SCP-1248-JP

登録日:2019/11/22 Fri 00:31:46
更新日:2024/04/12 Fri 16:24:00
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SCP-1248-JPはシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラスSafe Keter Safe。


特別収容プロトコル

SCP-1248-JPはサイト-81██内の防護壁に囲まれた部屋に設置されている。危険物が排出された時の処理のために機動部隊が複数常駐し、各々にミーム災害を含めた広範な災害に対応できるように教育が施される。
また、周辺住民への被害を避けるため、事前にカバーストーリーを以て批難指示が出される。


……と、一時Keterクラスに指定されただけあって非常に物騒なプロトコルだが、現在はSafeクラスに指定されている。
『たとえどれだけ危険な代物でも手順を守っていれば安全』なのがSafe。つまり、安全な収容方法が確立されたというわけである。



概要

SCP-1248-JPは熊本県の某ビルにある定員11人のエレベーターである。
このビルの住人が失踪する事件が相次いだことで財団の目に留まり収容と相成った。なお例によって動かせない性質からビルを丸ごとサイト-81██とすることで対応している。

黒塗りになっているのでメーカーは不明だが、一般に流通しているエレベーターのどれかと外観・構造ともに一致する。しかしこのエレベーターは通常のそれと異なる特徴をふたつ有している。

直接異常を説明する前に、このエレベーターの特異性が発覚した実験記録から。


実験記録001


対象: SCP-1248-JP

実施方法: 中にあった物体を取り出し、D-2257がSCP-1248-JPの中に入る。D-2257には発信機を取り付け、映像、音声の通信も行う。

D-2257: 中に鏡があるけど、どうすりゃいいんだ?

████博士: 鏡を取り出し、中に入りなさい。

D-2257: [鏡を運ぶため、5秒沈黙] ほら入ったぞ。何の変哲もないエレベーターじゃねえか。 [即座にドアが閉まり、GPSからの情報が途切れる]

████博士: 内部の階層表示は何階になっている?写してくれ。

D-2257: それは・・・なんだこれ。ああ、どんどん増えてくな。[7.56×10^76階で外部の階層表示と一致]

████博士: ふむ、その高さで通信にラグが生じないのか。それでは・・・

突如日本語のように聞こえる非常に高音の音声が入る。

不明: ██ ██のばー、ば、ばー、ばー・・・(D-2257の本名。「ば」で終わる)

D-2257: おっ着いたみたいだ。ドアを映しとけばいいんだよな。[2.94×10^147階で停止。ここまでで14秒。]

████博士: おい、今の声が聞こえなかったのか。

直後、音声、映像通信が途絶える。後の分析で、ドアが開いた直後に、D-2257がドアの方向へ吹き飛ばされ、通信機器が破損したと判明した。D-2257の生死は不明。
この後、赤いバラが出現した。


おわかりいただけただろうか?

このエレベーター、昇降機内の物体でしりとりをするのである。
ついでに設置されているビルは10~19階(1の位が黒塗り)立てなのに、明らかにそれ以上の階が表示される。

ビルの住人が失踪したのは、このエレベーターに乗ったことでしりとりの回答と認識されてしまったのが原因と推測される。
内部に乗っている人間にはエレベーターの声は聞こえないらしい。
そしてお約束のように行方不明になるDクラス職員。南無。


というわけで、性質が判明したので恒例の実験開始。

実験記録002


実施方法: 事前に入れるものを研究班の間で会議した後、Dクラス職員に映像越しに指示して入れさせる。

手番 最大階層表示 物体 特記事項
SCP-1248-JP 不明 バラ バラに特異性はなかった。
D-9894 - ライター 一般の市販品。
SCP-1248-JP 174421階 13秒ほどの後に、ドアが開き出現。DNA検査の結果、失踪した住人である██ ██の右足であった。また、しりとりの形式として、長音は母音として判断されると推測できる。

のっけからショッキングすぎる。
失踪した人物も回答用に保存しているのかは不明だが、それにしても右足だけ切り取ってエレベーターにぽつんと置かれているのはホラーでしかない。
なお、これにより長音(「ー」のこと)は一つ前の音の母音として対処することが判明した。

あと表示が正しいとするなら13秒で174421階分を往復したことになる。仮に1階層を3mと仮定した場合、80km/秒以上という超高速である。

どんどんいってみよう。

手番 最大階層表示 物体 特記事項
D-9894 - 新聞紙 20██/██/██発行の財団フロント企業の新聞紙一枚。内容は当時の内閣に関する情報。
SCP-1248-JP 355205248階 鹿 49分後に出現。一般的なニホンジカ(学名:Cervus nippon)の死体。角が高度に変形しており、「つまんなかった。テレビらんがいいな。」と読める。おそらく新聞紙の内容についての感想と考えられ、これより知性を持つオブジェクトであると推測される。

地味に生足首を回収させられたD-9894が実験続行している。
どうもこのエレベーターには知性がある様子。感想から察するに小学生程度の人格と推測される。
しんぶん『し』」への回答で「『し』か」を出してきたうえに、その角を曲げて感想まで述べるとはなかなかに器用なやつである。

手番 最大階層表示 物体 特記事項
D-9894 - 解説書 エレベーターの使い方に関するA4紙に書かれた顧客用の解説書。裏の余白に「君はなんだ?なぜしりとりをする?」と書く。小文字への対応も見る。
SCP-1248-JP 26階 みかん 3秒後に出現。一般的な温州蜜柑(学名:Citrus unshiu)。剥かれた形跡がないにも関わらず、皮の内側に「エレベーターだよ。しりとりって楽しいね。」と書いてある。我々の意図と違い、「紙」だと判断したと考えられる。SCP-1248-JPは「ん」によって非活性化。

やはり小学生レベルの知性なのか、「『か』いせつしょ」ではなく「『か』み」と認識した模様。
それはさておき回答に使う物体を利用して文通ができるということがわかる。

手番 最大階層表示 物体 特記事項
D-9894 - ミニチュアの消防車 再度、小文字への対応の確認。SCP-1248-JPの知性が子供並であると予想し、平易なものへと変更した。
SCP-1248-JP -2.444×(10^100)^46階 やさい ████ビルに地下の階層は存在しないのに関わらず、エレベーターは下降し、4秒後に出現。小文字は大文字にしてしりとりを進行すると判明。プラスチック製の皿の上にピーマン、にんじん、トマトが置かれている。にんじんには「みかんって言っちゃった!」と読める染みが見られる。 階層が正しいとすると明らかに宇宙から外部に出てしまう距離である。

しりとりで負けて以降も記憶は連続しているようで、前回の負けを悔しがってるようにも見える。
しょうぼうし『ゃ』」に「『や』さい」で答えたため、小文字は大文字に変換して進行することがわかった。
階層についてはもうツッコまない方針で。

手番 最大階層表示 物体 特記事項
D-9894 - - 実験のため、██日間物体を入れなかった。
SCP-1248-JP -680122階 ソース 突如扉が閉じて、42秒後に出現。SCP-1248-JPの床に「はやくしてよ」と書かれている。████社製のウスターソースと成分が一致した。

回答しないと勝手に次のゲームを始める模様。

手番 最大階層表示 物体 特記事項
D-9894 - SCP-1248-JPの床に墨で「すまなかった」と表記した。
SCP-1248-JP 4階 みかん 2秒後に出現。前回と同様に皮の内側に「しりとりぐらいしっかりやってよ!」と書いてある。SCP-1248-JPは「ん」によって非活性化。サイト-81██の4階でエレベーターが開くことはなかった。

どうも『み』で終わる単語で回答されると「『み』かん」で返す癖があるらしい。
また、表示と階層に直接の繋がりはないようで、どうにも恒例の異次元接続系っぽい。

手番 最大階層表示 物体 特記事項
D-9894 - ラーメン こちらの敗北の結果を確認する。
SCP-1248-JP ((2^128)^128)階 そば 19秒後に出現。そばを乗せるトレイに、金色の文字で「わざと負けちゃだめだよ」と書いてある。

ずる負けは許しません。
小学生らしい面倒くさい性格してる。

手番 最大階層表示 物体 特記事項
D-9894 - バスケットボール 「すまない。君のことをもっとよく知りたくてね。」と書いて送る。
SCP-1248-JP (((63^63)^63)^63)階 ルビー 2日と14時間後に出現。エレベーター内部は0.75カラットのルビーで埋め尽くされており、扉が開いてもルビーが崩れてエレベーターからこぼれることはなかった。分析の結果、内部に複数のピンクサファイアが混ざっており、ピンクサファイアの位置を三次元上で確認すると文章が現れた。ルビーを奪おうとしたD-9894は解雇した。世界の一年採掘量を大幅に上回る量であるため、これらのルビーの流通は禁止し、財団に保管する。文章の内容は「ぼくに聞いてくれればいいのに」である。

2日半かけて宝石を使って立体文字を作って回答。作る方も大概だが分析した財団も財団である。
なおルビーをちょろまかそうとしたD-9894は解雇。終了されなかっただけマシじゃないかな。

手番 最大階層表示 物体 特記事項
D-2264 - 石を加工して文章を作る。内容は双方「色紙」で会話することを求めるもの。
SCP-1248-JP -8.689×10^25階 色紙 12秒後に出現。色紙にはSCP-1248-JPのメッセージが書かれている。

一通りの条件を確認したので「『し』き『し』」でループさせれば手間をかけずに意思疎通が図れると財団側から提案。
SCP-1248-JPも承諾したようで、以降色紙を使って会話を行うことになった。

……これで終わればよかったんだけどなぁ。


会話記録1248-A


対象: SCP-1248-JP

付記: 実験記録002の「石」以降の会話記録であり、最初を除き、全て「色紙」によるやりとりである。なお、同じ「色紙」であったにも関わらず全て階数が違う点は特筆すべきである。物体を実際に入れているのはD-2264だが、表記上インタビュアーは研究責任者の████博士とする。

████博士(石): では君に色々聞かせてもらおう。しかし、ルビーを並べて話すのは大変だろう。お互い「しきし」で話さないか?

SCP-1248-JP(色紙): 頭いいなあ。それでいいよ!

████博士(色紙): 分かった。君の名前は?

SCP-1248-JP: エレベーターに名前なんてあるの? すきによんでよ。

████博士: 分かった。SCP-1248-JPと呼ばせてもらおう。SCP-1248-JPはなぜしりとりをするんだ?

SCP-1248-JP: あはは、やっぱり頭よくないなあ。エレベーターだからに決まってるじゃん。

████博士: 我々の知っているエレベーターはしりとりをしないのだが。

SCP-1248-JP: しりとりしないエレベーターもいるんだね。何のために生きてるのかな。

████博士: 我々の知る限り、全てのエレベーターはしりとりしない。それに生きてもいない。

SCP-1248-JP: じゃあ世界でエレベーターは二つしかないんだね。

████博士: SCP-1248-JPと、あと一つは?

SCP-1248-JP: 君。

████博士: 我々は人間だ。

SCP-1248-JP: しりとりをするのに人間なの?

████博士: むしろ我々の知る限りでは、人間以外はしりとりしない。

SCP-1248-JP: しりとりをするのに人間なの?

████博士: 大丈夫か?

SCP-1248-JP: しりとりされる側に戻ってね。


どうやらSCP-1248-JPの認識ではエレベーターは生きていてしりとりをするものであり、人間はしりとりされるもの(回答の物体?)だったらしい。
ところが、「いやそのりくつはおかしい」と████博士が指摘
頭が犬の研究員とか喋るカナヘビのエージェントはいいんだろうか?

しかしその結果、SCP-1248-JPはへそを曲げてしまったようで、事案発生。
財団ではよくあること。


事案1248-B


手番 最大階層表示 物体 特記事項
SCP-1248-JP 8↑↑↑4階 色紙 「しりとりされる側に戻ってね。」と表記されている。
- - 色素 色紙はすぐに外部に吹き飛ばされ、こちらの行動を待たずに即座に扉が閉まった。SCP-1248-JP周囲███mから色が失われた。明らかな敵意が見られることから、迅速にプロトコルの改定、機動隊の要請が行われ、SCP-1248-JP周囲には防護壁が建設された。外部から機能を停止させる試みは失敗した。
SCP-1248-JP f^32(6)階 ソニックブーム 1日と6時間後に出現。マッハ██程度の衝撃波がエレベーターから放出され、サイト-81██の一部が損壊した。
- - 再び即座に扉が閉まる。選べる単語数をなるべく減らすため、収容室の内部を真空にする。
SCP-1248-JP Rayo(100^100)階 無知蒙昧 18日後に出現。観測上何も発見されなかったが、扉が開く瞬間にカメラの映像を見ていた研究員█名が全ての学問知識を喪失した。また、IQテストの結果も著しく低下した。
- - サイト-81██と周囲1.5kmの家屋が消失して、SCP-1248-JPは独立した箱となって上昇していった。サイト-81██は即座に再建築された。SCP-1248-JPの非活性化を目指し、無力化プロトコル「み攻め」が計画された。これは「み」で終わる50音全てに対応した物体を用意して、エレベーターの開放の際に、即座に射出するというものである。

なんと独りしりとりで周囲に対して攻撃を開始
周囲の「しき『そ』」を奪い「『そ』にっくぶー『む』」を発生させ、何もなければある程度行動は縛れるだろうと「『む』」の真空にすれば「『む』ちもうま『い』」で研究員たちの知力を奪い、さらに「『い』え」を持っていくことでサイトを消失させるなどやりたい放題。
無知蒙昧とかさりげなく知能上がってね?

そして昇降機だけが残され上下移動を開始。文章だとあれだが想像するにすごくシュールな絵面だ。しかし被害は甚大である。

SCiPによくある謎耐性で外部からの停止は失敗。そのため既に発覚している「『み』かん」での回答を誘発させるため『み』で終わる物体を射出する作戦が立案される。
それにしても深刻な事態に対していちいちシュールなのは気のせいだろうか。

手番 最大階層表示 物体 特記事項
SCP-1248-JP Elv(64) SCP-██6 11日後に出現。███オブジェクトであったが、「え」で始まる「SCP」の出現は事前に予測されていたため、被害は最小限に抑えられた。

はい、収容違反。
い『え』」で終わったのをいいことに「『え』すしーぴー」を射出してきやがった。
どこの道路標識だお前は。

しかしそこは財団、「『え』すしーぴー」で返されるのは想定の範囲内(!)だったようで、すぐさま無力化プロトコル「み攻め」を発動。

手番 最大階層表示 物体 特記事項
財団 - クルミ 即座に射出された。
SCP-1248-JP 1階 みかん 1秒後に出現。SCP-1248-JPは「ん」によって非活性化され、O5により実験は無期限に凍結された。


えすしーぴー███ろ『く』」に「『く』る『み』」を返すことで、ようやくSCP-1248-JPは「『み』かん」と回答し停止。
以後の実験はO-5直々に無期限凍結された。


最悪の場合あらゆるSCiPを射出する危険性があるという意味では潜在Keterだが、『しりとりをスタートさせない』という条件さえ守っていれば安全に収容できるためSafeクラス認定されている、というわけである。



余談

機嫌を損ねたSCP-1248-JPの階層表示に出ていた数字だが、『8↑↑↑4』はクヌース数、『f^32(6)』は小グラハム数のために定義された関数、『Rayo(100^100)』は100^100個以内の集合論の記号であり、一応実在の数ではあるが、『Elv(64)』は実在しない表現である。
ディスカッションによると大きな数字を表すために適当に大きい数字をあげてるので特に意味はない模様。



小学生レベルの精神性で、癇癪を起こすと周囲に当たり散らす危険なエレベーター。
しかし、しりとりをする限りはおとなしく従うということは――



SCP-1248-JP


しりとり大好きエレベーター



――ただ、大好きなしりとりがしたいだけなのかも知れない。





追記・修正はしりとりをしながらおねがいします。




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最終更新:2024年04月12日 16:24