SCP-153-JP

登録日:2020/07/06 Mon 22:50:04
更新日:2023/11/02 Thu 16:21:35
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SCP-153-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。

オブジェクトクラスは「Euclid」で、JPのコードが示す通り日本支部の管轄にある。

オブジェクトの概要

まずこれがなんぞや、ということだが、パソコンで起動する正体不明のプログラム及びアルファベット28文字で表現される言語不明の文字列である。
モノ自体が能動的に動くものではないのにオブジェクトクラスはSafeではなくEuclid……この時点でなんか嫌な予感がした人も多いだろうが、まぁまずは読み進めていただきたい。

SCP-153-JPに指定されているのはプログラムの方で、文字列は「SCP-153-JP指定キーワード」と称されている。
SCP-153-JP指定キーワードを記した紙は一枚だけ保存され、それ以外は全て焼却処分、また担当職員であってもキーワードを認識することは禁止されている。また担当職員は2週間に一度精神検査を受けることが義務付けられている。
仮にインターネット上でキーワードが発見された場合、即座にその発信者の元にエージェントを派遣する。……なんかきな臭くなってきたぞ。

異常現象を起こす主体はプログラムの方だが、むしろヤバイのはキーワードの方である。
このキーワードを認識した人はそれをパソコンに打ち込みたくなる衝動に駆られる。
一応、この衝動は外部からの拘束で抑えられる程度ではあるが、打ち込んでしまった場合、そのパソコンにSCP-153-JPがインストールされていなくてもSCP-153-JPが起動する。キーボードが壊れていてもなぜか大丈夫だが、スマートフォンやタブレット端末のような仮想キーボードで入力する端末はダメらしい。
また、打ち込んだ場合(未知の言語であるにもかかわらず)即座にその意味するところを理解するが、その内容を他者に伝達することはできない。

で、肝心のSCP-153-JP本体だが、これはパソコン上で再生される30分程度の未知の映像プログラムである。
なぜかキーワードを入力した人間以外にはその中身を見ることはできず、普通の人間には真っ赤なノイズ映像として認識される。ビデオカメラなどで記録した場合も同様。
視聴した本人(以下SCP-153-JP-1と呼称)は「非常にためになる映像だった」「目の前が開けるような感じがした」などと主張している。

このプログラムは、視聴した本人でも18時間以上の間隔を開けないと再度視聴することはできない。
で、SCP-153-JP-1はSCP-153-JPを繰り返し視聴したい、という欲求に駆られる。幸い、物理的な拘束で抑えられ、また視聴していない間隔が空くほどSCP-153-JPへの興味を失っていくが、何度も繰り返し見るとその度にSCP-153-JP-1のSCP-153-JPへの執着は高まっていき、それと共にSCP-153-JP-1の肉体に物理的な超常現象が起きるようになっていく。
大体7回ほど視聴するたびに、次のフェーズへと進行していくようだ。

フェーズ1 SCP-153-JP-1の性格が元のものよりも優しいものとなり、正義感が強くなります。かつて罪を犯したことがある場合はそのことを懺悔します。簡単な未知の言語を操るようになり、頻繁にSCP-153-JP指定キーワードを口にします。この変化はSCP-153-JPを視聴しない期間が続くと元に戻ります。
フェーズ2 SCP-153-JP-1の背中から翼がはえます。この翼はSCP-153-JP-1の皮膚と骨が変化したもので、外科手術により取り除くことができます。困っている人間を助けることに使命感を感じ、その一方で罪を犯したものに対しては厳しい態度を取り諭すような言動を取ります。この時にSCP-153-JPの視聴を勧めるような言動を取ることに注意してください。
フェーズ3 翼はより立派になり、さらにSCP-153-JP-1の頭上に薄く光を発する輪が生じます。この輪は認識することができても触れることができず、物質として存在するものではないことが推測されます。SCP-153-JPを視聴しない期間が続くと輪は消えます。困っている人間を庇護下に置こうとする一方で、罪を犯した者に対する強い敵対心を抱くようになり、時に暴力をふるうに至ります。この暴力が悪いものであるという認識を抱くことはなく、むしろ誇りを抱いているようです。
フェーズ4 人の傷や病気を手をかざすだけで治す、無機物から食糧を生み出す、などといった物理的・生物的・化学的法則に反した事象を引き起こすことが可能となります。SCP-153-JP-1はこれらの事象を「奇跡」と称します。SCP-153-JPを視聴しない期間が続くと能力は失われます。罪を犯した者を嬉々として殺傷し、そのためなら自らの命を失うようなこともするようになります。また彼らを罰しないSCP-153-JP-1でない一般人も「売国奴」「[編集済み]」などの言葉で強く責め立てるようになり、SCP-153-JPの視聴を強要するようになります。
フェーズ5 親しい人に別れをほのめかす手紙を送ったり電話をしたりします。SCP-153-JPを視聴することももはやなくなります。食事を取る必要もなく排泄も行いません。別れを告げる際にSCP-153-JP指定キーワードを用いる可能性が高いため、この際書かれた手紙はすべて回収し電話等の通信も妨害してください。この段階に至ったSCP-153-JP-1は記憶処理を施しても能力が失われることはありません。

SCP-153-JP-1のフェーズ1~4については財団は発見次第収容し、SCP-153-JPの影響がなくなるまで監視し、記憶処理と外科手術を行って解放ということになっている。
以前は聞き取り調査を行うプロトコルになっていたのだが、 聞き取り調査を行っていた博士がSCP-153-JP-1を賞賛しながら解放する という収容違反事故を起こしたことから、彼らの言葉だけでもヤバイことが明らかになり、現在は「どこで知ったかアンケート調査を行った後、記録用紙だけ残して即記憶処理」というプロトコルに変わっている。

で、フェーズ5まで至ってしまうともはや拘束することは不可能になり、数日後には 突然垂直に浮上しながら少しずつ姿が薄れていき、高度10000メートルで完全に消失 してしまう。
消失後のSCP-153-JP-1の行方は不明。また、飛翔中のSCP-153-JP-1は既存のあらゆる楽曲と一致しない歌(一応メロディーラインは軍歌に酷似)を歌い、半径300メートル以内の人々にSCP-153-JP-1を視認させると共にSCP-153-JP指定キーワードを認識させてしまう。
財団は、フェーズ5に至ったSCP-153-JP-1を発見した場合、カバーストーリー「テロ組織の立てこもり」を実施し、半径150メートル以内の全ての人を避難させ、さらにSCP-153-JP-1の三親等以内の親族を1年間追跡調査すること、としている。
なお、物理的に浮上を阻害する試みも行われたが結果は……以降、財団はSCP-153-JP-1の飛翔を妨害することを禁止している。

要するにこのオブジェクトをざっくりとまとめると、「見た人を天使にして昇天させる謎プログラム、自己感染能力付き」である。そりゃSafeには収まらんわ。



息子は勇敢に戦って散りました



昇天したSCP-153-JP-1がどこに行ったかはわからない、と書いたが、実は追跡調査で一件だけその後が明らかになったケースがある。
とあるSCP-153-JP-1が飛翔してから数か月後、彼の両親の元に白い服を着た男性(両親は面識はないと証言)が現れ、15センチ角のアカシア製の箱を置いていった。
両親がその箱を開けたところ、中に入っていたのは……



彼らの息子の手首だった



当然、狼狽する両親だったが、やがて喜びを感じ、「息子を誇らしく思う」旨を担当官に伝えている。
よって、SCP-153-JP-1の遺品にも同様の精神汚染の作用がある可能性が指摘され、監視の対象となっている。









……さて。



このオブジェクトを作ったのが誰かはわからない。だが、いくつもちりばめられているヒントを繋げていけば、一体「何のために」作られたものなのかはわかる。






「正しい」在り方に従わぬ者への排斥性。





軍歌と共に赴く英雄たち。





「勇敢に戦って散った英雄」を誇りに思う気持ち。





いつ、誰に届けられるかわからない真っ赤な手紙。






SCP-153-JP

徴兵令



これが尊いものではないことくらい、誰もが小学校で習っているだろう。天使なんて存在しない。あるのはこのSCPが誰かの未来を奪っているという事実だけだ。
- ███担当主任



追記・修正お願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-153-JP - 徴兵令
by sumiley7
http://scp-jp.wikidot.com/scp-153-jp

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最終更新:2023年11月02日 16:21