登録日:2020/07/30 Thu 09:23:40
更新日:2024/09/06 Fri 23:05:44
所要時間:約 7 分で読めます
レーベル:Mノベルス
著者:岸若まみず
イラスト:三弥カズトモ
作者が小説投稿サイト「
ハーメルン」に平成31年4月から投稿していた作品「
異世界で 上前はねて 生きていく (詠み人知らず) ~再生魔法使いのゆるふわ人材派遣生活~」の書籍化作品。原作は「
小説家になろう」と「カクヨム」にも投稿されている。
ブラック企業で酷使されていた主人公が異世界転生し、二度と働きたくないという思いから奴隷による人材派遣を始める物語。基本的には主人公サワディ・シェンカーの視点で語られるが、ときどき他の人物の視点が挿入されることで物語を多面的に表現している。
各章のタイトルが五七五になっているのが特徴(例外あり)。
あらすじ
日本で社畜として働いた末に過労死した青年は、政商シェンカー家の三男坊サワディとして異世界転生した。最初は喜んで知識チートをしようとしたサワディだったが、人の欲しがるものはどこでも同じ。彼に思いつくようなことは既にこの世界の人々が実現させているという現実を見て野望を打ち砕かれてしまう。
都市トルキイバにある魔導学園の学生として日々の生活を送る中で、10歳になったサワディは今後の自分の生き方を思いつく。自分はもう働きたくない。ならば『安く買った奴隷を冒険者にして、上前をはねて生きていこう』と。そこで彼は怪我や病気を患って安く売られている訳あり奴隷達を買い、自らの魔法で治療して働かせていく。やがて彼の商売は街の風景さえも変えていくのだった。
世界観・用語
作中世界の特権階級。高等教育は魔法使いが通う魔導学園でしか学ぶことができず、王家、貴族、学者、軍人、官吏は皆魔法使いである。魔法使いになれるかどうかは血筋で決まるため、魔法使いと結婚して血を入れる家は多い。シェンカー家もその一つ。
男性は攻撃魔法、女性は支援魔法と再生魔法が優秀なほど社会的評価が上がる傾向にある。
魔法使いの卵が通う学園。学内のヒエラルキーは才能の有無よりも血筋の方が強く、貴族の生徒は実際以上に良い評価を得やすい一方で平民の生徒は一律に低評価されるという悪習が蔓延してしまっている。
一方で優秀な平民がこの悪習を逆用して貴族に成果を譲り、必要以上に注目されるのを防ぐこともある。
作中世界の人間を含む動物が持つ臓器。周囲に漂う魔素を取り込んで貯蔵する。肉体が年を取ったり魔法を多用したりすると内部から結晶化してしまい、全て結晶化すると二度と回復する事は無い。
魔力の枯渇には痛みを伴うため、完全に結晶化するまで耐えられる者は少なく、兵や騎士の中でも耐えられるのは一握り。
その耐えられた者も老人のように急速に衰えてしまう上、トイレや食器洗いすらも自身の魔法を使うこの世界においては事実上の死に近い。
今まで再生の実績はなく、治療出来るのも世界でサワディただ1人。再現性もないため、その治療は陸軍のみの間で秘密裏に行われるようになった。
結晶化した魔臓を動物から取り出した魔結晶は社会に欠かせないエネルギー源となっている。
負傷した部位を治療できる魔法。高レベルの再生魔法使いであれば欠損した部位を再生させることすら可能だが、重傷であればあるほど相応の時間がかかり、患者にも再生時に激痛が走る。また治療後もすぐに健常状態に戻るわけではなく、完全な回復にはリハビリが必須。
魔法によって造られ、魔結晶のエネルギーで動く人工生命体。使い捨て。
自分の結婚を機に奴隷達の恋愛や結婚について考えたサワディが作った制度。奴隷という立場は変わらないが、3年間真面目に働いた者は以後同じ職務でも正規の給料が支払われ、望めば住居・就労・婚姻の自由が認められる。
主要登場人物
主人公。異世界転生したサラリーマンであり、シェンカー家に初めて生まれた魔法使いでもある。
支援魔法や再生魔法には「女性だったら主席クラス」と称されるほどの才能を持つものの、攻撃魔法はからっきしだったため学園内での評価は低かった。
しかしマイナー学問だった造魔の研究で功績を挙げたことで国から注目されることになる。
前世の知識を生かした凄いことをしようとすると大抵失敗するが、特にそんなことを意識していない場合には予想外の成功を収めて忙しくなってしまうという難儀な人物。
自分が食べたくて再現した前世の料理がトルキイバの街の名物になったり、ちょっとした
レクリエーションのつもりで野球をしたら貴族をも巻き込む大ブームになってしまったりしている。
様々な前世の文化を再現して普及させているものの、情報を伝えた際の齟齬や社会構造の違いから歪な形で伝わっているものも多い。
彼が奴隷を働かせるようになったきっかけこそ「自分が働かず楽をして生きるため」であるが、社畜時代のトラウマから福利厚生にも気を使っているため奴隷達に心から慕われている。その姿は街の人々からも『慈愛』のサワディと呼ばれている程。
しかし奴隷に何かしらの不幸が発生したときにはサワディに責任があるとは言えない状況であっても強い自責の念に駆られてしまうなど、少々責任感が強すぎるところもある。
男なんてそばに置きたくないと女性の奴隷のみを購入しているが恋愛や性欲の対象としては見ておらず、奴隷の方も忠誠心は非常に高いが恋愛対象として見ている者はほとんどいない。
後に人員と仕事が増えてからはそうも言っていられなくなったので男性奴隷も購入するようになった。
転生後の世界で出会った演劇に夢中になり、いつか自分の劇場を持つことを夢見ている。
造魔研究の責任者として王都の魔導学園から派遣された貴族。元軍人。
その実態はサワディを国に取り込むために用意された政略結婚要員である。
サワディにその事実を告げたうえで相思相愛となって円満に結婚。独占欲の強い性格なので妾を作ることは許していない。
軍人時代に魔臓を酷使して全て結晶化させてしまったため魔法を使えなくなっていたが、サワディに出会った後に再生してもらっている。
如何に再生魔法と言えども魔臓の再生は本来ありえないことであり、それが可能と聞いた時には仰天していた。
サワディが自分の秘密を打ち明けた唯一の人物であり、打ち明けられた後は二人きりの時間に前世の物語や情報を聞くのを楽しみにするようになった。
サワディが初めて購入した奴隷。馬人族とも称されるケンタウロス。
脊髄の障害による左後ろ脚不随を患っていたが、サワディに治療されて動けるようになった。また土竜の神の加護を受けた影響で視力が低下していたため眼鏡も購入してもらっている。
再生魔法を利用した過酷なリハビリによってわずか2週間で健康な肉体となり、その後冒険者となって鍛え上げたことで恐るべきパワーを身に着けた。そのパワーは張り手一発で冒険者を建物の外へ吹っ飛ばすほど。
また脳筋
というわけでもなく、現実を見ようともせずに勝手なことばかり言うケンタウロスの貴族にスカウトされた際には真正面から論破するなど頭もある程度回る。
サワディが冒険者奴隷達によるクラン「マジカル・シェンカー・グループ」を立ち上げた際には分隊長に任命された。
サワディが購入した2人目の奴隷。鳥人族。種族の特性で喋るのが苦手。
翼を失って死にかけていたところを購入され、1ヶ月かけて翼を再生。さらに過酷なリハビリによって再び飛べるようになった。
冒険者としてはピクルスとタッグを組むことが多く、マジカル・シェンカー・グループでもピクルスの補佐を務める。
ボンゴ本人はピクルスを妹のように思っている。
ネズミの丸揚げや揚げパンなど料理が得意。特に鼠の丸揚げは調理過程を見てドン引きしていたピクルスが大感激するほどの絶品。
頑健な肉体と鱗を持つ鱗人族。元正規兵。種族の特性により、モンスターに腕がぐちゃぐちゃにされた程度では怯みもしない。
奴隷となった後も軍人時代の癖が抜けず、回復後には他の奴隷達に軍隊式トレーニングを施すようになってしまう。
流石に見かねたサワディによって訓練の厳しさを緩和され、結果的にではあるがロースのサワディに対する好感度を上げるのに一役買うことになった。
マジカル・シェンカー・グループでは頭領を務める。
赤毛の魚人族。好戦的でガサツな性格。
奴隷になったときにメンチに絡んで叩きのめされ、軍隊式トレーニングが始まったときも反抗したが投げ飛ばされて上下関係を叩きこまれてしまった。
その後はなんだかんだで上手くやっており、マジカル・シェンカー・グループでは副頭領に任命された。
意外と男性にモテるため、彼らにプレゼントされたブランド服を多数持っている。
しかしロース自身は貰ったから着ているだけで、貰った理由も服の価値もよく分かっていない。
商家の丁稚を務めていた経験を持つ人族。修行の途中で内臓を傷めて奴隷として売られてしまった。
読み書き計算のできる貴重な人材として購入されたため、冒険者として現場に行く事は無い。
マジカル・シェンカー・グループでは奴隷達の派遣を管理する中間管理職を務めるが、組織の人材がどんどん増えていくことに目を回している。
お洒落が大好きで、休日は高級服屋や雑貨屋をウインドウショッピングして回っている。
自分の収入では手が出ない服をロースが人から貰って着ているのを見てショックを受けるとともに奮起し、商売を一任されるまでに成長。着道楽できるだけの収入を手に入れた。
サワディが女性奴隷ばかり買うのを見て何か勘違いした長兄がプレゼントした奴隷。2人とも処女。
将来の伴侶と商売女以外を抱く気はなかったサワディによって奴隷冒険者達の料理番に回される。
サワディにスパゲッティの製作を指示されて試行錯誤の末に成功。トルキイバの街の名物になるまでに普及させた。
その後も
マヨネーズや即席麺の再現に成功している。
追記・修正は多数の奴隷達に心から慕われている人がお願いします。
- ハーメルンで4月、後からなろうで5月からだぞ -- 名無しさん (2020-07-30 10:57:17)
- 遂に書籍化までしておったまげた -- 名無しさん (2020-07-30 14:21:04)
- みんな美味しそうな名前してんな -- 名無しさん (2020-07-30 18:18:18)
- 奴隷の女性キャラが多いけど奴隷ハーレムじゃない珍しい作品。 -- 名無しさん (2020-07-30 20:58:11)
- トルキイバを逆に読むと「バイキルト」になるが、他の都市もドラクエの呪文の逆さ読みなのかな。 -- 名無しさん (2020-07-31 13:21:43)
- パッと見た感じ異世界版マムルークみたいな感じ? -- 名無しさん (2020-07-31 22:40:33)
- 似たようなコンセプトの小話あったな。もっともあっちは嫁さんがいない・主人公が商才しかない・奴隷が皆ヤンデレ・それに気づかず最後の最後に奴隷から解放してあげた。オチは「望んでたものが……やっと手に入った」そう考えるとサワディ君良かったね -- 名無しさん (2020-08-01 20:55:12)
- ↑やっぱり闇薙の異世界で奴隷派遣業を連想しますよね? 私だけじゃないんだ。もしかして作者は闇薙の隠れフォロワーだったり? -- 名無しさん (2021-07-24 09:20:32)
- 原作は4巻までで止まってるの?21年3月だから3年は出てないよね。 -- 名無しさん (2024-06-17 10:49:16)
最終更新:2024年09月06日 23:05