不滅のあなたへ

登録日:2021/02/02 Tue 02:00:02
更新日:2025/10/21 Tue 08:09:46
所要時間:約 5 分で読めます






いつか死んでしまうすべてのあなたへ。


概要


『不滅のあなたへ』は、週刊少年マガジンにて連載されている漫画作品。
作者は「聲の形」「マルドゥック・スクランブル」を手掛けた大今良時。

現在第一部「前世編」が完結し、現代社会を舞台にした第二部「現世編」が連載中。

TVアニメ化もされており、NHK Eテレにて2021年4月から8月まで第一期が放送された。
2022年10月からは第二期が放送中。2025年10月からは第三期が放送予定。

あらすじと世界観


この漫画を一言で表すと、「とある世界に投げ込まれた不思議な球体の成長過程をウン百年単位で延々と観察し続けるお話」である。

主人公こと"球"は「何かから刺激を受けるとその対象に変身する」「無限に自己修復する」という"機能"こそ持つが、それ以外にはなにもない。なんと自意識すら存在しない。
"球"はさまざまな存在をコピーするうちに意識を獲得し、感情が芽生え、言葉を覚え、永遠の命を持つ男"フシ"となり、無数の人と出会いと別れを経験しやがて神のごとき存在となる……という、一種の創世記あるいは叙事詩のようなおはなし。


この漫画の舞台は中世をモチーフとしたファンタジーな世界だが、魔法や超能力のようなオーバーテクノロジーはフシなど一部を除いて登場しない。対して"球"、あらためフシは(前述の変身能力と再生能力のおかげで)ありとあらゆる要因で死ぬことがない、タイトルの通りの不滅の存在である。

そんな彼を追っていく"大河物語"である性質上、ただの人間である登場人物たち=市井の人々は物語に次々と現れ、次々と死んでいく。そこに例外はない。
一方で、フシは自我を得たばかりの幼い存在であるため、彼らはフシにとっての師匠でもある。
あるものは母となり友となり、あるものは言葉を授け、あるものはその人生を賭して知恵を授け、フシは人に近づいていく。

総じてこの漫画は、フシの前に現れては消えていく市井の人々の生涯を通して、また成長していくフシを通して「生命とは何か」を問う哲学的な作品であるといえる。


……これだけ書くと硬派SFっぽくて難解そうだが、中身はわりと「泣けてくるいい話」「心温まる〇〇」系の癒しモノなので、疲れた時に読むといいかも。




登場人物



作品を通して登場するキャラクター


  • フシ
CV:川島零士
この物語の主人公。「フシ」とは文字通りの「不死」であることから付けられた通称のようなものであり、本来この存在に名前はない。
生物・非生物問わずあらゆる存在への変身能力を持ち、その力に限界はない。たとえ死んでも自動的に体が修復され蘇るため事実上の不死。
ついでに物体であれば、変身したものを体から千切ること*1で食べ物だろうが武器だろうが無限に生み出せる。途中からは鉄を溶かすほどの高熱すら発生させることができるようになる。

……が、その精神性は幼いどころか乳児レベルで、意思疎通ができるようになるのは物語中盤までお預け。
意思疎通ができるようになってもその精神性は未熟なため、驚くほど薄味で流されやすい性格である。
人間というか動物として見るにも非常に未熟で食べ物の概念すら理解しておらず、誕生時は飲まず食わずで餓死→蘇生を繰り返していた。
犬と同等かそれ以下の知性しかない時期は人間の姿をしていながら首に縄をつけられて引っ張りまわされていたりする。



  • "私" / 観測者
CV:津田健次郎
後にフシとなる"不思議な球体"をこの世界に投げ入れた謎の黒フードの人物。
性別を示唆する描写はないが、CVが某ブルーアイズ大好きな社長なのでおそらく男性。
作中のモノローグはこの人物の独白という形をとっている。
フシの保護者的存在だが、前述の通りフシは滅ぶことがないため、教育方針は基本放置で「死んで覚えろ」スタイル。
ただ、本当に肝心な要所要所ではアドバイスをくれることもある。
また、フシを含めたあらゆる存在は彼に触れることができず、またフシ以外の人間は彼を見ることすら叶わない。

フシを除けば何百年たっても死なない唯一の存在*2だが、彼にもまた寿命の概念があるようで、フシに何かを託そうとする言動を見せるが……



  • ノッカー
本作の敵。フシを追跡する、ジャガイモ…というか肉塊状の核から長い根がたくさん生えたような小型生命体。無数にいる。
"私"に敵対する何者かが、フシの完成を阻むために遣わしたらしい。
根を物体に突き刺して取り込む能力と、フシの記憶を奪う能力を持つ。記憶をもとに変身するフシにとって記憶は命にも等しいものなので、これをすべて奪われてしまうとフシは球体に戻されてしまう。
ちなみに倒された核は塩漬け干物にすれば食料にできる模様。

フシのみならず市井の人々をも殺して回るが、後に語るところによると動機は「生は魂を肉体に閉じ込め苦しみをもたらす不幸であるから、そこから解放しなければならない」であるとのこと。




各章ごとに登場するキャラクター

ありていに言ってしまえば死ぬ方の登場人物
この漫画は前述の通り数百年の時が流れるため、"ただの人"である彼らもまた世代交代する。


序盤

  • 少年&ジョアン
CV:川島零士(少年)
北国の、氷の上に建てられた村に住まう若い男性と狼。
登場時点で既に彼以外の住民は死に絶え姿を消し村自体が廃村秒読みの状態であり、彼の名前を呼ぶ人間が存在しないため名前は出てこない。「ジョアン」は飼っている狼の名前である。
ジョアンがたまたま"不思議な球体"の上で死んだことでコピーされ、少年もジョアンの姿を借りて戻ってきた"不思議な球体"を連れて村を出るが怪我を負い死亡。死後その姿をコピーした"不思議な球体"の旅立つきっかけを作った。
以降、フシはこの姿を基本として行動し、ジョアンの姿も嗅覚を活用するために高頻度で借りている。


ニナンナ・ヤノメ編

  • マーチ
CV:引坂理絵
ニナンナという国にある村に棲む少女。
早く大人になることを望んでいるが、ある日オニグマへの生贄に選ばれ、その際のゴタゴタでフシと出会う。彼に「フシ」という名を与えた。
木や壁等を登ることに長けており、その際にフシが姿を借りる…が、まだ幼い身故か武器類を扱うのは苦手。

  • パロナ
CV:内田彩
マーチ同様、ニナンナに棲む少女。

  • オニグマ
ニナンナに棲息している白熊。山のような巨体に無数の矢が刺さっている。
フシと戦って致命傷を負った後ヤノメへと移送される。
巨躯とパワーを必要とする際にフシが姿を借りる。

  • ハヤセ
CV:斎賀みつき
ヤノメ人で生贄の儀式を指揮する。
フシの力を目の当たりにして、彼に異様な執着を見せるようになる。
マーチ達の脱走時の戦闘でオニグマに変身したフシにより顔に大怪我を負う。


タクナハ編

  • グーグー
CV:白石涼子(少年)、八代拓(青年)
兄シンと共に召使いとして働く少年。畑を耕したり、作物を市場で売る等をしている。



追記・修正はノッカーと戦いながらお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2025年10月21日 08:09

*1 この際、千切るものとの間には皮膜状のものが付いているが害はない。

*2 逆にこいつとフシ以外にはきちんと寿命があり事故やら寿命やらでポンポン死んでいく