ウルザトロン(MtG)

登録日:2014/05/24 Sat 01:05:53
更新日:2025/07/10 Thu 12:11:14
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【ウルザトロン】はMtGにおけるデッキの一つ。略して【トロン】と呼ばれることも多い。
デッキ名は投入されている三種類のウルザランドと呼ばれる土地に由来する。

解説

前述の通り「ウルザランド」と呼ばれる3種の土地をキーカードとする。

ウルザの鉱山/Urza's Mine
土地 — ウルザの・鉱山
(T):あなたのマナ・プールに(1)を加える。あなたがウルザの・魔力炉とウルザの・塔をコントロールしている場合、代わりにあなたのマナ・プールに(2)を加える。

ウルザの魔力炉/Urza's Power Plant
土地 — ウルザの・魔力炉
(T):あなたのマナ・プールに(1)を加える。あなたがウルザの・鉱山とウルザの・塔をコントロールしている場合、代わりにあなたのマナ・プールに(2)を加える。

ウルザの塔/Urza's Tower
土地 — ウルザの・塔
(T):あなたのマナ・プールに(1)を加える。あなたがウルザの・鉱山とウルザの・魔力炉をコントロールしている場合、代わりにあなたのマナ・プールに(3)を加える。


このの3種類の土地が揃うと、土地3つから7マナという大量のマナが生まれる
無色のマナとはいえかなり強力で、ウルザランド自体も古くからあり何度も再録されたのだが、
「まあ、三枚揃ったら強いね。揃わないだろうけど。ハハハ」
とネタ扱いされ続け、これはというデッキが組まれることがなかった。


活躍

スタンダード

しかし時は過ぎ第8版で再録され、ミラディンブロックにおいて遂に頭角を現すことになる。
《森の占術》、《刈り取りと種まき》という土地サーチ呪文が登場し、ウルザランドを高速で揃えることが可能になった。
そしてこんなそして相方が登場した。
歯と爪/Tooth and Nail (5)(緑)(緑)
ソーサリー
以下から1つを選ぶ。
  • あなたのライブラリーからクリーチャー・カードを最大2枚まで探し、それらを公開し、あなたの手札に加える。その後、ライブラリーを切り直す。
  • あなたの手札からクリーチャー・カードを最大2枚まで戦場に出す。
双呪(2)(あなたが双呪コストを支払った場合、両方を選ぶ。)

早い話が 「9マナ払ったらライブラリーと手札の中から好きなクリーチャー2枚出していいよ」 というカード。
ウルザランドから大量に出るマナの使い先としては最適であった。
初手からブン回ると4ターン目には9マナ揃い、《歯と爪》をプレイ出来たりする。

《歯と爪》が呼び出すのはどれもこれも厄介な2体であり、
相手のクリーチャーを殲滅する《トリスケリオン》&《メフィドロスの吸血鬼》、
相手の土地を割りまくる《隔離するタイタン》&《鏡割りのキキジキ》、
ルールを捻じ曲げて負けなくなる《白金の天使》&《レオニンの高僧》、
説明不要な強力ファッティ《ダークスティールの巨像》×2などなど…
ぶっちゃけ、《歯と爪》が通りさえすれば勝ちに近い

また大量のマナをボードコントロールに充てたり、カウンターやX火力に用いることも出来るので、
持て余しそうなマナを無駄にすることもない。

《歯と爪》をデッキの核に据えたデッキはウルザトロンの少し前からあったが、要求されるマナを綺麗に揃えられることなどもあり、
次第に《歯と爪》を用いたデッキの中でもウルザトロンが一大勢力を築く事となる。
《歯と爪》自体も最初はカスレア扱いされていたのだが、誰がこうなる事を予想し得ただろうか。

弱点はやはり土地破壊。土地を一枚割る《石の雨》、狙った特殊地形を戦場どころか全ての領域から根こそぎ追放する《塩まき》、
土地二枚をライブラリーのトップに戻す《すき込み》が刺さる。
しかしウルザトロン側も黙ってはおらず、メインからカウンターを複数投入したカウンター型や、
《曇り鏡のメロク》という別の勝ち手段を投入した型が生まれていくことになった。


「歯と爪さえどうにかすればいいんじゃないの?」と思う人もいるかもしれないが、

すべてを護るもの、母聖樹/Boseiju, Who Shelters All
伝説の土地
すべてを護るもの、母聖樹はタップ状態で戦場に出る。
(T),2点のライフを支払う:あなたのマナ・プールに(1)を加える。このマナがインスタント呪文かソーサリー呪文のために使われた場合、その呪文は呪文や能力によって打ち消されない。

という母聖樹がカウンターを許さず、
例え《頭蓋の摘出》などの手札破壊で《歯と爪》を落としても、豊富なマナから《忘却石》や《精神隷属器》が飛び出し、
戦場を荒らした後に《隔離するタイタン》でフィニッシュ、となるのであまり致命的ではない。


主に緑で組み、ウルザランドと数枚の島や山というマナ基盤は当時メタの中心だった親和に強く、
やがて親和と並ぶ程の勢力となる。
更に禁止カードの指定で親和が第一線を退くとウルザトロンは更に台頭することになる。
こうして次第にウルザトロンがメタの中心に―――
















「良い土地だな、少し借りるぞ。」


ウルザトロンが誕生してしばらく後、青単トロンというアーキタイプが誕生した。
土地サーチを使って高速でウルザランドを揃えるというコンセプトではなく、
多数のカウンターとドロー呪文で 「ウルザランドが三種類揃うまで耐えればいい」 というコンセプトで出来ている。
親和が退場したことで異常に速かったゲームスピードが低下したのも追い風だった。
…なんかコンセプトの発想が変わっている気がするこの青単トロン、日本産のデッキらしい。やはり


緑のトロンは一発の《歯と爪》を主軸にしたコンボデッキだが、
青単トロンは豊富なマナをカウンターやコントロールに使う青コントロールとなっている。
デッキにはマナを使ってコントロールを行うアーティファクトを入れたり、
フィニッシャーに《曇り鏡のメロク》や《メムナーク》を採用して、溢れるマナを無駄にしないようになっている。


やがてミラディンブロックがスタンダード落ちすると《歯と爪》を失った緑のトロンは存在できなくなってしまう。
青単トロンも大量のマナの使い先にしていた重量アーティファクトを失い一時弱体化するが、
重量ドローや赤の火力を組みこんで華麗に復活。
第9版にもウルザランドは再録され、多数のアーキタイプが生まれていった。

その後も活躍し続けたが第9版を最後にウルザランドの再録は途絶え、ウルザトロンもまたスタンダードを去っていった。
2025年現在では戦場をモダンとPauperに移して活躍している。
スタン落ち後も特殊セットで何度かウルザランドが再録されることはあったが残念ながらスタンダードに復帰はしていない。

モダン

モダンでは最初こそよく似た12postに押され気味だったが、あちらが禁止されてからは人口も増加。
組み合わせも多岐に渡り、初期の緑単や青単タイプ、この2色を組み合わせた青緑タイプ、コントロールに特化した青黒、青白タイプなど様々。
フィニッシャー要員にエムラクールや《ワームとぐろエンジン》、アドバンテージ稼ぎにウギン、カーンなどのプレインズウォーカーと言った後世に登場した強力な無色大型カードを据え、常時トップメタの一角に座っている。

Pauper

Pauperでも8post禁止後に活躍を始める。
《予言のプリズム》や、その禁止後は《エネルギー屈折体》といったマナフィルターによって、様々な色をタッチできることが特徴である。
デッキのタイプも様々存在するが、初期は土地サーチ呪文・ドロー呪文・キャントリップアーティファクトでデッキを掘り進め、《ウラモグの破壊者》や《とどろく雷鳴》といったフィニッシャーを叩きつける緑系トロンが定番であった。
一方コントロールに寄せたトロンには青赤トロン・青白トロンなどがあったが、「モダンマスターズ2017」で《ディンローヴァの恐怖》がコモン落ちしたことによりフリッカー・トロンと呼ばれる強力なコントロール系トロンデッキが誕生する。
+ デッキの動き方
ウルザランドから大量のマナが出るようになったら、《ディンローヴァの恐怖》と《記憶の壁》に《幽霊のゆらめき》を撃つ。すると《記憶の壁》のCIPで《幽霊のゆらめき》を回収できるので、これを複数回繰り返すことによって《ディンローヴァの恐怖》のCIP*1を複数回誘発させ、戦場と手札をずたずたにして勝利する。
また《ディンローヴァの恐怖》の他にも、CIP持ちのクリーチャーかアーティファクトか土地を採用することによって、《CIP持ちの何か》*2+《記憶の壁》+《幽霊のゆらめき》のコンボで大量のマナを種々のアドバンテージに変換することができる。
そして最終的には《記憶の壁》+《記憶の壁》+《幽霊のゆらめき》で、好きなインスタント・ソーサリーを墓地から手札に回収することで対戦相手をロック状態に追い込めるので、《ディンローヴァの恐怖》の枚数を減らしたタイプもあらわれるようになった。
その後、長らく猛威を振るったフリッカー・トロンの弱体化のために《予言のプリズム》が禁止されたことで、トロンは冬の時代を迎える。
しかしその後《探検の地図》の解禁*3に伴い、無限コンボを勝ち筋に据えたエッグトロン*4・アルタートロン*5といった新しいトロンデッキが誕生し、さらに「兄弟戦争」で《エネルギー屈折体》*6を獲得したことでフリッカー・トロンも復活した。

余談

トロン(tron)は英語で俗に「実験装置・実験室」を意味する接尾辞。
つまり「ウルザトロン」で「ウルザの実験室」といったような意味。


ウルザランドの初出はアンティキティーで、第8版の再録で評価が上がるまで9年もの時間を要した。
しかし土地サーチカードと《歯と爪》でそのスペックを見せ付けると、
青単トロンでは特定のカードに頼らない構造が作られるまでに成長した。
いつかまたウルザランドが上環境で再録された時、新たなウルザトロンが生まれることだろう。


追記修正はウルザランドを揃えてからお願いします。

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最終更新:2025年07月10日 12:11

*1 パーマネント1つをバウンス+パーマネントのコントローラーは1枚ディスカード

*2 《熟考漂い》(2枚ドロー)、《石角の高官》(相手の戦闘フェイズスキップ)、《ボジューカの沼》(相手の墓地全追放)、各種キャントリップ・アーティファクトなど

*3 フリッカー・トロンの弱体化を狙って《予言のプリズム》以前に禁止されていたが、あまり効果はなかった

*4 《鋳造所の検査官》の下で《妖術師のガラクタ》2枚をライブラリー→手札→戦場→墓地→ライブラリー…と無限ループさせ、《ジェイスの消去》や《ゴーレムの鋳造所》でフィニッシュする

*5 《マイアの回収者》Aを《アシュノッドの供犠台》でサクり、墓地の《マイアの回収者》Bを手札に回収して《アシュノッドの供犠台》から出た2マナでそれを唱える。そしてその《マイアの回収者》Bを《アシュノッドの供犠台》でサクり…と無限ループさせ、《ゴーレムの鋳造所》→《間に合わせの砲弾》or《無謀な炎織り》or《溶鉄の門番》でフィニッシュする

*6 《予言のプリズム》と比較するとタップ不要になった分、マナ変換効率が悪化した