登録日:2012/02/18 Sat 18:50:05
更新日:2025/04/13 Sun 19:18:51
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これこそが繰り返される悲劇を止める唯一の方法です。
私は人類存亡を賭けた最後の防衛策として、デスティニープランの導入実行を、今ここに宣言いたします!!
【概要】
基本骨子はコロニー・メンデルの「遺伝子を解析することで一人一人の適性・才能を見出し、全人類が『自己の特性に最も適した職業』に就く」ことで、誰もが幸福に生きられる社会を作るシステム。
人がそれぞれ生まれ持った特性――「性格」「知能」「才能」「重篤な疾病の有無」などを遺伝子解析によって解き明かし、それを踏まえた仕事……言ってしまえば「社会的役割」を当てはめる、というもの。
これには単なる就労選択に留まらず、当人が有する才覚を引き出し伸ばすための環境構築も含まれている。
例えば「音楽の才能を持つ者」ならば、その才能を開花させられる専門的な教育といった環境を与える、という仕組みである。
逆に、当人の能力や才能に見合っていない地位や立場を有する者、特に縁故や親のコネクションといった「不当・不公平な手段」で職業や地位を得たものはそこから排除され、ある種革命とも言える交代劇を引き起こす。
無論、排除された人間にも遺伝子解析に基づく「最適な職業」が与えられ、それのみでプランの中で生きる権利を有する事となる。
このプランの根幹は「遺伝子」という全人類が等しく生まれ持ち、決して逃れる事が出来ない存在からその個人の「運命」を析出する事を目指したもの。
そしてその「運命」が指示した立場に人を置く――言い換えれば「人類の立ち位置を『個人の適性に合わせること』を最優先にする」事で、年齢や縁故、経験といった「個人の才覚ではどうにもならない」しがらみを取り払い、それによって生じていた人同士の対立や争いを無くす。
最終的には国家間の争いを無くすことも視野に入れ、「人類存亡を賭けた最後の防衛策」と銘打った計画であった。
とは言え、無論これほど壮大な計画には、様々な問題・反応があった。
- シン・アスカは、『今の世界を根底から変えようとするシステムだ』と考えた上で、『才能を見出され浮かぶ者がいる一方で沈む者もいるはずだ』と不安を感じており、『野球選手になりたくて頑張ってきた人が、ある日突然「君の能力では無理だ。歌手になりなさい」と言われて「はい、そうですか」と納得できるものだろうか』とも考えていた。
- ラクス・クライン達は「人々から決定権を国家が取り上げて管理する」と捉え、「世界を殺すシステム」だと断じた。
実際のところはプランへの参加は自発的なものとしつつ、デュランダルは世論を操作することで、プランを導入せざるを得ない状況にもっていこうとしていたらしく、プランの導入とプラン自体は強制である。
強制性の無い単なる職業案内程度では社会に変革を齎す力にはなり得ないので、プランの目標を考慮すれば当然の話ではある。
戦争の只中で突然の発表に至ったのも、戦争とロゴス壊滅による政治経済の混乱に乗じて、なし崩し的に導入させるためと思われる。
【問題点】
プラン導入に伴う問題点はいくつか指摘されている。
と言うのも、プラン発表の際に掲げられた「徹底した能力主義」といった概要と説明はほとんどが虚偽であり、実際は徹底した生まれの遺伝子による人間の管理社会にする事で人類の競争・努力を排除し長い時間をかけて争いの原因になる様々な方向の向上心を衰退させて戦争を無くすという、人類の発展や可能性を徹底的に否定・排除し生きながらえさせる最終プランである事が監督により説明されている。
こうした大前提を抜きにしても、問題点は多い。
- 「遺伝子から導き出した才能」がそのまま発現するとは限らない
遺伝子とひとくくりに言っても、生まれたときから発現している遺伝子と潜在的な遺伝子の二種類が存在し、後者の遺伝子は本人を取り巻く後天的環境で発現するか否かが決まってくる。
例えば遺伝子上はスポーツ選手の適性が潜在的にあったとしても、適切な食事や運動ができない環境ではその能力を発揮できない。
仮にプランの導入によって適切な環境の提供が確約されたとしても、そういった潜在的な遺伝子が確実に発現するとも限らず、実際は遺伝子=能力とはいかないのである。
優秀な素質を秘めていても、後天的要因によって才能を発揮する事が物理的に不可能な事態に陥れば、適性は無用の長物と化してしまう。
労働災害はもちろん無関係な怪我や病気による例はその代表とも言え、職務の遂行ができなくなるケースはいくらでもあり得る。
精神的な面でも同様であり、例えば「事故によって車に
トラウマを負った」人に「長距離ドライバーの運転手」が最適と示された場合、その人は心を殺して仕事に従事するか完全に路頭に迷うかのいずれかになる。
そもそもそういった災難に見舞われずとも、自己の特性に最も適した職業に就いたからといって幸せになれるとは限らない。むしろその才能がかえって身を滅ぼしてしまう事例もある。「
ラクス・クラインの
代わりが務まる才能を悪事に利用され、無惨に殺された
ミーア・キャンベル」はいい例だろう。
現実世界に照らし合わせてみても、
- 芸能界で成功したものの精神がプレッシャーに耐え切れなかった
- 芸事やスポーツで並外れた才能を発揮して有名になるが、そこで遊びや贅沢、保身等を覚えてしまい堕落した
- 有名になりすぎて自分の財産や命を狙われるようになった
- 引退などでキャリアを終えたあとの身の振り方が見つからなかった
といった理由で道を踏み外し人生自体が破滅的な方向に向かってしまった例は
枚挙にいとまがない。
アスラン・ザラ等は「そぐわない者は淘汰、調整、管理される」と予想していた。
遺伝子的才能があっても、それが本人の望むものという保証はない。適性と本人の望む職業に齟齬が生じてしまえば、不満が生じるのは火を見るよりも明らかである。
優秀な人間であれば複数の適性を持っている可能性もあり、その場合は本人に選択権がない事実がさらなる障害ともなる。
二番目以降に適性のある職業が割り当てられるか、ある程度選べる仕組みであるならば不満を抑えられるかもしれないが、これはこれで後述する新たな不満や競争の種にもなる。もちろん解決できるような説明は本編中には無い。
また先にシンの感想でも触れたように、人生を賭ける程の情熱を投じてきた自分の目標が能力と全く嚙み合っていないと知った時、果たしてその人物は能力に見合った仕事へとその情熱を向けられるか、という問題もある。
「職業に貴賎なし」と言っても、当人の嗜好によってはどうしても受け入れられない・働くことができない仕事というのも一定数存在する。
他にも、適性と能力は高いが奉仕精神や職業倫理は皆無の医者というケースを想定すると、その人物がプランに守られてなかなか失職しないとすれば、社会においては有益どころか脅威になり得る。
当たり前だが、あらゆる適性(職業)は前提として積み重ねた経験が必要になる。
いくら遺伝子で適性が示されても、未経験者がいきなり仕事でフルパフォーマンスを発揮できるはずもなく、こうした「適性はあるが経験がない者」を突然配置転換すれば社会と経済が大きく後退する事は避けられない。
しかも、少なくない人間は自己の職業と能力適性が合致しない可能性があり、場合によっては社会を構成する人類の多くが職業シャッフルされる事になる。
他にも、天才の子どもが天才とは限らないように、親は優秀だったが本人には遺伝子的才能がなく、親やコネ、教育などで経験を得て後天的才能を得た組織の重鎮に納まっているタイプの人間の場合、このプランが導入されることで地位や権力、果ては職を失うことにもなり、そういった人々からの反発や、それに伴う大規模な社会的混乱も必至である。
また、もしもそれがデスティニープランを推進・運営する側の重鎮だった場合、プランを強行する必要上から矛盾が生じる。
これによる不正を管理できるのか、あるいは許容してしまう危惧もある。
プランは適性自体を操作するものではないため、社会側から見て特定の適性を持った人材が現れるかどうかはいわばガチャである。もちろん天井無し。
社会維持だけでも様々な分野において一定以上の従事者が必要なのに、求められる適性を持った人材がどれだけ存在するかもわからない。
人数が足りなければ維持できず、逆に多過ぎれば溢れた人間の行き場はなくなる。
そもそも人間の文明社会というものは生物にとって自然な生活形態ではなく、遺伝子適性任せで就業者を再分配した場合には、人類にとって都合の良い形態を現状維持出来るかは怪しい。
文化活動は人類の生存に不要だからと過度に軽視され駆逐されかねず、采配した結果文明社会が崩壊する恐れさえある。
その事態を長期的に予防するには、あらゆる仕事に適応出来るように今後産まれるコーディネイターを再調整する、といった人道に則るとは言い難く、「誰もが自分らしく生きること」を目標とした本プランに反する本末転倒な状態にすらなりかねない。
上に関連するが、必要な人材の数や、その判断を行う設定や根拠も明示されていない。
仮に農業であれば、必要とする大まかな就業人口の計算は可能かもしれない。しかし、芸術家や音楽家のような、人数枠など判断しようがない職業は無数に存在する。
もし特定の適性が最も高い者ばかり現れたら、全員をその道に就かせるのか、それとも上位の者以外は諦めさせて次に適した職に回してしまうのかといった問題がある。
そのようにして最も適していたはずの職を絶ったなら、「誰もが幸福に生きられる社会を作るシステム」というお題目は崩れる。
農業のように必要な就業人口を算出可能な職業にしても、ある程度は流動的であり、例えば技術の進歩によっても枠は増減する。
そうなると、枠からあぶれて最適な職に就けない人間を不要な存在として容赦なく間引くか、上述の通りお題目を打ち捨ててでも妥協して適性が比較的低い別の職を斡旋するか、就業人口を維持する為に技術が進歩しないよう意図的に規制するか。これまた本末転倒ないずれかの判断を迫られる羽目になる。
- プランを推進する立場の人は、絶対的にプランから外れた立場に立つ
最大の問題点として、プランを実行・維持する為にデュランダル議長はじめプラン推進派がプラン実行後もその地位を保持する必要がある為、推進派はシステムの外で支配層に座る事が絶対条件になってくる。(仮にプラン否定派が検査で代表者に選ばれると、当然プランは即中止されてしまう)
つまり実際はAIではなく一部の特権階級が人類を遺伝子で支配する社会構造になってしまう為、放送直後の時点で視聴者層からもそういった指摘が挙がっていた。
仮にプランに従って各々が適性のある職についても、適性のある人間同士で実力差などから妬み等が生じる可能性はあり、長い時間をかけてそれらを淘汰していくと結局多くの血と涙が流される事になる。
「遺伝子で職業が決まるなら、より職業の適性の高い優れた人間を狙って製造する」方向へと加速する可能性があり、漫画『
THE EDGE』でもキラが言及していた。
元々資金力のある人間・家が地位を保持する為に一層金をかけて、子孫が人気の職業に就けるように、より正確に発現するよう高精度の遺伝子調整を行うデザインベビー合戦へと発展し、
結果的に以前より富裕層と貧民層の格差が広がり、プランの説明とは真逆の未来になってしまう。
……とまあ、軽く列挙するだけでもこんな状態である。
デュランダル議長がレクイエムを先制発射という暴挙に出たのも、まともに議論されれば決して通らないプランであり、それを避けるためにメサイア攻防戦前に人心掌握を行い、なし崩しに認めさせるしか無かったのである。
そういった意味では行為として間違いであっても、デスティニープランを実行するという1点で見れば議長の行動は理にかなっていた。
そして作中世界では、クローンであり遺伝子上同一人物である
ラウ・ル・クルーゼと
レイ・ザ・バレルが歩んだ人生の過程でまったく別の人間として別の選択肢を選べる事が描写されているので遺伝子を全てとするデスティニープランを
本人は意識せずとも完全に否定している。
また、福田監督はデスティニープランを採用した世界を進化の否定としており、「自ら進化しないということは計算外の希望や未来は許されない。言い換えれば、生物種としての自死を意味する。」と酷評し、「最後にレイがキラを選択してデュランダルを撃ったのは、デスティニープランに対する僕たちの答え」と断じプランを否定した。
【設定に関する論説】
デスティニープランそのものは枝葉の細部までは設定が存在しない点から、いくつか生じている誤解がある。
コーディネイターには出生率や希望デザインの失敗といった解決できていない問題点が複数あり、いずれも解決を未来に託す形で丸投げしている。
この状態でありながら、遺伝子からくる適性をどのように判定しているかは一切明らかにされていない。
少なくとも、本編中の遺伝子の解析技術では本人の運命まで知る事はできない。
問題点で挙げられている通り、当人の嗜好などの要素が遺伝子から読み取れるかどうかさえも不明である。
スーパーコーディネイターやアコードの設定から考えて、身体的能力が判定に含まれているであろう事は推察できるが、それだけである。
- 様々な判断は「全てAIが行う」として曖昧にされている
適性の判別などの様々な判断は全てAIが行う事になっている。
登場人物たちが疑問と不安を抱いた様々な点についてもあらゆる判断がAI任せであり、肝心のAIに関する出所も品質も全て不明。
下手をすれば当人に適した職を判別する大前提すら保証がない。
言い換えれば、一部の視聴者が見出す「デスティニープランの有効性」は、遺伝子技術・AI技術ともに最低限コズミック・イラを上回る世界でなければ通用しない。
リアル現代基準で当てはめるには無理のある代物である。
端的に言ってしまえば、プランで明らかになっているのは本人の適性から判断した職に配置する事だけである。
デュランダル議長が提唱・目指した戦争の解決は、プランから見ればあくまで展望であり、本当にそうなるのか保証はない。
その根拠も、人類が長期の徹底した人間管理社会で競争・闘争心を失う変化(退化?)で実現させる内容である。つまり発表時に提唱した概要とはまったく異なる未来を解説している。
また、当然長い時を要する解決法の為、少なくともプラン実行後の数十年~百年単位でプランの体制を巡って戦争や紛争が起きないとは一切説明しておらず、一部の視聴者の「プランが実行されれば少なくとも戦争は無くなる」は完全に誤解である。
むしろ平和を謳った一方的な虐殺や淘汰、それをきっかけとした新たな大戦が危惧される代物であり、後に公開された『FREEDOM』によってそのリスクがはっきり描写されることとなる。
【発表後とその末路】
デスティニープランが発表された後、機動要塞メサイアでシステムが起動し、各国にそのマニュアルが届けられた。
早速遺伝子調査を始めるプラント地区もあったが、多くの国は突然の発表に当惑した。
以前からプランについて知っていたクライン派、オーブ連合首長国やスカンジナビア王国、そして地球連合の一部は反対を表明。(地球連合やオーブについてはプラントと戦争状態なので、プラン以前の問題でもある。)
これらの勢力に対し、デュランダルは『人類の存亡を賭けた最後の防衛策』とし、プランに敵対する者を『人類の敵』と見なし、修理したレクイエムを発射。
プラントに向けて艦隊を発進させていた月のアルザッヘル基地を艦隊ごと破壊。
その後、メサイア攻防戦におけるデュランダルの死でプランは頓挫した。
なお、製作者スタッフはデュランダル派の残党やそれ以外の組織によってデスティニープランが後の世に復活する可能性を示唆している。
そして、実際に『SEED ASTRAY~天空の皇女~』では世界を誘導して自発的にデスティニープランを導入させようとする者が現れている。
DESTINYから2年後を舞台とした劇場版『SEED FREEDOM』では、デュランダルのデスティニープランを正当継承した形で再度施行しようとした新興国
ファウンデーション王国が登場しており、デスティニープランそのものの危険性も深掘りされている。
ファウンデーションの支配層は元メンデルの研究者と『コーディネイターを超えるコーディネイター』と言うべき存在で構築されているが、
彼らはデスティニープラン再施行の為にマッチポンプで自国を滅ぼし、その上にレクイエムを強奪しまたしても従わない国に攻撃を行うという暴挙に出ている。
支配は『支配者の資格がある者』が行うという彼らの主張の下でまたしても歴史的大事件を起こした彼らを見るに、デスティニープランはここに来てまた上記の問題点が表面化し周知されたと言える。
それは上にもある「そぐわない者の淘汰」の具体例、
自分を特権階級と信じた『支配者』が暴虐を働く危険性と
それが暴虐でなくなることである。
支配者の素質がある者が必ずしも名君になれる訳ではない。
歪んだ遺伝子社会のもとで「自分は選ばれし者である」という自負を
歪んだ方向に向かう洗脳のように次代の子に持たせてしまうプランの問題点、
「国の繁栄」「大多数or確実に恩恵を得られる少数の幸福」という大義名分の下、少数or大多数を切り捨てられる有能でも冷酷な支配者が生んでしまうプランの実態、
そして「全てが適性によって管理される」のならば適性による効率的な人的資源の割り振りによる生産性向上の逆もできるはずである。
そう、
適性的に要らない者=死んで良い者を見つけ出す事が容易となり、
遺伝子という絶対的な尺度がある以上文句の付けようも無くなってしまう。
キラ達が危惧していたように、遺伝子を全ての基準にするのが当然となり市民の自由意思が完全に失われた時、
支配者が暴君や冷酷漢であっても、「適性ある者」が支配者である以上は市民がそれに文句を付ける事は無い。おそらく「暴君」「冷酷」という感覚さえ無いだろう。
極論、プランの象徴であるファウンデーションのように支配者は
「支配者だから支配して当然」とばかりに国民に犠牲を強いても心を痛める事も無ければ、
国民も国民で
「支配者がそう言ったのだから」で例え振られた役割が人柱でも従うのが当然になってしまう。
……これと似たような事は『SEED』の時代から既に起きている。
サイクロプスによる自爆である。
ミリアリアは自分達が不要と見なされサイクロプス起動までの時間稼ぎにされた事に
「そういう命令だから従って死ななきゃいけないの?」と涙ながらに訴えたが、
デスティニープランが浸透し切った世界とは
不要な奴を集める事にも、「死ね」と命じる事にも、それに従う事にも、誰も一切抵抗感が無いという事である。
そればかりか遺伝子的に不要な者が簡単に見つかるので
より効率的に行う事さえできてしまう。
流石に平時にいきなり国を挙げた自爆作戦を行う事は無いだろう……と思いきや、そのファウンデーションが世界そのものを支配するという野心の下、平和な時期に自国民15万人を犠牲にしたマッチポンプを敢行している以上、可能性は常にあり続ける。
ファウンデーションはデュランダルの想定から生まれた存在であり、プランを遂行すれば必然に生まれてくる組織の為、かねてから言われている通り優良でないと見なされた者が始末されるくらいは平気で起こるだろう。
実際、ファウンデーションはデスティニープランに近い実力を非常に重視した国策により目覚ましい発展を遂げた事で国外からも関心を集めているが、一方で都心から離れた所にはスラムがあり、そこでは犯罪も自動小銃の掃射による取り締まりも横行している。
ファウンデーションは「誰もが役割を与えられ、誰もが平等に幸福になれる」と喧伝していたが、その実態がコレである事実は能力を基準にしても確実に全員が幸せになる事など無い事を暗に示している。
遺伝子による最適化が完全に行き渡った世界とは、無能とされる者にも活躍の機会が与えられるとは限らない。
「無能」の判断を簡易化し、あらゆる意味で「無能の切り捨て」という行為のハードルが下がるどころか無くなるという事でもあるのである。
また、小説版においてデュランダル自身もコロニー・メンデルの理想を実現する社会実現を期待されて遺伝子調整された人間であり、デスティニープランは彼が幼少期に提案したものが基であった事も示唆された。
デュランダル自身もまた、オルフェのように運命を背負わされて生まれ翻弄されたアコードの前身のような存在でもあったのである。
【その他あれこれ】
- 「デスティニープラン」の名前が出て来たのは終盤はじめ頃。44話にて概要が説明された。
しかし急な展開に加えコミカルなSDアニメを交えた説明から混乱した視聴者も少なくない。
- プラン自体は研究者時代から考えていたようで、デュランダルの同僚も知っていた。だが、同僚はノートに以下の言葉も残している。
「デュランダルの言うデスティニープランは、一見今の時代有益に思える」
「だが我々は忘れてはならない。人は世界の為に生きるのではない。人が生きる場所、それが世界だということを」
- 外伝『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY』シリーズの一作、『ΔASTRAY』に登場する
火星への移住者、「マーシャン」の社会制度は遺伝子的素養を重視するという点でこれに近い。
が、これはあくまで地球圏に比べて人材・物資など厳しい環境下にある火星圏において仕方の無い措置である、とマーシャンのリーダー、アグニス・ブラーエは言及しており
アグニス自身副官のナーエ・ハーシェルを(遺伝子的素養から割り当てられた)異業種からスカウトしたように「遺伝子的素養以外にも重要な物がある」と理解しているためデスティニープランを否定している。
- 放送前のSEED DESTINYの番宣アニメのナレーションには「繰り返される悲劇を止める事が出来るのは一体?」という台詞がある。
冒頭のデュランダルの台詞は、これに対する自身の返答となっている。
- 「遺伝子によって人間の適性を判断し、その結果を踏まえ、本人の意志で職業を選ぶ」という発想自体はそこまで問題のある物ではない。
デスティニープランが問題とされたのは、「遺伝子を社会の絶対的な基準にし、その職業を強制させる」ものであったためである。
【他ゲームでの扱い】
DESTINY本編では
説明不足により詳細不明だったため、『
スーパーロボット大戦シリーズ』では他作品とのコラボレーションも交え、より充実した内容となっている。
最終的に自軍から反対されるのは本編と変わらないが、プラン自体が充実したためか反対される理由も本編より充実している。
シロッコのクローンによる地球圏の防衛計画。
一応、遺伝子的な欠陥は取り除いた上でのものと説明されてはいるが、真相を知ったレイからは
「自分やクルーゼの悲劇を繰り返そうとしている」と見なされてしまい、デュランダルはレイの手で撃たれてしまう…
(デュランダル自身も「レイとクルーゼを裏切ってしまった」という自覚はあった模様)
黒歴史の遺産の一つで、「
ニュータイプに覚醒する人類を探し出す」方法として流用される。
フロスト兄弟はプランの副産物兼被害者という設定で登場しているため、デュランダルを恨んでいた。
後に
第3次Zにて、
SEED保有者を発見してクロノ保守派(ナチュラル)から隠し、
絶望の未来に抵抗しようとしていたことが判明する。
またZシリーズにおける
コーディネイターは、クロノ改革派による保守派への対抗策として生み出された存在で、
ナチュラルとコーディネイターの対立は、クロノにおける保守派と改革派の抗争でもあった。
恐らく独自の解釈が大幅になされた作品。
バジュラや
クトゥルフといった異星人対策の延長上として提唱される。
この作品におけるデスティニープランは、『「
ゼントラ化が可能な者」や「SEED保有者」を見つけ出し、自軍部隊LOTUSのような軍事組織を多く作り、地球圏を防衛すること』が目的。
作中の時点で多数の敵勢力との戦争で地球の軍事力は劣勢に立たされており、一部のスーパーロボットを結集したLOTUSの活躍によって辛うじて撃退できている状況であり、目的は至極真っ当。
さらに、適性職業の斡旋などまで含まれていたのかは語られていないが、少なくともゼントラ化可能かどうかは完全に遺伝子の適性だけで決まる問題なので、原作で指摘されていたプランの矛盾点にある程度の答えが出ている形になる。
加えて言うなら、作中の敵勢力の中でも特に大きな「
統一意思セントラル」の存在がある。
その実態は「行き詰ったエネルギー問題を解決するために徹底的な効率化を図った結果、個々人の自由意思を完全に消して全人類を単一の意識の基に統一・システム化したもの」である。
言うならばデスティニープランを極限まで突き詰めるどころか100万倍して濃縮したような地獄絵図が、仲間を求めて侵食してきているようなものである。
彼らはあらゆる無駄を切り捨てて人類を均一化するが、それはそれとして新たな可能性を見出せる突出した能力を利用しようとする意志はある。
これに真っ向から軍事力で今すぐ対抗することは難しいと考えたデュランダルはそこに付け込み、セントラルへの協力体制を装いながらカウンターの準備ができる苦肉の策として、遺伝子解析による戦力の発見というプランを考え出したのだ。
今作ではシンなど原作ではデュランダルに従ってプラン推進派に属していたザフト軍の面々も、多数の仲間に助けられて自らの意思で進む道を決めているため、
デュランダルに従う道を優先するレイ以外はザフト軍のメンバーも全てLOTUSに残留してデュランダルと敵対する。
しかし今作におけるデュランダルはこういった外敵への脅威のためにアークエンジェルをわざと見逃すなど、全人類のためを真に考えた行動を取る人物になっており、
敵対してもなおプレイヤー部隊から最後まで説得を試みられるなど、上述のプラン運営背景もありデュランダルおよびデスティニープランそのものはそこまで敵視されていない。
あくまで「人類の未来を憂う者として一定の理解ができるが、主義主張の違いから止むを得ず対立しなければならなかった相手」となっている。
なんなら、本作のデュランダルは本心ではプランを否定してくれる者こそを求めていた節があるし、
『SEED FREEDOM』の設定が通用するなら、ラクスがデスティニープランが否定した事をも良しと考えていた事になる。
シンが
総士に対して「かつて実行されようしたが、その思想は人々に受け入れられなかった」と語っている。
もしデュランダルが
イノベイターの存在を知っていたら、プラン内に「イノベイターに覚醒し得る人間の発見」も盛り込んでいた可能性が高い。
また、シンは
ファフナーのパイロットに選ばれた少年少女達の生き様と、彼らを待ち受ける
宿命をデスティニープランと重ね合わせていた。
この時、彼は「人は生まれながらに生き方を左右されたりはしない」と暗にデスティニープランを否定しており、原作とは違い反対する立場に回ったようにも見えなくもないが…?
『SEED DESTINY』が原作終了後参戦ということで大きく原作再現はされなかったが、
このデスティニープランと同種の政策を極端な形で導入・実践したオリジナル勢力超文明ガーディムが登場する。
しかしその実情は、
合理化とシステム化の名の元に愛や恋愛といった「人間性」が切り捨てられ、種族全体がシステムに隷属する管理社会であった。
人間性が失われた反面、技術力と武力は非常に優れた文明となっていたものの、同時に他種族を頭ごなしに見下し蔑む傲慢な差別意識の権化となり果て、
更には他文明を「管理」や「矯正」の名目で侵略する蛮行まで働いていた。
詳しくは当勢力の個別ページを参照。
彼らの醜悪で歪な傲慢さとプライドは、
自分達が開発したシステムからも
「害悪」とまで評して蔑まれた。
【余談】
現実でも遺伝子を解析するサービスが一部では始まっている。(一回数十万円程度から行える模様)
遺伝子解析で判定できる内容は身体能力(短距離走向きか長距離走向きか等)、精神面(楽観的か悲観的か等)など多岐にわたり、未だ発展途上で信頼性や倫理面において賛否が分かれているが、富裕層が英才教育の一環として利用するケースがあるらしい。
また上記の問題点の一部は放送当時の遺伝子研究技術に基づいた問題点であり、現在では遺伝子研究が進み、個人が先天的に持ちうる「能力」だけでなく、性格や精神の傾向(コミュニケーション能力やストレス耐性など)、
後天的に発症するリスクのある疾患(癌や
うつ病など)などもある程度はわかるようになってきている。
今後の遺伝子解析技術の発展次第では、遺伝子検査を基にした職業斡旋などが実現するのかもしれない。
追記・修正は遺伝子調査をしてもらってからお願いします。
作品に対しての誹謗中傷等を行った場合、また、デスティニープランを受け入れない場合、レクイエムによる粛清等の措置がされる可能性がありますのでご了承下さい。
- これ言ったらあかんと思うけどさ?この人たち、自分らのプランを実現する予算と財源は確保してんの? -- (名無しさん) 2024-12-20 08:37:32
- (更なる妨害が無ければ)実際に武力で成功寸前までいっているしデュランダルは遺伝子検査を早急に実施していたので事前準備は割と整えられていたと思われる。普及・運営費用はそもそも成功した暁には世界中の税で賄える。 -- (名無しさん) 2024-12-20 08:42:54
- 税金に勝る資源はないな。そもそも映画のゆかりん戦争も御大層なお題目を並べてもプラントの国家予算の分捕り合戦に端を発してるし -- (名無しさん) 2024-12-20 09:10:13
- 技術開発に最適な人材、組み上げるのに最適な人材、金儲けに最適な人材を揃えて運用すればみんな豊かになれる計画ではある。経営者に最適な人材が「優秀な人材を薄給で働かせれば最高」とか言い出したらどうすんだって話だが -- (名無しさん) 2025-01-21 22:07:49
- ↑最後の一文にこのプランの問題点が集中しているな。本編中で散々描かれてきたように、人間は自分自身が思っている以上に邪悪でバカであると自覚しなければならない。 -- (名無しさん) 2025-01-21 22:23:44
- さすがにそれは「そういうことやるやつは経営者として最適ではない」で終わりだと思うけど -- (名無しさん) 2025-01-21 22:34:31
- ↑そうなるには、「人間は十分に理知的かつ善良である」という非現実的な前提が必要になる。 -- (名無しさん) 2025-01-21 22:41:18
- そういや水星の魔女でAIで次代経営者選出してたな。 -- (名無しさん) 2025-01-21 22:50:13
- ↑2 薄給で人材逃亡なんてありふれた失敗例が考慮されてないのは「十分に理性的ではない」じゃなくて「度を越した間抜け」ってレベル。そういった経営者になっちゃいけない人を経営者にしないってのも理想的DPの目的だろうに -- (名無しさん) 2025-01-21 23:05:09
- そもそも遺伝子適性だけを理由に職業割り当てってのがもう経験と教養ってものを舐め腐った発想よね。いくら遺伝子的適性が高くても、数年間スーパーのレジ打ちやって暮らしてた人が「遺伝子的には向いてるから」っていきなり宇宙飛行士に転職させられて上手くいくわけがない -- (名無しさん) 2025-01-21 23:24:13
- そもそも性格や人格は遺伝子に宿るのかという問題でもある。遺伝子的に向いていることがその人に向いていることとは限らず、むしろ真逆に最悪な相性なこともある -- (名無しさん) 2025-01-21 23:27:11
- 血を見ると卒倒する外科医適正者とか人どころか虫も殺せないようなMSパイロット適正者とか… -- (名無しさん) 2025-01-21 23:49:32
- まあ現実的には肉体労働か頭脳労働かを振り分ける程度だろうね。それ以上の細分化はある程度成長(現代日本で言えば中三くらい?)してから適性検査したほうがミスマッチは起こりづらい。SF感はなくなるけど -- (名無しさん) 2025-01-22 00:28:59
- すべての人間が大したことないちょっとした異能力を持ってるって世界観の漫画があったけど、コンサルタントが能力を活かした配置にする際にリンゴの皮むきを途中で切らずにできる能力持ちの人を役立たずとして切ったらその人が職場の人間関係の中心人物でえらいことになった言うのはあったな。 -- (名無しさん) 2025-01-22 07:09:38
- ↑シンやレイに対する議長の認識まんますぎないかそれ? スペック上の能力だけ見てメンタル面や人間関係ガン無視してドジを踏んだという… -- (名無しさん) 2025-01-22 07:16:11
- 今更だけどその他あれこれの最後の部分いる? 前々から気になってたんだけど種関連の当時のアンチはこんなに酷かったんだぞって殊更に書き連ねるような記載はちょっと目に余るんだが。 -- (名無しさん) 2025-01-22 07:19:06
- ピクシブ百科事典で天空の皇女にアグニス達が出なかったのは「デスティニープランに近い政策が普及成功しているコロニー出身のアグニス達の存在はフェアネスの主張をある程度肯定してしまうからではないか」と考察されてたな -- (名無しさん) 2025-01-22 08:24:37
- ↑×9 でも本編中の議長、DPを全世界に強制施工するっていう私欲の為に数々の戦争犯罪を犯すっていうプラントに害のある行動とってる時点で自国の利益を優先する前提の政治家として終わってない?政治能力はあるけど政治家としてならまだ自国のことを大事に考えてるカガリの方がマシでは?ってレベルでは -- (名無しさん) 2025-02-01 19:55:54
- デュランダルはDPによって議長に選ばれたわけじゃないので、彼の政治家としての資質の有無とDPの是非は関係がない -- (名無しさん) 2025-02-01 20:08:09
- DPで選ばれた支配者が最初に打ち出した政策が”DPの廃止”で「DPは最初から間違ってたんだよザビーネ」ってオチを思いついた -- (名無しさん) 2025-02-01 20:12:31
- ↑2,プラントの議員は、様々なデータの解析から候補者が選ばれるってことなので、政治家の資質のありなしは遺伝子的にも調べられているんじゃないかなぁ。プラントがもともとそうやって議員とかが選ばれているからDPにたいして受け入れやすい土壌があるとか言われていたような -- (名無しさん) 2025-02-01 20:36:18
- そもそもデュランダルの目的は全世界へのDP導入であってプラントの繁栄ではないからなぁ…遺伝子だけでは政治思想はわからんからね。 -- (名無しさん) 2025-02-01 20:48:08
- まさにデスティニープランの問題として指摘されている「遺伝子的に素質があることが、その人にその仕事が向いているとは限らない」ということかも。人の性格は遺伝子から作られるものではなく、人生経験でいくらでも変わるし。 -- (名無しさん) 2025-02-01 20:48:24
- SFとしては古典だけどそのうち遺伝子ではなくAIで全て決めるって理想を掲げたガンダムが出てきそう。 -- (名無しさん) 2025-02-01 21:24:31
- ↑9 そこは本項目の肯定論やその出所・経緯の解説として記述価値が高いから消す理由は特に無いと思うよ。しかし考えれば考えるほど「無理あるだろこれ」ってなるよねこのプラン。 -- (名無しさん) 2025-02-04 08:44:11
- ↑DPは議長が遺伝子の相性でタリアと結ばれなかった絶望が根幹のひとつとなってるし、自分の絶望を皆に味合わせるとか遺伝子に定められた道を歩めば絶対に幸福になれると妄信してたフシがあるからね -- (名無しさん) 2025-02-04 09:27:48
- 記事内の「死んで良い者」のリンク先がガンダム・グシオンの記事で笑った。 -- (名無しさん) 2025-03-01 00:51:50
- 議長に関しては少し前に発売された公式書籍にて、平和の希求と将来の不安の除去に関しては本気だったとフォローされていたが、アウラに関してはユーレンの件を筆頭に私心塗れだったのがハッキリ明示されていたな。 -- (名無しさん) 2025-03-01 02:24:49
- 多分ジエッジの事だと思うんだけど、アレはデュランダル議長が「タリア艦長にフラれる」から「タリア艦長をフる」に描写が変わってるからあんま参考にならない部分がある。特装版?だけは本編時空ですとか、違う奴ですとかだと申し訳ないけど。 -- (名無しさん) 2025-03-05 23:05:48
- ハサウェイも例外がある限り人は不正をすると言うておる -- (名無しさん) 2025-04-19 22:02:50
最終更新:2025年04月13日 19:18