エメラ・ントゥカ&チペクゥエ(未確認生物)

登録日:2016/08/08 Mon 22:35:29
更新日:2024/09/10 Tue 00:58:08
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概要

アフリカの山岳や湖沼地帯でたびたび目撃される未確認生物がエメラ・ントゥカとチペクゥエである。
主にコンゴ共和国や中央アフリカ共和国、カメルーンなどのアフリカ中部に姿を現すことが多く、
その見た目は 絶滅したはずの恐竜を彷彿させる特徴が数多くあるという。

形態

エメラ・ントゥカは、四足歩行で鼻先に巨大な角を持ち、全体の印象はサイによく似ているという。
しかし、その尻尾はワニのように長く頑丈に伸びている。ゾウのような大きな薄い耳があるという目撃証言もある。
草や果実を好んで食べる草食性にもかかわらず、 性格は極めて狂暴であり、 自分の縄張りに侵入した者には誰であろうと積極的に攻撃を試みるという。
その対象は分厚い脂肪に覆われたカバや重量感のある水牛だけでなく、果ては陸上最大の哺乳類であるゾウにさえも及ぶ。
実際、エメラ・ントゥカという名前は、コンゴ共和国のリクアラ州に住む原住民の言葉で 「ゾウを殺す者」 を意味するという。

チペクゥエはアフリカの原住民の言葉で 「悪魔の獣」 もしくは 「水のライオン」 を意味し、
主にアンゴラ北東部のカサイ川の周辺、タンザニアの西端にあるタンガニーカ湖でよく目撃されるという。
全体的に大きなトカゲを思わせるような体格をしていて、鼻先にはやはり一本の角があり、ワニのような大きな口には多数の鋭い牙がある。
チペクゥエもエメラ・ントゥカに負けず劣らずの狂暴な性格をしており、おまけに口に並んだ牙から食性は肉食である可能性が高い。
事実、カバやサイを襲って捕食する姿が原住民から度々目撃されている。

同一の生き物か?別種の生き物か?


この二頭のUMAは、その外見的・生態的な特徴からしばしば混同されることが多い。
また、地域や部族によって呼び方に違いがあり、『ディライ』、『アセカ・モケ』、『ンガンバ・ナマエ』など多数の異なる名称が存在する。
いずれの名前も「それまで見たことも無い謎の生物」を指しているのは間違いないようだ。
一説によればエメラ・ントゥカはトリケラトプスに代表される角竜を彷彿させる姿、チペクゥエは肉食恐竜に近い姿をしているとされるが、
これが同じ生物を指しているのか、それとも全く別の生物を指しているのかはUMA研究者の間でもかなり難解な問題となっている。
チペクゥエにしろエメラ・ントゥカにしろ、現地の人にとっては「未知の生物」を現していることに変わりはないからである。
そのため、研究者によっては「エメラ・ントゥカは別名チペクゥエとも呼ばれていて…」と解説されることも少なくない。

更に、この2体の目撃が相次いでいるコンゴ共和国のリクアラには、あのモケーレ・ムベンベが棲息しているとされるテレ湖も存在する。
実は、モケーレ・ムベンベにも角のようなものがあったという証言は、少数ながら確認されている。
重なり合う棲息地、一定の共通点が見られる身体的な特徴、不明瞭な原住民の言語や表現などの要素から、
数ある目撃情報をこれら3体のUMAに正しく当てはめていくのはベテランの研究者でも非常に難しいことと言える。
ある研究者が書いた書籍ではモケーレ・ムベンベのものとして掲載された目撃例が、別の人が書いた書籍ではエメラ・ントゥカの目撃例として紹介される
などといったこともザラにありうるのだ。

この項目ではエメラ・ントゥカ=チペクゥエとする同一説ではなく、独立した別種の生き物であるとして記述を進めていく。

水辺を好む角ある巨竜


ルアプア川の深辺には巨大な生き物が棲んでいる。
その身体は黒ずんだ滑らかな表皮に覆われ、鼻先には象牙色の巨大な角が一本生えている。
我々の先祖はこの怪物と戦い、遂には銛で突き殺した。

1933年に出版されたJ.E.ヒューズ著の「バングウェル湖での18年間」(原題:Eighteen Years on Lake Bangweulu)によれば、
ザンビアのアウシ族には古くからこのような伝説が残されているという。

どうやら、エメラ・ントゥカはサバンナを根城にしているサイとは違い、川や湖を主な棲息地にしていると推測される。
また、「深辺」という言葉から、単に水を好むという域を超え、水に適応した生態を築いている生物である可能性も否定できない。
1906年には、ザンビアの農園主が、ルクル川の岸辺で角によって突き殺されたカバの死体を目撃しており、
エメラ・ントゥカが他の動物を攻撃することは決して珍しくないことが窺い知れる。

サイを捕食する肉食竜


20世紀に入ると、怪物の目撃談は現地の住民だけでなく、入植した白人からも相次ぐようになる。
1931年2月、アンゴラでゴム農園を経営していたヨハンソンというスウェーデン人が、猟の行き帰りにチペクゥエと遭遇した。
カサイ川の流れる渓谷を訪れたヨハンソンは、お供に連れた原住民の少年と共に岸辺の茂みで身体を横たえる謎の生物を目撃。
生物の全長は約15m、トカゲを大きくしたような姿で、鼻先には一本の角が生えていた。

驚いたヨハンソンが銃を発射して威嚇すると、怪物は茂みの奥へと逃げ込んでいった。
怪物を追い払ったヨハンソンだったが、2人は猟の帰り道で更に驚くべき光景を目にした。
先ほどの怪物がサイにのしかかって皮を引き剥ぎ、肉をバリバリと喰らっていたのだ。
お供の少年が震える声で「チペクウエです…」と呟くのが早いか、ヨハンソンは顔色を変えて逃げ出した。
「もしあの時怪物に気付かれていたら、身体を裂かれ喰われていたのは自分の方だったかもしれない」
ヨハンソンは何とか無事に農園に辿り着いたものの、恐怖の余りからか熱を出し、1週間ほど寝込んでしまったという。

この怪物はカサイ川で目撃されたことと、その肉食恐竜然とした姿があのティラノサウルス・レックスを彷彿させることから、
研究者の間では カサイレックス と呼ばれることもある。
日本では余り馴染みの無い名前かもしれないが、海外ではそれなりに知名度のあるUMAで、イラストやフィギュアも多数製作・投稿されている。

尚、この時の目撃談を裏付ける 「カサイ川で撮影されたチペクゥエの写真」 という物も存在するが、
現在では死んだカバとコモドオオトカゲの写真を合成させたフェイクとされている。

主な目撃と遭遇の歴史


  • 19世紀後半
博物学者ジョセフ・メンゲスとコビトカバの発見で知られる探検家ハンス・ションブルクが、
ザンビアの沼地に棲む半分ゾウ、半分竜のような謎の巨大生物についてのレポートを発表する。
ションブルクは、バングウェウル湖にカバが棲息していないのはこの生き物に捕食されつくしたのだろうと報告している。

  • 1906年頃
ザンビアのルリマラに入植したR.M.グリーンが、
「チペクゥエに喉を引き裂かれたカバの死体がルクル川で発見された」という話を原住民から聞く。

  • 1913年
ハンス・ションブルクが、「リベリアの山岳地帯に棲息するサイのような謎の動物」について、原住民のクラオ族から話を聞く。

  • 1919年10月
当時ベルギー領だったコンゴ民主共和国の密林で、鉄道経営者ダビッド・ルパージュが恐竜に似た謎の生き物を目撃。
ルパージュが発砲したところ、怒った怪物が追いかけてきたので逃走せざるを得なかったが、
視力が悪いのか程なくして追跡を止めてしまったため、ルパージュは物陰から怪物の姿を細かく観察することが出来た。
全長はおよそ7.2m、肩の部分がコブのように盛り上がっていて、長く尖った鼻先には角が生えていた。
前脚はウマの蹄のようになっており、後ろ脚は牛や羊のように指先が二つに割れていたという。

実は数日前に、カタンガ地方のフュンギュルームという村に巨大な生物が出現、
数件の家屋を破壊して密林に逃げ込んだという事件が起きており、この時の怪物と同一のものと見られている。

  • 1932年
冒険家のジョン・ジョンソンが、カサイ川近くの渓谷を探検中、何者かに追われて逃走するサイと遭遇。
勢い余ったサイは そのままジョンソンの乗った車に衝突し、車は横転。 ジョンソンは気を失った。
目を覚ますと、そこには暴れるサイを鋭い爪で押さえつける巨大なトカゲのような生き物がいたという。
怪物の全長は13m、赤いまだら模様の入った黒い身体と長く尖った鼻先を持ち、口には何本もの牙が並んでいた。

  • 1945年頃
カサイ川の密林地帯で、鉱山技師の一行がチペクゥエらしき生き物を目撃。
発砲したところ何発かは確かに命中したように見えたが、怪物は全く平気な様子でジャングルの奥へ姿を消した。

  • 1950年
フランス領コンゴ(現コンゴ共和国)のケレで公務官を務めていたミレーの元に、森林地帯でサイに似た生き物を見たという報告が入る。
原住民が描いた足跡のスケッチはサイのそれに酷似していたという。

  • 1954年5月
ザンビアのバングウェウル湖を訪れたアラン・ブリグナルが、岸辺から20mほど離れた水面から謎の生物が顔を突き出したのを目撃。
寸詰まりの鼻先、盛り上がった眉と一直線に伸びた顎のラインがはっきり見えたという。
謎の生物は数秒ほど泳いだ後、水中に没した。

  • 2008年5月
カメルーン南東部を流れるBoumba川で漁をしていた漁師が、サイのような角の生えた動物を目撃。
この目撃証言を訊ねたフランスの作家ミシェル・バロットによれば、
バロットが到着するちょうど1週間前の早朝に、カメルーンとコンゴの国境にあるMoloundou村から北西80キロの地点で魚網を上げていたところ、
体長10mはあろうかという非常に大きな動物が立ち去っていった。
体色は黒色で、背後から見ていたために頭は見えなかったが、それでも長い角のようなものが確認できたと言う。
漁師は自分の故郷でサイやカバは見慣れており、謎の生物はこれらの見間違いではないと証言した。

バロットは、未確認生物研究の大家と名高いベルナール・ユーヴェルマンの著書『Les Derniers Dragons d'Afrique』*1を読んで以降アフリカの未確認生物に惹かれ、これまでに幾度となくカメルーンの河川や湖を訪れ現地調査を行っている。

正体の考察


エメラ・ントゥカの正体について真っ先に挙げられるのは、やはり中生代に棲息していた恐竜の一種である角竜類であろう。
角竜と聞くとトリケラトプスやカスモサウルス、ペンタケラトプスのような、
「両目の上に生えた二本の長い角と鼻先から短い一本の角」という三本角の姿が一般的によく知られているが、
セントロサウルスのような、「鼻先から長い角が一本だけ」という、
目撃談から統合されるエメラ・ントゥカの姿とかなり近い容姿をした角竜も確認されている。
ここで問題になるのは アフリカ大陸から発見された角竜が存在しないということである。
これらの恐竜は全て北アメリカが産出国であり、仮に正体が角竜ならばどのようにして海を渡ってアフリカに上陸したのか?という疑問が発生する。
恐竜に限らず全ての生き物に言えることだが、死体が化石となって産出するのは非常に稀であるため、
アフリカの地層に新種の角竜化石が人知れず眠っているという可能性も決してゼロというわけでは無いが…。
角を有した大型爬虫類、もしくは半水生の大型哺乳類…いずれも未だ発見されていない新種の動物がエメラ・ントゥカの正体であるとする研究者は数多い。
少なくとも、数千万年以上前からの恐竜の生き残りとするよりは遥かに現実味があるからである。

エメラ・ントゥカも、モケーレ・ムベンベの正体考察と同じく、
密林や湿地帯では本来滅多に見られないサイがたまたま迷い込んだのを目撃して、未知の生物と勘違いしただけだという説もある。
しかし、エメラ・ントゥカ=サイと決定づけるには早急すぎるのではないかという根拠もいくつか挙げられている。
その最たるものが、目撃者の多くが「エメラ・ントゥカの角は象牙のような色と質感だった」と語っていること。
サイの角はケラチン質の集合体、早い話が 毛の塊のようなもの なのである。
一方、象牙はゾウの門歯*2が長く発達したものであるため、見た目や成分もどちらかと言えば骨に近いと言える。
そして角竜類の角は化石を見れば分かる通り、その構成物質は骨である。
サイの角よりもむしろ象牙に近いという目撃証言こそが、「サイとは違った別の生き物である」ということを現しているのではないだろうか。

一方のチペクゥエの場合、角の生えた肉食恐竜ということでジュラ紀中期から後期に棲息していたケラトサウルスが正体の最有力とされる。
しかも、ケラトサウルスは角竜類と違ってアフリカからも化石が発見された事実があるため、何らかの事情で現代まで生き残った可能性も無くはない。
だが、ヨハンソンやジョン・ジョンソンの目撃談から推測されるチペクゥエの全長は13~15m。
これはティラノサウルスやギガノトサウルスなど、肉食恐竜としては最大クラスの数値であり、
平均全長6m、最大でも9mほどしかなかったと推測されるケラトサウルスとは大きな隔たりがある。
また、生き物の身体は環境が厳しくなると、少ないエネルギーでも効率的に活動できるように小型化するのが基本であるため、
よほどの好条件に恵まれない限り今よりも大型化することはまずあり得ない。
獲物が小さくなり、酸素濃度も薄い現在のアフリカで、肉食恐竜が中生代よりも巨大な姿に進化して生き残っているという可能性はかなり低い。

一説では、発見された頭骨の大きさから推定全長14mとも言われる最大級の肉食恐竜・カルカロドントサウルスがその正体ではないかとする研究者もいる。
しかし、カルカロドントサウルスの頭骨にはチペクゥエを象徴する角のような突起が無いため、チペクゥエの正体と断定するには少々厳しい。

追記・修正はアフリカのジャングルで恐竜と鉢合わせした人がお願いします。


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最終更新:2024年09月10日 00:58

*1 フランス語で『アフリカ最後のドラゴン』という意味

*2 前歯のこと。人間には上下合わせて4本生えている。