英語

登録日:2020/01/30 Thursday 02:03:50
更新日:2023/05/22 Mon 23:03:46
所要時間:約 60 分で読めます






英語は、言語の一種。ここでは主にイギリスアメリカ合衆国の共通語について記述する。

●もくじ


文法で英語を読むための方法を中心に解説する。

基本データ


類型論

教科として

学習時期
〜2008年:中学1年から
2011年:小学5・6年から
2020年:小学3年から

主な教材

  • 小学生
下記の他に学校からアニメキャラクターと提携したドリル等を渡される場合もある。

We Can!:教科書。2020年度から使われる。
Hi, friends!:補助教材

  • 中学生
授業中はフリップを使って単語を暗唱させられたり、専用の罫線が引かれたノートに単語を書き写すなどの宿題が出されることがある。

NEW HORIZON:教科書。例文がエピソード形式で載っており、2016年度からはそれまで英語教師役として登場していたグリーン先生(Ms. Green、sukoshiの人)の代わりに新たにエレン・ベーカー先生(Ellen Baker)が登場、絵柄が大幅に変わったことで一時期ツイッターのトレンドに上がることとなる。

  • 高校生
義務教育ではないためか様々な教科書がある。

CROWN:よく使われる教科書のひとつ。

●文法書
総合英語フォレスト:基本的な文法が細かく載っている。

Next Stage英文法・語法問題―入試英語頻出ポイント218の征服:文法や語法が問題形式で覚えられる。

●単語帳
英単語ターゲット:標準的な単語がセンターに出る順に載っている。

データベース:単語が意味順で載っている。

鉄緑会東大英単語熟語鉄壁:単語が語根の解説付きで網羅的に載っている。

  • 大学生
講師によってピンキリだが、高校で使ったかもしれない教科書が必然的に使われないため、比較的マイナーなものが使われたり、TOEIC等の試験対策のものが使われることもある。

  • 英和辞書
ジーニアス英和辞典:多くの単語を収録している。

オーレックス英和辞典:コミュニケーションの項目に多くを割いている。

  • 英英辞典
ロングマン現代英英辞典

オックスフォード英語辞典

Cambridge Dictionary

試験科目として

  • 大学受験
大学入試センター試験(〜2019年度)では理系・文系を問わず必要な「外国語」のうち最も競技人口が多い科目。他の言語と違ってリスニング(聞き取り)が存在していることも特徴的である。

2018年度センター試験ではリスニングの第一問目で「野菜や果物に顔と手足(キャラによっては更に羽)をつけたキャラクター」の絵が使われ、受験者に強烈なインパクトを残した。製作者曰く「リラックスして欲しかった」とのこと。

  • 資格試験
民間の検定試験としては実用英語技能検定(英検)やTOEICなどが有名。

また、国家資格として全国通訳案内士がある。

概要

ラテン語やギリシャ語と同じ印欧祖語をルーツとする印欧語族の言語。ただし文法や語彙が近いのはその中でも同じゲルマン語派のドイツ語やオランダ語, アイスランド語, 古ノルド語などであり、イタリア語やスペイン語, フランス語, ポルトガル語などとはまるで別物(とはいえ同じラテン語から多くの単語を借りているためある程度単語の推測がきく)。
ドイツ語やラテン語のように単語の形を不規則に変化させる屈折語ではなく、単語と単語を組み合わせて特定の意味にする孤立語である。1066年のノルマン・コンクエストでイングランドがフランスに占領されたのに伴い、異言語間の接触によって文法が単純化したためと考えられる。
語順の違いによって命令や疑問などを表すが、時制・人称などは屈折をしたり、接辞がついたりする。
ラテン語などと違い、名詞に性はなく、主語を省略できない。

最大の特徴は大母音推移と呼ばれる世界的にも例を見ない特殊な言語変化と、綴り字と読み方が一致しない難易度の高い正書法である。

特色・実用面

その特色は、様々な母音を持つ点、そしてドイツ語と同じく句動詞を持つ点などが挙げられる。
実用面では、世界最大級の資料にアクセスできる点が挙げられる。

英語が使える人の例

出身地別。作品名五十音順、同上の場合括弧省略。

アニメ・漫画・ゲーム

  • イギリス

  • アメリカ
空条徐倫(ジョジョの奇妙な冒険)

小説

  • イギリス

特撮・ドラマ・舞台


なぜ英語は難しいのか

前述の通り日本語の用言のように単語の形が(基本的には)不規則に変わったりしない。
命令や疑問といったニュアンスは語順や語の発音の仕方でつけることができ、完了や未来、可能といった時間の幅は日本語の補助動詞(「雨が降ってきた」の「きた」)にあたる助動詞(have, will, canなど)で、過去, 進行, 受動は日本語の助動詞(「食べた」の「-た」)にあたる接尾辞(-ed, -ing, -ed)で表すことができる。

ほとんど屈折しないことや語順がほぼ決まっていることなどから単語が辞書で出てこないということがまずなく、品詞も分かりやすい。読む分には問題ないと思われる。

鬼門となるのは単語の発音と表記である。多くの母音数を持ち、またアクセント・音素共に不規則で、表記からある程度予想がつくものの基本的には個別に覚えるしかない。綴り字の割り当てに時代のブレがあったのだろう。たとえばstory, worry, sorryのoはどれも違う母音である。

母音は口の開き方の違いで長短を区別する。このため「広いウ」と「狭いウ」の違いから母音を区別するしかなく、これらが区別できていないと単語が分からない。文字から古英語にはあったæが廃止されてaに統合されているため、綴りでは発音が/æ/なのか/ɑ/などなのかの見分けもつかない。

単語は多くが閉音節、すなわち子音で終わっているため、日本語やイタリア語のような開音節話者には馴染みが薄い。

語彙に関してはラテン語から多くの語彙や語根を借用しているためイタリック語派を母語話者としている人には学びやすい。20代の日本語母語話者の平均語彙数は4万8千語と言われている。英語母語話者は20代で2万語と言われているため英語は比較的簡単な部類に入ると考えられるが単語の意味の多義性もあるので一概には言えない。

類型論的に珍しい要素

  • 大母音推移等によって、多くの母音字が発音とかけ離れている。
aをエイ、iをアイ、uをユー、eをイー、oをオウ、eaをイーと読む言語なんてこの言語くらいで、他の言語にありがちな言語変化(例えば日本語のない>ねー)程度では説明がつかない。
  • 従属節の末尾に前置詞を置くことができる。(ex. the station we're going to)
自動詞+前置詞で他動詞にできるためと思われる。
  • 従属節が主格と対格(目的格)以外を欠落させられる。(ex. 同上)
従属節で名詞がその従属節の修飾している単語と被るなどした場合、多くの言語では従属節にあるその名詞を欠落させるか、代名詞で置き換えるが、前述の通り前置詞が半ば動詞を他動詞化する副詞程度の扱いを受けているためか、該当する名詞は前置詞だけ残して省略できる。
  • 句動詞を持つ。(ex. come to「気がつく」)
他には同じ系統のドイツ語くらいしかない。
  • 単数の不定冠詞を持ち、しかも複数では省略される。(an apple, apples)
不定冠詞は印欧語以外では珍しく、しかも普通、冠詞は単数の時に省略される。
  • 現在形では3SG(三人称単数)だけが有標であり、他が無標(原形)。(He eats an apple. I eat an apple.)
三人称単数現在形は多くの言語で原形となる。
  • 関係代名詞を持ち、しかも疑問代名詞からだけでなく指示代名詞から派生したものもある。(the apple that is gonna eaten)
殆どの言語は関係代名詞を持たないし、ほとんどの言語で関係代名詞は疑問代名詞からしか派生していない。
  • 名詞に時制がある。(I'll eat an apple.)
他にはカヤディルト語くらい。
  • 母音の数が多く、しかもa系統の音が多い。
aの母音にバリエーションがある言語は少ない。
  • 歯摩擦音[θ],[ð]を音素として持つ。
英語のthの音はあまり使われない。
  • 歯茎接近音[ɹ]と歯茎側面接近音[l]が対立している。
英語のrとlの音を別々の音として認識している言語は少ない。
  • 仮定法過去完了を持つ。(If I had eaten that apple, you wouldn't eat that apple.)
仮定法過去完了は印欧系の言語の特徴だが、これを持つ言語は印欧系の中でも限られている。

関連する言語

  • イギリス英語
本家イギリスの英語。通称は「クイーンズ」。
「got it」を「ゴティト」と発音するなど"t"がロータシズム(子音がラ行になること)せずに「ト」と発音されていたらイギリス英語である。ちなみにアメリカ英語と違い昔の形を残しているかと言われればそうではなく、実は実家の方が発音は変わりやすい。「stop」を「ストップ」と発音するなどアメリカ英語より比較的綴り通りに発音することが多い。
オーストラリアやニュージーランドは2階を「First Floor」と表現するなどイギリス英語に近いが、やっぱり方言じゃ済まされない違いがあるので「オージーイングリッシュ」という別名が付いている。

  • アメリカ英語
アメリカの英語。単に「イングリッシュ」と言った場合、こちらを差すことが多い。
発音だけでなく語彙や綴りにも違いがある。「stop」を「スタップ」, 「got it」を「ガリッ」と発音していたらアメリカ英語である。普通英語といえばアメリカ英語だが、アメリカ英語とイギリス英語は互いに意思疎通ができるので別の言語とは看做されにくい。ちなみに「アメリカ語」というのは人それぞれを言葉にしたような呼び名なので推奨されない。

  • コックニー
イギリスの労働階級で話されている英語。イギリス英語とは意思疎通ができないらしい。最初のhを発音しないため、heatなどは「イート」と発音する。コックニーを母語話者とする人がイギリス英語を話そうとすると、母音で始まる単語の最初にhをつけてしまいeggを「hegg」と発音するなどしてしまう。

  • Engrish
日本人が話す英語。lとrが区別できないためこのように呼ばれている。それだけでなくsとshやbとv等も区別できてないことは内緒である。
典型的なイメージでは開音節化する。日本人が出てくるゲームでは敢えてEngrishが使われることもある。

  • トク・ピシン
世界一簡単な言語と呼ばれるパプアニューギニアの公用語のひとつで、英語をはじめとする複数のヨーロッパ系言語と太平洋の先住民族の言語との組み合わせで生まれ、土着化した言語である。名前にピシンとあるがクレオールである。同様にしてできたクレオール言語にバヌアツのビスラマ語がある。


音韻(発音)

英語は他の多くの言語と違い、書かれた通りに読むことはほとんどない。単語によって読み方が決まっている。

法則はあるが例外も多く、例外に関しては個別に覚えていくしかない。

(自力で発音できないと聞き取れない可能性があるため、英語を聞かなければならない場合は正確な発音を知る必要がある。)

文字

使用する文字は以下の通り。

音素

  • 音素とは

それぞれの表記方法にはバリエーションがあるが、ここでは音声表記にIPA国際音声字母を、音素表記は伝統的なものを使用する。
特に断りがない限り、音素の記号と音声の記号は同じである。

音素表

  • 子音
同じ欄に二つ記載されるものについては、左が無声音, 右が有声音。
調音方法\調音箇所 唇音 歯音 前部歯茎音 後部歯茎音 歯茎側面音 硬口蓋音 軟口蓋音・声門音
鼻音 /m/ /n/ /ŋ/
破裂音・破擦音 /p/, /b/ /t/,/d/
(/ts/, /dz/)
/ʧ/, /ʤ/ /k/, /g/
摩擦音 /f/, /v/ /θ/, /ð/ /s,/z/ /ʃ/, /ʒ/ /h/
接近音 (/w/) /r/ /l/ /j/ (/w/)
(※英語の/ts/音と/dz/音は名詞+sのような複数の形態素にまたがった発音が多いため、少なくとも古い語に関しては単独の音素としては見做されない。/w/は両唇と軟口蓋で同時に調音される。)

  • 母音
同じ欄に二つ記載されているものについては、左が非円唇音, 右が円唇音。
開口度\舌の高くなる位置 前舌母音 中舌母音 後舌母音
狭母音 /iː/ /uː/
広めの狭母音 /ɪ/ /ʊ/
半狭母音 (/e/)
中央母音 /ə/
半広母音 /ɛ/ /ɜː/ /ʌ/, /ɔː/
狭めの広母音 /æ/
広母音 [a] /ɑː/, /ɒ/
(※/ɛ/音はイギリス英語では/e/に近い音で発音される。[a]音は二重母音で現れる。)

  • 二重母音
右の母音\左の母音 a ɔ e ə ʊ ɪ
ə /eə/ (/ɜː/) /ʊə/ /ɪə/
ʊ /aʊ/(=/ɑʊ/) /əʊ/ (/uː/)
ɪ /aɪ/ /ɔɪ/ /eɪ/ (/iː/)
(※/aʊ/は/ɑʊ/で発音されることがある。)

子音

子音は、英語ではb,c,d,f,g,h,j,k,l,m,n,p,q,r,s,t,v,w,x,y,zで表される。また、thやtsなどのように二文字連続することで異なる子音になる場合や、knightのkのように読まないもの(黙字)がある。tはフランス語などのように歯で発音するものではなく、日本語のように歯茎で発音される(これはややマイナーなパターン)。kは日本語とほぼ同じだが、-icなど語末で放出音[k']になることがある。

(無声音,有声音の順で表記。ただし、片方しかない場合は日本語名に無声〜のように表記する。)

  • 破裂音(stop)
破裂音または閉鎖音は、調音点(空気を妨げる部分)で閉鎖を作ってから解放する時の音。日本語では、「か」「た」「ぱ」の子音とその濁音(が、だ、ば)が該当する。

●[p],[b]
両唇破裂音。pは日本語の「ぱ」の、bは「ば」の子音に対応している。*1
単語の表記ではそれぞれpとbで表される。

例)
proud [práʊd] 誇りに思う」
blood [blʌd]「血液」

●[t],[d]
歯茎破裂音。tは「た」の、dは「だ」の子音と同じ。

表記の上ではt,dにそれぞれ対応。ただし、ts, th, dsのように書かれた場合などは例外になる。

例)
tea [ti] /tiː/「お茶」

(「チー」ではなく「ティー」と発音することに注意。タの子音とチャ行子音、ツァ行子音はそれぞれ別の子音である)

depth [dɛpθ] depθ「深さ」

●[k],[g]
軟口蓋破裂音。kはカ行子音、gはガ行子音に対応。話者によっては、語末でk'になることがある。

例)
keen [kin]kiːn「鋭い」*2

●[ʕ]

  • 内破音(Unreleased Stop)
内破音は、破裂音を出す際に開放しない場合に発音される。英語を聞いていると自然とそうなるようなので多分覚える必要はない。


  • 摩擦音(Fricative)
摩擦音は、調音点で狭い隙間を作ることで出される音。日本語ではサ、ザ、シ、ジ、ハ、ヒ、フの子音が該当。

●[f],[v]
唇歯摩擦音。歯で唇を噛んで発音する。fは「ファ」行の子音(両唇摩擦音[φ])と似ている。*3
vはbと発音が似ているが、英語ではこれらを聞き分けている(berryとveryなど)ので注意。
それぞれ英語ではf,vと書かれる。

[θ],[ð]
歯摩擦音。歯で舌を噛むようにして発音すると教わることがある。

英語ではどちらもthで書かれる。どちらなのかに規則性はないため注意。また、thyme[tάɪm]「(香草の)タイム」などの例外がある。

例)
smoothe [smuð]「スムーズな」

●[s],[z]
歯茎破裂音。サの子音とザの子音。ただし、シ及びジの子音とは異なるので注意。
英語ではそれぞれs,zで書かれる。

sin [sɪn]「

●[ʃ],[ʒ]
後部歯茎摩擦音。「シ」と「ジ」、またはシャ行とジャ行の子音。それぞれsh, jで書かれる。

●[h],[ɦ] いずれも/h/
声門摩擦音。無声音hは「ハ」の子音。ただし、「ヒ」の子音は口蓋化無声硬口蓋摩擦音[çʲ]、「フ」の子音は無声両唇摩擦音である点に注意。
有声音ɦはbehindなど一部の単語にしか現れないので別に覚えなくても通じる。
いずれもhで表される。

  • 破擦音(Affricate)
英語では、破裂音の後に同じ調音部位の摩擦音が出る音。日本語では「ち」「つ」の子音がそれぞれ当てはまる。
破裂音、摩擦音、破擦音を合わせて阻害音と言う。

●[t͡s]/ts/,[d͡z]/dz/
歯茎摩擦音。t͡sは「つ」の子音。d͡zはその状態で有声音を出すようにする「づ」の音。多分最小対はない。
英語ではts,dsでそれぞれ書かれる。

●[t͡ʃ]/tʃ/,[d͡ʒ]/dʒ/
後部歯茎破裂音。前者は「ち」の子音。後者はその状態で有声音にする「ぢ」の子音。
英語ではそれぞれch, gなどで書かれる。また、tやdの音の後にʃの子音が来ると、t͡ʃの音になる。

Lord Shishio! [lˈɔɚt͡ʃɪʃɪɔ]「志々雄様!」

  • 接近音(Approximant)
調音点を接近させることで出る子音。「わ」「や」の子音が該当する。

●[ʍ],[w]
両唇軟口蓋接近音。後者[w]は日本語の「わ」の子音と似ている。*4
前者はアメリカ英語のwhの音(whatとか)に現れるが、おそらくwでも通じる。
後者は普通にwと書かれる。

●[ɹ]/r/
有声歯茎接近音。日本語ではら行で書かれることが多く、実際語中のらの子音(有声反り舌はじき音[ɽ])に似ているが、舌はどこにもつかない。舌を反らせて発音させると教わることがある。
英語ではrで書かれる。

●[j]
有声硬口蓋接近音。や行の子音。yと書くとこの音になる。なお、音素や音声でなく普通にjと書いた場合は英語では上述した後部歯茎摩擦音[ʒ]になるので注意。*5

  • 側面接近音(Lateral Approximant)
歯茎などに舌をつけたまま、その横を接近させることで出る音。日本語にはない。

●[l]
有声歯茎側面接近音。日本語ではrと同じくら行で書かれるが、英語ではこれを聞き分けているので注意(arriveとaliveなど)。
日本語の単語の最初のらの音(有声歯茎はじき音[ɾ])に似ている。
英語では次に母音の続くlがこの発音をする。

●[ɫ]/l/
有声軟口蓋歯茎側面接近音。上に軟口蓋(kで調音したところ)の接近が加わっている。上を出そうとしたまま離さないで声を出していると自然とこの音になるっぽい。

英語では次に母音の続かないlがこの発音になる。

  • はじき音(Flap)
瞬間的な接触で調音する音。英語では歯茎はじき音のみが該当。アメリカ英語にしかなく、多分覚えなくても通じる。
側面音、ふるえ音(英語にはない)、はじき音を合わせて流音と呼ぶ。

●[ɾ]/t̩/
歯茎はじき音。日本語の語頭の「ら」とほぼ同じ。

Shut up! [ʃʌ́ɾʌp̚]

  • 鼻音(Nasal)
鼻から音を出すようにして発音する子音。日本語では、な行、ま行の子音と「ん」が該当。

●[m]
有声両唇鼻音。ま行の子音とほぼ同じ。mで表記される。p及びbの直前に後述するnが来た場合、ほとんどmになる。

●[n]
有声歯茎鼻音。な行の子音や「ん」とほぼ同じ。ただし、語末に来た場合は「ンヌ」のように解放を伴う。nで表記される。

●[ŋ]
有声軟口蓋鼻音。か行、が行の直前の「ん」がこの音。他の多くの言語と同様、この子音の次に母音が続くことはない。ngで表記される。

母音

母音は、英語ではa、i、u、e、oなどで表される。

母音の出し方は、主に三つのポイントがある。
① 舌の高くなる位置――母音は舌の前、中、後ろといった位置のいずれかを高くすることで発音されている。日本語の「ウ」なら、舌の後ろの方が高くなっている。
② 口の広さ――口の広さは言語によって狭、半狭、中央、半広、広、というように何段階も分かれている。
③ 口をすぼめるかどうか――日本語はそれほどでもないが、口の先を丸めるようにして発音するものがある。丸めるものを円唇母音、丸めないものを非円唇母音という。

日本語を話していると、母音は全てアイウエオのいずれかに帰着すると思いがちだが、実際はこの三つの組み合わせによってできたバリエーションから、聴き分けるものを五つ選んで使っているに過ぎない。

したがって、言語によっては聞き分ける母音を多く持つものもあり、英語もそのひとつである。

以下、英語の音素と音声の一覧。
(いずれも非円唇母音,円唇母音の順。)

  • 後舌母音
舌の高くなる位置が後ろにある母音。日本語では「ウ」「オ」の音。

●[u]/uː/
円唇後舌狭母音。日本語のウの口を丸めて発音。英単語を「ウー」と読む時は大体この音。

●[ʊ]
円唇後舌め広めの狭母音。上よりは若干口が開く。英単語を「ウ」と読む時は大体この音。

●[ʌ],[ɔ]
後舌半広母音。ʌは喉の奥からアを出す感じ。uやoが「ア」と読ませる時は大体この音。
ɔはその状態で口を丸めると出る。「オ」と読む時は大体この音。

●[ɑ],[ɒ]
後舌広母音。非円唇母音[ɑ]は喉の奥から「ウ」を出したような状態から口を大きく広げると出る。aにアクセントがついていたり、oが「ア」と読ませたりする場合、この音である場合がある。
円唇母音[ɒ]はその状態で口の先を丸めると出る。イギリス英語で使われる。

  • 中舌母音
舌の高くなる位置が真ん中になる音。「朝」と言うときの「ア」の音。

●[ə]/e/(/∂/)
曖昧母音(シュワー)。口を曖昧に開けて「ア」「ウ」のように発音する。アクセントのついていない母音は大体この音になる。/∂/はəと基本的に同じ音だが、完全になくなることがある。なおアメリカ英語では/ə/と/ʌ/を区別していない。

●[ɜ]
非円唇中舌半広母音。ʌと表記されているものはアメリカ英語ではこの音になる。

  • 前舌母音
舌の高くなる位置が前になる音。日本語では「イ」「エ」の音。

●[i]/iː/
非円唇前舌狭母音。日本語の「イ」よりも狭く、口角を引っ張るようにして発音。
英語で「イー」と読ませるものは大体これ。

●[ɪ]
非円唇前舌め広めの狭母音。「エ」の口で「イ」と言うような音。英語で「イ」と読ませるようなものは大体これ。

●[e]
非円唇前舌半広母音。日本語の「エ」を狭くしたような発音。
英語で「エイ」eɪと読ませる部分の「エ」の音はこれ。

●[ε]/e/
非円唇前舌半広母音。上のiを開くようにして「エ」と発音する。単語帳などでは分かりやすさのためにεの代わりにeと書かれていることがあり注意を要する。

●[æ]
非円唇前舌狭めの広母音。エの口でアという感じ。他に母音のついていないaにアクセントがついていたら大体これ。

●[a]
非円唇前舌広母音。「アイ」aɪ「アウ」aʊのように読ませる場合、「ア」はこの音。

  • R音性母音
アメリカ英語で、母音の発音中に舌を剃り上げるなどすることで発音する。発音記号では[˞]ːrで書かれる。

強勢(アクセント)

英語は強弱アクセントであり、ひとつの単語につき1〜2つの強勢がある。
強勢のある母音([ ́]または['((子音+)母音)])は高く読まなければならない。

イメージ

dangerous /déɪndʒ(ə)rəs/ デイ ̄ンジャ_ラス_
↑この ̄高くなる部分がアクセント。

アクセントは単語によって決まっているため、これもひとつずつ覚えるしかない。

リンキング

リンキングは、英単語同士が隣接することで語尾や語頭の発音が変化すること。
英語は最後に子音が来て、次に母音の音素が続く場合、それを一つの単語のようにつなげて読む。

例)
Really? You’re not good at English…

英単語good/gʊd/は次に母音が来ない場合それ単体では[gʊt̚]と「グッ」のように発音されるが、この場合は次に母音が続いているため最後の子音が普通に発音され、次の単語/ət/とつながって最終的にはgood at Englishが「グダティングリッシ」のように発音される。

イギリス英語では語末のrは発音されず、母音が長くなるが、次に母音が続く場合は母音が元に戻り、rが発音される。

音節

音節は、母音の塊が子音で区切られた部分。英語の基本的な音節の構造は子音-母音-子音である。

例)
cat "猫"

母音aが子音cとtに挟まれているため、一音節。

feet "足"

母音eが二つあるが、子音で区切られていないため、一音節と捉える。

can "[助動詞]〜できる、[名詞]缶"

nは"ン"のように聞こえるが、母音とは数えない。

fact "事実"

ctと子音が二連続しているが、母音がひとつのため、音節はひとつである。

一音節でも二文字なら二拍として扱われる日本語の共通語の場合とは対照的である。言語にはこのように音節が基準となる場合と、拍が基準のひとつになる場合がある。

また、言語によってはnやmなどが母音の代わりになる場合がある。

統語と形態(文法)


英語の文は、価数を満たした動詞や動詞句に、任意の数の副詞を次々とつけることで作る;まず動詞がその動詞に定められた数の主語や目的語、補語といった名詞句や副詞句を要求し(価数)、それが全て埋まることで文が作られる。その後、話者は必要に応じて副詞や形容詞を好きな数つけていく。
この構造を満たしていないと普通は意味が通じなく(非文)なる。

たとえば、日本語の場合、

「食べた。」

と、「誰が食べたのか」、「何を食べたのか」という情報(=主語、目的語)を書かなくてもいいが、英語の場合、

I ate breakfast.
私が 食べる.過去 朝食
「私は朝食を食べた」

のようにそれらを書かなければならない。
英語の動詞は必ず主語を要求し、さらに動詞によっては目的語を要求するものもある。

品詞

文は一語である単語、二語以上である句、二語以上でしかもその中に主語と動詞の構造がある節を組み合わせて作られている。
更に、単語はそれを文法的な機能で分類した品詞というグループに分けられ、上記の句や節もそれがひとかたまりとしてある特定の品詞として扱われる。

英語の品詞には、大まかに分けて以下のようなものがある。

  • 名詞
具体的な対象を指示する。日本語の「私」「ペン」のような単語に相当する。日本語に訳したときに過去形にすることができず(「*私た」はできない)、「が」「で」といった格助詞をつけることができる。

例)
I, pen

  • 限定詞
名詞を入れる(後ろに名詞をつける)ことで名詞句を作る。「その」「あの」などと訳される。

例)
the, that

  • 動詞
主に名詞句を入れる(前と後ろに限定詞+名詞を入れる)ことで文を作る。「見つける」「運転する」などの単語の言い切りの形(「~。」と句点に続く形。終止形)に相当する。

例)
find, drive

  • 助動詞
動詞の特定の形を入れることで動詞句を作る。日本語では「見せてくる」の「くる」や、「やってみる」の「みる」が相当する。日本語の文法に同様の単語があるが、こちらは一語であり、日本語の場合は動詞につく接辞である点で異なる。

例)
can, have

  • 形容詞
名詞を修飾する。名詞につくことで新たな名詞を作る。「赤いペン」「立っている子供」のそれぞれ「赤い」「立っている」、あるいは活用語の連体形に相当する。

例)
red, standing

  • 副詞
動詞、形容詞、他の副詞を修飾する。それらの単語につくことで同じ品詞の新しい語句を作る。「早く」「明日までに」などが相当する。

例)
rapidly, very

  • 前置詞
名詞句を入れる(後ろに名詞を付ける)ことで形容詞句や副詞句を作る。「の」「が」「へ」といった名詞についてその文法的な意味を表す語(格助詞)が相当する。

例)
in, against

  • 接続副詞
文と文を繋げる。文頭について、「なので」「そして」といった意味になる。

例)
so, however

  • 等位接続詞
品詞の同じもの同士を繋げる。「または」「そして」「しかし」といった語が相当する。

例)
and, but

  • 従位接続詞
文を入れて名詞節、副詞節、形容詞節を作る。何の品詞の節になるかは接続詞によって異なる。「~するところの」などと訳されることがある。

例)
when, that

  • 間投詞
それ単体で文となる。「おはよう」「いいえ」などが該当する。

例)
hello, yes, no

なお、love [動詞]「愛する」がlove [名詞]「愛」に転用できるように、ある単語と同形の単語が複数の品詞にまたがって存在している場合もある。
基本的にそのような単語は名詞として使われる場合アクセントが先頭に、動詞として使われる場合アクセントは末尾に来る。(「名前動後」などと教えられる。)

屈折表

ここでは動詞の屈折について記述。専門的なことはともかく文法に関する用語を知らない方は後で読むことをお勧めする。

冠詞

定性\数 単数 複数
不定 a
/ə/,/ɛɪ/
または
an
/an/,/ən/
the
/ðə/,/ðɪ/
  • 冠詞a→an|_V
  • 冠詞the/ðə/→/ðɪ/|_V
  • 不定代名詞oneを除く代名詞、及び固有名詞には基本的に冠詞はつかない。
  • 不可算名詞及び不定代名詞oneには不定冠詞はつかない。

一般名詞

格\数 単数 複数
主格・対格 -∅ -(e)s
属格 -'s -s'
  • 複数主格の語尾-sは語幹の末尾が無声歯茎摩擦音である単語や一部のoとなる単語は-e-が挿入される。f-sまたはfe-sとなる場合、いずれもvesとなる。y-sの場合、iesとなる。
  • 基本的にいずれの語尾も語幹の末尾の発音が有声子音である場合は/z/、esとして書かれている場合は/iz/、歯茎破裂音の後に続く場合はひとつの破擦音として、そうでない場合は/s/として発音される。
  • 前置詞は常に対格支配をする。

人称代名詞

定性 不定
人称 一人称 二人称 三人称
単数 複数 単数 複数 単数 複数
有生性 無生 有生
性別\格 男性 女性 中性
主格 I we you it he she they one ones
対格 me us him her them
属格 my our your its his their one's ones'
所有代名詞 mine ours yours hers theirs one's -
*6
  • 一人称代名詞Iは常に大文字となる。

指示代名詞

一人称 三人称
主格・対格 this that
属格 - -
所格 there
時格 then

疑問・関係代名詞

有生性 無生 有生
主格 what who
対格 whom, who
属格 whose
所格 where
時格 when
  • whomはwhoで代用可能。

一般動詞

  • 弱変化動詞
動詞として
時制\人称・数 右以外 3SG
直接法 現在 -∅ -(e)s
過去 -(e)d
仮定法 過去

分詞として
能動 -ing
/ɪŋ/
受動 -(e)d
  • 三人称単数を除く直接法現在能動態を原形とする。
  • ​-(e)sは所有のそれと同じ発音・形態の変化をする。
  • ​-dは語幹の末尾が母音字でない場合は-e-が挿入される。
  • ​-ed /d/→/ɪd/|歯茎破裂音_
  • ​-ed/d/→/t/|無声子音_
  • 基本的にe→∅|_-ing
  • 単語がCVC'の場合、-ingがつくとCVC'C'となる。
  • 単語の末尾にアクセントがあり、子音で終わっていると、その子音字が重ねて表記される。
  • haveのみ、三人称単数現在が不規則な形(has)となる。

以下、動詞は原形-過去形-能動分詞形-受動分詞形の順で表記する。

存在・コピュラ動詞

単数 複数
人称 一人称 二人称 三人称
時制
現在 am are is are
過去 直接法 was were was were
仮定法 were, was

were, wasは仮定法過去としてはどちらも使われる。

形容詞

  • 二音節以下
原級 -∅  many, much little good,well bad,ill far old late
比較級 -(e)r more less better worse farther further elder latter
最上級 -(e)st most least best worst farthest furthest eldest last
  • 形容詞の語幹の末尾の字がeでない場合、接尾辞には-e-が挿入される。
  • y→i|_-erまたは-est
  • 語幹の末尾が短母音-子音の順で終わっているなら、その子音を繰り返した上で接尾辞をつけて表記する。
  • littleは数や年齢を言う場合、lateは時間に関して言う場合、oldは兄弟・姉妹の年齢を言わない場合、不規則な変化はしない。(ただし、elderは「年配の」という尊敬の意味でolderと対立し、歳上の人物に対して用いられる。)
  • fartherは距離に関して、furtherは程度に関して用いる。

語順

日本語の語順が主語-目的語(補語)-動詞の順になっているのに対し、英語の語順は主語-動詞-目的語(補語)の順になっている。(補語に関しては後述。)

俺は 彼を 殴る。
主語 目的語 動詞

これは英語にするとこのような語順になる。

I hit him.
主語 動詞「殴る」 目的語

つまり、「俺は殴る、あいつを」と言うのがデフォルトになっている。

  • 倒置
日本語やラテン語は語順が比較的自由だが、英語は語順が主語+動詞の順で固定されている。限られた状況では動詞が前に出、動詞+主語の順になる。それは、疑問, 仮定, 伝聞, 場所を示す場合である。真理値が不安定な時に倒置するなどと覚える。

疑問文

疑問の対象となる語を疑問詞に置き換えることで「だれが~」「何を~」といった物事を表せる。

You hit who?
貴方が 殴る 誰を

しかしながらこれは書き言葉などの硬い表現ではあまり用いられない。実際には疑問の対象となる語を語頭に持ってくることで文の主題を明らかにしなければならない(wh-移動)*7

Who hits him?「誰が彼を殴る?」
Who do you hit?「あなたは誰を殴る?」

このとき、二つの点に注意しなければならない。すなわち1.動詞の本体が(前置詞等を除いた)文の二番目に来ている点2.主語以外が疑問詞で置き換えられる場合は助動詞doが付加される点である。

1.ドイツ語と共通の祖先をもつ英語は「動詞が文の二番目に来る」という古い文法の名残から、疑問詞-動詞という語順にならなければならない。したがって二番目の文のように主語以外を疑問詞で置き換えた場合は動詞が疑問詞と主語との間に挟まり、それを修飾する他の動詞がその後に続いているのである。

2.助動詞とはそれ単体では意味をなさず、動詞句の新たな本体として後続の動詞(ここではhit)に修飾されることで意味を追加する動詞のことである。助動詞doは平叙文で用いられた場合、単なる強調の意味を与える。

I do hit him.
「俺はあいつを殴るんだ」

疑問文を表す場合、もとの文に助動詞がないなら、この助動詞doがあるものとして倒置を行わなければならない。

なお助動詞が使われた場合、その助動詞が動詞の本体となるため、過去形などを取る際には助動詞が形を変える。

I did hit him.
「俺はあいつを殴ったんだ」

また単純に「はい/いいえ」で答えられる疑問文については、上記と同様にしてWhether do you hit him or not?「彼を殴るのか、それとも殴らないのか」という文を作ることができるが、ここからWhetherとor notを省略して以下の文を作ることができる。

Do you hit him?
助動詞 主語 動詞 目的語

ちなみに助動詞が既にある状態から疑問文を作る場合はdoを置かなくともよい。

You can speak English.
主語 助動詞 動詞 目的語
「あなたは英語を話せる」

これを疑問文にする場合、

Can you speak English?
助動詞 主語 動詞 目的語
「あなたは英語を話せますか?」

となる。

ただし、後述するBE動詞は疑問文では助動詞のように前に出す必要がある。

You are kidding me.
you are [kidding me]
主語 BE動詞 [補語]
「あなたは僕をからかっている。」

Are you kidding me?
are you [kidding me]
BE動詞 主語 [補語]
「あなたは僕をからかっていますか?」

You are the criminal.
You are [the criminal]
主語 BE動詞 [補語]
「あなたは犯罪者です。」

Are you the criminal?
「あなたは犯罪者ですか?」

ただし、倒置をしなくても最後に?がつけば疑問文になる。

You are the criminal?
「あなたは犯罪者ですか?」

ちなみにYES/NOで答えられる疑問文はいずれの場合も、ほとんどの場合日本語と同じで語尾が上昇調になる。

  • 否定疑問文と極性

Aren't you the criminal?
BE動詞.否定 主語 冠詞 名詞
「あなたは犯罪者ではありませんよね」

「〜ではないですよね」「〜しませんよね」のような否定疑問文をつくりたい場合、主語の前に置かれた助動詞やBE動詞に否定の接尾辞「-n't」(後述)をつけるか、主語の後ろにnotをつけることでそれが可能となる。

(接尾辞は、単語の末尾につくことで様々な意味や文法上の機能を追加する語。なお、「-」はその部分が単語に接続することを表す。)

否定疑問文に答える場合、日本語のように「質問の内容に答える」のではなく、「自分がするかしないか(そうなのかそうでないのか)」で答えなければならない。

Yes, I am.
間投詞「はい」 主語「私」 BE動詞
「私(が犯罪者)です。」

No, I'm not.
間投詞「いいえ」 主語.BE動詞 副詞.否定
「私(は犯罪者)ではありません。」

  • 同意を求める表現

You are the criminal, aren't you?
主語 BE動詞 冠詞 名詞 動詞.否定 主語
「あなたは犯罪者ですね」

It's ok, isn't it?
主語.BE動詞 BE動詞.否定 主語
「いいですね?」

疑問や命令でない文(平叙文)の後に、否定疑問文の語順で助動詞またはBE動詞と主語とを置いたものは、「〜だね」のように訳される。

この場合、最後を上がり調子にすると相手に確認をする意味合いに、下がり調子にすると同意を求める表現になる。

副詞句による倒置

否定を表す副詞や副詞句、副詞節(never, little, on no accountなど)、またはonlyを含む副詞(句[節])が文に含まれている場合、その部分を聞きのがすと意味が大幅に変わってしまうため、その単語または句もしくは節を文頭に出し、次に助動詞を、その次に主語-動詞-目的語を置かなければならない。
すなわち、副詞(句[節])+疑問文の語順となる。

Only in the darkness can I judge the nature of your crime.
[only in the darkness] can I judge [the nature of your crime]
[副詞句] 助動詞 主語 動詞 [目的語]
「闇の中でしか私はあなたの犯情を裁けない」

また、Soが文頭に来た場合も倒置が起こる。

I am alone in the universe?
――Yep.
So are you.
We are the same.

「俺は宇宙で一人なのか?」
「ああ。」
「お前もそうだ。俺たちは同じだ。」

同じような働きをする否定の副詞としてneither, norなどが当てはまる。

仮定法過去完了

Had I thought it through, would you be here in my embrace?
完了.仮定 1単主 思う.過去 3単対. ~し抜く*8, 未来.条件 2 いる.不定法 ここに 中に 1単属 抱擁
(=If I had thought it through,~)

「それを思い続けていたら、あなたは私の腕の中にいただろうか」

  • edの形は「過去」または「現状ありえないこと」(この記事では便宜的に「反実仮想」と呼ぶ)の二種類の意味があり、単に「非現在・現実」を意味していると言える。仮定法過去完了とは-edの後者の用法である。したがって、

I wish [I could speak English].
1単主 願う 1単主 できる.反実仮想 話す.不定法 英語
「英語を話せたらなあ。」

ここではspeakがcouldを修飾する形をとっているため[]内で述語の核となっているのは助動詞canである。canに-edをつけた形はcouldであるが、これによって「ありえないこと」という意味が付与される。過去形にならないのは、この[]内が文ではなく節としてwishを修飾しているからである。

これを応用すると先の文の構造が出来上がる。

If I were taller, I would be a model.
「もし私があなただったら、私はモデルになっていたのに。」

(ここでI am tallerが反実仮想形になりI were tallerとなった点に注意したい。wasだけは仮定法過去の形を取った場合のみ二人称などと同じwereにしてもよい。もちろんwasとしても構わない。)
wouldが使われている「,」の左側は「条件節」と呼ばれ、この条件あるいは時間、仮定の時にしか「,」の右側「主節」の出来事が起こらないことを示す。その標識として、このような反実仮想の際、主節ではwouldまたはcould / should / mightを用いなければならない。

基本的な語順:[If主語A 反実仮想形A]₁, [主語B 反実仮想形B]₂

[]₁:条件節
[]₂:主節

ただし、例えば"I would be a model if I were taller"のように、条件節を単体の副詞のようにして主節と順番を入れ替えることができる。

この構造を過去形に持ってきたのが先の文である。

基本的な語順:[If I had thought it through]₁, [would you be here in my embrace?]₂

主節では疑問文になっているためyou wouldが倒置されている。

条件節では過去形+反実仮想形が「had」で表されていることに注意したい。通常「have+過去分詞」で完了相を表す。完了相とは例えば「死んだ」に対する「死んでいる」のように過去の動作が現在まで影響している場合、それを現在の一部として語る方法である。しかしながらこの用法は多くの言語で単なる過去形と混同されやすく*9、英語でもこの助動詞haveがhadとなったときは「語られた過去のさらに過去」を意味する。反実仮想形でも同様の手順からhad+過去分詞で「もし~だったら」という意味になったのである。

また条件節[]₁内は以下のように倒置することができ、この際ifを省略する。

[had I thought it through]₁

条件節[]₁では疑問の形が存在しないため、倒置を他の用法として使うことができるのである。倒置が条件節の標識として機能しているため、条件節を形成するifは省略されている。このため文の中には唐突にhadが出てきて仮定法を意味する場合があり、注意を要する。

その他の倒置

これらのほかにも、引用の場合や仮定法の倒置など様々な方法で倒置が行われる。

Here is your pen.
ここに ある あなたの ペン
「さあこれがあなたのペンです。」

この文は主語が動詞の前に来ていない。Hereは副詞に過ぎず、本来あってもなくても変わらない。しかしこのように場所を強調したい際は副詞が前に出る。これは副詞句にも起こりうることであり、前置詞句が前に来て次に動詞が来ていれば倒置が起こっている。

特殊なケースに存在を表すパターンがある。

There is a cat.
そこに ある 不定 猫
「猫がいる」

thereも「そこに」を表す副詞であるが、この場合は単に存在を表す動詞isを補助する役割がある。
なお、この構文は(a catにあたる)主語となる名詞が不定の時に用いられる;定冠詞theのついた単語に用いることはできない。

名詞(Noun, N)

名詞は、物を表す。それ自体で文を作ることはできない。
日本語に訳して「〜が」「〜を」などを違和感なくつけることができる。

例)
apple "林檎"
pen "ペン"

特にそれまでに言及されたものの代わりに用いるもの(日本語のそれ、わたし、などに相当)を代名詞と呼ぶ。

限定詞と冠詞(article)

限定詞は、名詞とセットで使用し、それが名詞であることを表すと同時に、後述の定性の有無などを表示する。

限定詞は、他の限定詞のついていない名詞につくことで名詞句を作る働きをしている。動詞が価数を埋めるには名詞をそのまま取ることはできず、名詞句しか取ることはできない。

❌*Boy plays.
名詞 動詞

✅The boy plays.
冠詞 名詞 動詞

ただし、名詞が不定の場合は冠詞が省略されてしまうことがある。その場合は名詞単体で名詞句と同じ働きをするため注意を要する。

✅Boys play.
名詞 動詞

名詞句の例

an apple "ある林檎"…anは冠詞。

後述の形容詞に似た働きをし、名詞を修飾しているといえるが、あくまで冠詞が名詞の本体なので決められた方法以外では省略できない。

定性

名詞には定性が存在する。その名詞が聞き手にとって既知のものであったりする時には、名詞に定性があると言う。定性のある名詞には基本的に限定詞の一種である定冠詞がつくが、代名詞や固有名詞などの既に定まっているものや、他の限定詞がついているものにはつかない。

英語の冠詞は、名詞の前につく。

an apple "ある林檎"

the apple "その林檎"

anは不定冠詞であり、定性がないことを表している。theは定冠詞であり、定性があることを表している。

冠詞は以下の通り。この他にも、意味を追加するとともに定性を表すことで冠詞を省けるようにし、実質的に冠詞の代わりになっているもの(冠詞類)がある。限定詞は、これらの総称である。
("<"は語源を、"*"はその文が文法的に正しくない(非文である)ことを表す)

  • an

(弱形) ən, (強形) `æn, ˈæn "ある、ひとつの"(<one "1")

不定冠詞。次の単語が子音で始まる場合、省略されて/"a" (弱形) ə; (強形) éɪ/になる。
後述する数えられないものや複数あるものにはつかず、またついた場合「まるまる一個」を表すため、例えばturkey "七面鳥"を名詞として扱う場合、a turkeyで丸一匹の七面鳥を表す。

七面鳥の肉などが細かく分かれている場合はa piece of turkey "ひとかけらの七面鳥"という風に言わなければならない。*10

例)
a pen "あるペン"

  • the
/ (弱形) ðə 《子音の前》 / / ðiː《母音の前》 / "その" (<that "あれ")
定冠詞。

数(number)

名詞は、それが複数の場合不定冠詞が省略され、原則接辞-sがつく*11
これは不定冠詞anの語源がone"1"であることを考えると覚えやすい。

単数(singular,SG):a pen "あるペン"
複数(plural, PL)pens "ある複数のペン"

ただし、これによって定冠詞が取り除かれるわけではない。

the pen "そのペン"
the pens "それらのペン"

  • 可算名詞(countable noun)と不可算名詞(uncountable noun)

名詞には数えられるもの(可算名詞)と数えられないもの(不可算名詞)の区別があり、後者は抽象的な概念(information "情報" など)や切っても性質が変わらないもの(water "水"、paper "紙")などが該当する。
不可算名詞は単数でも複数でもなく、不定冠詞an/aや接辞-sをつけることはできない。

✅water
✅the water
❌*a water

ただし、不定冠詞や接辞-sがついている場合、別の意味の単語である場合がある。

✅paper "紙"
✅a paper "ある論文"

  • 集合名詞(collective noun)
名詞の中には、複数にしたときに単に-sがつくのでなく、全く別の単語になる場合(相補形、後述)がある。

例)
a policemen "警官"
police "警官たち"

a person "人"
people "人々"
(personsも可能だが、公共性が高くなる)

peoplesとした場合、様々な民族が想定される。このように、集合名詞が単数形の別の名詞になっている場合もある。

また、この他にも、単数と複数が同一の形をした名詞も存在する。
これを後述の動詞が単数扱いされるか複数扱いされるかは、語彙によって異なる。

fish "魚"または"魚たち"
(fishesとすると、複数の種類の魚が想定され、意味が変わってしまう)

いずれの場合も、例外的なものなので個別に覚えるしかない。

格(case)
名詞句には文法上の役割を表したり、意味を追加したりする"格"という標識がつく。
格は、英語の場合、主格、所有格、目的格または対格と呼ばれる格があり、大体それぞれ日本語のガ格、ノ格、ヲ格に相当する。
これらの格で補えない文法上の役割がある場合、前置詞をつけてそれを表す。

  • 主格(Subjective,SBJ>桜Trick)
動詞の主語(subject,S)となる。今まで述べてきた名詞の形と同じである。「〜が」「〜は」などと訳される。

主格は動詞の前に来る。

People play.
"人々が遊ぶ。"

ここで、playは動詞、Peopleは名詞(句)であり主語である。

  • 所有格(Posessive)
この格をとった名詞句は限定詞のようになる。所有格は他の所有格を含む名詞を修飾し、それが修飾される名詞を所有していることを表す。

つまり形容詞のようになるのであり、日本語では「〜の」と訳されるが、例えば「赤い屋根の家」のように所有でない場合には使えず、後述の前置詞を用いる。

単数形または不可算名詞、あるいは相補形は-szが、複数の接辞-sがついている場合は'がつく。後者は発音されない。

所有格のついた名詞は定まっていることが明白なために冠詞がつかないが、所有格自体は名詞でなく名詞句がとるため、必要なら冠詞をつける場合がある。

fisherman "釣り人"
horizon "水平線"

a fisherman's horizon "ある釣り人の水平線"
a fisherman's horizons "ある釣り人の水平線たち"

fishermans' horizon "釣り人たちの水平線"

ただし、所有格がそれぞれ持っているものである場合、分配が発生してややこしくなるので、下のような表現は避けたほうがいいらしい。

nose "鼻"

? people's noses

  • 目的格(Objective,OBJ)
この格を取る名詞は後述する他動詞の目的語(Object,O)をとる。目的語は、原則として動詞の後に来る。

基本的に主格と全く同じ形を取るが、一部の代名詞は異なる形を取る。

The knight protects the girl.
"騎士が女の子を守る"

the girl"女の子を"が目的語である。

名詞の屈折

このように要望によって単語に不規則に接辞がついたり、単語そのものが変わったりすることを屈折と呼ぶ。*12
格、数、定性を纏めると、以下の通り。(単数,複数の順)

不定
boy"男の子" 可算名詞
主格(〜が) a boy, boys
所有格(〜の) a boy's, boys'
目的格(〜を) a boy, boys

cake "ケーキ" 不可算名詞
主格 cake
所有格 cake's
目的格 cake

定冠詞をつけたい場合、aやanを取り除いてtheをつけるだけで良い。

定性
主格 the boy, the boys, the cake
所有格 the boy's, the boys', the cake's
目的格 the boy, the boys, the cake

代名詞(pronoun)

代名詞は、「私」「あなた」「それ」など既に話題に出ているものの代わりに使う人称代名詞と、「これ」「あれ」などものを指差して使う指示代名詞、そして「どれ」「何」など疑問に用いる疑問代名詞の三種類がある。

  • 人称代名詞
人称代名詞は、既に話題になっているものについて用いる。

I play.
"私は遊ぶ。"

He runs.
"彼は走る。"

これらは、以下のように屈折する。不規則な屈折のため、個別に覚えるしかない。

●一人称(1st person,1) I "私"、we"私たち"
主格 I, we
所有格 my, our
目的格 me, us
(ただし、Iは常に大文字で書く。)

ここで、単数・複数が互いに相補形になる点、それぞれの場合において所有格・目的格がやや似ているのに対して、主格が全く異なる形をしている点に注意。

●二人称(2nd person, 2) you "あなた"、"あなたたち"
主格 you, you
所有格 your, your
目的格 you, you

二人称は主格・目的格が同型である点は一般名詞と同様である。また、単数・複数が全く同じ形をしている。

なお、ゲームなどでファンタジーや古い時代を舞台とする世界が出てくるなどした場合、これらの人称代名詞に加えてye「汝ら」やthou「汝」thy「汝の」といった古英語の単語が用いられることもある。

三人称(3rd person, 3)
三人称の代名詞は、格と数の他にも性別(男性女性中性)および有生性(生きているか/いないか)そして定性の区別がある。
中性は、性別をあえて言わない場合や、性別が分からない場合に用いる。
複数形は性別や有生性に関わらず一律theyで表し、単数中性と全く同じ形になる。

●三人称定性有生男性he"彼"女性she"彼女"中性they"その人物"
主格 he/she/they, they
所有格 his/her/their, their
目的格 him/her/them, them

ここで、無生物を擬人化しない限りは性別は現実の性別と同じになる。ドイツ語等のように名詞に性別が割り当てられていることはない。

●三人称定性無生 it "それ",they"それら"
主格 it, they
所有格 its, their
目的格 it, them

三人称には性別の区別はなく、また、複数形は三人称有生の場合と同じ形になる。
代名詞itは"それ"と訳されるが、日本語のように話し手から中距離にあるものを指す指示代名詞としては使えない。

●不定代名詞 one "あるもの[人]"、none”何もない”、either”どちらか”、 both”どちらも”、neither”どちらでもない”、
誰か/何かを指定しない場合や、既に話題になったものの代わりのものを求める場合に用いられる。
Oneは普通の名詞と全く同じ活用をする。それ以外は活用せず、所有格がない。いずれの不定代名詞も限定詞として使うことができる。
また、いずれも不定であることが明らかであるため冠詞はつけない。ただし、oneに限り定性がある場合は定冠詞をつける。
なお、辞書の例文でoneが使われた場合、普通の名詞(=一般名詞)の代わりという意味である。

主格 one, ones
所有格 one's, ones'
目的格 one, ones

One does not simply walk into Mordor.
"(人は)そう簡単にモルドールへは行けない。"

This pen is heavy. I need another one.
限定詞"これ" 名詞"ペン" 繋辞"〜である" 形容詞"重い"
1SG.SBJ"私" 他動詞"求める" 不定冠詞.形容詞"ある他の" 不定代名詞"それ"
"このペンは重い。他のペンが要る。"

oneの代わりにitを使うと、「他のペン」ではなく「このペン」を意味してしまう点に注意。
また、不可算名詞のかわりに使うことはできないため、その場合は一般名詞を使うしかない。

❌*This wine is terrible. I need other one.
限定詞"この" 名詞"ワイン" 繋辞"〜である" 形容詞"ひどい"
1SG.SBJ 動詞"要する" 形容詞"他の" 代名詞"それ"

✅This wine is terrible. I need other wine.

Eitherは、否定文ではneither同様「どちらも~ない」という意味になる。

Eitherを用いた例)
Whether it’s finishing them off, or enjoying your victory,
従位接続詞「~のどちらか」 代名詞「今」(ダミー主語).BE動詞 名詞 代名詞「彼ら」 副詞 等位接続詞「もしくは」 名詞「楽しむ」 代名詞「あなた」 名詞「勝利」
「彼らにとどめを刺すにせよ、勝利の余韻に浸るにせよ」
(*finish offで「とどめを刺す」の意。ただし、こうした成句の場合、代名詞は動詞と副詞に挟まなければならない。接辞-ingに関しては動詞の分詞の項を参照。)

It’s not the time for either.
名詞.BE動詞 副詞「ない」 冠詞 名詞「時間」 前置詞「~のための」 形容詞「どちらの」
「今はどちらの(ものの)ための時間でもない」

  • 所有代名詞
人称代名詞にはそれが所有するものの代わりに使う"所有代名詞"もある。

一人称 mine "私のもの"
一人称複数 ours "私たちのもの"
二人称 yours "あなた(たち)のもの"
三人称 hishersits/one's "彼のもの"
複数形 theirs "彼らのもの"

I like myself.
「私は自分が好きだ。」

  • 再帰形
人称代名詞の主語と目的語が一致している場合、その目的語には「自分自身を」を表す再帰形の単語を用いなければならない。

基本的には所有格か目的格に接尾辞-selfをつける。再帰形は最初使われやすい三人称から発達し、古英語の副詞selfと目的格が縮合してできたが、その後selfが時代を経て名詞と認識され始め、同じタイミングで1・2人称とも縮合したため、三人称以外は所有格+selfの形を取っている。
複数の場合は接尾辞-sをつけるが、他の唇歯音[f],[v]となる多くの子音に接尾辞-sがつく場合と同様、自動的に-selvesになる。

1 myself, ourselves
2 yourself, yourselves
3男 himself
3女 herself
3中 themself
3無生 itself
3複数 themselves
3不定 oneself, oneselves

指示代名詞
英語の指示代名詞には、話し手に近いものを表すthis"これ"と、話し手から離れた場所にあるものを表すthat"あれ"の二種類がある。

一人称の指示代名詞this "これ"
主格 this, these
所有格 -
目的格 this, these

三人称の指示代名詞that "あれ"
主格 that, those
所有格 -
目的格 that, those

いずれの場合も一般名詞などと同様、主格と目的語が全く同じ形をしている。また、所有格が存在しないため前置詞を使う必要がある。

ただし、指示代詞はそれとは別に限定詞として使うことができる(指示形容詞)。

this game "このゲーム"
This way. "こっち"

  • 疑問代詞
疑問代詞は、疑問代名詞、疑問形容詞、疑問副詞からなり、疑問代名詞は「何」「どれ」「誰」といった名詞(句)を、疑問形容詞は「何の」「誰の」「どの」といった形容詞句や限定詞を、疑問副詞は「いつ」「どこで」「なぜ」「どのように」といった副詞を、それぞれ尋ねる。(形容詞・限定詞は名詞に意味を付け加え(=修飾し)、副詞は動詞を修飾する。)

●疑問代名詞
疑問代名詞は、what「何」who「誰」、which「どれ」、そしてそれらの所有代名詞であるwhose「誰のもの」の四種類がある。これらは不規則に屈折する。疑問代名詞の所有格は「誰の?」という、限定詞や形容詞を尋ねる語になる。疑問代名詞に複数形はない。またいずれの限定詞もつかない。

主格 what who which
所有格 whose whose -
目的格 what whom -

所有代名詞 whose

(whichは主格しか使われない。)

Who are you?
「あなたは誰?」
(*これは実際には「お前は誰だ」という尋問めいた質問になるので注意。)

Hey, who turned out the lights?
感嘆詞「おい」 疑問代名詞「誰」 動詞 副詞 冠詞 名詞「ライト」
「おい、誰がライトを消したんだ?」
(*turned outで一つの動詞扱いし、「(ライトを)消す」という意味になる。)

Whose is this pen?
「このペンは誰の?」

Whatは主格と目的格が同形になっているが、whoの目的格はwhomになっている。ただし、whoを目的格として使うこともできる。
また、whoseは生きているかどうかにかかわらず同じ形になる。

また、疑問詞に差し替えるべき部分がほかの格をとる場合は一般名詞と同様前置詞を付ける。このようにしたものは疑問副詞になる。

●疑問形容詞
疑問形容詞は、名詞について、「何の~」「どの~」という意味になる。所有格をとって限定詞として機能している疑問代名詞が「形容詞/限定詞を尋ねている」のに対し、疑問形容詞は「形容詞のついた名詞のうちの何かを尋ねている」点に注意。すなわち、代名詞を限定詞/形容詞化した場合はそれを倒置された動詞の前に置くが、疑問形容詞は「疑問形容詞+一般名詞」として一つの疑問代名詞となるため、それが修飾している名詞とともに動詞の前に置かなければならない。
疑問形容詞は名詞としてのwhat, which、あるいは所有格のwhoseと全く同じ形をしている。名詞の場合と異なり、whoを使うことはない。

What time is it now?
疑問形容詞「何の」 名詞「時間」 動詞 名詞(ダミー主語) 副詞「今」
「今何時?」
(ダミー主語は、具体的な事物を刺さない代名詞。天候や時間などにもこの主語の形態をとる。)

●疑問副詞
疑問副詞は、上述の疑問代名詞が主格/目的格とは異なる格(斜格)をとったもの。

In what place is my mammy?
前置詞 疑問形容詞 名詞「場所」 動詞「いる」 限定詞「僕の」 名詞「ママ」
「僕のママはどこにいるの?」

上記ではまず「疑問形容詞+名詞」がひとつの「疑問代名詞」として機能し、さらにそれに前置詞がついて斜格をとるために「疑問副詞」になったものである。

これは、以下のように言い換えることもできる。

Where is my mummy?
疑問副詞 動詞 限定詞 名詞

このように「どこに」「いつ」「どのように」「なぜ」という副詞を尋ねる疑問詞は専用のものがある。

Where「どこに(へ)」
When 「いつ」
How 「どのように」
Why 「いつ」

特にhowは、how much「(不可算名詞と)どれだけ」のように副詞につくことで新たな疑問副詞に、形容詞につくことで疑問形容詞になる。

How long does it take to get to the station?
疑問副詞 形容詞「長い」 助動詞 名詞 動詞「とる」 副詞「~するために」 動詞「つく」 前置詞「~に」 冠詞 名詞「駅」
「駅に着くまでどれだけかかる?」
(このitは具体的な物事を指さず、仮に立てた主語なので「ダミー主語」と呼ばれる。)

前置詞(preposition)

与格(〜に)や奪格(〜から)など、屈折の範疇では扱いきれないものが出てきた場合、前置詞と呼ばれるものを動詞の前につける。これは日本語の格助詞に似ている。

これらは名詞句を他の品詞に変える役割がある。

to the boy "その子供に"(副詞句)
of the boy "その子供の"(形容詞句)

この句においてtoは格助詞「〜に」に、ofは格助詞「〜の」に相当する。

前置詞は副詞から派生しており、前置詞がついた名詞句は常に目的格になる(支配)。
このため、後述の自動詞+前置詞は他動詞としても見ることができる。*13

形容詞(Adjective, ADJ, A)

形容詞は、名詞の状態を説明する(修飾する)単語。
それ単体では存在できず、名詞につかなければならない。

二語以上で一つの形容詞として働いているものは形容詞句と呼ばれる。
形容詞は、一語の場合は冠詞と名詞の間に挟む。

a nightbird
冠詞 名詞
「夜盗」

a flying nightbird
冠詞 形容詞 名詞
「飛んでいる夜盗」

しかし、形容詞が二語以上で一つになっている場合はそうではなく、名詞の後ろにつけなければならない。

the tomb of the boom
冠詞 名詞 前置詞 冠詞 名詞
(名詞句+形容詞句)
「流行の墓」

名詞句に形容詞や形容詞句がついても、副詞(句)や形容詞(句)などにはならず、名詞句のままである。これは名詞の場合も同様。

故に、形容詞は名詞につける限りにおいては話者によって自由につけることができる。

ただし形容詞は後述する動詞の補語になることができ、その場合は動詞につくことになるが、その場合は自由につけたり外したりすることはできない。

比較級と最上級

比較級は他のものと比べる際に用い、最上級はグループと比べる際に用いる形容詞のとる形態である。いずれでもない形容詞を原級と呼ぶ。
三音節未満の場合、比較級なら形容詞に接尾辞-erを、最上級なら接尾辞-estをつけて表す。三音節以上となる場合、または動詞の分詞形(後述)は、比較級なら形容詞の前に副詞moreを、最上級ならmostをつける(音節については音韻の項を参照。中学では「六文字未満なら~」というように教えられる)。
比較級の例)

He is cooler.
he is cool-er
名詞 動詞「~だ」 形容詞「かっこいい」-比較級
「彼は比較的クールだ。」

比較の対象が存在する場合、「~より」という意味の前置詞thanをその対象を表す名詞の前につける。

He is cooler than that girl.
名詞 動詞 形容詞 前置詞 限定詞 名詞
「彼はあの女の子よりクールだ」

最上級の例)
He is the coolest person in the world.
he is the cool-est person in the world
名詞 動詞 冠詞 形容詞-最上級 名詞 前置詞「~で」 冠詞 名詞「世界」
「彼は世界で最もクールな人間だ」

なお、最上級によって名詞が修飾されている場合、それは一つに定まるため定冠詞theを付けなければならない。inは場所や範囲、ofは人や物の集まりに対してつける。

  • 比較級・最上級の屈折
使用頻度の高い形容詞の中には、相補形をとるなど不規則な屈折をするものがある。

以下、その例。
(原級, 比較級, 最上級の順)

good「良い」 good, better, best
bad「悪い」 bad, worse, worst

as

AsはBE動詞is「~だ」から派生した副詞または前置詞であり、普通主語の前について「~とき」「~ので」といった接続の役割を果たすが、形容詞の前と名詞の前に置くことで「~と同じくらい~な」という意味を表す。

He is as cool as me.
名詞「彼が」 動詞「~だ」 副詞 形容詞 前置詞「~と」 名詞「私」
「彼は私と同じくらいクールだ」

動詞(verb,V)

動詞は、名詞句について文を作る。
動詞によって文を構成するのに最低限必要な項の数(価数)と種類が決まっている。
必要とする項が主語のみ(価数1)であるものを完全自動詞、
主語の他に形容詞(句)や副詞(句)といった主語の状態を表す語である補語(Complement, C)を取らなければならない不完全自動詞、
主語の他に名詞を取らなければならない他動詞の、大きくわけて三種類がある。

自動詞(Transitive Verb)

自動詞は、目的語をとることがない動詞。
主語のみを必要とする完全自動詞と、主語の他に名詞以外の特定の補語Cを必要とする不完全自動詞の二種類がある。
完全自動詞は価数が1、不完全自動詞は価数がそれより多くなる。

People play.
"人々は遊ぶ。"

この文において、自動詞playはひとつの項を取り、主語peopleがその価数1を満たす名詞である。

自動詞が主語だけを取ればいいとは限らない。

remain:【自動詞】「〜ままである」
silent:【形容詞】「静かな」

✅It remains silent.
名詞 不完全自動詞 形容詞
"それは静かなままである"

❌*It remains.
?"それはままである"

このような文は日本語に訳すと違和感があるので分かる。

  • BE動詞
BE動詞は主語の状態を表す不完全自動詞である。

“I” is ninth.
名詞 BE動詞 形容詞
「”I”は9番目(のアルファベット)である。」

BE動詞は補語に名詞句または形容詞(句)をとることができ、補語をとっている場合は「~だ」と訳される。
補語をとっていない場合は「ある」「いる」という存在を表している。

補語は目的語とは違うため、BE動詞の補語となる名詞は普通主格をとるが、「動詞の後ろは目的格」という類推から目的格をとることもあり、どちらになるかは実質自由である。

I am I.
「私は私。」

It’s me, Mario.
「マリオです。」

他動詞(Intransitive Verb)

他動詞は主語の他に目的語を少なくとも一つとる。

故に、他動詞は項が2つ以上となる。

I play tennis.
"私はテニスを遊ぶ。"

この文において、動詞playは項を主語Iと目的語tennisで複数取っているため他動詞である。故に、上の自動詞playとは意味合いが異なる。

中には、複数の目的語をとることで項を3つ以上取る動詞もある。

I buy you a T-shirt.
"私はあなたにTシャツを買う。"

you"あなた"とT-shirt"Tシャツ"は共に他動詞buy"買う"の目的語である。

動詞には名詞と同様、単数と複数の数があり、これは主語となる名詞の数を表す。

a boy plays.――(1)
男の子が遊ぶ。

Boys play.――(2)
男の子たちが遊ぶ。

(1)の文で、主語a boyは単数のため、動詞には単数を表す接辞-sがついている。
(2)の文で、主語boysは複数のため、動詞には単数の接辞-sはつかない。何もつかないことがそれ自体標識として機能している(ゼロと言う)。

活用(動詞の屈折)
動詞は主語の人称と数、時制によって形が変わる。これを活用と呼ぶ。

原型

動詞の原型は、辞書に記載されている形である。

play
fight "戦う"
cut "切る"

時制(tense)

時制は動詞や後述する助動詞の行為のタイミングを表し、現在、過去、未来がある。
時制は常に表示しなければならず、例えば過去のことについて話している場合は、引用するときや不変の原理について話すときを除いて、語られている時間で起こったことは常に過去の時制を表示する必要がある。

  • 現在時制(present tense)
現在時制は、現在習慣として行われていることや、惑星の公転など不変の原理について表し、「よく〜する」と訳される。

現在時制は後述する三人称単数以外は原型と同じ形をしているため、ここでは便宜的に接尾辞-∅をつけて表すことにする。
(三行目の"."はそれらの意味が同時にあることを示す。)

I play.
I play-∅
1人称.単数.主格"私が" V"遊ぶ"-現在
"私は遊ぶ。"

ただし、現在形でも主語が三人称(話し手でも聞き手でもない場合)であり、かつ単数である場合は接辞-sがつく。これは「三単現の-s」と呼ばれる。

A boy plays.
a boy play-s
冠詞"ある".不定.単数 名詞"男の子" 動詞"遊ぶ"-三人称.単数.現在
"ある男の子が遊ぶ。"

  • 過去時制(past tense)
過去形は、過去の動作を表す場合、または現在絶対に起こり得ないことを想像する場合(条件法)、あるいは丁寧な言い方をする際に用いられる。故に、非現実を表しているように見える。

過去時制とは前者の場合のことであり、動詞の過去形を用いる場合、過去のある地点での動作を表す。習慣を表したい場合、動詞wouldを用いる。

I would play.
名詞 助動詞 動詞
「私はよく遊んだものだ」

wouldは、-'dと略されて名詞につくことがある。

I'd play.
名詞-助動詞 動詞

このように単体では意味をなさず、他の動詞の特定の形を入れることで新しい動詞句を作る動詞を「助動詞」と呼ぶ。

習慣を表さない動詞の過去には人称・数に関わらず原型に接辞-edがついた形で表される。

You played.
あなたは遊んだ。
名詞 動詞-過去

A boy played.
子供が遊んだ。

Boys played.
子供たちが遊んだ。

中には不規則な屈折をしたり、相補形を取ったりする動詞もある。

I bring it.
私はそれを運ぶ。

I brought it.
私はそれを運んだ。

  • 未来時制
未来時制は、動作が未来に行われる場合に用い、will+動詞の原型で表される。
この動詞の原型は原型不定詞と呼ばれ、現在形ではない。

We will play.
我々は遊ぶだろう。

助動詞willは普通そのままでは使わず、-'llと省略されて主語に接辞としてつく(縮約する)。

I'll play.
私は遊ぶだろう。

なおwillには未来予測「きっと~だろう」を表す「認識的用法」と意思「~するつもりだ」を表す「根源的用法」があるが、このうち前者は条件節の中で使うことはできない。

繋辞(BE動詞,copula)

言語の中には、名詞があるものであることを表す繋辞を持つものがあり、日本語や英語もその一つである。

I am Unti. 「私はウンチです。」
名詞 繋辞 名詞

She is cute.「彼女は可愛い。」
名詞 繋辞 形容詞

ここで、IとUntiは同じであるが、このUntiは補語である。

繋辞は英語ではBE動詞と呼ばれる単語によって表される。
BE動詞は一般的な動詞とは異なり、時制と主語の数に加え、主語の人称によっても活用する。これはこの動詞が頻繁に使われ、聴きやすさと言いやすさを重視した結果である。

一人称
現在 am, are
過去 was, were
未来 will be, will be

二人称
現在 are, are
過去 were, were
未来 will be, will be

三人称
現在 is, are
過去 was, were
未来 will be, will be

  • 単数形は、一人称ではam、三人称ではisとなるが、過去形では同じwasである。
  • 二人称は代名詞の場合と同様、単数と複数が同型である。
また複数形は現在では人称によらずareであり、areになるものは過去形では全てwereになる。
  • 未来形はwill+原型である点は一般的な動詞と同じであり、全て同じ形である。

なお、BE動詞は繋辞の他にも、主語の存在を表す自動詞にもなる。

I am home. 私は家にいる。
名詞 BE動詞 副詞

副詞

副詞は、動詞、形容詞、他の副詞を修飾する語。
動詞の価数に関わらない限り、副詞や副詞句は自由につけることができる。
動詞を修飾する場合、副詞はその直後に、それ以外を修飾する場合、副詞はその直前につく。
ただし、否定を表す副詞「not」や頻度を表す副詞「always」「often」などは一般動詞の前、助動詞またはBE動詞の後に置かなければならない。

  • not
副詞notは否定を表し、助動詞やBE動詞の後、それ以外を修飾する場合はその語句の前に置く必要があり、助動詞/BE動詞と一つになる(縮約される)。

助動詞
do「(動詞の原型と)〜する(強調)」
do not→don't「〜しない」

I do play the piano.
名詞 助動詞 動詞 冠詞 名詞
「私はピアノを弾く。」

I do not play the piano.
名詞 動詞 副詞 動詞 冠詞 名詞

I don't play the piano.
「私はピアノを弾かない」

なお、単純にnotで動詞を否定する場合、このように形式的な助動詞を立てなければならない。

以下、動詞の活用の例。
助動詞(BE動詞)→縮約形の順。
基本的には接辞-n'tをつければいいが、発音や表記が変わる場合もある。
聴きやすさの関係からか「*amn't」という縮約形はない。

BE動詞
am→am not
are→aren't
is→isn't
was→wasn't
were→weren't

助動詞
do「する」→don't「しない」
did「した」→didn't
can「できる」→can't「できない」
could「できた」→couldn't
will「するだろう」→won't「しないだろう」
would「しただろう」→wouldn't
have「してしまった」→haven't

なお、canとnotを縮約しない場合、分かち書きせずにcannotと書かなければならない。
また、後述するto不定詞に使用する場合、toの前に置く必要がある。
なお、否定を表す語はなるべく文の前に置く。

分詞

動詞は名詞を修飾する語である形容詞や動詞を修飾する語である副詞にすることができる。この動詞は普通とは異なる形をとり、それを分詞と呼ぶ。

a playing boy
冠詞 分詞(形容詞)"遊ぶ" 名詞"男の子"

"遊んでいる男の子"

a girl eating an apple

冠詞 名詞"女の子" 分詞"食べている" 冠詞 名詞"林檎"

"林檎を食べている女の子"

分詞には動詞の現在形などと異なり、能動(active)と受動(passive)がある。
能動では動作の主体がそのまま主語となる。
受動では元となる動詞の目的語が主語となり、「〜される」のように訳される。
基本的には能動を表す分詞は動詞の原型に接辞-ingが、受動を表す分詞は原型に-edがついた形として表される。
伝統的に、前者は現在分詞、後者は過去分詞(p.p.)と呼ばれる。過去分詞は過去形と形が似てはいるものの、過去を表すことはない。

trust [他動詞として]"を信じる"
能動 trusting "〜を信じている"
受動 trusted "信頼される"

また、前置詞のついた句を項にとる動詞の場合、前置詞が名詞の目的格を取るため、動詞+前置詞でひとつの他動詞として見ることができる。
これを分詞にする場合も動詞の方を活用させるが、二語以上で一つの意味を持つため、名詞の後に置く必要がある。

trust [自動詞として]"(前置詞 in で作られる副詞句と)〜の存在を信じる"
→trust in [他動詞] "〜の存在を信じる"

能動 trusting in "〜の存在を信じている"
受動 trusted in "存在が信じられている"

a boy trusting in God
「神を信じる少年」

a god trusted in
「存在が信じられている神」

このため、動詞を受け身の形(受動態)にする場合、受動の分詞である過去分詞が使われる。

frighten [他動詞]"怖がらせる"

He is frightened.
代名詞"彼が" 繋辞"〜である" 分詞"怖がらせられる"
"彼は怖がらせられる(=彼は怖がる)"

能動を表す現在分詞は、繋辞とともに使われた場合、現在まさに起こっていることについて述べる(進行)。現在形が主語の習慣を表すのとは対照的である。

He plays a piano.
彼はピアノをよく弾く。

He is playing a piano.
彼はピアノを弾いている。

なお、これらの分詞は字数の節約や時短のために主語やBE動詞を省略して用いることがある。

He playing a piano.

Ambushed!
「不意打ちされた!」

動作が過去に行われていた場合、BE動詞を過去形にする。

I was playing a piano at three.
私は3時にピアノを弾いていた。

ただし、日本語のように過去の動作が現在まで続いている場合にはこれらの進行相は用いられない。その場合はそれに対応した形容詞や後述の完了相を用いる。

You are dying.
あなたは死につつある。("あなたは死んでいる"ではないことに注意。)

You are dead.
名詞 BE動詞 形容詞
あなたは死んでいる。

また、動詞には行為そのものを表すものの他に、状態をあらわしているもの(状態動詞)もある。

この場合は分詞にしてはいけない。

I love it.
名詞 動詞 名詞
私はそれを好む。

I'm loving it.
名詞-BE動詞 分詞 名詞
私はそれを好みつつある。(「私はそれを好んでいる」ではないことに注意。)

また、現在分詞に限り名詞として使うことができる。これを動名詞と呼ぶ。

mean "意味する"
meaning "意味"

I know its meaning.
"私はその意味を知っている。"

BE動詞でない動詞に接辞がつくのは①現在形-∅①'現在形(三人称単数)-s②過去形-ed③動詞の現在分詞を作るとき-ing④動詞の過去分詞を作るとき-edの五つに絞られる。

動詞の屈折は接辞の省略を起源としているため、不規則な変化をする動詞はこの四つを覚えればいいことになる。

また、①'に関してはこれが屈折する動詞は限られる。③に関しても不規則な変化をする動詞は少なく、④の過去分詞も過去形と同形である場合がほとんどである。

to不定詞

to不定詞はto+動詞の原型で作られる副詞句または形容詞句のこと。このtoは前置詞ではない。

to不定詞は形容詞としての役割と副詞としての役割がある。形容詞として使われた場合、通常は「〜するための」という意味に、副詞として使われた場合、「〜するように」「〜するために」という意味になる。

easy to bring 「運ぶのに簡単だ(=運びやすい)」

動詞が日本語の「見せてくる」の「見せ」だとするなら、副詞を作る場合のtoは「て」に相当する。

見せ-て くる
動詞-接尾辞*14 助動詞*15

この動詞は「見せて」が「くる」を修飾しているように見えるが、「くる」はその実何の意味も持たず、ただ動作が視点に向かって行われることを示しているに過ぎない。

to不定詞を使った句も、似たようなことが起こる。

come 【自動詞】「来る」

come to play
動詞 to 動詞
「遊ぶようになる」

comeが本来の「移動する」という意味を失って「〜するようになる」という単体では意味の通じない単語になっている状況は上の助動詞「くる」と似ている。

しかしながら、次のような単語にはto不定詞ではなく分詞を使わなければならない。

✅worth speaking of
形容詞 分詞 前置詞
「言うだけの価値がある」

❌*worth to speak of
形容詞 to 動詞 前置詞

分詞を取るか不定詞を取るか、どちらも取るのかは単語によって決まっており、いずれか一方を取るものは少ないため、それらを逐一覚えるしかない。単語のイニシャルを野球選手やアニメキャラクター等のイニシャルと関連付けて覚えるか、高校で習うやり方として、何らかの語呂合わせを使って覚える。
なお、分詞は過去やネガティブな物事を、不定詞は未来の物事を表す傾向にある。

相(aspect)

相は、動詞の行われる時間軸や範囲の違いを表す文法形式。
先にも紹介した通り、英語には現在過去未来という「時制」に加え、過去と言っても瞬時に行われたものか習慣的なものかという違いや、現在進行中かどうかという違いを表す「相」が存在している。

  • 習慣のwill
willはもともと「意志」という意味であり、過去形にした場合は習慣相などを表す。
ただし、これで状態を表すことはできない。

He will sometimes play.
名詞 助動詞.習慣 副詞 動詞
「彼はしばしば遊ぶ。」

wouldはwillの過去形である。

  • 完了のhave
英語の相はこの他に、動作が完了し、その影響が現在まで続いていることを表す完了相がある。
完了相を表す助動詞haveは動詞の過去分詞形をとる。故に、本来受け身の必要のないBE動詞にも過去分詞形が必要となってくる。

助動詞 have
現在形(下記以外) have
現在形(三人称単数) has
過去形 had

BE動詞 be
現在分詞(能動) being
過去分詞(受動) been

Bean is in London.
名詞 動詞 前置詞 名詞
「ビーンはロンドンにいる。」

Bean has been to London.
名詞 助動詞 動詞 前置詞 名詞
「ビーンはロンドンに行ったことがある。」

動詞 go「(to+名詞句と)行く」
現在分詞 going
過去分詞 gone

ここで、口語日本語の接辞「-れる」が接辞「-ない」と同様、動詞「励ます」の未然形「励まさ-」に接続してそれぞれ「励まされる」「励まさない」となるが、「励まさ-」それ単体には否定の意味がないことを思い出せば、この動詞は過去分詞(形容詞)と同型でありながら動詞のままであり続けており、助動詞の要求によって形を変えているに過ぎないことが分かる。

I have a ticket.――⑴
名詞.1SG 動詞"持っている" 名詞"チケット"
「私はチケットを持っている」

これは、下のように言い換えられる。

I have gotten a ticket.――⑵
名詞.1SG 助動詞.完了 動詞"手に入れる".過去分詞 冠詞 名詞
「私はチケットを手に入れている」

ここで、⑴のhaveと⑵のhaveは同じ形・発音をするが、意味も役割も異なることに注意。
getは「手に入れる」という意味でしかないが、助動詞haveを使うことで手に入れたという行為の影響が現在まで継続しているということを表している。

過去分詞gottenは不規則活用動詞getの過去分詞形であることに注意。
助動詞のhaveは-'veという接辞として、hasは-'sという接辞として、主語につくことができる。
完了相は多くの言語で動詞の過去形と混同されやすい。
英語でも、過去に行われた動作について語る際に、その時点から更に過去に行われた動作について語る場合は実際の完了の如何に関わらずこのhaveを用いなければならない。これは未来についても同様。

以上、相をまとめると次の通りになる。

(3SG。現在,過去,未来の順)

動詞 play

習慣 will play, would play, -
進行 is playing, was playing, will be playing
完了 has played, had played, will have played

なお、have以外で英語で「助動詞」と言われているものは全て動詞の原型をとる。

過去完了(大過去) had played
過去 played
現在 play
未来完了 will have played
未来 will play

法(mood)

法は、動詞の事実関係や聞き手への要求を表す動詞や文の形態。
英語では相手に動作を要求する命令法(~しろ)、仮定を表す仮定法(もし~なら)、仮定された状況での動作を表す条件法(<左に続いて>~だろう)、の三つがある。

命令法

命令法は、主語を省くことで表される。

Go on, kiddo...
[go on] kiddo
[動詞句] 名詞.呼格「~よ!」
「進め、坊や」
(呼格は、呼びかけに使われる。)

Take it.
動詞 目的語
「受け取れ」

仮定法・条件法

それが実現可能な場合や現実的な場合は、仮定法は従位接続詞ifを用いるか、一部の助動詞等を用いている場合は文を倒置させることでも表すことができ、条件法は通常の文と同じ形をとる。(従位接続詞は、ここでは文の前に置くことでそれを副詞にする役割がある。)

If you say it, I’ll kill you.
従位接続詞 主語 動詞「言う」 目的語「それ」 主語.未来 動詞「殺す」 目的語
「それを言ったなら、私はあなたを殺す。」

ここで、仮定法はifのついたif you say itの部分であり、条件法は,以下であるI’ll kill youの部分である。

それが実現不可能だった場合、すなわち過去に起こった出来事に関して「もし~」という場合や、現在実現しそうもないことを述べる場合、仮定法は上記に加えて、時制を一段階過去にずらさなければならない。
そして条件法は現在形ならば助動詞wouldをつけた形で表し、過去形ならばさらに助動詞haveを用いなければならない。
動詞の過去形は過去というよりむしろ非現実を表していると覚えると分かりやすい。

You did not say it.
If you had said it, I would have killed you.
「あなたはそれを言わなかった。もしあなたがそれを言っていたら、私はあなたを殺していただろう。」

なお、hadなどの助動詞は疑問文と同じく倒置することでifを省略できる。

Had you said it, I would have killed you.

最初の節は後ろに持ってくることもできるため注意を要する。

I would have killed you had you said it.

等位接続詞

等位接続詞は、句と句、または文と文をつなげる役割があり、前者は「~または~」、「~と~」といった意味になり、後者なら「~。さもなければ~」、「~。そして~」といった意味になる。

Will you wind? Or not wind?
助動詞 主語 動詞 接続詞「または」 副詞 動詞
「巻きますか? 巻きませんか?」
→will以降動詞が並列されている。

三つ以上繋げる場合、発話では小休止となるコンマ「,」を挟む。

the pulverization, the honorable suicide, and the loud cheers
「粉砕、玉砕、そして大喝采」

Die Battousai! Die Saito! Die Sagara! And you, too, Shinomori!
「死ね抜刀斎! 死ね斎藤! 死ね相楽! そしてお前もだ、四乃森!(=死ね死ね! どいつもこいつも皆殺しだ!)」

And 「(句と句をつなげて)~と~」「(文と文をつなげて)~そして~」
Or「(句と句、または文と文をつなげて)~または~」「(命令文と平叙文をつなげて)~せよ。さもないと~」
Nor……否定文で「~と~のどちらでもない」を表す際に用いられる。なお、これはorで代用可能。

従位接続詞

従位接続詞は、文を入れる(うしろにつける)ことでそれを一つの語句であるかのように扱う。文が含まれている構造を節と呼ぶ。従位接続詞のついた文を従属節、そうでない文を主節と呼ぶ。

文を形容詞にするもの
Which「~ところの」
That「~ところの」

文を名詞にするもの
What「~するもの」「なにが~かということ」Whether「どちらが〜かということ」

文を副詞にするもの
When「~とき」

......など。なお、同じ形をしている単語が上記の複数の機能にまたがっていることもある。

that以外は疑問詞から派生している。

the Tragedy of the Skywall, which Pandora's Box found in Mars caused
冠詞 名詞 [前置詞 冠詞形 名詞](=形容詞句) 従位接続詞「〜ところの」 冠詞 名詞.所有格 名詞 [分詞 前置詞 名詞 動詞](=形容詞句)
「火星で発見されたパンドラボックスが引き起こした『スカイウォールの惨劇』」

制限用法と非制限用法

You, who has read this now, will die.
「いま此れを読んだ貴方は死にます。」

この文においてwho以下は単にyouを修飾するのではない。

制限用法は形容詞節によって何かを特定する際に用い、非制限用法は形容詞節によってそれにただ説明を加える際に用いる。非制限用法は主節と従属節の間に小休止「,」を挟むことで表される。

非制限用法
Hiraga Gen'nai, who is flying
「飛んでいる人である平賀源内」

制限用法
??Hiraga Gen'nai who is flying
「平賀源内のうちの飛んでいるやつ」

見てわかる通り、制限用法は固有名詞や代名詞のような定まった名詞には使用できない。

接続副詞

接続副詞は、However「しかしながら」、So「なので」といった、前の文を受けて次に繋げる単語。

文全体を修飾する副詞である。

その他の文法

形容詞の名詞化

形容詞に複数形の接尾辞-sをつけることにより、不定でかつ「〜である人(もの)達」という名詞になる。
他に似た意味を持つものとして、thoseの後にwhoで作られる名詞節を置く用法があり、これは節をして「〜する人」という意味の単語たらしめるものである。

モノ言語

It makes my heart hopping.――⑵
主語 動詞「〜にする」 限定詞 名詞「心」 分詞「跳ねる」
「それは私の心をぴょんぴょんさせる。」

「心がぴょんぴょんする。」は直訳すれば

My heart will be hopping.
限定詞 主語 助動詞.未来 繋辞 分詞

のようになるだろう。しかし英語では⑵のように書くのが普通である。
このように日本語は「何が起こったのか」という「コト」に敏感であり、英語は「何をしたのか」という「モノ」に敏感である。

日本語のような言語をコト言語、英語のような言語をモノ言語と呼ぶ。

話題化


例)
キリンが首が長い。
キリン-が 首-が 長い
名詞-話題 名詞-主語 動詞

上の文の場合、「キリンが」は主語ではなく、「キリンについて言えば」という程度の話題の意味である。

英語もこのように単語を文の前に出すことで話題にすることができるが、元の文の相当する単語を代名詞で補わなければならない。

The wine, I can't stop drinking it.
「酒について言えば、それを飲むのを止められない。」

借用による語法

中国など外国との貿易の過程で生まれた言語(ピジン)から借用された語法もある。

Long time no see.
形容詞「長い」 名詞「時間」 形容詞「ない」 動詞「見る」
「久しぶり」

このような語法は本来文法的に誤りだが、慣用的に用いられるため注意が必要である。

語彙

英語の語彙は、もともと英語にあった日常的に使われる短いもの(walk, dogなど)と、ラテン語等から借用してきた語(appearance, interestingなど)があり、もともと英語にあった方は意味が推測できないことが多いが、借用した語は形が不規則に変わりにくいという性質があるため、単語に含まれている意味の最小単位(語根)からある程度意味を推測することができる。

単語が不規則に変わる例

英文を書く必要に迫られた場合、あるいは初心者向けの学術書などある程度広い層に向けて書かれた本を読む場合などは、他の単語で代用して書いたり、また書かれていたりすることがほとんどなため、難しい単語を覚える必要があることはあまりない。
しかしながら小説やSNSでのやり取り、ある程度専門的な本などでは難しい単語が使われることもあるため、意味を正確に把握しておく必要がある。

ラテン語源の単語の覚え方


Betray /bɪtréɪ/ [動詞]「裏切る」

(「裏切り者の首取れい」などと語呂合わせして覚える。)

Did you really betray us?
「私達を本当に裏切ったんですか?」

この単語は

be-(強調)<be
  • tray「移る」

と分けることができる。

このため、語根-or「〜する人」と合わせて

traitor /tréɪṭɚ/ [名詞]「裏切り者」

という語を違和感なく覚えることができる。

また、betrayには更に、動詞を名詞化する語根「-al」をつけて、

betrayal /bɪtréɪəl/ [名詞]「裏切り」

という単語にすることも可能である。

しかしながら、語根は活用語尾などと違って単語の形態から意味を決めたり、意味から形態を決めたりすることはできない。

add
[動詞]「付け加える」

addition
[名詞]「追加」

additional
[形容詞]「追加の」

限定詞

another 「もうひとつの」
不定冠詞anに「他に」という意味の形容詞「other」のついた語。全体の一部でかつ単数である時に用いる。もうひとつを指定した時点で一意に定まる場合はthe otherを用いる。
なお、複数である場合はothers、全体を示したい場合はthe othersとなるが、これは名詞であって限定詞ではない。


その他の借用語

日本語からの借用語でtsunamiやkudzuなどの単語があり、これらは基本的にそのままの意味で用いられるが、中にはsake「日本酒」のように意味が転用される場合もある。
また、それらの発音は単にローマ字読みされるだけでなく(tsunamiなら「スーナミ」のように)変わることもあるため注意が必要である。日本語のカタカナ英語を考えると分かりやすい。

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最終更新:2023年05月22日 23:03

*1 「は」の子音(声門摩擦音)は「ぱ」の音が変化したもので、本来濁点のつく字はそうでない字に声帯の振動が加わったものである。

*2 ブーバ/キキ効果を考えると覚えやすい。

*3 英語の場合は歯と唇を、日本語の場合は両唇を摩擦させることで発音している点で異なるが、聞き分けられる人はそうそういないので覚えなくてもいい。

*4 ただし日本語のわの子音は(有声)両唇接近音[β̞]。[w]は多分マリオがよく出してるやつ。

*5 ドイツ語など他の言語では大体jは有声硬口蓋接近音である。

*6 ラテン語が主格-属格-与格-対格-奪格の順で覚えるためか、ドイツ語もその順で番号が振ってあり、英語もI-my-me-mineなどと覚えさせられるが、覚えやすさを考慮して主格- - -所有代名詞の順とした。

*7 ちなみにこれは古典文法にも同じ現象がみられる。疑問を表す係助詞「か」を使うと動詞が連体形を取るのは、動詞の連体形(=名詞)+(疑問代)名詞+終助詞「か」の語順が倒置されたことに由来する

*8 think 名詞 through または think through 名詞で「考え抜く」という意味。ただし、代名詞は英語の昔の語順が名詞-接置詞だった影響が残ったためthink it throughのように必ず動詞と副詞の間に挟まなければならない。

*9 実際に日本語でも「死に+て+あり=死にたり」が「死んだ」というように単なる過去形になっている

*10 この他にも、a+人名で「〜という人」という用法もある。

*11 このような法則は世界的に見ても稀である

*12 特に名詞の屈折を曲用と呼ぶ。

*13 これは世界でも稀。

*14 国文法では接続助詞と呼ばれている。

*15 国文法では補助動詞と呼ばれる。