登録日:2016/10/07 Fri 16:47:47
更新日:2025/03/30 Sun 00:27:19
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Good luck.
Morituri te salutant.
開いたのならば、閉じない扉は無い。放たれた銀の銃弾が、心臓を貫くまで戻らないように
SCP-1983 Doorway to Nowhere (先の無い扉)
Object Class:
Keter (現在
Neutralizedと推定)
SCP-1983とは、怪異創作コミュニティサイト「
SCP Foundation」のオブジェクトの1つである。
内部が異空間化している農家(SCP-1983-1)とそこから現れる怪物(SCP-1983-2)で構成されている。
SCP-1983-1の方は、カルト教団による連続殺人の後に廃屋となった農家。
先述したように異空間化しているため外部と内部の寸法が一致せず、居間に通じる筈のドアが別の部屋に繋がっている。
外部から居間に穴を開けようとしたところ、その部分が異空間と化してしまった。
その部分から後述する怪物の出現はなかったが、出現する確率を上げる可能性を懸念して中止となった。
SCP-1983-2の方は、1.8m程の真っ黒な人型のような見た目をしている怪物で非常に気性が荒い。
人間に接触した場合、肌などに傷をつけずに胸に手を差し入れ未知の方法で心臓のみを引き抜いて殺害する。
殺害し心臓を手に入れた後は再び、上記のSCP-1983-1の方に戻っていく。
倒すためには、祈りを込めた「銀の弾丸」(儀式とかの類ではなく、心を込めて祈る事が重要)を撃ち込む必要がある。
財団はこのSCP内部を調査するために、何度か機動隊員を送っているのだが・・・
機動部隊Chi-13の1部隊を戸口から内部に派遣させるも、帰還せず。
彼らが侵入後、正面入口の扉がすぐさま閉まり彼らを異空間に閉じ込めた。
SCP-1983-2は出現しなかった。
第一急襲部隊(付録1で突入した部隊と思われる)の安否を確かめるため第二急襲部隊がSCP-1983-1に侵入。
またしても帰還せず。今回は正面入口の扉が閉まらずSCP-1983-2が現れたため、
エージェントモーリスが戸口から侵入して扉を閉めた。(おそらく彼も帰還せず)
一度入った場合、二度と出てこれない可能性が高いと判断したのか使い捨て職員であるDクラス職員(D-14134)に
有線式ビデオカメラを持たせて侵入させた。しかし、戸口に入った瞬間に映像が途切れ、カメラのコードも切断されてしまう。
まあ、当然だよね。
このままこのSCPは対処不能のKeterクラスとして財団の手を焼くことに・・・
なりませんでした。
付録3の突入から数時間後、突如SCP-1983-1の怪異現象が消失。
内部を調査させると、干からびた数人のエージェントの死体とこのSCPについて書かれた非公式のレポートが見つかった。
詳細は公式を見てもらうとして、非公式のレポートの内容を一部抜粋すると以下のようになる。
途中までは、SCPの特徴と彼が今に至る経緯を語っている。
- 書いているのは先にSCP-1983-1に突入した部隊「聖歌隊」所属の「エージェントバークレー」
機動部隊Chi-13が"少年聖歌隊"なのでそれを略しているのだとすれば、補遺1で突入した部隊の一人ということになる。
- SCP-1983-2は光源によって生ずる影によって標的を感知しているらしい。
まずはSCP-1983-2の生(?)態。影っぽい見た目どおり影を見ているらしい。
そのため、奴らの巣窟とも言えるSCP-1983-1の中で懐中電灯などを使うのは自殺行為に等しい。
- 内部にある扉の先は色んな場所に繋がっている。彼の高校のロッカーまであったことから内部にはいった人間の記憶を元にしている可能性がある。
- 中には家の外に繋がっている扉があるが、そこから出ると文字通り溶けて死亡する。
内部に突入した部隊が帰ってこなかった理由。
この家に入ったら最後、遅かれ早かれ待ってるのは確実な死なのである。
- 殆どが光で照らされた黒くて影みたいな「ゴミ」があり、それに光を消さずに触れると「何かに引っ張られて消える。」
罠みたいなモノだろうか、レポートでは彼の仲間が一人犠牲になったことが語られている。
やはり光をつけたままは危険なようだ。
- 扉を片っ端から閉めるとSCP-1983-2の巣に辿り着く。
ここで彼はあることに気がつく、扉を開けて別の場所と繋がる=扉が開いている別の場所に繋がっている ということなのではないかと。
それならばと片っ端から扉を閉めて全ての扉を閉めた後に再び開けた結果、辿り着いたのがSCP-1983-1の中心部分にあったSCP-1983-2の「巣」だった。
巣には大量の心臓でできた「塊」があり、SCP-1983-2が新しい心臓を取り込ませると新しいSCP-1983-2が生み出されたという。
すなわちSCP-1983-2が心臓を奪う理由は「自らの同胞を増やすため」だったのだ。
- 自分は仲間を置いて「巣」から逃げ出してしまい、隠れ続けながらこのレポートを書いている。
仲間かはたまたSCP-1983-2のものかも分からない声を背に「このクソッタレな状況に対抗する術」を持っていない彼は逃げ、以降ペンライトの僅かな光を使ってこのレポートを記述しているのだという。
そしてこれ以降の内容は、彼がこのレポートを見つけた人物(=D-14134)に託したものとなっている。
「決心がついたら、巣に行ってぶち壊してくれ。すべての心臓をぶっ壊すんだ。」
「そうすりゃ、ヤツらを殺せるかもしれねえ。これがオレが考えられる唯一の方法だ。」
そう、彼は自身には出来ないと認識した上でただ呆然と死を待つのではなく、
いずれ現れる何者かに打開策を託すためにこのレポートを書いていたのだ。
そして彼はこれを見つけてもらうために居間に行き、心臓をSCP-1983-2に使わせない為に自害したのだと思われる。
冒頭の文はレポートの最後に記されている彼の、名も知らない誰かに向けた祈りの言葉である。
財団は、この非公式レポートからSCP-1983が付録3で突入したD-14134によって無力化されたと推測し、彼の死に勲章が送られた。
(Dクラス職員は本来危険な実験などのための使い捨ての職員であるため、勲章は特例中の特例である。)
また、非公式レポートの情報よりこの現象が局地的でないと考えられるためこれと類似した事案の調査に人員が当てられている。
おそらく内部に色んな場所が継ぎ接ぎで存在する以上、そこも同じ現象にあっている可能性があるのだろう。
余談だが、「銀の弾丸(Silver Bullet)」という言葉は狼男への必殺手という意味から変遷して「物事への打開策・特効」と言う意味がある。
エージェントバークレーにとって打開策を託した名も知らぬ誰かは銀の弾丸であり、
レポートに込められた銀の弾丸への祈りを受け取ったD-14134はまさしく「祈りを込めた銀の弾丸」であった。
「祈りを込めた銀の弾丸」を撃ち込んだのは他でもないD-14134の勇気だったと言えるだろう。
「Morituri te salutant」はラテン語で、古代ローマの剣闘士(どちらかが死ぬさだめ)が闘技会を主催する皇帝に捧げた挨拶。
公式Wiki日本語版では当初「死にゆく貴方に、敬礼を」と訳されていたのだが、これは格変化の解釈が間違っているという有識者の指摘のもと、現在は正しい訳「死にゆく者より、敬礼を」に訂正されている。
だが初期の訳も本件の内容に反するものではないため、ディスカッションでは訂正への反対意見も上がっていた。
死にゆく者「が」敬礼を捧げるのか、死にゆく者「に」敬礼を捧げるのか。
いずれにしても、そこには捨て身で脅威に立ち向かう者への敬意があった。
追記・編集はKeterクラスを無力化した二人を讃えてからお願いします。
- 破壊がダメだっていう理由は -- 名無しさん (2017-09-28 07:45:40)
- まぁ、このオブジェクトに関しては破壊することで他にも存在する可能性ふくめ詳細が判明したわけだし、間接的なエージェントの指示もあったわけだからなぁ。 -- 名無しさん (2017-10-06 19:20:53)
- ↑5 SCP-1501の記事を見ることをお勧めする。O5-1の言う通り、異常存在の脅威と恐怖から人々を守る為の確保、収容、保護だ。異常存在を異常だからという理由だけで蒐集するコレクターではないのよ -- 名無しさん (2017-11-12 08:18:52)
- ↑4よく読むんだ、このDクラスは問題解決の時点で既に死亡している -- 名無しさん (2017-12-23 13:13:51)
- 世界の断片は1のエンドオブワールド、心臓を集めるのは2の13機関、黒い怪物はハートレスか なるほどキンハーだわ -- 名無しさん (2018-03-20 11:56:33)
- ↑12 監獄のクライスラーのDは「妹を林間して頃した男6人を頃して死刑囚になり、SCPのせいで囚われ怪物に虐待されている人々に妹の犠牲を重ねて義憤に駆られたんだよな… -- 名無しさん (2018-06-10 15:16:43)
- サリーの部屋って人がほとんどこの中のまとめと同じもんをyoutubeに上げてるんだけど、このまとめはそのサリーの部屋って人が考えたもんなの? -- 名無しさん (2018-09-02 01:27:07)
- ↑普通に関係ないんじゃない?どっちにしろアニヲタwikiを解釈の参考にすること自体は問題ないだろうし。 -- 名無しさん (2018-12-06 12:23:42)
- 本家に行ったらD-14134の後日談らしきものがあったんだけど、ミスター・パーカーってやつ -- 名無し (2019-04-21 18:05:26)
- 最近中国支部で英雄は帰ってきた、だが、それは復讐者としてだった、詳しくはDの復讐って言うscpを読むといい -- 名無しさん (2019-06-15 13:28:33)
- ↑4 -- 名無しさん (2019-08-04 13:07:11)
- ↑2 よんだけれども・・・うーん・・・俺の頭が足らんのかな? -- 名無しさん (2019-11-15 10:36:32)
- ↑3 dの復讐面白かったよ 記事できないかなー -- 名無しさん (2020-02-12 18:23:28)
- ミスターパーカーって後日談というより前日談かな?でもそれだと財団が残酷すぎるな パラレル? -- 名無しさん (2020-02-12 18:26:21)
- ヒラコーがtwitterで考察してたけど、DクラスがSCP-1983を無力化できたのはDクラス自身がエージェントの祈りを受けた『銀の弾丸』そのものだったから(要約)。 胸が熱くなったわ。 -- 名無しさん (2020-03-13 17:00:36)
- このSCPを題材にしたホラゲーとかあったら面白そうだと思うんだけどなぁ...もちろんDクラスが主人公で -- 名無しさん (2020-03-15 09:51:48)
- [スロット割り当てなし]、ミスターおっかないも必読ですよ。 -- 名無しさん (2020-03-26 11:55:32)
- Dクラス武勇伝ではないが、Dクラス珍道中としてはSCP-645がオススメだぞ! -- 名無しさん (2020-04-19 22:12:52)
- "D"oorway to "N"owhere - "class D" to "Neutralized" -- 名無しさん (2020-05-18 06:31:59)
- ミスターパーカーは前日譚だと思うよ。昔死刑宣告されたパーカーがDクラスとして雇用され、理由は知らないが終了を免れて解雇、その後ウェイターとしてやり直しているところに財団の職員が接触して「あなたが必要だから手伝ってくれ。あなたは死ぬけどあなたの要望はできるだけ叶える」と言って勧誘してる…という流れ。つまり「何も知らないDクラスを送り込んだらそいつがたまたま全部ぶっ潰してくれた」のではなく「最初から全部解ってて自分の意志で突入した」なんだな。ただ、これはTaleでしかないし、そもそも書いた人も違うみたい -- 名無しさん (2020-08-24 19:21:56)
- ログ化を提案します -- 名無しさん (2020-11-15 19:25:23)
- ログ化しました -- (名無しさん) 2020-12-19 05:43:49
- D-14134は異空間と共に消滅したってことでいいの? -- (名無しさん) 2021-09-10 23:06:44
- D-14134がどうしてか213JPの監獄に転移して、そこでD-0442と出会うTaleも凄く好き -- (名無しさん) 2021-12-19 02:10:29
- ↑2外へ出る扉から出ると溶けて死ぬんだから、異常空間がなくなる→結果的に外に出るって事で死んだんじゃなかろうか -- (名無しさん) 2021-12-20 12:19:09
- すずめの戸締まり -- (名無しさん) 2022-11-11 17:01:39
- 解釈の余地は複数あっても、動作の主体と客体は定まるんでは -- (名無しさん) 2023-01-06 14:36:49
- ラテン語はすべての単語が格変化する。moriturusは主格(主語)。teはtuの与格(目的語)。そしてsalutantはsaluteの三人称複数現在。直訳すると、「死のうとするものたちからあなたへご挨拶します」という意味になる。つまり、主語はこれから戦う剣闘士二人とも。 -- (名無しさん) 2023-06-05 13:54:30
- そもそもこの家はどうしてこんなことになったんだ?サラッとカルト教団による殺人がどうとか書いてはあるけど -- (名無しさん) 2023-10-09 09:50:11
- 死にゆく貴方に」も「死にゆく者より」も正解な気がするな。元記事の筆者はダブルミーニング的な意図で使ってそう -- (名無しさん) 2024-11-06 15:26:10
最終更新:2025年03月30日 00:27