登録日:2016/12/29 Thu 19:41:08
更新日:2025/04/09 Wed 14:00:07
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項目名は「シンボル」。
概要
コイツが何かというと、日本の某所に存在する「一時停止」の道路標識である。
モノ系SCPの例に漏れず、コイツも防御力が異常であり、軸の部分は全く損傷を受け付けない。標識の部分はダメージを食らうが、無限再生する。
そしてコイツの最大の特徴というのが、標識部分の変形とそれに準じた超常現象の発生である。
現象を発生させる範囲はコイツを中心とした半径50m以内に限られているが、起きた現象がその外に影響を及ぼすことはままある。
複数の標識に分裂して各標識を併用させたり、補助標識を出現させて範囲や距離などの細かい調整を行ったりすることも出来る、と無駄に器用。
ちなみに発生した現象はいずれも物理的なものに限られ、
ミーム汚染・認識災害と言った財団の手を焼かせるような現象は起きない。
起きないのだが、忘れないでいただきたい。
コイツはKeterである。
つまり、
純粋に物理的な影響によって
Keterとなっているのである。
そして何より面倒なのはこの標識、いつ何がどうなってそうなったのかは定かでないが、何と明確な自我を持っているのである。
オブジェクトの中ではさして珍しくもない特徴である、というかコイツ自体は初期に確認されたオブジェクトたちと似たようなレベルの存在である。
しかし、だからといって、いやだからこそ注意せねばならない。
彫刻やアベルや不死身のクソトカゲを見ればわかるように、初期のSCPは「良くも悪くも特徴は単純、だからこそ厄介」という面子ばかりである。この標識も同じだ。
発生した現象
コイツの変形によって発生した現象を表にまとめるとこのようになる。
標識部分 |
何が起きたか |
止まれ |
通常形態。何も起きない |
歩行者注意 |
横断歩道が出来た |
車両進入禁止 |
車両という車両が押し出された |
トイレあり |
便所が出てきた |
スリップ注意 |
地面の摩擦係数が低下 |
踏切あり |
踏切と線路が出現。単行編成の電車が通過していった |
坂道注意 |
坂道が出現 |
工事中 |
工事器具と機械と人員が出現 |
動物に注意 |
シカやタヌキやウサギが通過していった |
落石注意 |
空から岩が降ってきた |
強風注意 |
暴風が吹き荒れた |
さらに、補助標識を出現させることも可能。
補助標識 |
何が起きたか |
距離の表記 |
現象が起こる半径の提示。最少50m、最大で100000m以上 |
車のシルエット |
ターゲットとなる車種。ない場合は全種 |
矢印 |
現象が起きる方向 |
こんな感じである。
回収作戦とその後
この標識に宿る人格は、端的に言うと「タチの悪い悪戯っ子」である。
接近した人間に保有する能力を用いて怒らせたり困らせたりする行動傾向を見せている。
人間が周辺に存在しない時は比較的大人しいものの、完全な不活性状態ではなく、特に何の意味もなく能力を行使する様子が報告されている。つまり
暇つぶしをやっているらしい。
標識のところに全体の20%以上の欠損を与えると、超常現象の発生を一時的に食い止めることが出来ることが確認されている。
しかし、その場合コイツはハザードシンボルを用いて攻撃的になる。これまでに「放射能標識」「津波」「高電圧」、さらにデータを削除された2例が確認されている。
迷惑極まりないこの標識を収容すべく、財団日本支部は総勢1074名からなる部隊を投入し、標識を攻撃し続けて能力を阻害、その隙に地面ごと引っこ抜いて持ち去るという回収作戦を実行した。
以前に二度試みて失敗しているため、今度こそはと財団も念を入れていた。
ところがこの作戦、上手く行かなかった。
最初は攻撃を食らいまくってダメージを受けたが、回収班が目標地点からおおよそ400mの距離まで接近すると、コイツは突如、支柱を激しく伸縮させて攻撃の回避を行い始めた。
結果、損傷を再生したこの標識は、報告書には書けない何かに酷似した実体を二ケタに渡る数出現させて反撃。作戦に参加した職員は散々に蹴散らされてしまった。
ちなみに本作戦による死者は26名、重軽傷者は9名、行方不明者は57名であると記録されている。
参加者の一人である松崎隊長はこう語っている。
あれに悪知恵がなければ初弾から避けていたはずだ。
俺たちを多く殺すために一芝居打って引きつけたんだ。そうとしか思えない。
ちなみに、これ以前の計画としては「現地にサイトを建設する」「コミュニケーションを試みる」というのがあったが、これは元記事の筆者により冗長だとして削られている。
ディスカッションによれば、大体こんな感じらしい。
結果→「道路工事中」の標識に変化して建設を補助。しかし、竣工直後に「落石注意」の看板に変化し、建設したサイトは崩壊した。
あの野郎、担ぐだけ担いで落としやがった。そうとしか思えねえ。――サイト建設現場の監督
ちなみに落石発生時の変形はこんな感じ。
結果→人型の実体であるSCP-910-JP-1を大量に出現させて調査班を誘導。あちこち振り回されるので無視してインタビューを試みたところ笛や騒音で妨害しに来た。
その後、Dクラス職員を使って尿意を示させたところ「
トイレあり」の標識に変化。が、利用の最中に「止まれ」に戻ったため便所が消失した。
人格を有しているのはSCP-910-JP-1ではなく、SCP-910-JPの方だな。 - 和野博士
とまあ、これらの経緯を経て人格の保持とその性質が明かされたわけである。
……ところで、何でコイツがKeterに認定されているのかお分かりだろうか?
ここまでの情報では単に、「イタズラ好きではた迷惑な標識」以上のものではない。
コイツがKeterに格上げされた決め手は、第三次回収作戦において回収班への攻撃に使用した実体と、それを呼び出した補助標識の内容である。
報告書では削除され、画像は編集されているが、実はディスカッションの部分に元の画像がある。
これである。
なんと、ダメージを修復したSCP-910-JPは、「止まれ」から二度の変形を経て、何と財団のマークに変化。
そして、その下に出現した補助標識には、こう書かれていた。
上から順に、
こともあろうにこの標識、回収に来た日本支部職員に対して、
クソトカゲ&アベル&シャイガイを複製して呼び出してきやがったのである。
しかも報告書からして、同系統のオブジェクトがこれ以外に2ケタ種類は呼び出されたらしい。編集された名前は5つあり、判明している三つが本家の有名所なので、恐らく残り二つの片方は
オールドマンとかであろう。
特性上コイツらコピーオブジェクトどもも、厳密にはSCP-910-JP-1になるため、標識が元に戻ると同時に消えたのだろうが、
本作戦による死者は26名、重軽傷者は9名、行方不明者は57名であると記録されている。
よくもまあこの程度の被害で済んだもんである。
まあ、報告書を読む限り「それぞれに酷似した外見と性質を持つ生物実体」らしいので、オリジナルのオブジェクトと完全に同一ではないようだ。シャイガイも顔が微妙に違ったりしたのだろう、多分。
ともあれ、いくらコピーとはいえよりによってSCPオブジェクトを無数に呼び出せる、という時点でコイツ自体もKeter待ったなし。
それは、三上博士のこの提言が全てを物語っている。
SCP-910-JPの即刻の処分を申請する。あれの存在は我々の活動の全てを無意味にしている。
余談
このオブジェクトは筆者曰く、「
既にやり尽くされた内容に新しいものを加える」というコンセプトのもとに執筆されている。
かみ砕くとこの標識の特性は「破壊できない」「オブジェクトを召喚できる」「知性を持っており、下手な接し方をすると危険」というものだが、これらは本家における、設定や方向性が固まり切っていなかった頃の初期の記事で何度も出てきたものであり、そういう意味ではこのオブジェクトはいわば「
ありがちなSCP」である。
そのため、「GIF画像で陳腐さを紛らわせている」印象が拭えない読者も多かったらしく、ディスカッションでは
賛否両論であり、筆者と桑名博士による論戦まで展開されたほど。
それでもこの記事は2023年現在700以上の評価を獲得しており、良記事だと評価されていることは明記しておく。
追記・修正はオリジナルのシンボルを作ってからお願いします。
最終更新:2025年04月09日 14:00