シビュラシステム

登録日:2014/08/18 Mon 00:48:00
更新日:2025/04/14 Mon 20:58:26
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「成しうる者が為すべきを為す。これこそシビュラが人類にもたらした恩寵である。」

シビュラシステム(SIBYL.System)とは、アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』に登場する包括的生涯福祉支援システムである。


概要

サイマティックスキャンによって一人一人の精神状態を分析し、数値化。
それに基づいて適性・嗜好・能力に合わせた職業選択、欲求実現の手段などを提示。
ぶっちゃけ、成功したデスティニープランである。

一人一人により良い未来を提示するこのシステムにより、運や選択ミスに左右されない「最大多数の最大幸福」を実現。
また社会に適応できない人間を排除することによって、治安の維持や完全なセキュリティも実現。
経済崩壊後の世界において日本がかろうじて法治国家でいられるのは、このシステムの賜物である。

これによって提示された精神状態の数値こそが、作品タイトルにもなっている「サイコパス(PSYCHO-PASS)」と俗称されている。
人々は街頭スキャナーなどの装置でそれぞれのサイコパスを監視されている。

シビュラとはアポロンの神託を受ける巫女のこと。
このため、システムが提示した未来のことを「神託」「予言」と言い表したりする。

システムは日々、職業適性考査、犯罪係数測定、エリアストレス管理などの膨大なタスクを抱えているが、この膨大な作業は複数のスーパーコンピューターによる並列処理、あるいはグリッドコンピューティングにて賄われている。
ただし、システムそのものの所在は最重要機密であり、それを知る者はいない。


【サイコパス】の例


  • 色相
サイコパスの表面的な目安。
ストレスの無い状況であるほど澄んだ色で、ストレスが高まるほど濁る。
基本的に人々のメンタルはこれでチェックされる。

  • 犯罪係数
犯罪者になる可能性。あるいは危険性。
100を超えた場合は、何もしていなくても「潜在犯」となり、公安局による隔離とセラピー、場合によっては排除の対象になる。
これらは街頭スキャナやドミネーターなどで計測することで数値化される。アニメでは、「オーバー300」などと大雑把にナビゲーションされるが、一応細かい数値が表示されている。

尚、当然ではあるが潜在犯とはいっても実際に何らかの罪を犯した訳では無いので、ただそれだけで犯罪者として扱われる訳では無い。
シビュラシステムの管理下において犯罪を犯す(=犯罪係数が高い)精神状態とは即ち精神的な病気であると考えられており、潜在犯とはそうした病気を周囲に伝染させ得る「病原」として社会から隔離する必要があるのである。
取り締まり・確保を行う警察機構が内閣府(国家公安委員会や警察庁)では無く厚生省の下部組織になっているのもこの為。
隔離施設などでセラピーを受け、犯罪係数が基準値以下に下がった者は完治した病人として社会復帰もきちんと行われる。

追記・修正お願いします。















































「やってらんねえよ、クソが」

「シビュラの正体を見たよ。君が命をかけて守るほどのモノじゃない。」

「破壊するまでもない。これを公表すればこの国は終わる。」

「以上が、シビュラシステムに関する真相です。」
























真実

シビュラが複数のスーパーコンピューターから成り立っているというのは嘘ではない。
だがそれによって可能なことはせいぜい表層的なストレス管理程度であり、人の内心に踏み込む行為、たとえば犯罪係数の測定などを行うには、従来のコンピューティングではとても追いつかない。

槙島聖護はなんやかんやあって、複数のコンピューターを行き来しているように見えた国民のサイコパスは、実は各地をたらいまわしにされているだけであると突き止める。

そのデータが一点に集められているのは、シビュラを通じて日本を支配する厚生省の本拠地・ノナタワー。

その地下に隠ぺいされていたのは…

「悪人の脳をかき集めた怪物がこの世界を仕切ってたって言うの?」

ユニット化・電脳化された人間の脳、実に247体である。

シビュラシステムは、このうち200体を交代で接続し、拡張された思考能力の下でサイコパスを計測していたのである。
ちなみに残ったうちの1体は、公安局局長・禾生壌宗の義体にインストールされ、文字通りシビュラの「傀儡」として公安局を仕切っている。
それ以外にも、『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス sinner of the system case1 罪と罰』では、国会議員・烏間明(シビュラの義体)が登場していた。

シビュラを構成する脳は、システムからはみ出した免罪体質者あるいは潜在犯のものであり、システムから逸脱した者をシステムに取り込むことで、より盤石なシステムを構築している。

曰く、システムが求めているのはシステムから逸脱した上で、「他人にいたずらに共感することなく、物事を俯瞰的に観る」才能であるとのこと。*1

この事実を、禾生の義体にインストールされた藤間幸三郎の脳に聞かされた填島聖護は、スウィフトの小説「ガリヴァー旅行記」の第三篇から引用して「まるで、バルニバービの医者だな」と吐き捨てた。
バルニバービとは、空想にとりつかれた人々の住む国であり、そこに住むある医者は、政党間の対立を抑えるために、二人の政党指導者の脳を半分ずつ切断して入れ替える研究をしている。*2
スウィフトはこの話で「この世界を監視し支配するために生まれてきたとうぬぼれている連中には何よりも望ましい方法だ」と書いている。
スウィフトのこの言葉は、まさに作中で日本のトップとして君臨しているシビュラの脳達に対する壮大な皮肉といえよう。

シビュラは、長期的に考えれば自分達の存在を明かす必要があるという。
その上で、「シビュラの正体を知りつつ、世の平穏の為に必要なことだと呑みこんだ上で、健やかな心で生活が出来る」存在、すなわち常守朱を「未来の理想的な市民」のサンプルとしての価値を見出している。

逆に言うと、シビュラへの生理的嫌悪感を隠さない朱を完全に籠絡する方法論が見つかれば、それはシビュラによる完全な支配が実現するということでもある。

シビュラに取引を持ちかけられる存在となった朱は、「人間はあなた達が必要となくなるような答えを見つける。シビュラ。あなた達に未来なんてないのよ!」と叫んだが、脳達はそれをあざ笑うのだった。

なお、「システムから外れた物を取り込んでシステムが出来た」という論理には、「どっちが先に生まれたのか」という矛盾がある。
脳をユニット化する技術は作中の50年前から秘匿されていたらしいので、恐らく当時の世界でサイコパスと呼ばれた社会不適合者を隔離し、少しずつシステムを組み立てていったと思われる。




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最終更新:2025年04月14日 20:58

*1 これは、現代社会で「サイコパス (psychopath、精神病質者)」と呼ばれる者の特徴でもある。

*2 その医者曰く、「そうすることで彼らの頭が見事な了解点に達して、節度と調和のとれた思考になる」という。