プレ・ヴィズラ

登録日:2019/10/31 Thu 13:30:00
更新日:2025/03/26 Wed 22:53:33
所要時間:約 20 分で読めます





「自分はプレ・ヴィズラ! デスウォッチを率いている。マンダロアの真の戦士の血を受け継ぐ者だ」


プレ・ヴィズラ(Pre Vizsla)とは、スター・ウォーズ・シリーズの登場人物。
映画本編には登場せず、CGアニメ『クローン・ウォーズ』にのみ登場する。
声優はジョン・ファヴロー。
日本語版の吹き替え声優は間宮康弘氏。



【人物】

◆種族

「先祖たちは何世代にもわたり、ジェダイと雄々しく戦ってきた。それを……その馬鹿女が、マンダロアの名を穢した」

種族は人間の男性だが、故郷は惑星マンダロア。いわゆるマンダロリアンである。
マンダロリアンには分派が多いが、彼の場合、所属は「ヴィズラ氏族」で、思想は「デスウォッチ」に属する。
デスウォッチとは物々しい名前ではあるが、要は伝統の保守派のこと。

もともとマンダロアは戦闘民族で、戦うことを本来の文化としていた。
しかし本編の数十年前、マンダロリアンは旧来の戦闘文明をそのまま維持しようと訴える「デスウォッチ」と、
戦闘文明そのものは維持しつつも、その内容を改革しようとする「トゥルーマンダロリアン」、
戦闘文明それ自体を否定し、非暴力・平和主義・最低規模の警察力のみを訴える「ニューマンダロリアン」、
の三派に分裂し、ついに数十年にわたる内戦「マンダロア戦争」を引き起こした。

なお、デスウォッチの初代首領はトア・ヴィズラという人物だが、おそらく同族ではあろうが、プレとの血縁関係は不明である。

最終的に、デスウォッチが戦力を消耗して衰退、トゥルーマンダロリアンが壊滅、生き残った平和主義勢力が惑星マンダロアを支配し「ニューマンダロリアン政権」となった。クローン大戦開始時の国家元首は女公爵サティーン・クライズ
これに対して、伝統の戦闘文化を絶やさず、回帰しようと訴えたのが「デスウォッチ」であり、その代表がプレ・ヴィズラなのだ。


◆風貌

「この傷は、ドゥークー伯爵からの餞別だ」

いかめしい顔つきの白人男性。
毛髪は白髪交じりのブロンドだが、ややハゲ気味。作中では途中から剃髪するようになった。
また上述の通り、ドゥークーに八つ当たりしたため顔に浅い傷をつけられた。
身長は184cmと堂々とした体格であり、長年の鍛錬で見るからに頑強な人物。

しかし顔つきにはどこか精彩がなくやつれ気味で、正確な年齢は不明だが、最低でも四十の坂は過ぎていると思われる。もしかしたら五十代かもしれない。

愛用するマンダロリアン・アーマーは、銀地に黒と青でペイントされ、ヘルメットには三又の黄色いシンボルが、胸のアーマーには特徴的な水色の紋章が描かれている。これはデスウォッチの紋章らしい。


◆性格

「女を守ってみよ!」

マンダロアの戦闘文化を誇示するデスウォッチの首領にふさわしく、強い闘争心を持ち、戦いを好む。

彼がいわゆる戦闘狂と違うところは、彼らにとって戦いとは単なる戦闘ではなく、マンダロアの文化そのものであること。つまり彼らの伝統文化に基づけば、彼はインテリなのである
たしかに残虐で狂暴ではあるもののバカではなく、若造ラックス・ボンテリに「無法な破壊」を咎められた際には、洗練された理論で言い返している。
コンコーディアの総督に収まっていたころは、洗練された紳士的な政治家として働いており、サティーン・クライズも長年違和感を抱かなかったほど。
組織の経営手腕も相当にあり、総督時代はそっちの方面でもそつなくこなし、流浪時代もあれだけ敗戦を重ねながら、ついに組織を崩壊させてはいない。

伝統の戦闘文化に誇りを持つ彼は、こと戦士である相手には厳しく当たる。部下に対しても自分に対しても例外なく、マンダロリアンにふさわしいふるまいを求める。
そのため、失敗した部下に対しては容赦なく処刑するなど冷酷な面を持ちながらも、部下たちは鉄の団結心で従い、与えられた使命は命を捨ててでもこなそうとする。

そして自分自身も、その最期が示すように、弱さをさらした自分を部下たちが冷たい視線で見下しても一切の抗弁をせず、敗北を潔く受け入れ、相手の勝利を讃えて自ら瞑目した

マンダロリアンが戦闘民族として恐れられたのは、そして彼がその長たりえたのは、単に豊富な武器を持ち体術に優れるからではなく、戦いに対する真摯な熱意があるからこそだろう。

民間人を搾取し、用が済めば火を放つなど、一般の目からすると悪人ではあるが、彼らの行動には一本の芯と確かな文明が存在しているのは確かである。
強いと認めた相手には一騎打ちを望み、奪った武器も戦う前に返してから挑むなど、一介の戦士としても高潔。

それだけに、伝統の戦闘文化を投げ捨て、外部の平和主義を持ち込んで変質しようとしたサティーン・クライズに対しては人間としても許せなかったようで、言葉の端々に軽蔑の念をうかがわせる。

また伝統を重んじる一方で、間違いに気付いて思考を変える柔軟さも持ち合わせる。
劇中では「ブラックサンは犯罪組織の屑」と見下し手を組もうとしなかった際に、ダース・モールから「連中なら共和国の監視の目を掻い潜って、戦争に必要な物資を手に入れられる」と理論的に諭された時は直ぐに実行すると同時に感服していた様子。

総評すると、マンダロリアンの名族らしい、戦闘文化の文明人といえる。
ダース・モールからは「海賊とは違う、名誉を重んじる『種族』だ」「ヴィズラは真の戦士」と好意的にみられている。(……裏を返せば、いざ敵対してもその高潔さゆえ手玉に取りやすいと思われていた節がある。)

「誇りもなにもない……ただの殺し屋だな! ドゥークーと変わりない!」
「そういうお前だって、復讐したい一心で我々にすがってきたのでは」
「母のために正義を求めただけだ!」
「では正義を為せ!! だがジェダイはドゥークーと変わらない! ジェダイにもマンダロリアンにも、殺した罪を償ってもらう。つまりこれは殺人ではない!! お前の言うようにこれは、正義なのだ!!!」



ただ、脳筋でないのだが、さりとて賢いとも言い難い。学はあるが知恵はないというか。

というのも本人は大真面目に「戦いが始まれば味方も増えてくる」という戦術視点にあるまじき超楽観論を唱えるレベルなのである。

例えば、彼が大きく行動するときは、大抵だれかが知恵を貸している
序盤、サティーンを失脚させるために共和国を引き込もうと考えたのはドゥークー伯爵だったし、最終的なマンダロア占領達成も実質はダース・モールが考えて指揮していた。

で、知恵役がいなければ辺境の惑星で現地住民から搾取し、悪辣なゲームに興じるばかりで、一気に精彩をなくす
ラックス・ボンテリがドゥークーの居場所を死に物狂いで調べたというのに、データはもらっておきながらこれといって行動を起こしていない。
ラックスはドゥークーの居場所は調べられても、攻撃の仕方までは考えていなかったため、プレとしても活かし方がわからなかったのだろう。
自分から考えて行動する場面は実は少ないのである
月の総督の任務をそつなくこなしていたのも、その任務が「与えられたから」ではなかったか。

また、計画が失敗するとドゥークーに八つ当たりしてなだめられる、その後の会合で喧嘩を売って返り討ちにあう、など、微妙に物事を考えていない・長期的な視野に欠ける面もある。

マンダロリアンは傭兵業があまりにも長かったために、自分が考えることは放棄していたのかもしれない。


◆能力

「このライトセーバーは! 旧共和国が滅びた際、わが祖先がジェダイ聖堂から盗んだもの。以来多くのジェダイの命を奪ってきた。お前も仲間に加わるがよい!」

戦闘民族の伝統を語る一団の代表者だけあって、戦闘能力はかなりのもの。
マンダロリアンの数々の装備に加え、鍛え抜かれた体術や身のこなし、武器を活かす頭脳など、総合的な戦闘力は極めて高い。
ジェットパック、ブラスター、ロケット弾、手榴弾、火炎放射器、手裏剣、ワイヤー、とまるで全身が武器の塊である。

もっとも目を引くのはダークセーバーだろう。これは1000年以上むかしに作られた旧式のライトセーバーで、プレの先祖にしてマンダロリアン初のジェダイであるター・ヴィズラが制作したものである。「ダーク」の名にふさわしく黒い光刃を生み出すのが特徴。
柄が円筒状ではなく細い長方形、黒い光刃が白いスパークを帯びる、光刃の長さが現行モデルよりも短い、効果音が独特、など、他にも違いが多い。
ターの死後は彼の墓標に捧げられていたようだが、後にプレ以前のヴィズラ氏族の者がジェダイの聖堂から盗んだ、もしくはジェダイを討ち取って奪ったことでヴィズラ氏族の当主の証となり、そこからさらに最高位のマンダロリアンに与えられる「マンダロア」の称号のシンボルとなっていった。

フォースによる知覚強化を用いなければ使いにくい剣でしかないライトセーバーを本職のジェダイのように使いこなすのはただ事ではない。
しかもその腕前たるや、ベテランのジェダイマスターオビ=ワン・ケノービや、経験は浅いが才能は鋭いアソーカ・タノ、シスの暗黒卿だったダース・モールといった、超一流の達人たちとまともに切り結ぶほど
さすがに、すべて敗退という結果ではあるが、彼らと切り結べるだけでもそれは並みのジェダイ以上ということだ。

…………まあ、もとは「ライトセーバーとは別の技術で作られた、特徴だけが被った兵器」という設定だったのを、急きょ「ライトセーバーの一種」に変更したというのが本当らしい。言われないと同種には見えないほど相違点が多いのも、設定変更のあおりであろう。


ただ、それなりの年齢なのか肉体は衰えつつあり、その衰えを技術と武器でカバーしている印象も受ける。


【本編の活躍】

登場作品はCGアニメ「クローン・ウォーズ」のみ。

◆前歴

「サティーン公爵の堕落した指導体制が、我らの魂を踏みにじり穢した! われらには耐えがたいことだ」

生年および幼少期の活躍は不明。
上述した通り、惑星マンダロアを本拠とする「マンダロリアン」のうちヴィズラ氏族の出身で、戦闘民族としての伝統を貫こうとする保守派「デスウォッチ」のリーダーともなる。
いつのころからそうなったのかは不明だが、経歴はわりと古いようだ。
サティーンよりも年上に見えるため、マンダロア内戦にも参戦していると思われる。

本編開始時点で、マンダロリアンの戦士たち(デスウォッチ)は惑星マンダロアではなく、その衛星「コンコーディア」に居住している。
要するに追放ではあるが、プレはそのコンコーディアの「総督」となって新政権の役職に収まっており、クライズにも礼を尽くすなど、いちおうのつながりはあったようである。

しかし、もともとの意見の対立は解消できていなかったうえ、デスウォッチには「伝統」という大義名分と政治信条があったこと、事情はどうあれ本星をニュー政府が握り、プレたちを追放していたことに変わりはなかったことから、彼らはニュー政権を嫌悪し、いずれとってかわろうと考えていた。


◆暗躍

「ジェダイがやってきたというのに、なぜ平気なのです!? 軟弱なサティーン政権を倒すため、デスウォッチに力を貸すと約束なさったはず!!」
「騒ぐな。約束は守るとも。よいか。元老院が平和維持軍をマンダロアに派遣すれば、首都は軍隊であふれることになる。市民はどう思う。反発は強まり……」
「大衆はデスウォッチに走る、結果、反政府活動は勢いを増し……」
「さよう。サティーン政権は崩壊する」

そんなときにクローン大戦が勃発。
独立星系連合の国家元首ドゥークー伯爵は、むかしジャンゴ・フェットというマンダロリアンを重用していたことや、かつてマンダロア内戦に参戦していた縁もあって、彼らの強さと政治的な火種をよく知っていた。
ドゥークーはさっそくデスウォッチに渡りをつけ、彼らに政権奪取のための助言を行った。
正体不明のテロ活動を繰り返させて政情を不安にさせ、平和主義がまったくの無力であることを示し、実行力のある武力を備えたデスウォッチが救世主として帰還する、というのがおおまかな骨子となる。
また、可能ならテロ行動の黒幕を銀河共和国とし、共和国とマンダロアを敵対させられれば上等である。最低でも、共和国軍がマンダロアに進駐するだけでもなんとかなる、と。


ところが、繰り返されるテロがジェダイ騎士団の注意を惹き、オビ=ワン・ケノービが調査に送り込まれた。このオビ=ワンがサティーン・クライズと内乱時代に親交を結んだ過去があり、焼け木杭に火がついて深みにハマってしまった彼らはコンコーディアを訪問し、デスウォッチ再軍備の状況を発見してしまう。
野心を暴かれたプレはオビ=ワンとサティーンを倒そうとしたが、コンコーディアでの始末も、マンダロア代表元老院議員タル・メリクを利用したコルサント行きの誘拐作戦も、コルサントにおける暗殺作戦もことごとく失敗
共和国軍が派兵してくれれば、それからの解放という大義名分も立ち、独立連合の援軍も招けたが、サティーン公爵は共和国の派兵も拒んでしまったため、作戦は不発・無期限延期となってしまう。


プレは策略を放棄して力尽くで攻め込もうとしたが、それはドゥークーがなだめた。

「納得できん! マンダロアを、腰抜けどもの手から取り戻してやると約束したはず! ……部下に攻撃を命じる」
「さすれば一日かそこらは制圧できるであろう。だがわれらの支援や民の支持なしでは、革命は始まる前に終わる。おぬしのような初心者にはそれがわからん。落ち着け。また新たな手段を考えればよい」

だいたい、ことが失敗したのはプレがオビ=ワンに出し抜かれ、サティーンを三回も仕留め損ねたからだ。
しかしプレは、再起と隠忍自重を教えてなだめるドゥークーに八つ当たりして襲い掛かったため、返り討ちにあってしまう。

まだデスウォッチの組織の全貌は捕まれていなかったため、サティーンたちから逃れることはできたかもしれないが、ドゥークーまで敵に回してはそうもいかない。
やむなくプレはデスウォッチを率いてコンコーディアを放棄し、マンダロリアンらしい放浪生活を開始。
サティーンの撃破、ニュー政権の転覆、ドゥークーの暗殺、ジェダイの撃破などを目標に掲げ、第三勢力として暗躍を開始する。

「弱虫の言うことが聞けるか。デスウォッチへようこそ!!!」

その後は、雪の惑星カーラックに拠点を作って原住民を略奪したり、独立星系連合に繋がりのある惑星オンダロン代表元老院議員ラックス・ボンテリを利用したり、たまたまついてきたジェダイパダワンのアソーカ・タノを殺そうとしたり、とちょくちょく活動はしていた。
しかしやっていることといえば略奪と弱い者いじめと実現性の薄い謀略もどきで、大したことはしていない。
ラックス・ボンテリからはドゥークーの居場所につながる情報をもらっているが、自分が唆したにもかかわらず、プレがその後ドゥークーを狙った様子はない。
アソーカとの一騎打ちも、最初は善戦したものの、オモチャにしていたドロイドの反乱で混乱したところにジェットパックを破壊されるなど、いまいち冴えないままだった。


◆ダース・モール復活!

「もしジェダイの敵ならわれらの友だ。船に運べ」

大言壮語しておきながら、辺境でみみっちい荒らししかできないプレ・ヴィズラ。
ドゥークーからも敵視されるどころかほとんど無視され、ただ衛星ザンバーの基地で燻っていた。

そんなあるとき、彼らの一団は宇宙を漂う脱出ポッドを発見。内部には凍り付いて死にかけのザブラク兄弟、ダース・モールサヴァージ・オプレスが乗り込んでいた。
プレはふたりを治療し、先に目覚めたモールと会談。ボ=カターンと演技を組んで炊き付けつつ、
お互いオビ=ワン・ケノービに恨みがある点で意気投合し、モール兄弟は卓越した戦闘力と知恵を貸し、デスウォッチは軍団の力を貸して、協力し合うことになった。
また、モールの鬼のような気性はプレとの親和性も良かったようである。

「お前と出会えたのは運命かも」
「まさしくフォースの意思。お前がマンダロアを取り戻すのに力を貸そう」
「そして共通の敵ケノービを倒す!」

モールは、デスウォッチの強さは認めつつも、それだけでは惑星の制圧には足らないと指摘。
まずは勢力を拡大するべきだ、しかも狙うべきは悪名高い暗黒街の勢力がよいと教えた。勢力の大きさと資金力もさりながら、共和国の目が届かず邪魔が入りにくいからだ。
そのために、まずいきなり著名な犯罪組織「ブラックサン」を襲撃。モール兄弟を加えたデスウォッチは惑星ムスタファーにいたブラックサン首脳部をいきなり皆殺しにしてこれを掌握。
続いて、なんといきなりハット評議会を攻撃。猛攻を掛けてこれすらも落としてしまった。
その名も高きブラックサンとハット評議会を傘下に収めたデスウォッチに、今度はパイクシンジケートが自ら訪問し、モールたちの組織に加盟。彼らの新勢力「シャドウコレクティヴ」は、もはや押しも押されもせぬ大勢力にのし上がった。


しかしこのころから、参謀どころか主導者になり始めたモールをプレたちは警戒するようになる。

「奴を見張れ! マンダロアを落としたあとは、モールたちも公爵の隣で死体となる……」

だがここで長期的視野に欠ける自身の能力の弱点が最悪の形で返ってくることまでは予期できなかった…。

モール兄弟は同盟結んだ最初の時から、彼らがいつまでも善意でくっついてくれるとは思っておらず、いずれ主導権争いは避けがたいと考えていた。

「名誉は弱みとなる。」
「我らの狙いには気付いていない。気付いた時には既に、手遅れだ。」

◆マンダロア支配へ

「マンダロアの民よ! 自分はヴィズラ氏族のプレ・ヴィズラ! 銀河に悪名をとどろかすギャングから、偉大な街を守るため戻ってきた。これは戦争だ。勝つのは我ら。
 戦おう。ともに力を合わせ、マンダロアを守るのだ! いま必要なのは、行動を起こすこと! 現に攻撃を受けている! グダグダ機論しているときではない! マンダロアの名を、恐怖とともにギャングの心に刻んでくれる!」

ついに戦力をそろえたシャドウコレクティヴだが、モールはさらに知恵を巡らせ、力尽くではなく壮大な演技作戦を立案した。
まず、ブラックサン、ハット、パイクの戦力がいきなりマンダロアの首都サンダリを攻撃、これを占領する。
シャドウコレクティヴの同盟はまだ一般には知られておらず、しかもブラックサン、ハット評議会、パイクシンジケートの悪名は銀河に鳴り響いている。
そんな三大勢力がいきなり攻め込めば、誰だって驚くし恐れる。

その瞬間、プレたちが率いるデスウォッチが出現し、三大勢力を打ち破り、マンダロアを救出する。
単純なマッチポンプではあるが、単純なだけに崩れにくく、しかもハットたちの悪名はそれはそれは有名で、かつシャドウコレクティヴの情報が広まれば使えなくなる(しかもいずれ知れることは確実)ため、作戦内容・タイミングともにこれ以上ないものであった。

「われらは救世主か」
「その通りだ」
「いい作戦だ」

この計画はさっそく実行に移され、大成功
暗黒街勢力の攻撃はサティーン政権の平和主義が実際には役に立たない空論であったことを実証し、またモールやサヴァージをはじめとしたシャドウコレクティヴの面々を捕縛したデスウォッチは民衆の歓喜をもって迎えられた。
またプレとサヴァージの、ダークセーバーとライトセーバーの一騎打ちは演技とはいえ鬼気迫るもので、その戦いに勝利したプレは「強きマンダロリアン」を象徴した。

ことここに至り、マンダロリアンの世論は完全にプレ・ヴィズラに帰属。
満を持してマンダロリアンの代表となることを宣言し、それに対する人々の歓呼の声を受けて、正式に首相の座につくとともに「マンダロア」の称号を手に入れた。

「誇りに満ちたマンダロアの戦士の魂が、いまここに、蘇る!」

そしてサティーンを逮捕して王立刑務所に収監する一方、偽装とはいえ捕えられたままだったモール兄弟を本気で収監した。
もはやマンダロア以外の野心はないし、シスのことも関係ない。ただ、オビ=ワン・ケノービへの復讐は果たす、と。

「われらには基地ができ、軍もある。この先、勢力を他の中立星系に拡大する」
「それはお前の野望で、我らの意志ではない。他の星のことなど知らぬわ。お前に付き合う気はない」


◆決闘

「ヴィズラは民衆の支持を獲得した。予定通りだ」

しかしモールは、プレたちの裏切りにもまったく動じていなかった。
シスの教義において、裏切りとは倫理的な悪徳ではなく、むしろ「勝つ」という意味である。
いま、モールはプレに敗れた。しかしモールはまだ生きている。これから勝てばいい。

モールは簡単に脱獄すると、かつてサティーンによって失脚させられていた元首相アルメクと接触。
そこそこの野心家で、マンダロアの文化にも詳しく、なおかつ手腕もある彼は、モールが手を組んで表向きの統治をさせるにはもってこいであった。

かくして脱獄したモールは、おりしも宮殿にいたプレの目の前に出現した。
「貴様に挑戦する!!! 一対一の決闘だ!! もっとも強いものがマンダロアの支配者となる!!!」

戦闘民族マンダロアの首領は、強き者こそがふさわしい。「マンダロア」の称号を持つものは、挑戦を拒むことは許されない。
ましてプレ・ヴィズラである。マンダロアの伝統を誇りとして、マンダロアの伝統のために戦ってきたプレ・ヴィズラなのだ。
避けられぬ挑戦である。同時に、力ではなくこざかしい策略でモールを投獄したことに、思うところもあったのかもしれない。

「受けて立とう!! この者に武器を!! マンダロアのために!!!」
奪っていたライトセーバーを返し、モールとの対等な一騎打ちに挑む。

ダークセーバー、ジェットパック、ブラスター、火炎放射器、爆弾、手裏剣、ワイヤー、体術と持てるすべての武器を使い、猛攻を掛けるプレ・ヴィズラ。
しかも武器頼みではなく、ダークセーバーで床の破片を巻き上げるなどして、老いからくる肉体の衰えを存分にカバーする。
しかし相手もまた、百戦錬磨のシス卿ダース・モールである。しかもフォースの念力をあえて使わず、純粋に剣術と体術で挑みかかる。目に見えないフォースを使っては、それはマンダロアではないといわんばかりに。
戦士としての激闘を繰り広げる両雄。しかし、こと若さと体術において、モールはプレよりもわずかに上回っている。

瓦礫の巻き上げからのワイヤー、すかさずの狙撃という流れるような攻撃でモールの手からセーバーを弾き飛ばしたプレは、ダークセーバーを掲げて上段から斬りかかった。
しかしモールは、あえてライトセーバーを呼び寄せず素手でプレの腕をつかむと、肘をひしいで投げ飛ばす。
起き上がることもままならなくなったプレは、仲間たちが冷たい目で見降ろしているのに気づいた
もはや、力の差は歴然だった――。

堂々と迫るモールに対して、立ち上がるのがやっとだったプレは、追撃を受けて敗退。
モールはフォースでダークセーバーを手元に呼び寄せ――これがこの戦いにおけるモール唯一のフォースの行使である――黒い光刃をゆっくりと起動させた。

「言ったとおりだ……! もっとも強い者が!! 支配者となる……!!!」
「マンダロア」として、プレ・ヴィズラは最期の言葉で、最強の男ダース・モールを次期マンダロアとして認めて、己の首を差し出した


「この剣にかけて!! 宣言する、我こそがデスウォッチの! ニューリーダーだ……!」


◆死後

プレの戦死後、モールを「よそ者」と嫌うボ=カターンらがモールに従わず逃走し新たに「ナイト・アウル」という派閥を築いたが、少数であった。
モールの挑戦はマンダロアの伝統にのっとった古風なものであり、しっかりとした手続きを踏んだうえでの即位であったことや、種族そのものは問わない文化であったこと(レジェンズでは、マンダロア・ザ・ファースト自身も人間ではなく今は絶滅したタングという種族で、ローディアンのマンダロリアンも過去は存在したぐらいである)、プレ自身がモールを認める遺言を残したことから、モールこそが正当で、反対派こそが伝統に反していたからだろう。

残ったデスウォッチは、表向きはアルメクを首相に復位させて彼をリーダーとする一方、裏ではモールがアルメクを指揮するというかたちで収まった。
鎧についても、モールの刺青を再現するかのように赤く塗装し、一部指揮官は黄色い角までつけるなど、新リーダーへの敬意を表明した。

彼らはモールの強さを本気で認めていたようで、直後にシディアスがモールを打ち負かしてからも見捨てず、彼を救助している。

また、モールが陰で操るアルメク政権も、表向きは「プレはサティーンに暗殺された」とすることで彼の政権からの継続性を主張しており、彼が求めた「強き戦士文化の復活」は果たされたようだ。

ただ、デスウォッチやアルメクもまたモールの思惑を全て理解できていたわけではなかった。
実際のモールはマンダロリアンのことそれ自体を力を増すために利用できる糧の一つとしか思っておらず、マンダロアの称号という名誉にすら一切固執することなく、最終的にマンダロア包囲戦にてデスウォッチを見捨てている。
その末路を鑑みると、(ボ=カターンがどこまで見抜いていたかはともかく)モールをよそ者扱いしその手先になることを拒んだナイト・アウル側の主張にも一理あったというのがなんとも皮肉な話である。

一方、ヴィズラ氏族自体は絶えていなかったようで、プレの死から数十年後にあたるドラマ『マンダロリアン』には子孫または親戚と思われるパズ・ヴィズラがチョイ役ながら登場している。往年のデス・ウォッチを思わせる青みがかったアーマーと連射の利く重量級のブラスターが印象的。


【余談】

彼の副官として死後も尽くしたボ=カターンは、本名をボ=カターン・クライズといい、政敵サティーン・クライズの実の妹である。
しかしボ=カターンは心からプレに忠誠を誓っており、彼がモールにあとを譲って死んだときもそれを認められなかったほど。
ちなみに姉とは深刻な断絶をしているらしく、長い付き合い(それも割と深い付き合い)のオビ=ワンでさえ妹がいると知らなかったほど。

またダークセーバーは、銀河帝国の時代になってもモールが所持し続けていたが、紆余曲折を経て最終的にとあるナイトアウル崩れのマンダロリアンの手に渡り、その後も激動の時代に揉まれるまま様々な持ち主の元を転々とする。

声優を務めたのはジョン・ファヴロー氏。
ルーカスフィルムがディズニーに買収されて以降、スターウォーズのドラマの制作総指揮や監督を務めている俳優兼映画監督であり、ディープなスターウォーズオタクとして有名である。

日本語版の吹き替え声優は間宮康弘氏。
クローン・ウォーズ自体が2008年の作品なので、1981年生まれの間宮氏は収録当時27歳ぐらいのはず……
それであの凄味のある中年ボイスというのがすごい。


劇中、モールはプレと組んでブラックサンを攻め落とす。
レジェンズ時代の作品では、モールはEP1より前にブラックサンを攻め落としたことがあり、意識して似た展開にしたのかもしれない。




「いま必要なのは、追記・修正をすること! 現に私の項目ができている! グダグダ機論しているときではない! マンダロアの名を、恐怖とともにネットの海に広めてくれる!」

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最終更新:2025年03月26日 22:53