シルバーサーファー(MARVEL)

登録日:2024/06/21 Fri 12:25:45
更新日:2024/06/25 Tue 17:09:16
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シルバーサーファー(Silver Surfer)は、米国MARVEL社のコミックヒーローの一人。
初登場は1966年の『Fantastic Four』#48だったが、1968年に個人タイトル『Silver Surfer』が刊行されている。
MARVELを代表するコズミックヒーローであり、宇宙系クロスオーバー等に於いての活躍で知られている。

MARVELヒーロー達の中でも最も高潔な精神の持ち主であり、同時に最も強力なヒーローの一人にも数えられている。
そのためか、サーファーに絡む形で悪魔王メフィストや超兵器ドゥームズデイマンといった、普通のヒーローでは太刀打ち出来ないレベルのヴィランが初登場している他、コズミック・ビーイングに数えられるストレンジャーとも戦っている。


目次


【人物】

本名はノリン・ラッド(Norrin Radd)。
デネブ星系のゼン・ラ(Zenn-La)星に生まれ、若くして天文学者となった優秀な青年だった。ちなみに、当時から頭髪は無かった。

ゼン・ラは非常に科学力が進んだ星であり、しかも理想的に文明が成熟した結果、住民達は闘争を殆ど無くすことに成功していたという、極めて平和的な社会を実現していたとのこと*1
後にMARVELの銀河三大列強種族の内のクリー人系の派生文明ということになったが、本家の連中がバリバリに戦争真っ只中な上に異星人の人体実験まで行う倫理観も無い民族なのを考えると、ぶっちゃけ不名誉な追加設定である。

さて、ノリンはそんなゼン・ラの住民達の中にあって例外的に人間本来の情熱や意志の強さを失うことなく秘めた若者であり、愛する恋人(シャラ・バル)までもがいたのに心の何処かでは窮屈な世界を飛び出して心を震わす冒険をしてみたいと思っていた。
……天文学者として星々を見つめることを仕事としたのも、その希望の顕れだったのかもしれない。

そんな日々の中で、ノリンの監視していた宇宙に異変が。
ゼン・ラに星々を喰らう伝説の宇宙魔神ギャラクタスが降臨したのだ。

ギャラクタスの襲来に対して、戦いを忘れていたはずのゼン・ラも自分達の持てる力の全てを以てコズミック・ディバウラー(星を喰らうもの)に抵抗したが、無限とも思える力を持つコズミックビーイングには通じず、後は星ごと食われるのを待つばかりとなった。
しかし、ノリンはシャラ・バルの止めるのも聞かずに手製のロケットでギャラクタスの母船にまで乗り込むと、御前にてゼン・ラを救うことを懇願。

その魂の輝きを認めたギャラクタスはノリンを自身の永遠の虜囚とし、ゼン・ラを喰らわぬ代わりに自分の糧となる星を探す伝道者(ヘラルド)の役目を与え、ノリンはシルバーサーファーへと姿を変えられたのであった。こうして、青年ノリン・ラッドはゼン・ラ星人から銀ピカ全裸星人へと変貌を遂げたのだった……って訳さ!(Byボビー・ブレイク


その後、ギャラクタスの飢えを満たす星を探すサーファーは、太陽系にて我々の地球を発見。
接触を図ってきたファンタスティック・フォー(以下はffと表記)を歯牙にもかけずにギャラクタスにサインを送り主を降臨させる。
しかし、圧倒的な力を持つギャラクタスに必死の抵抗を見せるffと他のヒーロー達、地球の人々の姿にかつての自分達の姿を見たサーファーはノリン・ラッドとしての己を取り戻すと、アリシア・マスターズ*2の説得もあって、ffと共闘して主に反抗したのだった。

サーファーの力を加えても尚、ギャラクタスは強大であり地球の生命を吸う装置を破壊しても焼け石に水であったが、ここでギャラクタスの神託を見守りに来ていた筈のウァトウ*3もサーファーと同じく地球のヒーロー達の姿に感化されると、密かに逆転の一手としてギャラクタスの母船にある超兵器アルティメットヌリファー*4の存在を示し、ffにギャラクタスの目を引き付けている間に盗ませる作戦を実行させる。

こうして、地球の命と太陽系全域を天秤にかける選択肢を迫られたギャラクタスは退散し、MARVEL史に残る事件の一つは一先ずの解決を見たのであった。

このエピソードは元のコミックスの発刊以来、アニメ映画……等、メディアを変えつつも幾度も題材とされ、コミックの方でも何度も描かれている定番ネタである。
詳細が細かく変えられたり、サーファーの扱い*5が違っていたりもするが、ギャラクタスと共にシルバーサーファーというキャラクターを説明する上で、最も適切かつ簡潔なサンプルとなっている。

正史では、ギャラクタスの退散後に自らも地球を出ていこうとしていたもののギャラクタスが報復として地球全域に抑制フィールドを張っていたので出ていけなくされてしまった。
当初はffの世話になっていたものの、やがては自ら独り立ちしてヒーロー活動を開始。

一度は、あまりに高潔過ぎて地球人のダメダメな所に気がついてしまい「裏切られた」との思いから反対に攻撃を加えようとしたりもしたものの、頭を冷やして反省したりしている*6

その後、Mr.ファンタスティックがパワーの大部分を占めるボードが抑制フィールドに引っかかっているのでは?という可能性を見出したことで、またもやffの協力を得て地球外に脱出。
反対に地球には降りられなくなったものの、晴れて自由の身となったのであった*7

その後、サーファーが宇宙へと戻ったことを知ったギャラクタスはサーファーの後輩ヘラルドのノヴァがスクラル人*8に捕らえられてしまっていた件の協力を依頼。
サーファーもこれに答え、見事にノヴァを解放。
返礼として、ギャラクタスも地球に張られていた抑制フィールドを解除し、サーファーは自由に地球にも降りられるようになったのであった。
この後は、基本的に宇宙を主戦場としつつffや地球のヒーロー達と交流することもある……といった関係。


オリジナルアーティストは、お馴染み“MARVELヒーローの生みの親”であるスタン・リーと“キング”ジャック・カービーの黄金コンビ。
ギャラクタスを“神”と“悪魔”のイメージで描いたことから、それに対する“天使”のイメージで作り上げたのがシルバーサーファーだったという。『X-MEN』のエンジェルがストレートなキャラクターだったのに、此方は随分とハイブロウな……。如何に当時がサーフィン文化全盛だったとはいえ、宇宙を駆ける銀ピカ波乗り野郎なんてどうして考えついたのだろうか?

ちなみに、スタン・リーをして最もお気に入りのヒーローなのがシルバーサーファーなのだとか。
それが理由かは不明だがスタン・リーとバンド・デシネ*9の巨匠メビウス*10とのコラボコミックスで題材に選ばれたのも『シルバーサーファー』だった。

【主な能力】

前述のようにMARVELでも最強と呼ばれるヒーローの一人である。

代名詞となる銀色のボードは宇宙空間ならば光速度の99%。
大気圏内ならばマッハ10のスピードを誇り、これだけでも凄い数値だがこれは基本スピードであり、これ以上のスピードを発揮したり、ワームホール等を利用して光速でも数万年はかかる距離を移動することが可能。

銀色の肌は、素肌を覆う金属系の被膜であり、宇宙空間の過酷な環境(真空・超低温・超高温・有害な宇宙線…etc.)から完璧に肉体を防御することが可能。
宇宙空間でも生存可能なことからも分かる通り、地球の最も過酷な環境でも平然と過ごすことが可能であり、この時点でも相当に強い(確信)ことが解る筈。
この被膜は主ギャラクタスと同じくコズミックエナジーを吸収する効果があるようで、食事や呼吸も必要とせず本来は疲労もしない。
……ただし、元が人間であることからか精神は疲れるために休息として睡眠をする習慣は残っている。
肉体にダメージは無くとも、余りにショックなことを目撃したりダメージを(神経作用的に)受けた場合には気絶することもある。

更には被膜の影響か身体能力も驚異的なレベルにあり、100㌧以上を軽々と持ち上げ、自身の光速度に迫るスピードでも五感を失わない。
100㌧を軽々と持ち上げる腕力はMARVELではハルクやソーと同レベル……他社作品で言えばスーパーマンとも同等という評価である*11

以上のことから、基本スペックの時点でMARVELでも“身体能力では最強”と位置づけられるハルクやソーと並び最強。
両者に比べて能力を失う可能性*12があったり穴が無いという意味でもサーファーをMARVEL最強のヒーローと呼ぶ声が少なくないのはこの辺が理由となっている。

流石に強すぎるので実写映画版などでボードから引き離されると弱体化したりといった描写になっていたりするが原作コミックではそんなことはなく、空を飛べなくなる位のデメリットしかない*13

その上で、特殊能力として“コズミックパワー”の吸収、放出能力を持ち、サーファーの場合は特に“コズミックブラスト”と呼ばれる破壊光線として放たれることで知られている。
これは、MARVEL世界でも屈指の破壊エネルギーであり、最大で放てば巨大な隕石すら砕ける程。
尚、コズミックパワーの真の効果は主ギャラクタスが見せるような、万能の応用が可能な原子・分子変換能力なので、サーファーやその他のヘラルドは、その最も単純な使い方しか出来ていないという意味でもある*14


【主な関係者】


  • シャラ・バル
永遠の恋人。
ゼン・ラ星人だが髪の毛はある。
誕生エピソードにて捨てられたようなもんだったが後に再会。
正史以外の世界線では彼女がサーファーになっている場合もあり、MCUでもシャラ・バル変身バージョンの女性型シルバーサーファーが登場することが発表された。

常に腹ペコ状態でイラついているという、病んだ精神持ちの困ったオッサン。
それでいて、宇宙最強なのがタチが悪い。
ノリンを全裸星人にした張本人であり、現在では基本的には敵対してはいるものの、場合によってはすんなりと共闘もするという関係。


  • ファンタスティック・フォー
サーファーが地球で初めて出会ったヒーロー達であり、親交を結ぶ。
…が、長い歴史の中で敵対したことも度々。
ちなみに、4人がかりでもサーファーにはまず勝てない。
特にリーダーのMr.ファンタスティックは近年までにマッドサイエンティストと呼んでも差し支えないレベルでおかしくなっているせいかサーファーから警戒されており、平行世界に於いてはMr.ファンタスティック達が平行宇宙を越えて同盟を結ぶ→己は何しとるんじゃボケェ!とばかりにサーファーに襲撃されるエピソードが存在してたりする(おいおい)。


【主な敵対関係者】


  • ギャラクタス
上記参照。
生みの親にして最大の宿敵(サイズ的にも)。
ギャラクタスにとってもサーファーはヘラルドの中でも格別にお気に入りだったらしく、可愛さ余って憎さ百倍状態らしい。


ffの世話になっている時に出会っており、コズミックパワー目的で狙われたり実際に力を奪われてしまったことも。
実写映画2作目(『銀河の危機』)では能力の源がボードになってた為か、ドゥームがサーファーのボードに乗って飛行するというシュールな一幕も。


  • メフィスト
魔界を支配する悪魔王。
ヒーロー達の中でも飛び抜けた力を持つサーファーに興味を持ち、人間界に姿を現した。


  • ロキ
アスガルドの狡智の神(にして実写映画版の笑いの神)。
サーファーの力に注目してソーを倒させようとした。


  • バドゥーン
高い知性と科学力を持つ爬虫人類。
地球侵攻を企てた頃にサーファーと戦う。
サノスと同盟を結んでおり銀河三大列強にも牙を剥く。


宇宙最強になることもある紫ゴリラ。


  • ストレンジャー
科学が頂点を極めた結果コズミックビーイングにまで到達したというウルトラシリーズにラスボス級で登場してきそうな設定の宇宙人(デカいおっさんの姿だが実は種族の集合体)。
余りに短期間で地球上に超人類が誕生していることに興味を持ち、よりにもよってマグニートーを拉致。
「マジやべくね?宇宙の敵になるから今のうちに潰すわ」とサンプル選びの段階で失敗してるのに気づかずに地球に干渉・攻撃を開始した所をサーファーに説得されて止めた。


【ゲーム】

1990年に海外版ファミコンのNESにて日本でも銀のクソとして知られるシューティングゲーム『Silver Surfer』が発売。
突如として別宇宙から現れた侵略者に対抗する装置を完成させるためにサーファーがパーツを奪った宿敵達に挑むというストーリー。
とにかく地形が狭い&見分けが付けにくい上に敵の攻撃も激しく、トドメにでっかいボードに丸ごと当たり判定があるため非常に事故死が起きやすい。
ついでにミスする度にボードに崩れ落ちて泣くシルバーサーファーというあまりにも情けない画面が映し出され、上記の鬼畜難易度のせいで原作の強さとはかけ離れたサーファーの醜態を何度も拝む羽目になる。逆にステージクリア時には力強い決めポーズをとったサーファーの姿を拝める
一方、弱冠20歳だったティム・フォリン*15の作曲したゲームBGMはオーパーツ級の凄さで、グラフィックも非常に美麗。
敵として原作を活かしたバドゥーンやメフィストが登場してくる。


【メディア展開】

単独では98年にアニメが1シーズンのみ制作された位で、後は『ファンタスティック・フォー』関連のゲスト出演が殆ど。
日本では『宇宙忍者ゴームズ』の邦題で知られるか60年代ハンナ・バーベラ製アニメのシルバーサーフィンや、実写映画2作目での登場で知られる。
『ファンタスティック・フォー』が正式にMCUに参加することが決定した中で女性型にアレンジされてジュリア・ガーナーが演じることに決定。

尚、MARVEL版権シリーズの格闘ゲーム(MARVEL vs CAPCOM )を発売しているカプコンでは長年に渡りサーファーをプレイアブル化しようとしては断念しているらしい。
その代わりか『MVC3』のゼロのエンディングにてようやく姿を現し、故郷の世界に帰してくれるのだが…?


【余談】


  • 前述のようにノリンの恋人シャラ・バルがサーファーになったバージョンがあるが、何と『スパイダーマン』のメイおばさん(メイ・パーカー)が変身したバージョンも存在する。

  • 1970年代末~1980年代初期の頃には東映がマーベルコミック協力の下で日本版スパイダーマンをはじめとして数作作品を制作した事が有名だが、実はシルバーサーファーを主役にした番組が企画されていたこともあった。
    1982年制作のメタルヒーローシリーズ処女作にして宇宙刑事シリーズ第1弾となる『宇宙刑事ギャバン』は「銀色のボディ」「サーフィンのような乗り物に乗る」「指からビームを出す」などシルバーサーファーと似通った部分が複数あるため、「没になった日本版シルバーサーファーをリサイクルして誕生した番組」とされることもあるが、今のところ公式の資料でそのような情報は確認されておらず、憶測の域は出ない。



追記修正は宇宙を駆け抜けながらお願いします。


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最終更新:2024年06月25日 17:09

*1 この辺の設定はジョン・バーンがリメイクして以降の『スーパーマン』に似ている。

*2 ffの友人。基本的にはザ・シングことベン・グリムの恋人として知られる盲目の天才彫刻家。

*3 コズミックビーイング“ウォッチャーズ”の一人。地球方面担当。

*4 MARVELを代表する超兵器。その名のように広範囲を一瞬で焼き尽くす某天体破壊兵器の一兆度の火球をその場で発生させるみたいな危険が危ない装置。

*5 単発エピソードの場合はサーファーが犠牲となりギャラクタスを退散させるケースが多い。

*6 後付けでスパイダーマン達の活躍や説得で冷静になったり、ffの宿敵であるサイコマンに精神操作を受けていたことになった。

*7 捨てたはずの恋人にもしれっと会いに行けるようになった。

*8 銀河三大列強の一つ。変身能力を持ち地球にも積極的に干渉してくる迷惑な奴等。ffの宿敵の一つ。

*9 フランスの高級感あるアートとしての漫画作品。

*10 本名ジャン・ジロー。極めてリアルな画風とSFデザインでカリスマ的な人気を誇る世界的アーティスト。日本でもメビウスが主体となって発行された『ヘヴィメタル』誌の邦訳で一部に人気を博し、大友克洋や藤原カムイに影響を与えたことでも有名。

*11 MARVELは平成初期ライダーばりにスペックに妙にリアリティーを付けたがる傾向にある。なので、クロスオーバーさせた場合にはDCで数十万㌧を持ち上げるスーパーマンとMARVELで数百㌧を持ち上げるハルクが=で“互角の腕力”となるのである。

*12 近年のMCUではそんなことはないが原作のソーはムジョルニアを手放して一定時間経つと人間の姿になるデバフ効果持ちだった。

*13 ちなみに、サーファーが念じればどんなに遠くに引き離されてもボードが駆けつけるので余り意味がない。

*14 尤も、後年のエピソードにて能力が成熟してきたのか、サーファーはミクロレベルで放ったコズミックブラストで分子構造に働きかけて花の色を変えたりしている。

*15 8bitや16bit時代に拡張音源なしでハード音源の性能を極限まで活かした音楽を幾つも送り出した作曲家。ただ不幸なことに彼が楽曲を提供したゲームは本作も含めて殆どがクソゲーであり、「提供先に恵まれない不運の天才」としても知られる