サジェスト汚染

登録日:2014/10/14 Tue 14:27:46
更新日:2025/03/24 Mon 23:10:58
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サジェスト汚染とは、インターネット上で特定のキーワードに不穏な単語をサジェストさせることである。
インターネット上では、近年よく使われる誹謗中傷手段の一つである。

概要

これの被害を受けて企業や個人は、本当か嘘か関係なく誹謗中傷の被害にあうこととなる。
この攻撃は人為的にすることができ、最近は少し知識のある人間ならば簡単に誹謗中傷を行うことができる。
対策も極めて難しく、問題視されている。

そもそもサジェストって何?

概要ではこのように書いたが、まず『サジェスト』という単語を知らない人はネット利用者でも意外に多い。
そのため、サジェストの解説から入ろう。

まず、手元にあるPCやスマホのGoogleなどの検索エンジンで『アニヲタWiki』と入力してみよう。
すると、こんな感じで様々なキーワードが出てくるはずだ。

アニヲタWiki
アニヲタWiki 事件
アニヲタWiki(仮)
アニヲタWiki ウイルス
アニヲタWiki SPC
アニヲタWiki AC6
アニヲタWiki エルデンリング
アニヲタWiki 競走馬
これがサジェストだ。
つまり、その単語とよく一緒に検索されているキーワードを「このキーワードと一緒に検索しますか?」と提案(サジェスト)してくれるのである。

調べたいワードがこのように検索候補として出てきてくれれば、入力の手間が省けるし、興味を引くものがあればそれで検索することもある。
便利な機能であり、ネット利用者なら一度はお世話になっているだろう。

んで、今度は良作ゲーの一つである『龍が如く7』を入力してみよう。
すると、サジェストはこんな結果となる。
龍が如く7
龍が如く7 攻略
龍が如く7 インターナショナル 違い
龍が如く7 ひどい
龍が如く7 外伝
龍が如く7外伝 発売日
龍が如く7 発売日
龍が如く7 新価格版 いつ
と、4番目に『龍が如く7 ひどい』と、ネガティブなワードが出てしまった。
これが今から説明するサジェスト汚染の一例である。

つまりサジェスト汚染とは

そう、上の内容からして察するにサジェスト汚染とは特定のキーワードに『本来は何の縁も無いマイナスイメージの単語を付けさせる』ということである。
つまり検索エンジンに特定の個人なら『○○ 犯罪者』とか、特定の企業なら『○○ 欠陥』などといった検索候補が出てきてしまうのである。
ある会社のサービスを利用しようとして検索し、「個人情報流出」だの「捜索」だの、不穏な単語が出てきたら、たいていの人は「この会社は以前に何かやらかしているのか」と思ってしまい、利用しようとは思わなくなるだろう。
法人であれば経営に重大な支障をきたすし、個人であれば社会的信用が損なわれる。極めて危険な行為である。


サジェスト汚染の仕方は多い。

最近は汚染用のツールを使う・掲示板で特定のキーワードを書き込む、などといった方法が使われている。
古典的なやり方では、違うIPで検索エンジンでキーワードを入力するなどといった方法もある。

厳密に言うとこれらの行いはSEOポイズニング(SEO攻撃)の一種であると思われる。
だが、営利を目的とした攻撃でないのが非常に異質である。


被害例

ここで実際に起きた被害例を記載する。

ある日、インターネット掲示板のある利用者の起こした事件が大きな騒ぎとなる。
そして、その騒動を起こした利用者は、自身への誹謗中傷の対策を行おうとした。

そこで、彼から依頼を受けたとある弁護士がいた(以下、『弁護士X』と記載する)。
しかし、炎上の矛先は利用者から弁護士Xへと向いてしまった。

結果的に、Xはインターネット掲示板の利用者から中傷・嫌がらせを一気に受けることとなり、この事件で一気に普及したサジェスト汚染ツールの餌食となってしまった。

2014年の時点でXの名前を検索エンジンで検索すると、このようなワードが出てくる。

(Xの名前) aa
(Xの名前) 顔
(Xの名前) ズッキーニ
(Xの名前) wiki
(Xの名前) まとめ
(Xの名前) [NGワード]

このように怪しくて書けないようなワードが付きまとうようになった。

これはほんの一例で、他にも『ポケモン』とか『無能』といった単語まで出てくる。
Xの弁護士業に支障が出るであろうことは言うまでもない。
そして事件を起こした利用者のサジェストも、当然のように汚染されてしまった。
彼自身の名前はもとより、一般的なキーワードを入れただけで自身の実家の住所が表示され、現在に至るまで執拗かつ過激な嫌がらせ行為が続けられている。
国内の一般個人の炎上としては史上最大規模といえるほどの最悪の事態に発展してしまったのだ。

この事件についてはインターネット上で大きな議論を巻き起こしたが、一つ確かなことはこのような被害が簡単に起きるといった見本にはなってくれたことだ。

他にもサジェスト汚染の被害を受けた人物や企業は多い。

このプロ野球選手とかも有名な例だ。


その驚異的な効果

この行為の何が恐ろしくて何が一番の問題かというと、やろうと思えば誰でも行える。
しかも、一人でも少し知識があれば他人の中傷を簡単かつ効果的に行える。
おそらく、プログラムで自動的にやることも可能だろう。

従来は、サジェスト汚染は行うのには大量の人数と時間が必要だった。
しかし、上述した騒動の結果、サジェスト汚染のツールや方法が急速に広まってしまったのである。

嘘だと思うのならば、Googleで『サジェスト汚染』で調べてみよう。
サジェスト汚染の方法を書いたWikiやツール、サジェスト汚染専用の掲示板が普通に検索結果として表示される。

もはやインターネットでは定番の攻撃方法となってしまった感じである。
今後も、ネットの世界では使われていくのだと思われる。


『所詮ネットの話、現実世界では害は無いでしょ?』と思っているそこのあなた。
近年は、ネットと現実はますます距離を縮めていることを思ってほしい。

受験生や就職活動をしている人は特に用心した方が良い。
中小企業ではあまりないが、大企業や一部の学校では、入社あるいは入学予定の生徒の個人名をネットで検索することがある。
これは入社予定者などが、過去に悪事を働いていないか調べるための一種の作業。
しかし、その時にあなたの名前が不穏なワードとともに出てきたとしたら…

もちろん個人だけでは無く、企業経営者も十分に警戒したい動きではある。
まぁ、それほどの悪評が出る企業にはならない努力が第一だろうが。

ついでに言うと、昔からHTMLタグ等で検索エンジンの検索に引っかかりやすくするなどの工夫は、企業が自身の公式HPで行っていた。
自分たちがやってきたものを逆に攻撃に転じられてしまったとも言える。


対策


無い。

冗談かと思うだろうが、実際のところ無いに等しい。

一応、対策としては『検索エンジンを訴える』といった手段もある。
しかし、検索エンジンさんサイドは海外で裁判に敗訴しても、実行することを拒否したり控訴したりすることが多い。

実際に『サジェスト汚染は名誉棄損』として訴えた裁判がある。
一審の判決は金額は極めて少額ながら、Googleに非があるという判決が出た。これにより、サジェスト汚染の減少が期待された。
だが、Google側がこの判決に対して控訴し、二審では原告の主張が退けられてしまった。

Googleで検索を行うと、結果に自身の犯罪歴が表示されてしまうのは名誉を毀損していると訴えた裁判もあった。しかしここでも、京都地裁は訴えを全面的に退ける判決を出した。

このように、裁判を起こして訴え出ても敗訴することの方が多い。
最終的に5年以上かかってしまった裁判もあり、掛けた時間と労力に見合った改善効果も期待はできない。
勝利したケースもあると言えばあるが…


他にもサジェスト汚染の対策をサービスとしている会社もある。
こういった会社は法的対策をとることもあるが、上記のように法的対策は期待できない。
そのため、技術的削除施策を行うこともある。

でもやはり、こういったことを行うのにはお金と時間が必要。
そして、技術的施策を行ったことがばれた場合、さらに炎上が広がり、むしろ以前より汚染が酷くなるなんて場合も…


一応最近は、検索エンジン側もサジェスト汚染に対しては多少の対策は行っている。
現在はサジェストに不穏ワードが入る閾値は非常に高くなっており、従来通りのサジェスト汚染では汚染しきれないことが多い。
とは言え、根本的な解決策とはなっていない。

じゃあ、何が一番の対策になるかというとそれは『おとなしくする』、これ以外にない。
インターネットを使う場合には、
  • 特定の名前で活動をしない
    • 匿名掲示板でコテハンをつけて活動するなど
  • ネットに自身の顔を載せたり、近所の写真を載せたりなど、個人情報流出の元になるような行動はしない
  • 恥ずかしい性癖をネットで暴露したりしない
    • こういった恥ずかしいものは、サジェスト汚染の際に一番の対象とされる
  • 自分の過去の行いなど、自分語りをしない
    • 自分語りが個人情報流出の元になったりする
  • 当然ではあるが、特定のサイトを荒らしたりはしない
といった心がけが必要となる。

上記の利用者や弁護士X、そしてプロ野球選手などに対し、「全てが全て事実無根ではないし、自身の行いがきっかけなんだから身から出た錆び。自業自得」などサジェスト汚染を擁護する的外れな批判がネットの掲示板等で展開される事が多い。
しかし、それが事実であろうとなかろうと、大衆の目に触れるようにして悪評をまき散らすのは、名誉毀損罪という立派な犯罪*1である。それとこれはあくまで別問題。
自身が犯罪者として世間に公表されても、それはそれで文句は言えないのだ。勿論、警察等実際の法的機関が公表を是とした場合のみではあるが。

その行いが愉快犯的な思考によるものなら、面白半分で無駄に騒ぎ立てるべきではないし、
確信犯的な思考によるものなら「それは本当に自分が裁くべきなのか?」と今一度考えるべきであろう。
ネットの世界では忘れられがちだが、そもそも人にされて困ることを他人にしてはならない。

しかし、未だにこのような事態が発生している以上、ある程度自身の行いに注意を払った方が身のためでもある。
もちろん、「完全な事実無根でありながらさも事実であるかのように語られる」「同姓同名の人物がやらかす」というケースもあるので、それも万全というわけではないが・・・

また、最近では擬人化ゲームや偉人召喚ゲームの流行のおかげで何かを調べようとしたら同名だがもはや別物のサジェストばかり出てきたり、それ関連の検索結果ばかりで埋め尽くされたりすることも多い。
悪意あって汚染されているわけではないが、こちらも同様にサジェスト汚染と言われていることが多く、尚且つこれはこれで深刻な問題となっている。


ともあれ、インターネットは他の利用者達に迷惑をかけないよう気をつけて利用していきたい。
当然それは当wikiにおいても同様である。マナーを守って楽しくwiki籠もろう。


逆に汚染する側について

汚染とは逆に、「自分にとって都合の良い検索結果を出させる」ように工作することも可能である。
具体的には、「怪しい」とつけて検索をかけると、「怪しいが内容はタメになる」「どんな人に向いているか?」などと言った検索結果が出てくるようになっている。
もちろんこれらは悪質なデマサイトであり、サイトをよく見てみると、古くから存在するブログなのに極端に記事数が少なかったり、ブログの形式を真似しているだけで実際はブログですらないホームページだったりする。

ここでは具体名を挙げるのは避けるが、YouTubeで政治論・経済論を語って有料のチャンネルを併設しているチャンネルだったり、オンラインサロンだったり、投資メソッドの情報商材屋などが見受けられ、その中には本を出版しているところもあった。
無料会員向けにYouTubeで政治批判政治家批判を行なっていたり、「リベラル」を名乗ってやっていたりするところが多い。
元より情弱向けのお金儲けビジネスなので、Google検索をかけた程度で信頼してしまう貧乏人からさらに搾り取る気なのだ。
そして自身は顔出しなどはしていないので、工作では消しきれないくらい悪評が立ってきたら、アカウントも名前も会社も変えて再スタート…というサイクルを行っているのである。

余談だが、悪評を流した人間に対して誹謗中傷で開示請求、そして職場に知られたくなかったら示談しろと要求、誹謗中傷被害者として被害者ヅラして善意の第三者に助けを求める…という手口も数多く行われている。
貧乏人から骨の髄までしゃぶるつもりなのである。悪質な人間からの誹謗中傷開示請求からの示談に応じた方がいいのかの是非についてはここでは避けるが、彼らは「開示請求を行った」や「示談を受け入れた」とまでは書いているが、「裁判をした」とまでは一言も書いていないことはここに記しておく。



追記・修正はサジェスト汚染に対して対策を行ってからお願いします。

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最終更新:2025年03月24日 23:10

*1 3年以下の懲役または50万円以下の罰金。