ハゲワシ(鳥類)

登録日:2017/12/29 Fri 16:41:00
更新日:2025/03/01 Sat 17:53:50
所要時間:約 4 分で読めます




ハゲワシ(禿鷲)はタカ目タカ科に属する猛禽類。

主に腐肉を餌にする言わば掃除屋(スカベンジャー)として有名な鳥類であり、
ハイエナ等の肉食獣に混ざって動物の死体を漁る映像をテレビなどで見たことがある人も少なくないと思われる。


生態と特徴(概要も兼ねて)


名前の通り頭にはほとんど羽毛が生えておらず、肌が露出した文字通りハゲた頭部を持つが
これは彼らが死体を漁る生態に由来している。

というのも従来の鳥類の様に羽毛が豊富なままの頭部で腐肉を漁ると羽毛に付いた血液等を
餌にして雑菌が発生し病気になってしまい、最悪命に関わる事態となってしまう。
そこで彼らは頭部の羽毛を退化させ、太陽光に晒して殺菌しやすいように進化したというわけだ。
また、体内にも強力な胃酸や免疫システムを備えており、なんとあの炭疽菌にすら耐えることができるという。

種類ごとに大きさはそれぞれ異なるが総じて大型で体重も一般的な鳥類と比較してもかなり重い種類が多く、大きな種類だと10kgを超える事も。
腐肉を上空から探す必要があるからか体重に反して飛行能力は非常に高く、殆どの種類が翼長が2mを軽く超える発達した翼を持つが
餌を食べすぎた結果その体重が仇となって暫く飛べなくなってしまう事態もあるそうだ。

巣は木の上に作る種類よりも断崖絶壁に作る種類が多く、繁殖力もそれほど高くないのと後述するように
腐肉を漁る生態が原因で有毒な物質の含まれた肉を食べた結果中毒によって大量死を引き起こしてしまい絶滅が危惧される種類も多い。

国によっては人間の住む環境に住み着いており、日本で言うカラス並に身近な鳥としてゴミを漁ってる事も珍しくないようだ。

動物の死体を見つけるとあれよあれよと言う間に群がって啄む様や自分ではあまり狩りをしない生態から
不潔な鳥狡い鳥として扱われることが多く、基本的にはあまりいい目で見られない
一方でチベットではその環境上火種となる木は貴重で入手が困難であり、加えて環境への悪影響も大きい事から火葬よりも
遺体を彼らに食べさせる鳥葬という葬式がメジャーであり、
死者を運ぶ神聖な鳥として崇められているという。

ショッキングな為その際の画像はここには載せられないがアニメで例えるなら
エヴァンゲリオンの旧劇場版で量産機が弐号機に対して行ったアレのようなものと想像していただければ大体合ってる。
(※検索する場合自己責任でお願いします)

だがインドやネパールと言った南アジア地域では先述したように一昔前までハゲワシにとっては猛毒に等しい
ジクロフェナクという獣医薬を家畜に投与しており、
その家畜の死体を食べた結果中毒症状を起こして大量死を引き起こし、数を激減させてしまった。
現在では保護活動の甲斐あってある程度は数を増やしているようだが依然油断はできない状況の模様。

日本には生息していない為全くの無縁…かと思いきやクロハゲワシただ一種のみが迷鳥として日本各地で目撃例がある。


種類

  • インドハゲワシ
インドからパキスタンにかけての南アジアに生息する種類。
やや黒色っぽい頭部と灰色がかった褐色の羽毛を持つ。
先述のジクロフェナクによる中毒が原因で激減した種類の一つで現在は保護活動が行われている。

  • ベンガルハゲワシ
インドハゲワシと同じくインドからパキスタンにかけての南アジアに
生息する種類で真っ黒な羽毛とピンク色の肌の露出した頭部が特徴。
この種類もまたジクロフェナクによる中毒によって数を激減させてしまった種類であり、
保護活動が行われている。

  • エジプトハゲワシ
ハゲワシの中では珍しく顔面しかハゲてない珍しい種類で小型種。
エジプトとは名前についているもののかなり生息範囲が広く、エジプトどころかヨーロッパやアジアの温暖な地域にも生息している。
サバンナや砂漠といった乾燥した環境を好んでおり、ダチョウの卵を石を使って割る器用な鳥として有名。
エジプトでは神の鳥として崇められていたようである。
内田裕也は禁句。

  • クロハゲワシ
ヨーロッパ南部からアジアにかけて生息している種類でクロとは名前についているものの
羽毛の色はどちらかといえば褐色気味で頭部はそれなりに黒っぽい。
先述の通り日本にも時折迷鳥として各地に飛来してくることがあり、
迷鳥を含めた日本での記録があるタカ類の鳥の中では最大。
チベットの鳥葬の際に飛んできて遺体を啄むのもこの鳥である。

  • ヒゲワシ
ユーラシア南西部からアフリカ北部に生息する種類。
ハゲワシの仲間だが頭はハゲておらず、上あごの付け根と下あごにヒゲのような黒い羽毛が生えている。
栄養価の高い骨髄を餌にしており、骨が小さい場合はそのまま食べて、骨が大きい場合は上空から岩場に落として、食べやすい大きさに割ってから食べる。

  • ヤシハゲワシ
熱帯アフリカに生息する小型のハゲワシ。
アブラヤシというヤシの果実を餌にしており、死肉を食べることは滅多に無い。


ハゲワシとコンドルとハゲタカ

本項目で説明したとおり、ハゲワシ(禿鷲)はアジアやヨーロッパに生息し、タカ目タカ科に属する腐肉食性猛禽類。
ハゲワシの英語名はOld World Vulture
すなわち旧世界に生息するVulture(バルチャー、またはヴァルチャーと読む)。

コンドルはハゲワシによく似た見た目、食性をしているがアメリカ大陸に生息しており、生物分類もコンドル科コンドル属と大きく異なる。
コンドルの英語名はNew World Vulture
すなわち新世界に生息するVulture。

ハゲワシとコンドルには遺伝子的なつながりはなくあくまで収斂進化の結果であり無関係である。

ハゲタカ(禿鷹)という名称もよく知られており、文化・慣用句として使われる際にはこちらの呼び名が多いようだが、生物としては「ハゲタカ」という特定の種の名前は存在しない
ハゲタカはハゲワシ類とコンドル類の総称を指す言葉であり、英語名もVultureのみ。

なお、タカ科に属する鳥類の内、体が比較的小さい種をタカ、体が比較的大きい種をワシと慣習的に呼んでいる*1
つまり生物学的には
  • 「ハゲワシ」はあるが、「ハゲタカ」はない。
  • 「ワシ科」はないが、「タカ科」はある。
  • 「ワシ」と「タカ」の明確な違いはない。
とややこしいことになる。

ちなみに、旧世界と新世界に生息する収斂進化の事例はヤマアラシも有名である。
あちらは旧世界に住むのはヤマアラシ、新世界に住むのはアメリカヤマアラシ、両方ひっくるめてヤマアラシ
こちらも混乱を招きやすい。


余談

その習性からハイエナ同様、他人の利益を寄って集って横取りしたり食い物にしようとする者への蔑称として使われることがある。

ギリシャ神話に登場する鳥女・ハーピーのモデルとされているがこれは
彼らが死肉を漁る様が恐ろしげであり、悪臭を放つ不潔な鳥と解釈された為。
そしてギリシャにおいてハゲワシは雌しかいないと解釈されており、
風の精と交わることで繁殖すると当時の学者は説いていたという。
推測ではあるがポケットモンスターシリーズに登場するハゲワシをモチーフとしたポケモンであるバルジーナ
♀限定なのは恐らく上記の逸話からだと思われる。





追記・修正は遺体を骨だけにしてからお願いします。

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最終更新:2025年03月01日 17:53

*1 似たような例としてはクジラとイルカの分け方も同様