SCP-2233-JP

登録日:2020/11/08 Sun 19:50:49
更新日:2023/07/05 Wed 18:38:59
所要時間:約 8 分で読めます





牟田氏の葬儀には3268人の関係者が参列しました。これは8人の妻とその家族、4つの高校及び11の大学の同窓生、21の企業の同僚を含みます。


SCP-2233-JPはシェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラスはSafe。


特別収容プロトコル

このオブジェクトは、自身の持つ情報撹乱能力のために自己収容状態にあると見なされている。
……それって収容されてなくねとかくとぅるふくんが懸念してくれたりするかもしれないが、ともかくそういうことなのである。
あえて言うならSCP-4270SCP-1682-JPのような、Ticonderoga*1に近い意味合いでのSafeであると言える。
「あえてわざわざ引っ掻き回さなければ普通は気付かないのでSafe」ってことだ。
無論、「仮にTiconderogaを認めないとするならKeterだ」という人はいるかもしれないけど、そこは個々人のヘッドカノンということで。

関係者の記憶処理による収容の試みは牟田氏の身辺調査の完了まで行われない。しかし2020年現在、調査完了の見通しはない。
財団webクローラ及び研究チームによる情報をもとにSCP-2233-JPのタイムラインを整理する努力が継続されている。
タイムラインという言葉はアニヲタ支部の人には釈迦に説法だろうが、まあ並行世界における異なる時間の流れである。
『もしもボックス』や『うつつまくら』などでできる異なる可能性の世界の話が関わるのだと理解していればとりあえずそれでいい。

概要

先程牟田氏という人物が登場したが、SCP-2233-JPは簡単に言うとその牟田氏の『生涯』である。
故・牟田義則(1958年8月12日-2000年5月4日)さんが生まれてから脳梗塞で亡くなるまでのわずか40年ばかりの人生がオブジェクトとされているのだ。

このオブジェクト、すなわち牟田さんが生きていたということは以下の証拠品や証言によって裏付けが取れている。

  • 2750人の死亡した関係者及び16356人の存命の関係者の証言
  • 1件の戸籍(1件の出生届、11件の転籍届、8件の婚姻届、3件の離婚届、1件の死亡届を含む)
  • 1冊の著書
  • 牟田氏が所有者であった1件の不動産登記事項証明書(相続者不在により現在は財団所有)
  • 佐賀県唐津市██墓園所有の遺骨

……うん、知り合い多いな!?
でもって、「8回結婚して3回離婚」しているというのもなんか変な話である。あと4回はどこに?
更に、それだけ結婚しているのにも関わらず不動産が相続者不在というのも変な話である。

財団がこの牟田さんの人生を調べると、驚くべきことがわかった。

上記の事実は非常に多くの矛盾・錯綜を含み、1958年8月12日の出生から2000年5月4日の脳梗塞による死亡に至るまでのSCP-2233-JPを説明する単一のタイムラインを確立することは不可能です。財団による調査の結果は、SCP-2233-JPが少なくとも364の異なるタイムラインを持つ生涯の集積によってなるものであることを示しています。

これらの証拠から牟田さんの人生は、牟田さんが少なくとも364人いなければ成り立たないことがわかった。
無論そんなことはありえないし、しかもそれぞれが互いに影響してもいけないから事実上別世界の牟田さんの人生が相当数紛れ込んでいるわけだ。
更にこれは財団が関知するまでは認知されることはなかった。おそらく、これらの矛盾を矛盾と気付かせなくさせる反ミーム性があるのであろう。
これを発見した経緯も、かなりの偶然に偶然が重なったものである。

というのも、牟田さんの私立光洋高校における同級生、エージェント・柴本が40数年というあまりに早すぎる死を悼み
牟田さんのお葬式に出席したのが発見経緯。
柴本さんはそのころ反ミーム性のあるオブジェクトを研究しており、そのためにクラスW記憶補強剤を服用していた。
これによって情報撹乱作用が働かない状態の柴本さんは、牟田さんのお葬式でびっくり仰天。
「なんか複数の高校や大学の『同級生』がいるし奥さん8人もいるしお子さんも多いな!あと勤め先も多すぎる!」
……ってかこれ8件の婚姻届は全部有効なのね。

なお、364件中結婚できなかった牟田さんが356人いる……というわけでないのはあえて言及する必要はないかもしれないが蛇足的に補足する。
異なるタイムラインで同じ人と出会い結ばれていることはあるだろうし、場合によってはその同じ人と出会い、結婚しながらもあるタイムラインでは死ぬまで一緒で、別のタイムラインでは死ぬ前に離婚している可能性もある。また同じ人との子供も、タイムラインによって違う可能性もある。もっといえば、葬儀に出席した身内がいる一方で、葬儀に出席しなかった身内も存在している可能性もある。結婚も事実婚という形を取っていれば婚姻届が提出されていないケースもあるだろう。
同じことは高校・大学・勤め先にも言える。高校・大学で仲良くなった人、ならなかった人、勤め先で配属された部署、されなかった部署などなど。ややこしいね!。



ともあれ、牟田さんの人生は多くの人に悼まれたのである。


















SCP-2233-JP




可能な限り多くの人々が偲んだ彼















ちょっとしたネタバレ

このオブジェクトのタイトルは上述の通りなのだが、実は初出時点ではもう少し長かった。
どうなっていたかというと、『可能な限り多くの人々が偲んだ彼(もしかすると誰にも看取られなかった彼)』だったのである。

もう一度言う。『可能な限り多くの人々が偲んだ彼(もしかすると誰にも看取られなかった彼)』である。

執筆者は最終パラグラフも実は削除しており、「その部分をあえて言及するのは野暮なのではないか」と考えたようだ。
そしてディスカッションでは執筆者によるスポイラーが記載されている(無論、あくまで作者自身のヘッドカノンに過ぎず答えではないことに留意)。

牟田氏の生涯の集積は彼の死後に発生したものです。財団はその可能性に思い至っているでしょうが、証明する術を持ちません。
彼の「生前の」生涯がどんなものであったかは知る由もありませんが、それはそれとして、葬儀は残された人々の為に行われるものであり、牟田氏の「知人」が彼を悼む(あるいは悼まない)気持ちに嘘はないでしょう。

基底世界の牟田さんがどんな人物だったかは不明である。
普通のおじさんだったかもしれないし、尊敬を集める人だったかもしれない。
それも偉業をなしたのか、スポーツや学術的な成果か、善行か。
あるいは、そのへんの駅で拾った酒を飲みながら捨てられたスポーツ新聞を読むホームレスだったかもしれない。
悪人だったかもしれない。独身貴族だったかもしれないし、家族思いのいいお父さんだったのかもしれない。

すごく怖い極論を言ってしまえば、『基底世界の牟田さんにはお葬式に来てくれるような家族・知人は誰もいなかった』可能性すらある。
しかし、お葬式は本人のためにするものではない。あくまで残された人のために(それが基底世界の牟田さんに、なのかは不明だが)行うものだ。
仮に違う世界の牟田さんとつながりを持っていても、その人を失った悲しみを堪え、故人の冥福を祈る気持ちには嘘は存在しない。
……基底世界におけるその人にとっての牟田さんの存在、牟田さんとのつながりが嘘だったとしても。


類似オブジェクト

SCP-1454 - Sibling Rivalry (仲悪し兄弟)

同じ感覚を共有する4人のエリックさん。同時に別個の行動をしているさいも、それぞれの行動を認識している。
ただしこちらの場合は同じ現実世界で4つの行動を4つの実体が同時に行っている。
そして、自分以外の他3つの実体は自分とは認識しておらず自分の行動を真似するクソ野郎と思い込んでいて、
相互に敵対的である。



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最終更新:2023年07月05日 18:38

*1 特殊/物語風クラス群のひとつで、わざわざ収容しなくてもその性質上一般人に露見する可能性が限りなく低いもの。そうはいっても収容できるんならするのが財団の理念なので、基本的に収容困難あるいは不可能な場合に用いられる。