登録日 :2018/07/02 Mon 06:07:07
更新日 :2024/05/28 Tue 19:38:07
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『スクリーントーン』とは主に
イラスト・漫画で使われている画材 。以下トーンと呼称。
現在色々な会社が売っているが、レトラセット社の『スクリーントーン』が元祖だと言われている。
1枚およそ500円。昔はもう少し高かった。
■ 概要
ノリが付いた透明なフィルムの表側に用途に合わせた模様が印刷されており、漫画家やイラストレーターはこれを使いたい部分に合わせて切り貼りして使っている。
よく漫画を読んでいて灰色に見る箇所があるが、それがトーン(正確には網トーン)である。
日本で最初に作ったのはデザイナーの関三郎で、アメリカの『Zip-A-Tone』をヒントにして網トーンを作ったという。
そしてそれらは地図みたいな製図に使われていたそうだが、漫画家の永田竹丸が日本で最初に漫画にトーンを使ったとされている。
それに影響を受けた漫画家が数多くおりトーンはまたたくまに普及された。
漫画におけるトーンの役割は主に物体の影や服の模様と言ったパターン化されたものに使われる。
黒ベタが画面を引き締めるとしたらトーンは画面の立体感を出すためである。
ただし、服にトーンを使うにしても、その模様のトーンにサイズが大・小ちゃんとあればいいが、
ない場合キャラが小さく描かれたシーンで服の模様が大きかったり、逆にアップのシーンで模様が小さかったりといった現象が起きる。
漫画家はよく使うであろうトーンは自作していることもある。
例えば『
いちご100% 』の河下水希は連載開始にあたっていちご柄のトーンを自作している。
トーンを使う人と使わない人はハッキリと分かれがち。
使わない人はホント使わないし、多く使う人は「これでもかっ!」ってくらい画面がトーンだらけになっている。
近年デジタル化が進みトーンが無限に使えるようになった影響で、画面が灰色(トーンだらけ)の漫画が増えつつある。
使わない理由としてはプロは画風に合わない、面倒といったものだが、アマチュアの場合金銭的な事情がある。
トーンは
漫画道具 の中でも高めであり、仮にキャラの髪にトーンを使えばその漫画内でずっとトーンを使わないといけないため、トーンの消費量が凄くなる。
金銭的余裕がない中高生はどうしてもトーンが使えないのだ。
さらに言えばトーンは文房具店じゃなく画材屋じゃないと置いてない事も多く、通販がない頃は入手できる機会も限られていたからである。
一説には
同人誌 がA5判が主流なのは、できるだけトーンを使わないようにするためだという。
近年デジタル化が進み漫画制作ソフト『ComicStudio』の登場で無制限にトーンを使う事が出来るようになり、アマチュアでもトーンを多用出来るようになった。
現在は後継の『
CLIP STUDIO PAINT 』に移っているが、完全な互換がない為『ComicStudio』愛用者もいまだ多い。
一方、浦沢直樹のように未だに手貼りのトーンにこだわる漫画家もいる。
なお
手塚治虫 ・石ノ森章太郎・赤塚不二夫といった有名な漫画家は皆「
トーンは多用するな 」と自著で書いている。
特に手塚は『マンガの描き方』にてトーンを一定以上貼ると漫画からイラストに変わり「冷たくなる」し、手抜きと感じてしまうので「描き込む努力を惜しむな」と言及している。
石ノ森は『まんが研究会』にて「トーンを貼ると貼っただけの効果がある」としたうえで、
トーンはプロの漫画家が手抜きのためにやっている面があるので、勉強中のアマチュアは「誤魔化しの術を覚えるな」と言っている。
■ 使い方
トーンは薄い台紙の上に貼られているので、これを原稿用紙の上に乗せる。すると貼りたい箇所が透けて見える。
カッター(デザインナイフが推奨)で貼りたい箇所より大き目に切り取る 。
この切り取ったトーンを貼りたい場所に貼る。なお貼る前に羽箒などで原稿を綺麗にする事。
そして大きめのサイズから適当なサイズに切り取る。
この時力を入れすぎると裏側の原稿まで切り取ってしまうし、入れなさ過ぎてもトーンが切れないので絶妙な力加減が必要。
貼り付け終わったらトーンを固定するために前述の貼り取った台紙をトーンの上に重ねて、トーンヘラなどでゴシゴシして固定させる。
カッターの持ち手の部分などで代用してもいいが、形状によってはトーンや原稿を傷つけてしまうこともあるため、専用の画材を使うのが望ましい。
これでトーンの貼り付けは終わる。
場合によってはこの後、カッターで削ったり砂
消しゴム でトーンをぼかしたり用途に合わせ加工する。
必然的にトーンカスが出来るので
練り消し で回収する。
トーンが使われ始めた頃は模様の印刷がノリと同じ裏側にされていたと言われ、
さらにフィルムも現在より分厚かったため、『削る』『重ねる』といった技法が使えなかったという。
ちなみに、かつては裏からこすって紙に直接転写するタイプのものも存在していた。
しかし、上手くやらないと欠けてしまう部分が出たりと扱いが難しく、現在ではほぼ絶滅危惧種。
■ 種類
トーンと言えばコレをさすくらいメジャーなやつ。
点が密集している模様が印刷されており、印刷すると灰色になっている。濃度があり10~50パーセントくらいまである。
点と点の間隔の事を『線数』といい、これの数字が大きくなると密集する。なお項目の画像は60線10%である。
重ねると重ねた部分が濃くなるが、上手い事重ねないと『モアレ』と呼ばれる模様が出る。基本は避けるべき現象だが、なかには意図的に使う場合もあるそうだ。
重ねる場合は線数が同じもの同士を使う、向きを揃える等するとモアレが起きにくいとされる。
ちなみに手塚先生を始めとする昔の漫画家は網トーンを使う場合、
原稿に「ここは網30パーセントで」といった指示を書いておくことで、印刷会社に指定個所を灰色にさせていたという。
均一な線が一定に並んでいるトーン。こちらも網トーン同様に線数や濃度がある。
トーンを使わない作家がトーンの代用で線を描いているように、役割はほぼ網トーンと一緒。
どちらを使うかは作家の感性による。
砂目とも呼ばれる。
網トーンに似ているが、点の形や大きさ、並びが不規則になっている。
用途も網トーンとほぼ同じだが、布地などやや限定的な使われ方が多いか。
正式にはグラデーショントーン。
網トーンと同じく点が密集したトーンだが、濃度がグラデになっている。
心情表現を表すトーン。点描やカケアミ・流線などなど……。
デジタルではカケアミなんかはブラシとして登録してあることも。
動植物とか幾何学的な模様、ファンシーな絵柄などが印刷されたトーン。主に服やカーテンといった布の模様に使われる。
ギャグシーンなどで背景に使われることも。
たまに「どこで使うんだこんなの…」と言いたくなるような奇抜な柄もあったりする。
ビルとか木々といった背景がトーンになっている。正直使いどころが難しい。
デジタルの場合3D素材、そもそも写真取り込みなどで代用される。
白いインクで印刷されたトーン。
ベタの上から模様を出したり、画面をぼかすような用途で使われる。
アナログだと網や線くらいで種類も少ないが、デジタルだと白黒反転などでサクッと作れたりも。
追記・修正はトーンを貼ってからお願いします。
懐かしい…趣味で絵を描き始めた高・大のころよく貼ったわ。面倒なのとコストかかるので色鉛筆に移行したのもいい思い出 -- 名無しさん (2018-07-02 09:17:43)
メインの線はアナログな人でも原稿を取り込んでPCでペチペチしてるハイブリッドパターンも多いみたいね。その場合、当然だけどカッター使う場合と比較にならんほど早いみたいね。 -- 名無しさん (2018-07-02 09:46:01)
「風呂に入るとトーンの欠片が浮いてくる」「漫画を描いてることを秘密にしてたのに、トーンの欠片が見付かってバレる」なんてのも、デジタル化が進んで昔話になりつつあるな。 -- 名無しさん (2018-07-02 09:54:57)
単価が高いから1枚からどれだけ余らせずに貼るかっていうのもあるみたいね。この辺の話はうしとらの巻末で知ったなぁ。 -- 名無しさん (2018-07-02 10:16:58)
エニックスの「4コマ漫画の描き方」できりえ -- 名無しさん (2018-07-02 10:45:50)
↑誤操作失礼。きりえ先生が昔の凄く高価で「1枚810円」とか書いてたなー。 -- 名無しさん (2018-07-02 10:47:21)
コロコロでビーダマンの先生が描いてた漫画の描き方講座でも「問題は高いこと」と強調されてたな。ボンボンでやってた講座でも使いすぎると単調になると戒められてた。 -- 名無しさん (2018-07-02 10:54:32)
「前回はスクリーントーンのダブルトーンの服だったが 今回は3枚がさねの服をきてきたぜ ますますベタ同様にみえるだろう!」 -- 名無しさん (2018-07-02 10:57:39)
「おねいちゃんのワンピースの柄」が「よそ様のマンガのとーちゃんのパンツと同じ柄」だったという・・・。 -- 名無しさん (2018-07-02 11:20:05)
トーンを使うと金がかかる、描き込みは時間がかかる。古い時代の漫画作品だと、トーンだと思ったらものすごい描き込みだったりするのはよくあること。どの道手間がかかるので、バトル系マンガの主人公などはトーン少なくベタ塗りで楽できるデザインにしたという作者も少なくないのだ -- 名無しさん (2018-07-02 17:52:35)
マリオくんのウンコ -- 名無しさん (2018-07-02 17:59:11)
尾田栄一郎も昔は「きりがなくなるから使わない」と言っていたな。最近は陰の部分に使うようになったが。 -- 名無しさん (2018-07-02 18:12:03)
藤子不二雄A先生がよく使う下品な花柄のトーン -- 名無しさん (2018-07-02 18:27:46)
今ではパソコン処理でトーン貼れるようになったから時代も変わったよね…。そういえば、鳥山明ってトーンあまり使ってないよね? -- 名無しさん (2018-07-02 22:33:22)
月刊少女野崎くんで千代ちゃんと先輩が貼るの苦労してたな -- 名無しさん (2018-07-02 22:48:38)
↑2 友人の桂正和は鳥山明に「君はトーン貼りすぎ」と笑って言われたそうな。別の話でセルの体の模様が手描きでめっちゃめんどかったらしいのでトーンは使わない主義なのかもね -- 名無しさん (2018-07-03 09:30:29)
柴田先生のアシスタントでもあったタイジャンホクトさんは裏紙をはがそうとして怒られたらしいがあれって裏紙をはがして使うんじゃないの? -- 名無しさん (2018-07-03 09:58:27)
↑2 セルの斑点って立体的な曲線だからトーン化したら違和感が出てしまうのでは? -- 名無しさん (2018-07-03 10:20:59)
↑3鳥山先生は単純に「自分がやらなきゃいけないから」という理由でトーンを使わなかっただけ。MAC使うようになってからは多用してるけど。 -- 名無しさん (2018-07-07 11:14:36)
使わない→画太郎先生のイメージ -- 名無しさん (2018-07-09 02:29:44)
唐沢なをきのカスミ伝って漫画でまるまる一話分背景トーン使ったエピソードあったな -- 名無しさん (2020-01-23 13:10:20)
富樫先生の漫画の磁場みたいな背景効果は、アシスタントの人がトーンの重ね方を間違えたことから誕生したとか -- 名無しさん (2022-05-03 18:29:39)
タモリ倶楽部でスクリーントーンの回あったなぁ 9割がデジタル作画な今こそ味わい深いスクリーントーンよ -- 名無しさん (2023-01-05 00:41:33)
↑2 そういった偶然で生まれたトーンはデジタルで再現するのが難しいそうで、アナログで作ったものをスキャナーで取り込むそうな。 -- 名無しさん (2024-05-28 19:24:47)
最終更新:2024年05月28日 19:38