ジャンゴ・フェット

登録日:2022/02/03 Thu 12:00:00
更新日:2024/11/27 Wed 09:31:13
所要時間:約 25 分で読めます






「宇宙に自分の足跡(そくせき)を残しておきたくてな」


【概要】

ジャンゴ・フェット(Jango Fett)とは、スター・ウォーズ・シリーズの登場人物。
銀河共和国のクローントルーパーの原型となった人物でもあり、ボバ・フェットの父親(クローン元)でもある。
映画本編ではEP2のみの登場だが、人気キャラ・ボバの父親という立場や、映画での活躍などから人気は高い。




【人物】

◆種族

「今度こそ確実に仕留めねば。クライアントがいらついてる」

戦闘民族マンダロリアン出身の賞金稼ぎ
長年にわたって修羅場を潜り抜けており、顔にも多くの古傷が刻まれている。
また前腕には刺青を彫っている。作中世界でも珍しいデザインと評判らしい。
髪と目の色はいずれも黒。
戦闘時には、青と銀のマンダロア装甲服を全身にまとう。

実は背丈はあまり高くなく、オビ=ワンとの会話シーンでもジャンゴの側が見上げている*1


言語は主にベーシック(銀河系標準語)を使うが、もちろんマンドア語も習得している。EP2でボバにマンドア語で話しかける場面がある。


◆性格

「最高の軍隊だ。俺が保証する」

レジェンズ設定ではYBB66の生まれ、つまりEP2では44歳となっている(カノンでは「不明」)。
そのためEP2ではいい大人となっており、基本的に穏やかな口調で他者と会話している。

ただし依頼に対しては真摯で、その実現のためなら暗殺・不意打ちも平気で行うし、助けられないと見れば長年付き合ったパートナーを切り捨てることさえ辞さない。
実力がすなわち資産となる辺境域・暗黒街で、荒事を生計にして過ごしているため腕っぷしは強く、その実力に見合ったプライドを持ち、状況によっては相手を圧迫・恫喝もする。
荒事を卒業できるほどの資産がありながら、結局足を洗って平和に生きるという発想に至らず、荒事を続けるあたり、命を使うギリギリの境涯を好む好戦的な一面もある模様。

ただ、カノン分類作品「クローンウォーズ」で登場した旧友ホンドー・オナカーの発言によると「なによりも名誉を重んじて行動した」という。
基本的に賞金稼ぎは暗黒街の人間であり、欲望のために荒っぽい手段・卑劣なふるまいも好んで取るということで、多くの人から疎まれる(オビ=ワン曰く「誰だって嫌い」)のだが、
ジャンゴはそれだけではなく、精神性を重んじるところもあったようだ。
実際、「デスウォッチ」首領プレ・ヴィズラのような野蛮さを見せることはなく、EP2ではどちらかと言うと物静かな雰囲気も出していた。

……まあいくら「名誉を重んじる」とは言っても「騎士道精神を持つ」とかいうわけではなく、あくまでも「賞金稼ぎ・傭兵としての名誉」であり、手段に関してはそれこそ暗殺・不意打ち何でもありだし、ロクでもない奴と見做せば平気で殺しもするが。


また「息子」ボバのことは深く愛しており、自分の持てる知識を教え込み、その成長を喜ぶ親らしい一面も持つ。

レジェンズ分類となった過去作品では、普段はそっけない態度を取りつつも恩師や仲間のことを大事に思い、そうした恩師を裏切り仲間に危害を加えた相手に、激しい憤怒を燃やす一幕もあった。


◆能力

「俺が最強だ。常にな」

マンダロリアンのメンバーとして、指折りの戦闘能力を持つ。
なによりジャンゴを強者と位置付けているのは、彼がマンダロリアンの装備をフルに駆使する技量があるからだった。

主な装備は、マンダロリアンの典型的な戦闘服。
彼の鎧は美しいシルバーと青い縁取りが印象的なもので、クローンウォーズ等で登場したほかのマンダロリアンに比べても色彩が鮮やかになっている。

武器としては、二丁のブラスターを主力として、右前腕部の火炎放射器、左前腕部の捕獲用ロープ発射装置*2、背面部には飛行用のジェットパック、ジェットパックに搭載するミサイル*3、両方の前腕部に装着するナイフ(スパイク兼用)、といった多彩な武器を仕込んでいる。
火炎放射器を応用して薄い隔壁やシャッターを焼き切るのに使ったり、ジェットパックが使えない場合には捕獲用ロープを応用して障害物を乗り越えたり、と機転も利く

愛用のブラスターは軽量化のため徹底的に肉抜きを行っており、片手でも素早く抜け、かつ射撃中にわずかずつ手首を動かして射撃軸を変えることができ、この技でジェダイの「射軸の先読み」さえも突破して射殺できる。
しかしこの「徹底的な肉抜き」の結果、構造が脆くなったようで、すぐ壊れるらしい。


もっとも特徴的なのは背中に背負うジェットパック
強力なロケット噴射装置によって、ごく短期間ながらかなりのスピードで空を飛べる
劇中では、敵の追手から逃れるための緊急離脱用や、空中に滞空しての爆撃用などで活躍した。
特に一対一での戦闘においては、普通の相手が地上を走ることでの二次元的な戦いになるのに、ジャンゴは任意に飛行・浮遊することで三次元的な戦いを強いることができ、敗色濃厚となれば容易に離脱もできるため、ジャンゴを強力な戦士とする要因になった。
またジャンゴはこのジェットパックを複数所持しており、カミーノで喪失した直後のジオノーシスですでに新しいジェットパックを装着していた。

ただ、このジェットパックは精密機械のため、ダメージに弱く、損傷によって機能不全に陥りやすい。
そしてジャンゴの戦闘は、良くも悪くもこのジェットパックに依存する傾向にあり、それが彼の命脈を断つことにもなった。
また、装填できる燃料には限りがあること、ジェットパックを使った戦闘は着地が難しいこと、下手すると高所から墜落して大ダメージを負いかねないこと、といった難点も多い。


そのほか、ヘルメットに遠視用カメラを装着したり、開錠用のピッキングツールを所有したりと、さまざまな装備を備える。


所有する宇宙船は「スレーヴI」
これは、任務中に侵入した監獄施設に配備されていた宇宙船を強奪したもの。
命名はジャンゴ自身が行ったのだが、その意味は「奴隷一号」であるため、聞いた友人からは「ひどい名前付けたもんだねえ!」と呆れられた。
なかなか強力な船なのだが、着陸時には機体を直角に90度傾けて着陸する、という奇妙な船のため、乗り降りは難しそうである。
また出入り口のハッチが上下に微妙に狭いため、ジャンゴは思いっきり頭を打ってしまう場面があった。

本船はジャンゴの死後、ボバの愛機となった。
ボバ幼少期は、ボバの後見人となったオーラ・シングに貸与されていた時期もある。


「スレーヴI」入手前は「ジャスターズ・レガシー」と名付けた旧式宇宙船に乗っていた。
これはジャンゴの養父ジャスター・メリールの乗っていた船で、ジャンゴは養父の遺産を旧式のボロ船と分かっていながら愛用し続けた。
しかしバンド・ゴラ追跡中、攻め込んだ監獄施設で発見され、警備隊によって破壊される。
その代替として奪ったのが上記の「スレーヴI」。
「ジャスターズ・レガシー」といい「スレーヴI」といいネーミングセンスは悪いのかもしれない


【経歴】

◆前歴

「近くの町まで、案内するよ……食料やパワーセルを買うなら、奴らはそこにいるはずだ……」

YBB66生まれ。出身はマンダロア星系の惑星コンコード・ドーン。実家は農家兼ジャーニーマンプロテクター(コンコード・ドーンにおける警察のようなもの)で、父母のほかに姉がひとりいた。

しかし当時のマンダロア星系では、「マンダロリアン内戦」という激しい内紛が勃発していた。
事の発端は、マンダロアの戦闘文化を巡る対立である。
詳細は マンダロリアンの項目に譲るが、
  • マンダロリアン古来の、破壊・殺戮・略奪を肯定する伝統保守派「デスウォッチ」
  • 破壊だけではない、高度な規律を備えた名誉ある戦士文化を提唱した「トゥルーマンダロリアン」
  • 戦闘文化そのものを否定し、非武装・完全平和主義を提唱した「ニューマンダロリアン」
の三つの思想グループが現れ、お互いを否定しあい、際限なき内戦に陥っていたのだ。

ジャンゴを含むフェット家は、故郷の惑星コンコード・ドーンで農夫をしていたが、心情はトゥルーマンダロリアンを支持していた。
そんなとき、トゥルーマンダロリアンの首領ジャスター・メリールと、彼を殺そうとするデスウォッチの首領トア・ヴィズラの部隊が、フェット家の農地で交戦。
フェット家はジャスターをかくまって逃がしたが、それゆえにデスウォッチの部隊に踏み込まれ、両親は殺害され姉は拉致される(ヴィズラの言動から殺されたと思われる)。
生き残ったのはジャスターたちを農地の灌漑水道に誘導していたジャンゴだけで、ジャスターは「自分たちを助けてくれた家族の忘れ形見」となったジャンゴ少年を自らの養子として、マンダロリアンに迎え入れた。

やがてジャンゴは、持ち前の機敏さと戦士の才能を開花させていき、また養父ジャスターがトゥルーマンダロリアンのリーダーということもあって、いまだ少年ながら有望な幹部候補生として、成長していった。



◆トゥルーマンダロリアンのリーダー

「総督に報告してくる。暴動は終わったのだ、報奨金を支払ってもらわねばな……」

しかしBBY52、惑星コルダ6の戦いで、トゥルーマンダロリアンは現地政府と結託したデスウォッチの罠に嵌り大敗、養父にしてリーダーであるジャスターも戦死する。
ジャンゴは、危機に陥った養父をわざと見殺しにしたモントロスを弾劾して彼を追放させ、代わって自らがトゥルーマンダロリアンのリーダーとなった。
ちなみにこの時14歳だが、マンダロリアンでは成人と見做される年らしい。

しかし、トゥルーマンダロリアンの武運はやはり尽きていたのかもしれない。
コルダ6でジャスターを討ったデスウォッチは、トゥルーマンダロリアンを追い落とす謀略に、さらなる磨きをかけていたのだ。

彼らが動いたのは44BBY。EP1の12年前である。
ジャンゴは当時22歳。若さゆえの力はあっても、老獪さを身に付けたトア・ヴィズラの謀略を読み切るには、まだ若すぎたのか。

デスウォッチは、まず銀河各地で派手な破壊活動・殺戮を繰り広げる。しかも、それをトゥルーマンダロアの軍隊であるかのように見せかけていた。
分裂しても同じマンダロアである。兵器も共通しているし、誤認させるのは容易だったろう。
そしてそのうえで、ひそかに結託していた惑星ガリドラーンの政府に、銀河共和国に向けて「マンダロア軍が罪もない民間人を殺害している。もはや現地政府では手に負えない。銀河共和国とジェダイ騎士団の派遣を請う」と言わせた。
同時に、惑星ガリドラーン政府はトゥルーマンダロリアンに連絡を取った。「惑星ガリドラーンで、反体制テロリストが暴れている。高度な規律を備えた傭兵部隊であるトゥルーマンダロアに、救援を依頼したい」と。

これで銀河共和国とジェダイ騎士団は「トゥルーマンダロアの討伐」を決意。
惑星ガリドラーンの雪原にて、ジェダイマスター・ドゥークー率いる精鋭ジェダイ部隊が、その場にいたトゥルーマンダロアの部隊を攻撃した。
(この時のジェダイ部隊のメンバーは、ドゥークーと彼の直弟子コマリ・ヴォサのほか、ジョカスタ・ヌーや評議員入りする前のメイス・ウィンドゥらしき人物もいる)
ジャンゴもジェダイを数名討ち取るほどに暴れたが、ついに敗北して捕縛され、トゥルーマンダロアはここに滅亡した


◆賞金稼ぎへの転身

「ジャンゴ。ねえ、あんた働き過ぎよ。もう賞金稼ぎなんてやめなよ。おカネならあるだろ? どうして身を固めて落ち着こうとしないのかねえ? 人生は短いんだよ!? 別の仕事だってあるさ!」
「俺にはこれしかないんでな。…………」

惑星ガリドラーンで虜囚となったジャンゴだが、彼ほどの男が奴隷で満足するはずがなく、隙を見て脱走。
さらに自分をハメたガリドラーンの総督も尋問し、彼が飾っていたマンダロリアンの装甲服も奪還*4、デスウォッチの頭目トア・ヴィズラの居場所も聞き出した。
ジャンゴは惑星コレリアでとうとうヴィズラを見付け、死闘の果てについに彼を討ち取った。

しかし復讐こそ済ませたものの、ジャスターが理想を託したトゥルーマンダロアは全滅してもはや復興は絶望的となり、他方のデスウォッチもトゥルーマンダロアとの戦いで戦力を使い果たし、壊滅同然となって姿を消してしまった。
結果として本星マンダロアは、平和主義勢力「ニューマンダロリアン」が支配下に置くことになった。



ここに至り、ジャンゴはマンダロリアンとしての道を半ば諦めたようである。
彼はもう故郷には戻らず、銀河の闇社会に身を沈め、賞金稼ぎとして身を立てるようになった。

もともとマンダロアは(デスウォッチを含めて)強大な戦力を持つ傭兵として活躍してきた歴史がある。
またジャンゴは、短い期間ながらも一派の長として、いくらかの依頼も受けてきた。
そのため、銀河辺境域ではすでに幅広い名声と人脈を持っており、その高い実力も相まって、銀河指折りの賞金稼ぎとして知られるようになっていった。

同業者たちにも一目置かれる存在となっており、ホンドー・オナカー、キャド・ベインオーラ・シングなどの錚々たる人物とも親交を持った。
暗黒街の元締めの一人でもある女性トイダリアンのロザッタという人物とは特に親しく、彼女の拠点「アウトランドステーション」にはよく出入りし、彼女から仕事の依頼や情報支援などを受けて、活動していた。


一方、かつて養父から授かった「高い規律を持った戦士の教え」は忘れていなかったらしい。
具体的なことは不明だが、後年のホンドー・オナカーは「ジャンゴが一番大事にしたのは名誉だった」と述懐している。


◆バンド・ゴラ追跡

「俺を雇ったのはティラナスってやつだ。ボクデンの月でな」

32BBY、遠く惑星ナブーで通商連合との間で紛争が起きた年。
ロザッタおよびジャンゴのもとに、「ティラナス」を名乗る老人から依頼が届いた
目標は麻薬密売組織バンド・ゴラの女リーダー、コマリ・ヴォサ。懸賞金額は500万クレジット。生死は問わず。
500万クレジットとは暗黒街でも破格のレートだが、コマリ・ヴォサが相手となるとロザッタまでもが受諾に反対。
しかしジャンゴは、返り討ちにあっても構わんと言わんばかりの態度で依頼を請け負った。

実働役のジャンゴが動くならしょうがない、とロザッタも参加し、バンド・ゴラの流通させている麻薬の成分や販売網を探って、後方支援を開始。
ジャンゴは直接現地に赴いて調査、抵抗があれば排除しつつ、コルサントからタトゥーインまで各地を巡り、ガーデュラ・ザ・ハットを筆頭とするバンド・ゴラのネットワークを探り潰していった。

変身種族クローダイト出身のザム・ウェセルと出会ったのも、この追跡途中である。
たまたま同じ相手を追って刑務所惑星オーヴォIVを訪れた際に彼女と出会い、ジャンゴの船が破壊されたことでなし崩し的に協力することに。
この際、破壊された愛機の代わりに監獄警備隊が運用していた試作スターシップである ファイアスプレー31級哨戒攻撃艇 を強奪。以後、ジャンゴ及び息子ボバの愛機「スレーヴI」として運用されることとなる。

しかし、ティラナスからコマリ討伐依頼を受けたのはジャンゴだけではなかった。
もう二十年も前、惑星コルダ6の戦いでジャスター・メリールを裏切った、あのモントロスのもとにも、ティラナスからの依頼が来ていたのだ。
同じ組織の出身者が、同じ目標を狙って、同じ手口を使っていれば、再会するのは当然だった。

ジャンゴ、モントロス、バンド・ゴラの三つ巴の戦いの果てに、ロザッタがモントロスに襲撃され、拷問の果てに命を落とす。
普段はつれない態度を取りながらも、心の奥底ではロザッタを愛していたジャンゴは、養父に続いて二重の怨敵となったモントロスに激怒
ついに到着したバンド・ゴラの本拠地、惑星ボグデンの衛星コルマにて追いつき、決闘の果てにモントロスを惨殺する

そしてその先のバンド・ゴラの居城に攻め込み、暗黒面のフォースと二本のライトセーバーを振るう女ダークジェダイコマリ・ヴォサと交戦。
一度はフォースの力によって捕縛されるが、ザム・ウェセルによって救出され、反撃を開始。
城の最奥の瞑想室にてコマリと交戦し、ついに彼女を撃破した


◆クローントルーパー計画

「……申し出を受けようティラナス。ただし条件がある」

その直後、コマリ・ヴォサがより強力なフォースによって絞め殺された。
いぶかしむジャンゴの背後に、依頼主だったティラナス――俗名ドゥークー、コマリの元マスターだった老ジェダイが現れる。

「ティラナス」は、コマリ暗殺依頼の報酬500万クレジットは鷹揚に支払ったが、それとは別に「もう一つの依頼」を提示した。
曰く、ティラナスはこのたび、クローン技術による最強の兵団を作るつもりである。そのクローン兵団のベースとなる遺伝子をジャンゴに提供してもらいたい。かつての我が愛弟子コマリ・ヴォサを打ち破るほどの男こそ、最強のクローン兵団の始祖にふさわしい、と。
ジャンゴは、クローン軍団やクローニングによる疑似的な永遠の命とやらには関心が無いようだったが、ティラナスの話から「一つの条件」を提示する。
「自分用に一体のクローンを作ってほしい、一切調整しない、純粋なクローンを」と。
ティラナスにも予想外の願いだったようだが、ジャンゴが理由を語ると、納得して「クローン契約」を結ぶことになった。

その「純粋なクローン」を、ジャンゴは「ボバ・フェット」と名付け、自身の息子とした。
ジャンゴの表情から察するに、ティラナスの演説のうち「クローン兵団はジャンゴが訓練をつけることもできる」という言葉に反応している。ロザッタも死に、女を抱いて子供を作るつもりもないが、ロザッタの遺言に思うところがあり、こういう形でも「息子」「家族」を作れれば、何か変わるかもしれない、と思ったのだろう。

ちなみに「自分用の純粋なクローン一体を貰う」というのとは別に、ティラナスが最初に提示した「クローンの遺伝子提供者になってくれるなら追加報酬」という条件も、ちゃんと付帯されている。
その追加報酬のお値段は2000万クレジット。コマリ討伐と合わせて、総計2500万クレジットがジャンゴの口座に振り込まれたのである。戦艦でも作れそうな額だが、それをポンと出せるセレノー伯爵家の富裕さもすさまじい。


さて、ここまでのジャンゴの経歴のうち、ここまでの部分はもっぱらレジェンズ分類作品で語られた。
こうした設定のうち、カノン設定にどれほど残っているかは不明であるが、カノン作品に分類されたものおよびカノン分類として制作された近年の作品に限っても、
  • 「マンダロア星系の惑星コンコード・ドーンの出身」
  • 「マンダロリアンのファウンドリング(孤児)として育ち、ジャスター・メリールの養子となった」
  • 「マンダロリアン内戦にも参加した」
  • 「その行動や精神は『名誉』を重んじた」
  • 「ボグデンの月でティラナスと遺伝子提供契約を結び、この一件で巨万の富を得た」
以上の点が明確に再設定されている。

ここからの部分は、映画EP2を中心として原則カノン分類の情報である。


◆カミーノの生活

以後のジャンゴは、惑星カミーノの首都ティポカシティに移り住む。
ティポカシティーは十数年前にヒーゴ・ダマスク(去年没した)という資産家によって莫大な投資を受けており、設備はどこも最新鋭、住民も礼儀正しく、いろいろ人間には合わない点こそあれ、裕福と言っていい生活ができた。
ジャンゴ自身の資産についても、なにせ2500万クレジットを手にしたばかりである。今やジャンゴは、一生贅沢しても使いきれないレベルの金持ちなのだ。

しかしジャンゴは、そんな完璧な生活基盤を手にしながらも、ふらりとカミーノを離れては再び暗黒街に戻り、賞金稼ぎの仕事を続けていた
稼ぐ必要もないほどのカネを持ちながら、修羅場を忘れられないようだった。


ただ、このころのジャンゴの側には常にボバがいた。
ジャンゴはボバを使い捨てのクローンではなく弟子・息子として遇し、自分の持っている戦士のスキルや知識を伝授していった。
賞金稼ぎ稼業を続けたのも、自分が戦いを忘れられないというのもあっただろうが、実戦を通じて息子を育てようとしていたようである。
そしてそうした生活を送るうちに、ジャンゴはボバに対して「息子」「家族」としての愛情を抱くようになる。

ザム・ウェセルとの縁も続いた。
彼女は賞金稼ぎとしてはまだ経験が薄かったため、いわば先輩となるジャンゴと組み、彼から支援を受けたり、あるいは知識・技術・心構えなどを伝授してもらいながら、経験を積むようになった。
彼女は割と明るい性格なので、幼いボバとも打ち解けたらしい。

ティラナスとの縁も続いた。
ティラナスは「ドゥークー伯爵」として、水面下で分離主義運動を開始しており、ジャンゴはティラナスの護衛兼助手として、暗黒街の組織や銀河系に名だたる大企業・大組織と接触していった。
その過程で、企業側からの極秘依頼を頼まれることもあった。


そしてカミーノに戻れば、ジャンゴは「クローントルーパー」と名付けられた自分の分身たちに、遺伝子と軍事知識を授けていった。
特に、「銀河最強の戦闘民族」マンダロリアンの戦闘技術は、クローントルーパーの戦闘能力を大きく引き上げた。
カミーノ人は見ての通り肉体が貧弱で、戦闘技術などは持っていなかったため、ジャンゴの功績は非常に大きかった。
もっとも、クローントルーパーは常人の二倍の速度で成長するとはいえ、生後五年ぐらいでは人間換算でも十歳程度であり、戦闘知識なぞ授けようもない。
そのためこちらはすぐには始まらず、後回しにされたと思われる。

クローントルーパーの戦闘服も、ジャンゴの持つマンダロリアンの戦闘服をアレンジしたものとなった。
この鎧は、はるか後年のストームトルーパーにも影響を残している。


とにかく、このころのジャンゴは以前と変わらず賞金稼ぎとして修羅場をくぐり続けていた。
既に巨万の富を持ち、賞金稼ぎなどという荒仕事から引退するだけの余裕があるにもかかわらず、足を洗わない姿は、本心を語らない無口さも相まって、他の賞金稼ぎから奇異の目で見られていた模様。

しかし「変わらない賞金稼ぎ」であるジャンゴも、内面では徐々に変わっていく点もあった。
特に、息子ボバとの縁が深くなるにつれ、かつてのどこか荒んでいた精神は徐々にだが丸くなっていったらしい。


◆パドメ・アミダラ暗殺指令

「ザム。今度はしくじるなよ」

22BBY、ナブー危機およびバンド・ゴラ崩壊から十年。
ジャンゴ・フェットは新たな依頼を受けた。

目標は銀河元老院議員パドメ・アミダラの暗殺。依頼主は通商連合の総督ヌート・ガンレイ
もともとガンレイは、ドゥークーが主導する「分離主義勢力」に加盟を求められていた。そこで彼は「加盟してほしいなら、まずはパドメ・アミダラを暗殺してくれ」とドゥークーに依頼し、ドゥークーはそれをジャンゴに仲介した、という次第。
この頃にはジャンゴはドゥークーから全幅の信頼を置かれていた。

依頼を受けたジャンゴは、まずは今や相棒に近いザム・ウェセルを招いて、いわば下請けにする形で、彼女に仕事を回した。
ザムは変身能力と潜入技術を駆使して惑星ナブーに忍び込み、パドメ議員の専用宇宙船に爆薬を仕掛けることに成功した。

ところが、パドメの警備主任グレガー・タイフォが影武者を立てていたため、宇宙船と影武者は爆破したものの、肝心のパドメは無傷。
ジャンゴはザムに接触し、任務失敗を叱責しつつも特殊な毒虫を授け、もう一度依頼を任せる。
しかしこの第二次暗殺も、パドメの護衛として増派されたジェダイ、オビ=ワン・ケノービアナキン・スカイウォーカーに妨害された。
ジャンゴは逃げるザムをフォローするべくコルサントの歓楽街を駆け抜けたが、ついにザムはジェダイ師弟に敗れて生け捕りにされてしまった。
ジャンゴは、ザムの救出は不可能と判断し、彼女が口を割る寸前に毒矢を放ってザムを殺害。次いでジェットパックを吹かし、すぐさま現場を去り、コルサントからも去った。
毒矢を放った彼の姿はジェダイに目撃されたものの、全身を鎧兜で覆っていたため、この時点では顔が割れなかった。


◆オビ=ワン・ケノービとの戦い

「踏ん張ってろ。小惑星帯に入る。奴に一泡吹かせてやろう」

一方ジェダイ側は、パドメの護衛は弟子のアナキン・スカイウォーカーだけが務め、オビ=ワン・ケノービが殺し屋の調査を開始した。
オビ=ワンはジャンゴが放った毒矢を解析し、それが惑星カミーノ製のものと把握。ジェダイスターファイターでカミーノまでやってきた。
カミーノ首脳部はオビ=ワンを歓迎しており、ジャンゴもオビ=ワンとの面会の場を持つ羽目になった。
が、ジャンゴはヘルメットを外した素顔でオビ=ワンと堂々応対し、オビ=ワンの質問もやり過ごした*5

しかし自分の青い装甲服をここでも見られたこともあり、追及は避けられないと見たジャンゴは、ただちにカミーノからの脱出を決意。
離陸直前には、やはり引き返したオビ=ワンに挑まれる。シスの暗黒卿ダース・モールをも倒したオビ=ワンはさすがに手強く、またオビ=ワンがジャンゴとワイヤーで繋がっているのにジャンゴを崖から蹴り落とすという大ポカをやらかしたことで丸ごと落ちかけるが、なんとか前腕部に仕込んだナイフで崖に留まると、ワイヤーを切り落としてオビ=ワンを撃退し、カミーノから飛び立った。
そしてスレーヴIに乗り込む際に頭を強打する。

しかしオビ=ワンもさるもので、飛び立つスレーヴIに発信機を投げて取り付けていた。
ただちにオビ=ワンはスターファイターに乗ってスレーヴIを追い、追手に気付いたフェット親子も激しい迎撃を開始したが、オビ=ワンの撃墜反応を偽装と見抜けず、とうとう元締・ドゥークー伯爵のいる惑星ジオノーシスまで踏み込まれてしまった。
(もっともドゥークーにとっては、カミーノのクローントルーパーぐらいはそろそろ気付いてもらいたかったのだから、結果オーライとなった)


◆ジオノーシスの戦い

「動くな、ジェダイ」

ジオノーシスに帰還したジャンゴは、ドゥークーの護衛・助手という立場に戻る。
とはいえ、この時のドゥークーは分離主義勢力による連合国家「独立星系連合」の発足作業、つまり外交的な交渉作業に入っており、ジャンゴには「護衛」としても「助手」としても特にやることがなかった。休憩のようなものか。
カットシーンでは、ドゥークーの背後で護衛のように立つジャンゴの場面もあった。
また、パドメ暗殺依頼を連合加盟の条件とするガンレイ総督もここにいたが、ドゥークーの交渉の結果、パドメ暗殺が未達成ながらも、ガンレイは連合に署名した。
ジャンゴはこうしたドゥークーの鮮やかな交渉を感心しながら見ていたらしい

ここまで追ってきたオビ=ワンも、ドロイディカ小隊が捕縛。
次いで、オビ=ワン救出のためアナキン・スカイウォーカーとパドメ・アミダラも到着するが、ふたりも工場の機械やジオノーシアン兵士たちに翻弄されたあげく、パドメはジオノーシアン部隊に、アナキンはジャンゴが率いるドロイディカ中隊に捕えられた。


その後、捕虜となった三名はジオノーシス政府主導のもと、ペトラナキ・アリーナでの猛獣による処刑が決定。
ジャンゴはボバを伴い、ドゥークー伯爵、ポグル・ザ・レッサー、ヌート・ガンレイらと共に、アリーナの貴賓席から処刑を見守った。
一応「護衛」という立場だが、ジャンゴはヘルメットも外してリラックスしており、むしろ貴賓客としての扱いだった模様。
ボバはアクレイに興味津々だった。
また捕虜たちが猛獣を圧倒し始めると、焦るガンレイからパドメを殺せと命令を受けるが、ドゥークーがガンレイをなだめて不発となる。


だがその宴席のさなか、突如ジャンゴの喉元に紫色の光刃が突き付けられる。
ジェダイ評議会の重鎮メイス・ウィンドゥ、そして彼を筆頭とする200人のジェダイ部隊が、オビ=ワン救出とドゥークー討伐のため現れたのだ。

しかし、対するドゥークーもバトルドロイド部隊を出撃させて応戦。
メイスがジャンゴやドゥークーから離れてドロイド迎撃の構えに移ると、ジャンゴもおもむろにヘルメットを被り戦闘態勢に。

ジャンゴはまず火炎放射器で目の前のメイスを貴賓席から地上へと追い落とす。
さらに乱戦中、ジェダイマスターのコールマン・トレバーがドゥークーを討つべく貴賓席へと上がり込むと、ジャンゴは素早くブラスターを抜いて攻撃。
わずか三発の連射で、コールマン・トレバーを射殺した
この鮮やかな手並みにはドゥークーも満足げな微笑みを向けている。


そして乱戦のさなか、メイス・ウィンドゥがジオノーシスの猛獣リークに追われ始めたのを目撃すると、ジャンゴはジェットパックを噴射して出撃。メイスの眼前に現れる。
しかし、ちょうどメイスがリークにふっ飛ばされたライトセイバーを、奪うため飛びついたのがミスとなる。
飛びついた瞬間にメイスがフォースでライトセイバーを手元に呼び込み、ジャンゴは不様に地面に倒れる羽目になる。
さらにその倒れた体勢のままリークの突進に巻き込まれてしまい、ジャンゴは数メートルに渡って転がされた。

それでもなんとか立ち上がったジャンゴは、再突撃を掛けるリークに対して冷静にブラスターを撃ち込む。
放ったのはたった一発だったが、その一発は見事に急所を撃ち抜き、この巨獣にとどめを刺した。

だが、ジャンゴの命運もここで尽きた。
ジャンゴがリークに手間取っているあいだに、ライトセイバーを拾い直したメイス・ウィンドゥが下段に構えて突撃を掛けていたのだ
ジャンゴはブラスターで迎撃するが、ジェダイ騎士団でも最強を誇るメイスは光弾をあっさり反射して肉薄。
ジャンゴはとっさにジェットパックで離脱を図るが、リークの突進で破損していたジェットパックは乏しい火花しか吹かなかった。

次の瞬間、紫の光刃が二閃し、ジャンゴの右手と頭部が、胴体から離れた。


ジャンゴの戦死を目撃したドゥークーはそれまで優雅に組んでいた腕が弾かれたように解けて穏やかな微笑が凍り付き、息子ボバは愕然と立ち尽くす。
程なくしてジェダイ部隊は敗北、間一髪でクローントルーパーの援軍が到着して、戦場は惑星全土へと移行し、アリーナから生きている人はいなくなった。

その跡地となった戦場で、ボバは父の頭も抜けてしまったヘルメットを、ひとり静かに拾い上げていた……


◆死後

ジャンゴ亡きあと、孤児となったボバは父と縁故のあった賞金稼ぎたちを頼り、オーラ・シングらのもとで揉まれながら、暗黒街の賞金稼ぎとして大成していく。
父の遺した戦闘服も保存しており、ボバが成人後に着ていたボロボロの戦闘服は父のものである。
また父を殺したジェダイ、特にメイス・ウィンドゥへの憎悪をも募らせており、クローン大戦中には暗殺計画を練っている。

ドゥークーもジャンゴの息子ボバには思うところがあったのか、仕事を斡旋したり話を聞いたりしている。


一方、ジャンゴの遺伝子から作られたクローントルーパーは、自分たちの原型であるジャンゴが死んでもこれといった反応は見せなかった。
しかし、彼から受け継がれる戦士の血に誇りを抱いており、作中でも『誇り高き戦士の血』『自慢の遺伝子』と彼のことを誇りに思っている描写が見受けられる。
一方、製造の面に関しては影響はあり、ジャンゴという遺伝子提供者がいなくなってしまったため、ジャンゴ型クローンの安定した新規製造ができなくなるという結果も生まれた。



【余談】

EP2でジャンゴがメイスに敗れた直後、ヘルメットが地面に転がり落ちるシーンに繋がる。
このヘルメットが落ちる寸前をコマ送りにすると、ヘルメットの影から別の物体の影が飛び出し、画面外に吹っ飛んでいくのが確認できる。
ボバが拾い上げるヘルメットは、中身が入っていない模様。


「クローンウォーズ」にて、惑星マンダロアのニューマンダロリアン政府が登場した際、ジャンゴ・フェットとの関わりを一切否定した。
それはいいのだが、この際に「フェットは単なる賞金稼ぎ、どこかでマンダロリアン・アーマーを盗んで手に入れたのだろう」と発言する場面があった。
そのため、一時「ジャンゴ・フェットはマンダロリアンではない」という説まで浮かび上がっていた。
ニュー政府がそんな発言をした真意は不明だが、少なくともジャンゴは「ニューマンダロリアンの一員」だった時期は存在しないため、政府側が中途半端な断言をしたものと思われる。
現在は、「ジャンゴはジャスター・メリールの養子として入ったマンダロリアンである」と定義されている。

日本語吹替は『3年B組金八先生』の北先生役で有名な金田明夫氏が担当している。




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最終更新:2024年11月27日 09:31

*1 担当俳優テムエラ・モリソンの身長は171cm。ちなみに公式設定ではなぜか183cmとオビ=ワン(182cm)と同じぐらいの身長になっている。

*2 ロープの長さは約20m以上。

*3 真上に向けて装着するため、打ち込む相手に向けてしゃがまないといけないが、ジャンゴの携帯する武器の中では最大級の火力を誇る。

*4 鎧がピカピカの銀色になったのは、この知事が磨き抜いたため。

*5 オビ=ワンの「クローンの依頼主はサイフォ=ディアスか?」という問いには「いや。ティラナスという男だ」と答えた。確かにジャンゴに依頼したのはサイフォ=ディアスではなくティラナスだが、ティラナスがオビ=ワンと同じ元ジェダイのドゥークーということは黙っている。この時期のジャンゴはティラナス=ドゥークー=元ジェダイと知っているはずである。