SCP-3613

登録日: 2017/12/06 Wed 00:13:07
更新日:2025/06/14 Sat 16:49:25
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SCP-3613は、シェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラスはEuclid。

特別収容プロトコル

基本的にプロトコルは先にオブジェクト見てからのほうが理解しやすいことが多いが、
今回はたった数行なのでさくっと説明しておこう。

SCP-3613各個体はヒト型生物収容室に収容され、いかなる状況でもマーシャル・カーター&ダーク株式会社のエージェントに居場所を公開してはならないという。
また物理的な実験にはサイト-88管理官フィリップ・フォスターとオブジェクト担当主任の2名からの許可を得る必要がある。

概要

まあ人型実体であることはわかっていただけたと思うが、何かというと4体の意思を持つロボットである。
理論上は異常な身体・精神的機能を発揮できると財団からは考えられているほど超高性能なロボットらしいのだが、
彼ら自身はあくまでヒトの基準値を上回る機能を使用することはない。これはこのロボットの製造経緯に拠るものと思われる。

MC&D社が先にでてきたが、このMC&D社の既知のエージェントにジェイコブ・ジェファーソンという人がいる。
そしてこのロボット4体は、ジェイコブ・ジェファーソン氏の家族を自認しているのである。

実はジェイコブ・ジェファーソン氏は2013年10月31日、彼も含めた一家全員が交通事故に巻き込まれてしまっていた。
ジェファーソン氏は四肢麻痺を負ったものの辛くも生存。だが財団が把握する限り、ジェファーソン氏の家族4人は亡くなってしまっている。

…のだが。

家族交換プログラム

ジェファーソン氏の務めるMC&D社は非常にホワイトな職務環境であったようだ。
少なくとも、自社に忠実に貢献する社員の家族を何らかの形で蘇生するプログラムを実施しているほどには。

カーター様

正直に申し上げます。あなた様が家族の一員と交換する目的で我が社のアンドロイドに興味をお持ちだと聞いた時、私はまず戸惑いました。しかし、付き人の方に目的と過程を説明して頂くと、実に独創的なアイデアであると思われるようになりました。今日の午後、あなた様のエージェントであるHr'asm'Kal氏がジェファーソン一家の魂を運んで参りました。私どもは今夜、彼らを第3世代モデルに搭載します。明日には彼の下に家族が帰還するでしょう。

あなた様にとってはあくまでも堅実な仕事のうちであると理解していますが、堅実な仕事と正しい行いが調和するのは常に喜ばしいものです。ジェファーソン氏にはくれぐれも宜しくお伝えください。彼のほうが家族より回復に時間を要するのは皮肉な話です。しかし少なくとも、家族がそれを支えてくれるでしょう。

アンダーソン

MC&D社はジェファーソン氏の家族の魂をどうにかして確保。もうこの時点で流石は財団世界としか言いようがないが、
それを提携先企業であるアンダーソン・ロボティクス社(詳しくは要注意団体(SCP Foundation)を参照のこと)に運び、
アンダーソン・ロボティクス社が自社製品であるロボットに家族の魂を挿入した、ということなんだそうである。

どういうこっちゃねん。いや確かに家族がどういう形であれ戻ってくることはいいことなんだろうけども。

そんな彼らだったのだが、流石にジェファーソン氏だけは人間なので入院生活を続けていたようで、家族だけが先に家に戻ることになる。

だがその後問題が発生。家族のうちの一体(娘)が通っていた高校でいじめに遭い、損傷にあってしまったのだ。
ロボットつっても所謂アンドロイド(OSじゃないほう)で人間には流石に似せていたようだが、損傷すれば当然ロボットなのがバレる。
警察への聞き取りを元に財団はその一体が治療を受けている病院にたどり着き、その個体を含め全4体のロボットを収容することになる。

財団とMC&D社の法務課のバトル開始

さて、財団はかつてより、MC&D社をはじめとした、いくつかの要注意団体との間に、米国南部超常組織協力条約(通称SUSEOCT)を締結していた。
おそらくは「勝手によその団体のものを持ってかないでね、返還請求を求められたら返してね」というものなんだろう。多分。
とはいえ、財団がそんなものをまともに守るはずがない。財団が守るべきは条約ではなく、人間が生きる正常な世界である。

そこで財団は、「そもそもMC&D社に財団がこのオブジェクトを保有してるとバレなければいいじゃないか」と考える。
で、隠蔽していたのだが、ある日それがバレてしまう。

サイト-88の収容時点での管理官はマードックスという人だったのだが、どうやらこの人はあまりよくない事件(本オブジェクトとはおそらく無関係)を起こしていて、
財団から降格処分になるところであった。そのマードックスさんが腹いせにMC&D社に教えたんじゃないか、と財団は考えている。確証はないようだが。
フォスターさんが後任として管理官に着任すると、MC&D社から一通のメールが送られてきた。

拝啓 フォスター博士

私どもはあなた方が現在、私どもの資産(皆様による指定名称はSCP-3613-1、SCP-3613-2、SCP-3613-3、およびSCP-3613-4)を所有していることを把握しております。当組織はSUSEOCTの第3項第5節に基づき、以下に挙げる資産の返還を正式に請求させていただきます。

  • 第3世代アンダーソン・ロボティクス製アンドロイド、1体。デロレス・ジェファーソンという39歳女性の外観・身分・魂を有する。
  • 第3世代アンダーソン・ロボティクス製アンドロイド、1体。アリス・ジェファーソンという16歳女性の外観・身分・魂を有する。
  • 第3世代アンダーソン・ロボティクス製アンドロイド、1体。トレイシー・ジェファーソンという12歳女性の外観・身分・魂を有する。
  • 第3世代アンダーソン・ロボティクス製アンドロイド、1体。ジェイコブ・ジェファーソン・ジュニアという7歳男性の外観・身分・魂を有する。
ご都合つき次第、当該資産の返還を願います。住宅供給・回収・輸送の費用に関する請求書は、このメッセージを受信してから30営業日以内に提出してください。

敬具、ダーク氏事務所

文面こそ丁寧だが、「こっちはそっちが勝手に収容してるの知ってんねんぞさっさと返せ」という心の声がありありと見える。
まあMC&D社からすると、せっかく生き返らせたのに自社社員の家族が囚われている状況は好ましくないだろう。
ここだけみてると財団が悪者に見えてくる。実際ジェファーソンさんからしたら悪者でしかないと思うが…。

で、財団は「バレちゃった」とは思うわけだが、しかしせっかくの
『見せてもらおうか、アンダーソン・ロボティクス社のアンドロイドの性能とやらを!』なチャンスである。
なるべく返還を遅らせ、時間を稼いでいるうちに実験をしてしまおうと考えた。

財団はMC&D社に対しては「うちはそんなもの所有していませんよ」と公式に否定し、
その間にサイト-19に4体のロボットを送ろうとした。

MC&D社「いやいや財団さん、そういうの良くないでしょう」

輸送作業中に、MC&D社の繋がりを持つと思われる傭兵グループによって襲撃(思われるということは法的には関係性を切ってることが伺える)。
財団はその襲撃も読んでいたのか、撃退こそしたが、傭兵の数名を捕縛し、SCP-3613各個体を一度サイト-88に戻した。

その傭兵のなかには、なんとジェイコブ・ジェファーソン氏がいた。
「脊髄損傷を負っていたジェファーソン氏がこんな早く回復するか?」と思った財団は、身体検査をするが、どこにもそもそも損傷の後がなかった。
ジェファーソン氏は「家族を返すまではどんな要求にも応じない」と尋問に抵抗した。まあお父さんとしてみれば当然ではある。

で、再び財団に一通のメールが。

拝啓 フォスター博士

先にあなた方は否認なさいましたが、私どもはあなた方が当社資産を所有している旨を確信しています。あなた方の組織には、今年の2月15日までに、以前受け取った請求にある全ての資産(具体的にはあなた方がSCP-3613と指定する第3世代アンドロイド群)を返還することが求められます。

私どもの資産が返却されなかった場合は、第10条の第1節-第87節に概説されているように、SUSEOCTにおける違約条項の対象となります。私どもは加えて、あなた方の所有下にあると断定した、以下に挙げる資産の返還を正式に請求させていただきます。

  • 第12世代アンダーソン・ロボティクス製アンドロイド、1体。ジェイコブ・ジェファーソンという41歳男性の外観・身分・魂を有する。
住宅供給・回収・輸送の費用に関する請求書は、このメッセージを受信してから30営業日以内に提出してください。

敬具、ダーク氏事務所

…お父さん自体をロボットにすることで条約の条件に無理矢理持ち込んできた。
その手があったかとしか言いようがない。

とはいえ、財団からすれば条約は守らないといけないが、見方を変えれば
目の前に最新型のアンダーソン・ロボティクス社のロボットが差し出されてきたも同然の状態。
財団は次はどうするのだろうか?
一応「こっちでは把握していません」で逃げられなくはないかもしれないが、
流石に向こうも馬鹿じゃないだろうし、なにかしら発信機か何かくらいつけてる気もする。
そもそも向こう、やる意味がないからやらないだけでやろうと思えば地球破壊できるくらいの資産はあるみたいだし。



…巻き込まれたジェファーソン一家にはたいへん気の毒だと思う。




SCP-3613 - Things You People Wouldn't Believe(お前ら人間には信じられぬもの)




CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-3613 - Things You People Wouldn't Believe
by Doctor Cimmerian
http://www.scp-wiki.net/scp-3613
http://ja.scp-wiki.net/scp-3613

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最終更新:2025年06月14日 16:49