SCP-5690

登録日:2020/03/31 (火曜日) 16:26:12
更新日:2023/07/09 Sun 02:17:26
所要時間:約 12 分で読めます





この街は半分地獄に堕ちてるが、そこに来るヤツらも大概である。


SCP-5690はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクトである。
この記事にはアノマリー分類システムが導入されており、分類のされ方が従来とは異なる。詳しくは当該項目を参照。
収容クラスSafe
攪乱クラスはVlam。五段階中二段階目、影響力はなくはないが特に広まりはしない。
リスククラスはNotice。五段階中一段階目、特に危険はない。
報告書の閲覧にはセキュリティクリアランス3が必要である。
メタタイトルは「まさしく悪魔な女王様」。

はじめに

当オブジェクトはSCP-4661を根幹にしているため、まずそちらからお読みいただきたい。
なお、あっちと大体同じノリの記事となっている。いやこっちの方がひどいかもしれん

+ めんどくさいという方向けの要約
SCP-4661はアメリカ・ラスベガスの街の一区画。
ココだけ世界が半分地獄と一体化してて、当たり前のように悪魔がいる。
当初はそのまま完全に地獄に乗っ取られかけたが、とある財団職員の奮闘の甲斐あって悪魔の親玉との協定が成立し(賭けに勝ち)なんとか食い止めた。
ちなみにその職員は今SCP-4661を収容するサイト-616の管理官をやっている。

しかし後から調べたらこの街には最初から結構悪魔がいたことが分かって財団は忙しそう。

説明および特別収容プロトコル

初っ端から失礼するが、SCP-5690はラスベガス(SCP-4661)にある性風俗店だ。
SCP-4661は七つの大罪のうち強欲をつかさどる悪魔たちによって引き起こされていたが、この店の嬢は16体の色欲をつかさどる悪魔で構成されている。
これなんて異種族レビュアーズ?

とはいえ、一般客は「そういうタイプのプレイを推している店なんだな」くらいにしか思わないらしく、この店とその嬢の異常性には特に気付かないらしい。
またわざわざ悪魔が風俗をやる理由だが、このタイプの悪魔は生者とヤる時に養分となる妖魔共振エネルギー(TRE)を得られることのようだ。
というかラスベガスにおいて売春は普通に犯罪だし、取り締まりも日本より厳しいはずだが…。

まあこの街の悪魔は底が知れないところもあるので、財団はこの店の経営者SCP-5690-Bと盟約を結んだ。
契約とか協定でなく、盟約である。これには悪魔実体や天界実体を霊的に束縛する効果があるらしい。天界実体ってなんだ。天使とかか。
これにより、財団はSCP-5690を現地警察から守り、代わりにSCP-5690-Bはベガスから出ず、また健全経営していることを財団に報告することになっている。
後述するがSCP-5690-Bも同じくその方面の悪魔である。

発見者へのインタビュー

SCP-5690はSCP-4661を収容するために建てられたサイト-616に配属されたばかりのエージェント クラーク・アダムズによって偶然発見された。
…ん?偶然?風俗店を発見した…?

質問者: エージェント アリス・スターリング

対象: エージェント クラーク・アダムズ

«記録開始»

スターリング: どういうことなの、クラーク。

アダムズ: いや、待ってくれ、ちゃんと説明する-

スターリング: 売春宿で何をやってたの?

アダムズ: それはその、売春宿でやる事ったら2つしかないだろ。

スターリング: どっちも違法よね! あなたが余暇に何をしようと勝手だけど、せめて-

アダムズ: なぁ、アノマリーの話に集中してくれないか?

[スターリングは溜め息を吐く。]

スターリング: ええ、そうね。聞かせてちょうだい、最初から。

というわけで、発見者インタビューというより浮ついた部下をとっちめるみたいになってるインタビュー記録の始まりである。

アダムズ: えーと、俺はちょうど一連の報告書を読み終えたばかりで — どういう感じだか分かるよな — 街を探索して肌で感覚を掴もうと思った。
数人の知り合い、敢えて名前は挙げないが、ともかくそいつらから夜の、あー、“お仲間”と会える超ファンシーで高級な店があるって聞いてたんだ。
だから、あの夜の俺はかなり気分がウキウキしてた。俗に言うだろ、“豚は自分が欲しいものを欲しがる”ってやつ。

スターリング: その話本当に必要?

本能に従うのはいいことです。(適当)

アダムズ: 事件の背景を分かってもらおうとしてるんじゃないか、ボス。それでとにかく、その店に行ってみたら、ちっぽけでせせこましい建物だった。
その時、窓の内側で光る赤い光に気付いて俺はこう思った、あのクソ野郎どもは俺を売春宿に送り込みやがった、と。奴らは俺を騙しやがった。
すぐにでも戻って、俺を違法施設に案内しやがったことを説教してやろうかと思-

スターリング: さっき、そこが売春宿なのは初めから知ってたって言ったわね、クラーク。

アダムズ: …うん、まぁな、知ってたよ。

彼はこの後もだいたい終始このエロ本を隠した中学生みたいな感じです。

スターリング: 先に進めて。

アダムズ: うん、入店した俺は、この小さなナントカが[アダムズはテーブル上のTREカウンターを指差す]無闇やたらとピーピー喚き始めたのに気付いた。
シフト後にバッグから出し忘れたせいで夜が台無しさ。

スターリング: じゃあ、きっと建物から出て基地に警告したのよね。

アダムズ: いや、違う。その、お- 俺もそうしようかとは思ったよ、でももしこれが誤報か何かだったらマジで気まずいし、それに俺はもう入店してるんだから、部隊を呼ぶ前に自分で調査できるかもしれないと考えたんだ。

スターリング: 成程。

本当かなぁ…。

アダムズ: とにかく、受付の小さいデスクに座ってた女が、夜のお楽しみをお探しですかって訊いてきた。俺はそうだと答え、向こうは料金を伝えた。
俺は支払った、収容のためにはケチケチしてられない-

スターリング: 自腹よね?

アダムズ: 当たり前だろ。

スターリング: じゃあ、昨夜あなたの名義で70ドルの引き出しがあったのは何?

アダムズ: えっと、ガソリン代かな?

なぜ一瞬でバレる嘘をつくのか。
にしても70ドルは安くないか?アメリカの、っていうか悪魔の相場のことはよく分からないけど…

アダムズ: とにかく、俺は階段の上にある部屋の1つに通された。
入室した俺は — なかなか上品な部屋で、装飾も趣味が良かった — ベッドに寝転んだ。待ち伏せに備えるためだ。

スターリング: 報告書によると、全裸で。

アダムズ: その通り、ボス。郷に入っては-

[スターリングは頭を振り、身振りで続きを促す。]

もうツッコミすら入らなくなった。

アダムズ: で、数分後、女がドアを開けて入ってきた。見事なイブニングウェアを着た可愛らしい女の子だ。
俺はマジでそれに気を取られてたから、いざ一緒にベッドに入るまで、頭に角が生えてるのには気付かなかった。

スターリング: 最悪。

アダムズ: あのね、ボス、俺はとんでもない金額をぶったくられたんだ、払った分は取り返さなきゃならない。そして、いやもう、高いカネ出した価値はあったよ。あれはね、もう今までで最高の-

スターリング: その話は別に聞かなくていいわ、クラーク。

わかった、コントだなこれ?

アダムズ: あ、そうすか。で、事が済んだ後、俺は大騒ぎしてるセンサーと女の子の角を結び付けて、俺はきっと悪魔の溜まり場を見つけたんだと思った。

スターリング: そこで基地に帰還して報告したのね。これからその店に部隊を-

アダムズ: あー、いや。その後は第2ラウンドに戻った。

«記録終了»

はい。

というわけで発見者のアダムスは異常に勘付き、それはそれとして2発ヤった後財団に店の存在を知らせたことでSCP-5690は捕捉された。
やっぱ2回戦やって70ドルは安くない?
ともかく、新しい場所系オブジェクトが見つかったので探査をしなければならない。

探査記録

メンバー:
エージェント アリス・スターリング
エージェント クラーク・アダムズ
機動部隊オメガ-33 “オーシャンズ300”の隊員2名
«記録開始»

[機動部隊が建造物に入る。]

スターリング: ええ、売春宿ね。

«記録終了»

はい。

経営者へのインタビュー

どう考えても機動部隊を連れてくる必要がないのは上の記録で明らかなので、改めてエージェント二人で訪れての記録である。

質問者: エージェント アリス・スターリング、エージェント クラーク・アダムズ

対象: SCP-5690-B

«記録開始»

アダムズ: どうも、こんにちは。

SCP-5690-B: 帰ってください。

スターリング: 幾つか質問をしたいだけです。私たちはこの地域の-

SCP-5690-B: 馬鹿にしてます? あなたたち財団でしょう、ワッペンのロゴが丸出しですよ。

[アダムズがワッペンの位置を正し、咳払いする。]

スターリング: …ええ、まぁ、その通りよ。私たちを知ってるのね?

SCP-5690-B: アンダーベガスの重要人物は全員あなたたちを知ってます。大物悪魔を倒せば波風が立つのは当然ですって。

SCP-4661の収容過程で財団は冥神プルートーを退けているため、レジスタンスである一般悪魔に警戒されるのは確かに当然である。
しかし財団職員がロゴ丸出しで表出歩くのはいかんでしょ。

スターリング: じゃあ、幾つか私たちの質問に答えてもらえる?

SCP-5690-B: いいえ。

スターリング: 何故?

SCP-5690-B: タダ働きはしない主義です。

[SCP-5690-Bは小さなパンフレットをスターリングに手渡す。]

スターリング: …本気?

SCP-5690-B: 女の子にも仕事が必要ですからね。

スターリング: 1時間あたり70ドル? そんなに- これは安いの?

アダムズ: ええボス、安いなんてもんじゃない。出血大サービスだ。正真正銘-

スターリング: あなた今まで幾つの売春宿に行ったの?

いくつか突っ込みたいところあるけど多分血は出ないと思います。

SCP-5690-B: それで、払うんですか、払わないんですか?

アダムズ: ご心配なく、ボス。俺が請け負う。 [SCP-5690-Bに] 30分で35ドルならどうだ。

SCP-5690-B: ふぅん、前回はそこまでお速くなかったようですけど。

アダムズ: ちょっと質問するだけだから、な。

SCP-5690-B: 交渉のつもりなら- いえ、いいです。それで受けましょう。

アダムズ: そりゃ良かった。 [スターリングに] よし来た、ボス、このレディに35ドル払っといてくれ。

スターリング: さっき“俺が請け負う”って言ったじゃない!

アダムズ: 俺がセックスに金を払うタイプのいかがわしい男に見えるか?

はい。

スターリング: [溜め息] この- ええ、分かったわよ。どうぞ。

SCP-5690-B: ありがとうございます。さぁ、もう始まってますよ。

スターリング: オーケイ。いつからこの店を経営してるの?

SCP-5690-B: あぁ、数年前ですね。この業界は成長こそ遅いですが、堅実ですし、特にこの地域では安定した顧客層がいます。
最初は私と他2人の女の子でしたけど、今は16人います。

時系列を考えるとSCP-4661の出現より先にこの店は既にあったと思われる。やはりこの街の悪魔の勢力は底知れない。

スターリング: あなたたちの異常性を認知している人はいる?

SCP-5690-B: ええと… それほどいません。お客さんはこの店を安全で、極端に高過ぎなくて、何より重要ですが寝るのにはとても良い場所だとしか思ってませんよ。

スターリング: “異常なほど”良い場所という意味?

SCP-5690-B: [呟き] 理由もなく“精液悪魔”なんて呼ばれてるわけじゃないので…

スターリング: え?

SCP-5690-B: え?

アダムズ: 実際に客からそう呼ばれるのか?

SCP-5690-B: …時々。

上述の説明からすると彼女らの糧は精液じゃなく性行為時に発生する悪魔エネルギーとのことなので、誤解されるのは心外であろう。
でも客からしたらそうとは思えません。特に角が生えてるような娘には。

スターリング: 先に進みましょう… このビジネスからどんな利益を得てる?

SCP-5690-B: どういう意味です?

スターリング: 地獄に戻ったらどうなの? 警察を不安視する必要もないし、好きなだけ悪魔とファックしていられるんじゃない?

SCP-5690-B: 無理ですね。私たちは特殊な悪魔族です - 悪魔と人間の間から放出されるエネルギーを吸収する。両方いなきゃダメなんです。
私たちが悪魔で、人間はお金を払って私たちに会いに来る。私たちはお金と栄養分を手に入れる。とても効率的でしょう。

スターリング: 確かに。

SCP-5690-B: それに、この地域の女の子たちの助けになれます。

スターリング: どうして?

SCP-5690-B: あれっ、まさか私が地獄から従業員の女の子たちを輸入してるとでも思ってました?
あの子たちの一部は、この街が地獄に堕ちてからまた浮上した時 — ついでながら、あの件では感謝してます — 一緒に引き上げられて、帰れなくなったんです。
この店が無ければ、あの子たちは飢え死にするか、隅っこで働くしかなくなるでしょう。昔の私のように。

スターリング: じゃあ、あなたは… あれと引き換えに、その子たちに家を提供してるの。成程。随分優しいじゃない。

SCP-5690-B: ええまぁ、女の子同士協力し合わなくちゃいけませんし。

[沈黙。]

なんでいい話になってるんですかね…
ともかく、この店は様々な人間や悪魔の利害や境遇がワケわからん方向にマッチした結果みんな幸せに運営できているようだ。

スターリング: もしかしたら料金を払い過ぎたかしら。

SCP-5690-B: まさか。まだ20分ぐらい残ってます。

スターリング: 払い戻してくれる?

SCP-5690-B: …いいえ。

アダムズ: なぁ、もし支払った分の時間が余ってるなら、無駄にならないように俺が、その…

スターリング: ジーザス・クライスト、クラーク。

SCP-5690-B: [呟き] やめてくださいよ、あんな奴。 [アダムズに] ええ、あなたがその気なら私は勿論OKです。

スターリング: まぁ素敵。私は車で待ってるわ。

ああもう結局こうなる。
女上司を待たせて風俗が楽しめるのだろうか…楽しめそうだなコイツは。

スターリング: あ、ちょっと待って。

SCP-5690-B: はい?

スターリング: さっき“特殊な悪魔族”と言ったけれど — サキュバスってことでいいのよね?

SCP-5690-B: [笑い] いいえ、可愛い人。誰しもそう考えますけど、実は違います。

スターリング: だったら、あなたたちは何なのかしら?

SCP-5690-B: インキュバスです。

スターリング: インキュバスって男だけじゃないの?

SCP-5690-B: やっぱりそう思いますか。サキュバスとインキュバスの違いは、受けるか攻めるかだけです。

スターリング: あら。そういう事なら、お二人とも楽しんできてね。

[アダムズの笑顔が薄れる。]

SCP-5690-B: ええ、存分に。

«記録終了»

16人の嬢は女の子とは言ったが-B自身もそうだとは言ってない。
インキュバスは「攻め」。
つまりアダムズはこれから…


追記・修正はこの店に行きたいか考えてからお願いします。



















事案記録

1993年6月25日 11:42 PM、SCP-5690周辺のTRE値が急落するという異変が生じた。
小規模な調査チームが現場に派遣されたが、その時にはもう値は戻っていた。
SCP-5690-Bに聞いてみると、「特殊なクライアントが訪れていた」とのこと。

守秘義務で詳細は教えてくれなかったが、防犯記録の一部を再生してくれた。
その内容が以下である。

不明: せめて日程変えてくんない?

SCP-5690-B: ダメです。あなたそもそもこんな所に来ていい身分じゃないでしょう、お父様にバレたら私が磔にされるんですよ。

不明: まぁね、でも直ぐ元気に復活できるさ。信用しなよ、俺知ってんだから。

  • 来たことで悪魔エネルギーが急落した
  • 身分が高い
  • お父様が特にヤバい
  • 「磔」
  • 復活できることを知っている

……えーと、





ホントになんてところに降臨してきてんですか。
貴方はplayするんじゃなくてprayされる側の存在でしょうが。
ここの神とか悪魔方面の人たちはどんだけ俗に濡れ果てているんだ…

もうやだこの街…いや、この世界。


追記・修正はラスベガスでお願いします。

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最終更新:2023年07月09日 02:17