SCP-3221

登録日:2020/11/12 Thu 10:35:26
更新日:2025/07/01 Tue 00:27:06
所要時間:約 5 分で読めます






錆びず腐らず朽ち果てること無く、
鋼と肉を喰らいし冒涜の化身。





SCP-3221とは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」において登録されたオブジェクトの一つ。
オブジェクトクラスは「Keter」。ダントツで危険なオブジェクトである。
項目名は『不壊王 プレスター・ジョン』。



説明

SCP-3221は、タジキスタン共和国ゴルノ・バダフシャン自治州の某所に存在する地下空間である。所謂、場所系オブジェクト。

地下空間には、とある異世界を覗き込むことの出来る時空間の歪みが発生しており、これを通じて異世界を観察することが出来る。この歪みをSCP-3221-1と呼称する。


調査した結果、この地下空間は明らかに現代でも再現不可能な時計仕掛けの建築物で構成されている。そう、メカニト由来の技術である。

しかし同時に、この建築物には操血術(ヘモマンシー)(血を媒体にした魔術)の刻印が施設の内部に施されている。
即ち、サーキックの魔術が張り巡らされているのだ。


相対する二つの組織の要素が見られるこのオブジェクトの異様さがお分かり頂けるだろうか。



曰く、この施設はとある現実改変者を幽閉するための場所であるということが判明している。

その現実改変者こそが、SCP-3221-2である。


SCP-3221-2は、西暦5世紀を起源とする現実改変者。
最大の特徴は、自身の肉体をメカニト由来の機械的特徴サーキック由来の生物的特徴が混合したものに魔改造していること。現実改変の範囲は、厳密には不明。

そしてコイツ、一定の休眠期間を経て活性状態になると、上記の異世界に通じるポータルを発生させる。どうやら向こう側に渡りたいと考えられているため、特別収容プロトコルとして、


  • SCP-3221に関する歴史上の記述は歴史上から抹消するか、デマ、伝説として拡散しろ。

  • 現存する施設を、メカニトの技術に長けた機動部隊スティグマ-9(“自然発生する歯車、梃子、滑車からの進化”)とサーキックの魔術に精通した財団の秘術師によって、常に保守点検しろ。追加のセキュリティの考案・実施も忘れるな。

  • SCP-3221-2が活性状態に至り収容違反を引き起こしたのならば、機動部隊ニュー-7("下される鉄槌")と機動部隊オメガ-12("アキレウスの踵")から6人以上の人員を派遣した後、速やかに捕縛・再収容しろ。


財団にとってもリスクの高い、現実改変者で構成された部隊をぶつけるという記述から、相当の能力をSCP-3221は秘めていると見受けられる。
また、機動部隊ニュー-7も財団の戦力で1、2を争う優れた部隊である。ここからもSCP-3221が如何に危険なのかが伺い知れる。



相反するものが交わった者、プレスター・ジョン

嘗てヨーロッパには、プレスター・ジョンという人物に纏わる伝説が、数多く存在していた。
十字軍の時代に、遥か東の国を治め、イスラム教徒から聖地を取り戻すと伝えられていた、伝説上の英雄。

そしてSCP-3221-2こそが、かのプレスター・ジョンであると財団は認識している(これ以降は、SCP-3221をジョン国王と呼称する)。

このジョン国王、嘗て別世界(SCP-3221-1の異世界)を自身の能力によって統一したらしい。
その後、SCP-3221の異世界はメカニトとサーキック、そしてグノーシス主義の異なる考えがミックスした宗教を信仰している。
つまり肉体を機械に移し変えたり、カニバリズムなども平気で行われるのだ........おえ。


しかも向こう側では、神食(神格をその身に宿して消費すること)で更なる高見へと上り詰めることが偉大とされている。
異世界の教徒たちにとって、ジョン国王は高レベルの神格を複数喰らったという伝説から、信仰の中心として崇め奉られている。


上記の情報から、恐らくジョン国王は異世界に帰還しようとしていると推測される。
しかし財団についてとってそれは、確保、収容、保護という理念に反することに他ならない。故にあらゆる手段をもってこれを食い止めねばならないのである。

憤るモノたち

上記にもあったとおり、SCP-3221はジョン国王を幽閉するための施設であると説明したが、それを完成させた組織を財団は突き止めている。

他ならぬ異世界のメカニトとサーキック・カルトたちである。
彼らからしてみれば、ジョン国王は自分たちが信仰している神の能力を勝手に利用した挙げ句、本来ならば敵対関係にある組織の能力まで平然とその身に宿した、云わば大罪人である。
彼らの憤怒は、本来敵対していた組織とも手を結ぶ程に燃え上がった。


よって彼らは、向こう側の西暦5世紀頃にジョン国王が率いる軍隊を蹴散らし、その国王を拉致監禁した後に別世界、即ち財団世界に追放した。何てことしてくれたんだ。


しかしジョン国王、この程度では諦めず、今度は此方の世界を侵略しようとSCP-3221を脱獄・行動を開始した。ゆくゆくは元の世界に帰還するために。

だが、それを阻むものたちもまた存在した。異世界の彼らから情報を受け取った、財団世界のメカニトとサーキック・カルトだ。
彼らもまた、神を冒涜した愚か者に懲罰を与えるべく、敵対関係を一時中断してこれに対処、再びジョン国王をSCP-3221に幽閉することに成功、より強力なセキュリティを施して封印したのだった。

そしてイスラム・アーティファクト開発事務局(ORIA)といった他の要注意団体と協力して、財団世界に残されたジョン国王の軌跡を可能な限り消去した。



........長い年月が過ぎたころ、その牢獄を財団は発見してしまった。

しかし両組織からの行動に大きなものは見られない。彼らもまた、財団に任せるほうがより安全だと考えているのかもしれない(もしくは神を冒涜した者とは、二度と関わり合いになりたくないだけかもしれないが)。



以下は施設に残された2つ碑文である。
一つは、異世界のメカニトからと思われる文章。



ここに封印されしは不壊の者イオーアンネース、我々全てへの背信者。彼女の心臓の欠片を貪りし異端の者。真なる神の息子でありながら、彼女の敵により汚されし者。

二度、我々は彼を破壊することに失敗した。二度、我々は彼の堕落を別の世界へ押し付けるしかなかった。三度目の機会は決して訪れはしないかもしれない。

我々の夜を徹した祈りが途絶えることがあれば、お前が後継者となって我々の場に立たねばならない。視界を使え。これが我々の最大の成果であり、お前の勝利の鍵である。


イオーアンネースは古代ギリシア語で"ジョン"。
このことから、ジョン国王は元メカニト信者でありながら神の遺物を勝手に移植した後、サーキックの魔術を取り込んだことが理解出来る。

そして視界。これこそがSCP-3221-1であり、異世界の彼らがジョン国王のことについての歴史を辿らせるための手段だったのだろう。それを財団世界の両組織が受け取り、財団へ流れ着いたのだ。



もう一つは、異世界のサーキック・カルトからと思われる文章。


醜悪

奴隷

危険

恥辱



........よっぽど自分たちの信仰を侵されたことが許せなかった様子。








SCP-3221


不壊王 プレスター・ジョン(Prester John the Unbroken)


余談

これ程超越した能力を秘めたジョン国王だが、彼の能力について一つ疑問がある。

仮にジョン国王がメカニトとサーキック、二つの相反する異常性を併せ持ったとして、本当にここまでの現実改変能力をもつことが出来るのか?
そもそも、相容れぬ2つの異常性を勝手に取り込んだとして、普通ならば内密に暗殺でもすれば良いのではないか?

もしもオリジナルの現実改変者だとして、別に2つの組織にも、それに匹敵する異常存在が数多く存在しているはず。

ならば彼らが憤怒した理由が他にあったとは考えられないだろうか?



........アニヲタ支部職員の方は覚えているか。
SCP-3221の向こう側の異世界は神食が推奨されている。ならばこうは考えられないか。















ジョン国王はメカニトの主神"MEKHANE"とサーキック・カルトの主神"ヤルダバオート"を喰らったのではないか?


より細かく推測すれば、メカニトの"ロバート・ブマロ"やサーキック・カルトの"カルキスト・イオン"の力、又は存在を取り込んだのかもしれない。後者の方が、サーキックがメカニトと協力しようと考えるのも納得できる。

あくまでも推測に過ぎないが........。



そしてコイツは一度、財団世界を侵略しようとした。
今は力を収めているが、もしもコイツが異世界に戻って実権を取り戻したとしよう。




その後に彼は何をするつもりなのだろうか?





その答えの一つとして、Tale-JP『正常性とテロリズム』には、SCP-3221が収容違反し侵略をはじめ、それによって揺れる世界と財団、そして異常存在を世に知らしめ備えるために『スケープゴート』の役目を担った、一人の財団職員の物語が記されている。


追記・修正は、冒涜者に憤ることの出来る人にお願いします。


SCP-3221 - Prester John the Unbroken
by Modern_Erasmus and Tufto
www.scp-wiki.net/scp-3221
ja.scp-wiki.net/scp-3221(翻訳)

正常性とテロリズム by karkaroff
http://ja.scp-wiki.net/hasans-reform
この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。
この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2025年07月01日 00:27