ニトロプラスがこんな無難なゲームを出すわけがない。
如何にも学園恋愛物っぽいPVが流れ、
如何にも無難なキャラ設定、
如何にもエロゲ主人公っぽい無個性な主人公。
だが、そこはやはりニトロプラスであった。
PVの最後に血まみれな美雪が映り、「選ばれなかった彼女は…?」という煽り文句がサンプルCG公開と共に載っていたり、
そもそも今までのニトロプラス作品を知っている人なら警戒することに理由は不要と、
ぶっちゃけ最初から凡百のエロゲとして見られていないこのゲーム。
しかしいざ蓋を開けると、そこは想像を遥かに超越する地獄絵図であった。
大まかな解説
上述のように、一周目は美雪ルート固定。この時点では何の変哲もない恋愛ストーリーで、
心一は美雪と永遠の愛を誓い、二人が結ばれてグッドエンド。
エンディング後、アオイルートが選択可能になり、プレイヤーも当然、アオイ攻略に手を付けるだろう。
しかし概ねすんなり結ばれた美雪に比べて、アオイは攻略難易度が高く、ちょっとした選択肢を間違えると美雪ルートに行ってしまう。
心一はアオイと恋人同士になるものの、あろうことかアオイに浮気の疑惑が。
それでもアオイを信じ続け、美雪との距離を保ち、浮気相手の正体を掴みアオイを問い詰め、その上アオイを許し、最後に心一とアオイがようやく結ばれる。
苦難続きのアオイルートも無事クリア…とその時。
現れたのは目に生気がない美雪だった。
響く、猫の悲鳴。
そして、血まみれなバットを手にする美雪が部屋に来て
アオイを殴り殺した。
すぐさま心一も美雪に殴られ、四肢が動かず、視界が真っ赤になる。
美雪が語る。アオイには大きな隠し事があると。
あらゆる手を使って、心一がアオイと結ばれることを阻止したと。
アオイの浮気の証拠を掴み、心一が復讐するよう仕向けたと。
やっと心一と結ばれると息を殺して喜びの涙を流していたが、結局心一はアオイを選んだと。
心一がアオイと行為に及ぶベッドの下に隠れて何もできず、ただ祈るしかなかったと。
永遠の愛を誓い合った人が、私の真上で裏切ってるの。これでおかしくならないでいられる?ねえ!?
私との愛の誓いを破った
裏切り者だもの。当然でしょう?
と、まるで心一が美雪を裏切り、アオイを選んだような言い方。
もちろん、アオイルート攻略のために、アオイを選択し続けた心一に心当たりがあるはずもなく、反論するが……
そして美雪はカメラ目線で語りかける。
前のプレイにて美雪と永遠の愛を誓った、プレイヤーに。
登場人物
CV:なし
プレイヤーの分身であるはずの心一だが、文字通りただのアバターで、
彼は単にプレイヤーの行動代行担当にすぎない。
そのため、このゲームは実際プレイヤーが心一の行動を操作してヒロインと関わっていくのではなく、
心一がプレイヤーの行動を反映すると、ややこしいが決定的な違いがある。
CV:手塚まき
アオイを撲殺し、心一すら殺した美雪は「カミサマ」と交信し、自分で作ったゲーム、
『君と彼女と彼女の恋。』で世界を書き換え、心一をアバターとしてプレイヤー諸共閉じ込める。
ゲーム(リアルの『君と彼女と彼女の恋。』)が強制的に終了され、再起動すると
↑のような起動画面が表示され、通称「メタルート」が開始する。
セーブもロードも自由にできず、UIが明らかに劣化し、所々バグってるが、
これは、美雪がプログラミングを一から学び制作したゲームの「世界」だからである。
心一(プレイヤー)は美雪との同居生活を強制され、美雪と様々なイベントを体験することになる。
元は素人であるため「ゲーム世界」は未完成らしく、本屋でプログラミング関連の本を購入し知識を補完しながら「ゲーム世界」の完成に着手する。
CV:仙道ミツキ
その正体は自称の通り、アダルトゲームのヒロイン。
美雪によって存在が消去され、メタルートではアオイは存在しない。
…と美雪は言ったが、実は「カミサマ」によって記憶の切れ端がセーブされ、「現実」と美雪が作り出した「ゲーム世界」の狭間で彷徨い、必死に心一(プレイヤー)を呼ぼうとしている。
しかし美雪が心一に薬物を投与し、アオイを「(実在しない)ゲームのヒロイン」と思い込ませ、「ゲーム世界」のプログラムを完成することでアオイを完全に消去することを目論む。
美雪の目を盗んで「ゲーム世界」から脱出し、アオイを取り戻すのが、メタルートの目的。
CV:
桐谷華
正体は雄太郎の弟、
曙龍二郎の女装姿で、アオイの浮気相手。
アオイはアダルトゲームのヒロインの役割(=Hシーンを集める)を果たさないと存在を維持できず、その相手がハルであった。
アオイルートでのHシーンはこの子のせいでシュール極まる。
このゲームは、アダルトゲームというジャンルのアンチテーゼと言われる。
ヒロインを順を追って攻略するというエロゲの基本を真っ向から否定し、恰もそれを行うプレイヤーを非難する仕打ちは、
激しい賛否両論を巻き起こし、本作はニトロプラスの屈指の問題作(話題作)に。
曲がりなりにもアダルトゲームメーカーであるニトロプラスがお客さんに喧嘩を売るのは企業としてどうだ?
斬新で大胆、他と一線を画する作品として評価されるべきでは?
はっきり言えることは、このゲームは極めて異色な作品であり、エロゲ初心者には全く向いていない。
今までやっていたエロゲの数によって、このゲームに対する見方、評価も変わるとは一般的な意見。
もし興味があれば、是非ネット上の評価を鵜呑みにせずに、自分の手で選択しよう。
まあ要はビアンカフローラ論争の極地みたいな物だが、そのゲームを基にした映画が似たようなことをやって炎上するのはまた別のお話。
余談
- 体験版にチートコード(公式にて公開されている)を入力すると、なんと製品版の全てのCG、回想シーン、BGMが開放される。
「これら目当ての人は製品版を買わなくてもいい」とのこと。しかしこうすると製品版が進行不能になる。
- メタルートではゲームが突然終了、会話がループされるなどまるで不具合のような仕様が数多く存在する。
……が、それとは別にリアルのゲーム自体もバグが多く、演出なのか本当に不具合なのかすらわからないことも。
- 小ネタ満載なのも特徴。久しぶりにゲーム(メタルート)を起動、節日に起動、果ては特定の会話を1万回以上ループする
などの条件を達成すると特殊なセリフを聴くことができる。