猿の手(小説)

登録日:2019/11/28 Thu 11:37:17
更新日:2025/04/11 Fri 23:52:21
所要時間:約 8 分で読めます




"It had a spell put on it by an old fakir,"
「年老いた行者がまじないをかけたんです」

“a very holy man. He wanted to show that fate ruled people's lives, and that those who interfered with it did so to their sorrow.”
「霊妙な行者だったそうで、彼によると“人に定められた宿命を変えようと試みるならば、たいへんな災いが降りかかる”ということを示したかったらしい」



どんな願いでも3つまで叶えてやろう。」と言われたら、この項目を読んでいるあなたは何を願うだろうか?

金銭、恋愛、将来、あるいは現実ではできないようなファンタジー、その他様々なものが思い浮かぶだろうし、それらの願いが頼むだけで叶えてもらえるのならば、頼みたくなるのもごく自然な感情である。

しかしこの時多くの人は「叶う内容」に目が行って、「叶うまでには何が起こるか」にはあまり目を向けないのではないだろうか……?

本作に登場する「猿の手」もまた、願いを3つ叶えるアイテムである。
しかし……


「猿の手」とはW(ウィリアム)・W(ワイマーク)・ジェイコブズの短編怪奇小説、及びその作品内に出てくる「何でも願いを叶えるアイテム」であり、彼の代表作といっても過言ではない。発表は1902年。
ちなみに本作や幽霊屋敷での出来事を描いた「徴税所」等の作品から彼の作品ジャンルはホラーなのではないかと思う人もいるかもしれないが、実際には彼の作風は「海」「ユーモア」を題材とした明るいものである。


あらすじ


冷たい雨の降る夜。
老齢のホワイトは同じく老齢の妻、そして息子のハーバートと共に自宅にいたところ、古い知人のモリス曹長が約束通りやってきた。

モリスは暖炉で暖まりながら酒を飲み、インドでの様々な出来事を話し、それを一家は興味津々に聞いていた。
そんな時間が続いた中でホワイトが彼から以前聞いた「猿の手」の話題を持ちかけるが、モリスはなぜか狼狽しながら話をそらそうとする。

興味を抱いたホワイト夫人が質問してきたために、彼は現物を見せて手に入れるまでの経緯を話した。


「猿の手」。
それは読んで字のごとく猿の前足部分のミイラなのだが、それに年老いた行者がまじないをかけて魔法の道具としたのだ。

その意図は冒頭にある通り、「運命を変えようとすれば大きな災いが降りかかる」という教訓を示す為。言ってしまえば魔法というか一種の「呪い」の領域の代物である。

使い方は簡単。猿の手を高く掲げて叶えたい願い口にするだけである。そうすれば口にした願いは自然な形で叶うのだ。

願いは3つまで、そして猿の手が使えるのは3人まで。
モリスは2人目だったが、彼によると1人目は1つ目、2つ目の願いは不明だが3つ目に自分自身の死を願ったらしい。
1人目の死を通じて「猿の手」を得たモリスも3つの願いを使い果たしたが、その表情は暗く、明らかに何か後悔をしている。

「猿の手」を使う権利があるのはあと1人。
ホワイト氏は譲り受けたいと彼に頼み込むが、ここでモリスは突然猿の手を燃える暖炉の中に放り込んだ。
ホワイト氏は慌てて暖炉の火を消して取り出すが、モリスは処分すべきだと強く主張。
それでも食い下がったためしぶしぶ了承するが、「願いの後にどうなっても知らない」「どうしても使わなければならないときは分別を働かせろ」という念押しを強く繰り返したのだった。











余談

  • パロディ/オマージュ
「願いが本人の意図しない代償を支払って叶う・意図しない形で叶う」という特徴もあって本作は非常に有名な作品。
そのためか、本作を元にしたパロディ/オマージュ作品・それらしき特徴の入った作品も数多く存在する。
世にも奇妙な物語』の「猿の手様」、『xxxHOLiC』、『ドラえもん』の「ランプのけむりオバケ」、『仮面ライダー電王』の「イマジン」等々…、




追記・修正は猿の手に願ったりせずに自分自身の手で行ってください。

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最終更新:2025年04月11日 23:52

*1 現在の日本円で1000~2000万円程度。