SCP-4666

登録日:2020/05/04 Mon 03:38:48
更新日:2025/04/19 Sat 00:46:01
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あまりにも凄惨な、第二の聖夜の舞台裏。



SCP-4666はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト (SCiP) のひとつである。
オブジェクトクラスKeter
現時点で収容できていない、極めて危険なオブジェクト。

最初に

この項目には非常にグロテスクな描写が含まれます。苦手な方は注意。

概要

SCP-4666は、痩せ衰えた風貌をした背の高い(2~2.3m)高齢のヨーロッパ系男性である。この人型実体は地球上のいかなる場所にも瞬時に移動する能力を持っている模様。様々な痕跡を活動のたびに残していくが、毛髪からはDNAが検出されず、指紋は二重渦巻きという現代人にはまず見られないもの*1。また、周辺環境を問わず常に全裸で行動する。ぱっと見はただの変態ジジイ
……しかし、その特異性はまさに「残酷」の一言である。

特別収容プロトコル
  • 財団はあらゆる媒体を使ってSCP-4666が関連していると思しき事件がないか常に監視する。
  • 後述の「ヴァイナハト・イベント」の途中の家庭を発見したら、収容機動部隊を派遣しSCP-4666の収容を試みる。
  • SCP-4666により発生した死亡事件は隠蔽されるか、ただの強盗殺人に偽装される。

瞬間移動能力のために収容の努力がほぼ意味をなさないため、財団の対応も後手後手に回っている印象。なにせ現状では対象に接触することすらできていないのだ。

ヴァイナハト・イベント

SCP-4666が行動するのは1年間のうちで12月21-22日の夜から1月1-2日の夜にかけての12日間のみ。この期間は「ヴァイナハト・イベント」と呼ばれ、SCP-4666は北緯40度以北の住居に毎晩出没するようになる。「ヴァイナハト・イベント」の標的に選ばれる家庭は、常に以下の条件を満たしていることが分かっている。
  • 孤立した農村地域にあること
  • 8歳未満の子供が1人以上いること
  • 12日間、周辺の積雪が継続していること
「ヴァイナハト・イベント」は以下のように進行する。

第1-7夜:子供が家の近くでこちらを眺めているSCP-4666を目撃する。またいくつかの事例ではSCP-4666は夜に窓から子供の寝顔を覗き込むこともあった。

第8-11夜:屋根や屋根裏部屋から謎の足音が聞こえるようになる。また、家の中に不快なにおいが漂い始める。

第12夜:2種類のシナリオのうちいずれか1つが発生する。
  • SCP-4666は眠っている家族に傷を負わせて動けなくしたうえで同じ部屋に集め、互いが見ている前で拷問を行いつつなぶり殺しにする。この拷問には何らかの宗教的意味があるのではないかと予想されている。8歳未満の子供1人だけは生かしておき、拉致する。該当する子供が2人以上いる家庭でも拉致するのは1人のみで、他は殺害する。
+ 殺害方法の例
  • 天井から逆さ吊りにする。
  • 手のひらをナイフやフォークで壁に固定し、舌を引き抜く。
  • 四肢を引きちぎり、そこから露出した骨片で刺殺。さらに内臓を抜き出して、細かく切り刻む。
  • 生きているうちに一部の皮をはぎ取り、それを捕食。首を切断した後、遺体をそれぞれのベッドに並べなおし、首は階段に上から年齢順に並べる。
  • 事例の15%ほどでは、SCP-4666は家族に危害を加えることなく、子供のベッドの足元に「プレゼント」(SCP-4666-A実例)を置いて立ち去る。
+ 「プレゼント」の内容
  • 人間の子供の皮と人間の腱の糸から作った太鼓
  • 幼児の骨片を削って作ったナイフ
  • 中をくりぬいた幼児の大腿骨で作った横笛。血液で染色されている。
  • 幼児の指の骨を腱でつないで作った人形13体のセット。18人の子供が材料に使われている。
  • 2~3歳の男児の頭部に松脂で人の皮を19層貼り付けて作ったボール。
  • 木の持ち手に43本の人間の歯(全て別の人間のもの)をはめ込んだヘアブラシ。歯ブラシでは?

……あまりにもエグイ。エグ過ぎる。というか子供になんてものを渡しているんだ。


補遺4666-01

2018/01/02、ヴァイナハト・イベント終了後のある家庭で複数のSCP-4666-A実体が回収された。その中には女児の身体に以下の改造をして作ったSCP-4666-A-0960が含まれていた。
  • 様々な衣服の切れ端を紡ぎ合わせたドレスが体に直接縫い付けられていた。
  • 口は人間の腱で作った糸で縫われ、唇は人血からなる塗料で塗装。
  • 本来の指の上から、他の子供からはぎ取った爪を松脂で貼り付け、前述の塗料を塗る。指は3本欠けていた。
  • 頭皮をはぎ取り、別の子供の頭皮を髪の毛ごと貼り付ける。
  • 眼球をくり抜き、目を描いた小石を代わりにはめ込む。
想像するだけで吐き気を催すような凄惨さだが、なんとこの女児は発見時点で生きていた。調べた結果、この哀れな女の子は2年前のヴァイナハト・イベントで拉致されたエカテリーナ・モロゾヴァ(7歳)であることが分かった。すぐに病院へ空輸し、処置を施した結果、なんとか意識を取り戻すことに成功。財団職員によりインタビューが行われた。

エカテリーナは当初、今までに知られていない未知の言語を話していたが、しばらくするとロシア語で話し始めた。この未知の言語は言語学部門により、遥か昔にゲルマン人が使っていた言語との関連が指摘されているという。以下、インタビューの全文。

音声ログ4666-06201

日付:2018/01/02

時刻:23:27 AKST-23:49 AKST

場所:アラスカ州ジュノー、バートレット・リージョナル病院

質問者:エージェント アントニ・コヴァルチック (エージェント スーザン・ミューズ同席)

対象:エカテリーナ・モロゾヴァ (SCP-4666-A-0960)、女性、7歳

[記録開始]

エージェント コヴァルチック: やあ、僕はアントニ。君のお名前は?

E.M.: あ… あなた、彼の所に私を連れ戻すの?

エージェント コヴァルチック: いいや、そんな事はしない。僕はただ君と話したくてここにいるんだ。

E.M.: (沈黙) 戻りたくない。

エージェント コヴァルチック: 戻らなくていいんだ、今はもう安全なんだよ、 お嬢さん(myshka)

E.M.: (沈黙を保つ)

エージェント コヴァルチック: 君に何が起きたか教えてくれるかい? 彼が君の家にやって来た夜を覚えているかな?

E.M.: 覚えてる… 彼はママとパパとカーチャとユリアンナを時間をかけて傷付けて、みんな血を流してた… みんなが叫ばなくなった後、彼は私を袋に入れた。

エージェント コヴァルチック: 袋って?

E.M.: 大きい袋を持ってたの。他の子たちも袋の中にいた。他の家にも行ったと思う、夜中ずっと誰かが袋の外で叫ぶのが聞こえた。どの家でも彼は別な子を袋に入れた。それで、夜が終わったら私たちを連れて行った。

エージェント コヴァルチック: 何処に連れて行ったんだい?

E.M.: …地下… [未知の単語]… 深く…

エージェント コヴァルチック: 地下? 地下室のことかな?

E.M.: 深いの… 全部が土と泥と氷。そこら中に骨があった。全部冷たい。寒すぎて眠れない。

エージェント コヴァルチック: そこには君の他にも、沢山の子供たちがいたのかい?

E.M.: 沢山の子供たち… 沢山のトンネル、沢山の穴、でも全部は見えない。他の[未知の単語]は見えない。暗すぎるから。私の穴にはルネとヘクラとサーシャとポールがいた。一緒におもちゃを作った。

エージェント コヴァルチック: 玩具?

E.M.: おもちゃを作らないと、食べさせてもらえない。おもちゃを作るのをやめちゃダメ、眠っちゃダメ。さもないと彼に痛めつけられる。

エージェント コヴァルチック: 痛めつける? どうやって?

E.M.: 殴ったり、火傷させたり… 指を噛み千切ったり。自分の部屋の火で料理して食べちゃうこともある。彼はフィリップとサリーを食べた。

エージェント コヴァルチック: いったい君は、どうして… こんな… 姿になったんだ? これは彼がやったのか?

E.M.: (沈黙) ルネとヘクラとサーシャとポールがやった。やらなきゃいけなかったから。

エージェント コヴァルチック: …何故?

E.M.: 私は病気になった。おもちゃを作れなくなった子は、おもちゃになるの。

[記録終了]

エカテリーナはこの直後に息絶えてしまったが、重要な情報をもたらしてくれた。
  • SCP-4666は地下のような場所に住処を持っており、拉致した子供たちをそこへ集めていること。
  • 配られたプレゼントは子供たちに作らせていること。
  • 気に入らない子供には暴行したり、殺害したり、プレゼントに改造していること。
まさに鬼畜外道の所業と言わざるを得ない。一刻も早く財団が収容に成功することを願うばかりである。

しかし、財団の調査によると、ヴァイナハト・イベントはほぼ毎年、少なくとも18世紀後半から起きていたようだ。また、数々の歴史的文書には、SCP-4666と思われる存在が紀元前から活動していたことが記録されていた。財団がSCP-4666の存在を把握したのは1974年になってから。

これだけの長期間、財団の目をごまかし続け、かつ現時点でも有効な策を練ることができていないのでは収容は容易ではないだろう。

考察

ここまでの情報から、SCP-4666のモチーフが何なのかは、ほとんどの方が予想がついていることと思う。そう、子供のころ心待ちにしていた存在「サンタクロース」である。

しかし、子供に夢を与えることが仕事のサンタクロースとSCP-4666は似ても似つかない。
また、サンタクロースを始めとするクリスマスの風習はキリスト教に基づいているのだから、イエス・キリスト誕生前である紀元前からSCP-4666が存在しているのは一見矛盾しているように感じられるかもしれない。

……子供のころに聞いたことは無いだろうか?
「いい子の所にはサンタさんがプレゼントを持ってきてくれる。でも悪い子の所には黒サンタが来て、連れていかれる」といった話を。

日本ではあまり知られていないが、ヨーロッパでは「クランプス」というサンタクロースの相棒たる悪魔がよく知られている。クランプスは、悪い子は「地獄の穴へ落とす」あるいは「自分の住処へ連れていく」という。エカテリーナが語ったSCP-4666のアジトの描写とも似ているように感じる。

実はこのクランプスを始めとする「悪いサンタクロース」の伝承はヨーロッパ各地に形は違えど古くから存在する。
そもそも「サンタクロース」という存在もキリスト教が成立してからのものではなく、北欧のゲルマン民族に伝わっていた妖精の伝説が変化したものと考えられているのだ。
つまり、SCP-4666が紀元前から存在していたとしても何ら不思議ではない。

また、古代ヨーロッパで一大勢力を誇ったゲルマン民族ヴァイキングには「ユール」と呼ばれる冬至に行う祭りがあった。「ユール」の期間は12月21日~1月1日。…そう、ヴァイナハト・イベントとちょうど一致する。「ユール」は後にクリスマスと一体化していったが、現在も北欧の地域ではクリスマスを祝う行事を「ユール」と呼ぶそうだ。

きっとSCP-4666は財団が存在していないほどの遥か昔から暴虐をふるってきたのだろう。
そして財団が手を打たない限り、凄惨な儀式の犠牲者はこれからも増え続ける………


SCP-4666 - 冬至祭の男(ユール・マン)

余談

SCP財団には他にもいくつかクリスマスに関係するSCPが存在する。
以下、簡単に紹介していきたいと思う。
  • SCP-784(通称:今日は楽しいクリスマス)
毎日クリスマスを祝っているヤバい奴ら。
彼らに「クリスマス精神が足りない」と見なされると、拉致られて彼らに「クリスマス精神」あふれる格好に改造されてしまう。要するに他人に理想を押し付けるクリスマスオタクの集団。
1987年製造のスパコン。
地域の運送システムをハッキングすることで、恵まれない子供に荷物を届けている。
子供に夢を届けるその姿はまさに・・・

追記・修正はサンタクロースを信じ続ける純真無垢な人にお願いします。



CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-4666 - The Yule Man
by Hercules Rockefeller
http://www.scp-wiki.net/scp-4666
http://ja.scp-wiki.net/scp-4666

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最終更新:2025年04月19日 00:46

*1 現代人の指紋は渦状紋、蹄状紋、弓状紋の3種類に大別され、これ以外の形の指紋は極めて珍しい。