SCP-1322

登録日:2017/10/19 Thu 22:10:19
更新日:2024/02/04 Sun 08:46:43
所要時間:約 8 分で読めます




SCP-1322は、シェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト (SCiP) のひとつである。

概要


SCP-1322は地表に対して垂直に、北から約36度西に傾いた状態で固定された時空間異常である。
SCP-1322の形状はほぼ楕円形で、横向きに約2.5cm、縦向きに約1cmの大きさ。この大きさを超えなければ相互に行き来可能で向こう側の様子を覗く事すら可能であることから、平行宇宙へと続くワームホールと考えられている。
ただし、音のみは伝達する事が出来ない。
1952年8月に発見され、翌月、サイト-122に収容。

物質のやり取りが可能な事から、財団は物体を直接やり取りしてSCP-1322-A側に交流を図った。
後にSCP-1322-A側から引かれた特別なケーブルと、英語とSCP-1322-Aの言語を混ぜたピジン言語を使用する事で交流は飛躍的に加速した。

発見から2ヶ月後、1952年10月、SCP-1322-Aから贈られた金属筒が次の情報である。

SCP-1322-A "ハートル"

SCP-1322の向こう側の比較的友好的だった異文明。
文明を形成しているのはホモ・サピエンスとはわずかな違いしかない生物約88億人。

大気サンプルは地球と類似しているが、アルゴンの濃度がわずかに高いことから、少なくとも地球で観測可能な範囲には存在しない可能性が高い事がSCP-1322-Aから送られた天体観測データから示される。

付記された名称の「ハートル」は向こうの口語であり、財団の努力で翻訳すると「故郷」。我々が地球人ならば、SCP-1322-Aはさながらハートル人と言ったところか。

財団謹製の偽情報を9時間以内で識別する程で技術及び工学、特に高エネルギー物理学は非常に発達しており、地球の音楽、視覚芸術、文学と数学に強い関心を示す。一方、薬学と宗教には無関心で生物学はかなり劣るようだ。
SCP-1322は (国家に準ずる) 政治組織の科学的機関が物理学の実験中に偶然生成したらしい。SCP-1322-AにとってもSCP-1322の拡張、閉鎖、改造のいずれも技術的に困難らしく、実験の再現にも成功しなかった。

交流開始から約20年後の1972年12月SCP-1322-A側の応答が病気の蔓延により一時的に悪化。

互いの科学的・文化的発展を目的とする財団は支援を提案し、向こう側の全人口の0.091%(800万人)が犠牲になった危険な病原体の分析に当たる。

分析の結果、中身はインフルエンザウイルスの変種。

生物学や薬学の発達が遅れ、SCP-1322-Aの感受性が原因で大量の死者を出したハートルに財団はワクチンの合成及び接種を提案した結果、新規患者発生数は激減した。



追記・編集はSCP-1322-A側からお願いします。







































貴様らは我々を殺戮した。よくもやりやがったな。





































貴様らの軽率と傲慢が、我々の未来を打ち砕いた。
だが必ず復讐する。それが約束と誓いだ。
我々最後の世代の。思い知るがいい。



















シェアード・ワールドSCP Foundationに登場するSCP-1322Glory Hole(死滅の穴)オブジェクトクラスKeterで極めて厳重な収容耐性が敷かれている。

特別収容プロトコル

SCP-1322の収容室の気圧は6.00×10-2Pa以下を維持し、抗病原体が発生しないように照射線量は毎秒4.5レントゲン以下を維持。アブレータを内張りした上で、粒子ビーム、核爆発、非核爆発、腐食性物質に可能な限り耐える球状クラスVIII格納室に密閉。定期的に損傷検査を行い、ウイルス及び細菌汚染を定期監視する。

この厳重過ぎる収容手順は、SCP-1322-Aによる攻撃方法に対応したものであり、攻撃の度に収容室からサイト全体までの被害範囲で破壊される度に修復し、どうにかこれ以上の被害は防いでいる。

友好的関係どころか、財団はSCP-1322-A側から攻撃を受け続けている原因は上述したワクチンにある。

1cmの穴を通る小型熱核兵器を作製する科学力がありながらSCP-1322-Aは薬学に無関心。そんな状況で世界中に蔓延した病気の流行を阻止できる魔法の薬が登場したらすぐさま使ってしまうのは無理もないだろう。
もしかすると、インフルエンザウイルスのワクチンすら作製できないSCP-1322-A側には医薬品の副作用という概念すら乏しく、臨床試験を怠った可能性すらある。
SCP-1322-A側のデータによれば、副作用で受胎率が急激に減少。最終的には世界中の出生数が72日間で1000人未満という極端な落ち込みとなっている事が明らかにされた。
原因は良く調べもせずにワクチンを配布・接種したSCP-1322-A側にあるかもしれないが、財団が"常識" と判断し、説明を怠っていたとしたら?

1975年7月。この重大な混乱の中でしばしば攻撃的・非難的な論調となった向こう側との科学的・文化的コミュニケーションは一方的に中止。
同年10月に送られた上記のメッセージ以降、技術に秀でたSCP-1322から地球の技術レベルを超える攻撃が断続的に続く。

  • 病原体及びナノボットの投入
  • 高エネルギー粒子ビーム
  • コヒーレント放射エネルギー*1
  • 指向性エネルギー兵器
  • 高速硬化セラミックを溶かす未知の溶剤
  • 超高圧での腐食性流体の注入
  • 小型プラズマ発生装置による空気の加熱*2
  • 光速の0.006% (1800km/s)で発射される8kgの鉄棒
  • 複数の二段階熱核兵器*3
  • 分子間距離が気体より固体が大きい未知の物質*4

一度だけ遠隔操作型の小型探査装置を送り込んだが、即座に破壊されて収容室も被害を受けたため、今のところ探査計画は準備されていない。
この状況はSCP-1322-Aが攻撃をやめるか、もしくはどちらかが全滅するまで続くだろう。



「絶頂を与えてくれる穴」というアレな用語が山ほど引っかかる項目名のGloryには栄光、名誉、喜び…とさまざまなポジティブな意味がある。

ただし『天国』という意味合いで「天国に送る(to the glory)」にすると「殺す」ことの婉曲表現となるので、それを加味した邦訳の「死滅の穴」は皮肉の最たるものだろう。



Sic Transit Gloria Mundi

なお、Taleの1つ "Sic Transit Gloria Mundi" (執筆時点で未翻訳) では、SCP-1322-Aによる復讐が成し遂げられている世界が描かれている。
作者はSCP-1322本体の記事を執筆したspikebrennan氏によるものである。

2016年8月24日、SCP-1322から以下のような攻撃が発生した事が自動観測により示された。
  • 05時33分06秒: 平均質量575gの金属球が3.6秒間に約2300発、80m/sから110m/sの速度で発射される。
  • 05時33分09秒: 金属球の70%が爆発し、中から気体が噴出する。
  • 05時33分10秒: 様々な大きさの850個の金属塊が10m/s~18m/sで発射される。

視点は変わって、財団職員のVijay Patelに移る。
PatelはSCP-120 (瞬間移動プール) によって移動可能な地点の内、座標#9に設定されている月の雨の海にある財団の前哨基地にいる。
Patelはコンピュータに、現在生きている人類の数を訪ねる。返答は、Patel以外の財団職員は1人もおらず、Patel以外に生き残っているのは国際宇宙ステーションにいる4人のみと言う回答であった。
地球は既になく、周回する天体を失って一直線に進み、今は月の裏側のどこかにいる国際宇宙ステーションに連絡手段もない。
SCP-1322-Aは、地球をSCP-1012 (秘密の音色) によって原子レベルで共鳴崩壊させる事で復讐に成功したのである。
気体によって密度を調整し、その後発射した金属塊が出す音で、SCP-1012の条件を満たす5つの音波を出したのである。
なお、SCP-1322は様々な粒子・物体を通すが、音のみは伝達できない。SCP-1012でSCP-1322-Aは巻き添えを食らう事無く、地球を破壊できる。
財団の中では、SCP-1548 (きらいきらい星) やSCP-2838 (転星の柱) のような地球外の敵対的存在に対してSCP-1012を使用する事を提案した職員もいたが、まさか自分たちが同じ目に合うとは思ってはいなかっただろう。
なお、人類最後の生き残りの1人であるPatelの先も明るくない。前哨基地の資源では、せいぜいあと22日間しか生きられないのである。
恐らくそれより早く、自身でハッチを開け空気を放出する事で、けりを付けるつもりである。


追記・編集はSCP-1322-Aの約束と誓いが果たされる前にお願いします。


SCP-1322 - Glory Hole
by spikebrennan
http://www.scp-wiki.net/scp-1322
http://ja.scp-wiki.net/scp-1322 (翻訳)

Sic Transit Gloria Mundi
by spikebrennan
http://www.scp-wiki.net/sic-transit-gloria-mundi
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最終更新:2024年02月04日 08:46

*1 少なくとも108日間連続投射が可能で、その総エネルギーは1033eV(*4)以上に達する

*2 格納室を真空に保つ事が新たに加わった

*3 SCP-1322を通る程小さく、動作原理は十分に理解されていない

*4 気体が固化した事による超高圧が発生