
が収録されたのでほとんど有名無実な条件になってしまった。

当然シングル価格もすさまじい事になり、「乙女心 万里花」がWS史上でも稀に見る高額カードとなったのは言うまでもないだろう。


話はこれでは終わらず、ニセコイのブースターにはこれ以外にも

  • キャラを道連れにしつつ手札交換のできる首をかしげる万里花

  • ほぼノーコストで回収効果を発動できる修羅場な万里花

  • 限定的な移動効果に加えて道連れ効果を持つ意外な一面 千棘

など、これまでWSではこれまでほとんど存在しなかった「上位互換」に近い効果を持った狂っているとしか思えないデザインのカードが複数存在した。

ちなみに見て分かる通り千葉県のYさんに配慮したのか全体的にやたら万里花が優遇されたブースターだった。



【大規模大会での結果】

上記の通りこれまで考えられないほどの効果を持つカードが複数登場し、
「ニセコイにワンチャンあるのはニセコイだけ」「ニセコイシュヴァルツ」といわれるほどの崩壊したゲームバランスになってしまった。


発売後の大規模大会ではベスト8入賞者32人中27名がニセコイを使用。


特に仙台大会ではベスト8全員がニセコイ(入賞率100%)という「とあるの夏」がまだマシに見えるほどの悲惨な状況に。


あまりの惨状に例年なら大会の結果を逐一レポートするはずの公式twitterも結果を伝えなくなり完全に沈黙してしまう。

このまま世界大会が行われればとあるの夏をこえる惨事になるのは誰の目にも明らかだった。


【その後】

結果として例年なら大会後に行うはずの制限改訂を12月の世界大会直前に緊急改訂するという異例の事態となった。
(当然これには「最後だけ(世界大会の結果だけ)強引に取り繕っても意味が無い」との批判の声も上がった。)

こうして発表された改訂では、ニタモノ 楽を「約束のペンダント」と同時に採用することができなくなり実質的に禁止指定。

乙女心 万里花も発売からわずか4ヶ月で制限入りという「屋根下」を上回るスピードでの1枚制限入りとなった。

ちなみに千葉県のYさんに配慮したのか発売から制限になるまでの期間があまりにも短かったという理由で、
デッキに投入するカードのカード名がすべて「万里花」なら「乙女心 万里花」を4枚まで投入できるという特例ルールがあった。
現在では廃止されている。

「乙女心 万里花」は1枚制限になったとはいえ手札に持ってくる手段はいくらでもあるので、現在でも要注意カードの一つであることには変わりない。
それでも複数並べることもできなくなり、バーンの条件も満たすのが難しくなったので、他のデッキで全く太刀打ち出来ないほどのタイトルではなくなった。結果的には良改訂だったといえるだろう。


カードゲームにおいてインフレはつきものの現象であるとはいえ、この時期のインフレスピードは明らかに異常であり、
交代後の担当プロデューサーの責任を問う声は大きい。


この記事がこれ以上書き加えられないことを切に願う。


【余談】
後に英語版でもニセコイのブースターが発売されたのだが・・・
上記の「乙女心 万里花」を始めとして複数のカードが収録されず、大幅に弱体化した別のカードに差し替えられている。
公式からもやはりこのブースターのカードデザインに大きな失敗があったことが認められたとも言える。


追記・修正は環境を席巻してからお願いします。
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