登録日:2020/02/06 Thu 22:20:41
更新日:2024/10/26 Sat 14:08:30
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「
ヌル」("Knull")とは
MARVEL COMICSに登場するキャラクター。
2018年に初登場し、大物ヴィランとして活躍している。
概要
初登場を果たしたのはドニー・ケイツによるVenom誌(2018)で、同誌におけるメインヴィラン。
登場と同時にその壮大なオリジンが明かされ、
ヴェノムに代表される
シンビオートたちのオリジンを根本からひっくり返す存在として大きな話題を呼んだ。
ヴィランとしてはサノスやギャラクタスらと同じく、活躍の場を宇宙においた大物系の悪役であり、
活躍の期間は短くとも往年のヴィランに負けず劣らずの強い存在感を放っている。
「闇」や「影」、「深淵」をテーマに創られたキャラクターであり、他の大物ヴィランたちと比べるとビジュアルが非常に不気味で、よりコズミックホラー的な雰囲気が強い。
“King in Black”(黒衣の王)という異名や、カルトにより信仰される旧神としての側面から、クトゥルフ神話を元にして造形されたものと思われる。
人物
宇宙の創生以前から生きている虚無の邪神。
世界に満ちる「光」と、それによって生まれた「命」を強く嫌悪しており、それら全てを破壊し尽くして宇宙を元の深淵に戻すことを目的としている。
そのための武器として、自らの能力を用いて「死剣オールブラック」に代表されるシンビオートたちを産み出し、彼らを率いて「光」との戦争を続けていた。
性格は邪神らしく残虐で傲慢。
基本的には落ち着いた態度をしているが、少しでもプライドを傷つけられると途端に激怒する傾向にある。
一度自らの領域を侵したシルバーサーファーをはるか彼方の宇宙まで追い詰めたほど。森羅万象全てを憎み、滅するその執念深さは「無」そのものと形容されている。
特に神々に対してより強い憎しみを抱いており、「神殺し」の異名は太古の時代から銀河中に轟いていたとされる。その殺戮への欲求は自らの”子どもたち”であるシンビオートにも受け継がれているが、
彼らもヌルによって無理矢理従わされていただけであり、本心では皆が「光」に惹かれていたらしい。
容姿
その絶大な力とは対照的に、身体は骸骨にそのまま皮を張り付けたように見えるほど痩せこけている。かなりの大柄であるはずのエディ・ブロックを軽く越えるくらいには背が高い。
肌は真っ白で、虚弱であるようにも見える。髪は肩にかかるほど長く、色は銀っぽい白。目は血のように赤く輝いている。
シンビオートたちに似た若干の形状変化能力を持っているようで、時折鋭い牙の隙間から舌を覗かせた不気味な表情を見せることがある。
”生ける深淵”たるシンビオートの鎧を身に付けており、胸には赤いドラゴンのシンボルが描かれている。
オリジン
ヌルは、宇宙が創造されるよりも以前の、虚無と深淵に満ちた闇の世界に唯一存在していた生き物だった。
彼はその深淵を自らの王国であると捉え、果てしない闇の中で満足を覚えていた。
ところが、突如セレスティアルズがそこへ足を踏み入れ、宇宙を創り出した(ビッグバンを引き起こした)ことで、その「光」に満ちた世界が彼の闇を塗り潰してしまう。
自らの領域を汚されたことで激怒したヌルは、光によって生まれた自らの影から一本の剣を引き抜く。
闖入者であるセレスティアルズをその場で処刑し、ヌルの「光」に対する果てなき戦争の火蓋が切って落とされた。
ヌルは神々がもたらした炎と炉をもって自らの剣を鍛え直し、「闇」の支配への準備を整える。無数の神々を屠っていくなかで、彼とその剣、「
死剣オールブラック」は宇宙中で恐れられるようになるのだった。
しかし、「光」を操るとある神との戦いの際、ヌルは深手を追ってしまい、気を失っている数百年の間に何者かがオールブラックを奪い去ってしまう。
眠りから覚めたヌルは、確固たる支配を実現するために新たな武器を欲し、改めて自身の能力について学ぶこととした。実験を繰り返す内、自らが深淵から共生生物を無尽蔵に創り出すことが可能であることを発見。
自らの命令に従順に従う彼らは他の生き物と繋がることで力を倍増させることができ、それを知ったヌルは「光」との戦争に彼らを利用することとする。
シンビオートたちの創造神となったヌルは、自身を中心とした集合精神から「子どもたち」を洗脳。自由意志を奪い、破壊と死をばら撒く生物兵器として利用できる手駒を手に入れたヌルは更に勢力を広げていく。
もはやオールブラックのように自身が物理的にシンビオートと結合する必要もなくなり、集合精神にアクセスすることで彼らを遠隔で操作することすら可能になる。やがてヌルは無数のシンビオートたちで構成された惑星を創り出し、それを自身の玉座とした。
多数のシンビオートによる軍隊を率いることでヌルの侵略は更に進むこととなり、ある日その魔の手は中世の地球にも及ぶこととなった。
ところが、ミッドガルの守護者たる雷神ソーがシンビオート・ドラゴンを撃退。接続していたシンビオートが神の雷を喰らったことでヌル本人にも反動が及び、
「光」によるダメージから再び気を失ってしまう。集合精神への支配力が弱まったことでシンビオートたちは自我に目覚め、宇宙中でヌルの意図しない宿主たちと結合し始める。
そうして宿主の心から「光」を学んだことで、シンビオートたちは善の心を覚え、ヌルへ反旗を翻すことを決意。
もはや創造神による支配を受け付けず、シンビオートたちは無限に繁殖を続ける。完全に制御を失ったヌルはやがて自らの造った惑星の中心へと引き摺り込まれ、
何億ものシンビオートにがんじがらめにされることで封印されてしまう。そうして、邪神による「光」への戦争は遂に終わりを迎えることとなったのだった。
全てが終わった後、邪神によって操られていたことを恥じたシンビオートたちは歴史を改竄し、ヌルの存在を抹消。
自分たちは太古の時代から高潔な戦士であった、という嘘の歴史を後世に伝えていくこととなり、邪神を封印する惑星は、彼らの言葉で「檻」を指す「クリンター」と名付けられた。
活躍
悠久の時を超え、ヌルはクリンターの奥底に封印されている中で深い眠りから少しずつ目を覚まし始める。集合精神への影響力が再び強まったことで封印が緩み、ヌルはまだ操ることのできる手駒を用いて自身を解放することを画策した。
地球でかつて雷神ソーに下されたシンビオート・ドラゴン「グレンデル」が生きた状態で保管されていることを知り、
それを支配下に置くことでクリンターを破壊しようとするが、紆余曲折あってヴェノムにより阻止され、計画は失敗。
ほぼ焼き尽くされたグレンデルの欠片はヌルを信仰するカルト教団により回収され、邪神とコンタクトをとるために大量殺人鬼クレタス・キャサディの死体と結合させられる。
グレンデルと共に新たな
カーネイジとして復活したキャサディは、クリンターを破壊しヌルを解き放って世界を滅ぼすため、シンビオートの力を更に解放しようと新たに虐殺を始める。
カーネイジ自身はヴェノムにより止めをさされたが、キャサディの策略によってエディは意図せずヌルを目覚めさせる繋がりを完成させてしまい、
暗黒の邪神は遂にその封印を解く。クリンターが破壊され、ヌルは新たに無数のシンビオート・ドラゴンたちを生み出し、世界に闇をもたらすための戦争を再開させるのだった。
かつて辱めを受けさせられた惑星に目をつけ、今度こそ全てを滅ぼすために真っ先に地球へと向かうヌル。
邪神のもたらす「闇」はかつてない速度で広がっていく。星をまるごとシンビオートで飲み込み、「光」を殺すことで、
封印が解かれて1年と経たない内に、地球から見える夜空には星々が消え去っていた。
やがて遂に地球へと到達したヌルは、手始めに地球全土をシンビオートで覆い尽くして太陽の光を完全に遮り、
手駒に作り替えたセレスティアルズで地上を蹂躙し、ヒーローたちの奥の手であるセントリーを惨殺、
ヴォイドを配下につけ、主要ヒーローの半数以上を手中におき、エディ・ブロックを殺害してしまう。
意思の力だけでシンビオートたちを従わせるパワーを持つという、ヴェノムの息子「ディラン・ブロック」に興味を持ち、
自分の息子として闇の道へ引きずりこむため、少年を引き渡すことを要求するが、
ディラン自身が反撃を始め、雷神ソーが戦闘に加わったことで形勢が逆転。
集合精神への支配が崩され、遂には太古の時代から戦いを続けてきた「光の神」である「エニグマ・フォース」が、戦争に終止符を打ちにやってくる。
「闇」の反転存在である「キャプテン・ユニバース」に選ばれ、死から蘇ったエディ・ブロックと対峙するが、
雷神ソーとシルバー・サーファーから力を借りた「光」の化身には敵わず敗北。跡形もなく焼き尽くされ、遂にヌルは完全に滅ぼされることとなった。
ディランに植え付けられた「闇」も消え去ったが、シンビオートの神としての力は、なんとヌルに止めをさしたエディ自身に受け継がれる。
新たに「黒衣の王」として神性を得たエディによってシンビオートたちは解放され、クリンターの歴史は新たな幕開けを迎えるのであった。
能力
- 腕力: セレスティアルズを圧倒、セントリーを素手で容易に引き裂ける。
- スピード: シンビオートの翼を用いることで、全速力のシルバーサーファーに容易く追いつくことが可能。
- 耐久力: シルバーサーファーやエゴなどといったコズミック・ビーイングのエネルギー攻撃を耐えきる。全父とヘラルドの力を兼ね備えた雷神ソーによる渾身の一撃でようやく傷を負い、下顎を吹き飛ばされた。
- 弱点: 「光」の力。パワー・コズミックや、その他神格存在に由来するエネルギーの攻撃に弱いため、唯一血を流させる方法はその弱点をつくことである。
何より特筆すべきは、シンビオートの創造神として彼らを自在に操ることができる能力。
闇からシンビオートを無制限に生み出すことができ、そうして創られた原初のシンビオートであるオールブラックがもたらすパワーがヌルを更に強化しており、
神々すら容易に屠ることを可能としている。
黒衣の王としての力の本領は、シンビオートが構成する集合精神のネクサスとして、彼らを文字通りコントロールすることが可能な点にある。
ヌルと精神的に接続されているシンビオートは宿主を介さずとも力を発揮することができ、神の加護を受けることで真の能力が解放され、巨大なドラゴンの形態をとる。
それら単体でもヴェノムやカーネイジを凌駕する強力な敵となり、星の侵略時には無数のシンビオート・ドラゴンたちがヌルの手駒として暴れ回る。
シンビオートを取り憑かせることで敵を洗脳し、自身の軍勢を更に強化することも可能であり、仇敵であるセレスティアルズすら自在に操作できる。
善の心を持つシンビオートさえ支配の対象で、何らかの手段で集合精神から切り離さない限り洗脳の影響からは逃れられない。
これまで生まれてきた全てのシンビオートの魂は集合精神に保存されているため、破壊されたはずのオールブラックもあっさりと復元してみせた。
そうしたシンビオートの脅威は大きいが、逆に言えばヌルの影響力の大半はそれらの軍勢に頼っているということでもあるため、
集合精神に何らかの妨害があれば支配が崩れ、一気に不利に陥ってしまうという弱点がある。操作しているシンビオートに大きなダメージが与えられると、その反動がヌル本人にも及んでしまう点も大きい。
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黒衣の王の真実 |
前述の通り、「闇」を司る神としての地位である「黒衣の王」の力は、ヌルのみが独占するものではない。
ヌルに止めをさしたエディにその力が受け継がれたように、黒衣の王とは常に誰か一人だけに押し付けられる、呪いめいた「責任」として用意された役割なのである。
ではその役割が何のために存在しているのかというと、ずばり「マルチバースの管理」である。
シンビオートという存在を通じ、空間どころか時間の制限すら超えて宇宙全域に影響を及ぼすことができるパワーをもって、世界の均衡を保つことが「黒衣の王」に与えられた責務だとされている。
現在のマルチバースが生み出された際、セレスティアルズがヌルとコンタクトをとったのは、彼に敵意があったわけではなく、むしろヌルをその宇宙の管理者に任命するためだったのだ。
よそ者から神としての役割を押し付けられ、責任を負うことに耐えきれず拒否したことから虚無の権化である邪神が生まれたのであり、キングインブラックの地位そのものに邪悪な意図が込められているわけではない。
一方で、マルチバースの管理者としての立場にある者は他にも存在する。「宇宙を内側から管理する」黒衣の王とは対照的な、
「マルチバースを外側から監視し、管理する」立場にある「Kings in White(白衣の王)」の役割は、「ビヨンダーズ」に任されているのである。
上位存在として好き勝手し放題な彼らとは違い、実際に傷つき、血を流しながら役割を果たす必要がある黒衣の王は、
ビヨンダーズよりも遥かに重い責任を背負っており、その責任を受け継いだエディも、ヌルと同じく貧乏くじを引いた自身の運命を呪うこととなる。
ところが、エディが黒衣の王としての力を受け継いだのは単なる悪運などではなく、宇宙の摂理、変えられない因果として定められた結果であり、
今後エディがどれほど足掻こうとも、悠久の時を超えた最終形態「イヴェンチュアリティ」と化して宇宙の終焉を見届けるという結末から逃れることはできないのである。
そうして現在のマルチバースが死に絶え、次の宇宙が生まれるとき、エディは自身の後継者が現れるのを座して待つのか、
それともヌルのように虚無で全てを呑み込まんとする邪神と化すのか、全ては息子のディランに懸けられている……
というのが、現在明かされている「黒衣の王」に関する設定・バックグラウンドの全貌である。
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関連人物
狂気に生きる虐殺の帝王。
ヌルの存在を知る少し前から、さらなる力を手に入れて神の領域に踏み込むことに興味を見せ始めており、
ヌルが滅ぼされた後は自分が新たに神の座に就こうと暗躍を続けている。
そうした点から、ヌルが示した「殺戮の神」としての理想像は、以降のカーネイジのモチベーションに大きな影響を与えていると言えるだろう。
憎悪に燃えるリーサルプロテクター。
ヌルの脅威を最初に知ったヒーローであり、彼の復活を阻止しようと何度も立ちはだかる。
ヌルの存在が明るみに出た頃、エディにはディランという息子の存在が発覚しており、
作劇的に、ヌルには「エディが息子を守る父親として成長するための、究極の舞台装置」としての役割があると言える。
ギャラクタスに遣えるヘラルドの一人。
タイムスリップすることで数億年前のヌル本人と激突し、激しい戦いを繰り広げたことがある。命をかけた決死の一撃で辛くも邪神を打ち負かし、
それが原因でシンビオートたちに恐れられるようになったとされている。
世界の守護者たる雷神。
かつてヌルに手傷を負わせた数少ない手練のうちの一人であり、恨みをもたれている。
キャプテンユニバースの力のみならず、シルバーサーファーのボードとソーのムジョルニアがなければ、ヌルとの最終決戦に勝つことはできなかっただろう。
「闇」を司るヌルの反転存在。
その正体は「キャプテン・ユニバース」を生み出す宇宙意思の代弁者として知られていた「エニグマ・フォース」。
ヌルと相対する存在として太古の時代から対立を続けており、地球への侵攻が始まった際は今度こそ戦争を終わらせるため、エディと共に決戦に挑む。
皆こう言っている…
「追記・修正が…
「追記・修正がやって来る。」
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最終更新:2024年10月26日 14:08