SCP-3560-J

登録日:2021/06/06 Sun 22:25:20
更新日:2024/11/22 Fri 10:02:56
所要時間:約 20 分で読めます






違う違う違う!
何度言えばわかるのだ愚鈍め!ミルクは葉の前だ!


SCP-3560-JはシェアードワールドSCP Foundationに登場するジョークオブジェクト
オブジェクトクラス Keter

概要

SCP-3560-Jについて簡単に説明すると外観上は人間にしか見えない人型実体である。
ある条件を満たした人間の前にテレポートして現れることができ、いつでも自由に消えることも可能。
彼の姿を見た者はミーム攻撃*1を受けてしまい、彼に逆らわず従おうとしてしまう。
財団のようにミームや認識災害についての素養があって事前に準備をしていれば抵抗できるが
一般人が突如出現したSCP-3560-Jを目撃したらひとたまりも無いのはわかるだろう。
そしてSCP-3560-Jはそんな抵抗する意思がなくなった相手に暴力を振るうこともあり
人間離れした腕力で死ぬまで暴行することも頻繁にある。

というか財団が察知したのは侵入が難しい場所を含めた各地で 謎の撲殺事件 が頻発したためである。

つまりどこにでも自由にテレポートでき、好きに脱出できる。
一般人程度なら何もさせないミーム攻撃が可能で殺人もためらわない怪力の人間。
そりゃ Keter だわ。

英国紳士としてはね

もう少しSCP-3560-Jについての描写を詳しくすると
1880年代の 英国の上流階級の紳士に典型的な外観と服装 をしており、それに合致するクイーンズイングリッシュを話す。
そしてSCP-3560-Jが出現するのは牛乳と混合する紅茶、つまり人がミルクティ を淹れようとする瞬間 である。
SCP-3560-Jを目撃した人は前述のミーム攻撃のために彼のことを「気難しい目上の知人」と見なすようになり
SCP-3560-Jのためにお茶を淹れようとする。
SCP-3560-Jはお茶の淹れ方について厳密で厳格なルールを持っており
それから外れたティーサーブには細かい指摘や指導を行う。
最初は紳士的なご教授に留まるのだが すぐに激昂して 罵倒や暴力的な指導に代わる。
淹れる人がそれまでに生きていられればカップに注がれたお茶を飲んで最終的な評価や助言、罰を行うが
大概はその時点までには死にかけるような指導を受けていることが多い。

以前は英国、アイルランド、ニュージーランドで多く出現していたが最近は米国内に出没する様になり
「違いのわかる紳士」「紅茶紳士」「 紅茶男 」「茶ナチス」などの都市伝説として広まっていった。

収容に至るまで

財団もSCP-3560-Jを捕まえるために Dクラスを30人ほど犠牲にしながら
ブラックウッド卿*2やSCP-2649*3の力を借りてどうにか捕獲した。
財団は彼の能力のうちテレポートだけは無効にする技術を確立したため
彼が収容室から逃走することは防げているがそれ以外の能力への対応は難しい模様。
SCP-3560-Jの英国仕立ての衣服を収容者用支給衣に着替えさせるために職員を3人犠牲にした上で断念している。
収容中のSCP-3560-Jは不機嫌な態度を崩さないが、それは収容されて閉じ込められていることよりも
この一世紀の間に紅茶の淹れ方のレベルがどれだけ低下したかの愚痴が大半であり
彼が容認できるレベルのお茶を淹れることが彼の鬱屈した気分の緩和に効果的なことから
とりあえず毎日実験を兼ねて紅茶をサーブしている。
SCP-3560-J:
もう一度言おうか博士?
実在しない偶像や魔法のような科学技術が存在するこの時代に
正しいお茶の淹れ方を問うのはそんなに贅沢なことかね?
良質さ、仕事にかけるプライド、それらはどこに消えてしまったんだ?
ところでそこの砂糖を取ってくれないか良き紳士よ。

D-28905:
あいつはイカれたサイコパスなのは間違いない。
だが認めたくねえけどあいつの言った通りに淹れた茶はめっちゃうめえよ!


収容プロトコル

  • 現実改変を阻害する機構を備えた標準人型収容セルへ収容する
  • 中は伝統的な英国邸宅の応接室にふさわしい装飾と設備を完備して狩猟着とパイプを持つSCP-3560-Jの肖像画を暖炉の上に置く
  • ペットとして黒いラブラドールの飼育を認める
  • 英国の長い田舎道を毎日散歩させることを認め、そして

説明したSCP-3560-Jの能力を覚えているだろうか?
自由にテレポートできて紅茶を淹れる者の前に現れることと、SCP-3560-Jに従いたくなるミーム攻撃が可能なのだが
前述したとおりテレポートについては防げたもののミーム攻撃については対応が甘かったらしく
主任研究員シモンズ博士が影響を抜け切っていなかった。

だって彼を紳士にふさわしい待遇にしないといかんだろう!
と叫ぶシモンズ博士を端末から引きずり出してミーム攻撃の治療をして
ミーム攻撃の防御体制を更新したが結局最新の収容プロトコルは不明。
多分「出さない」「彼の精神衛生のためにお茶を提供する」が基本なんだろう。

収容プロトコルの追記
  • 実験や承認を受けた場合を除いてSCP-3560-Jの半径100m以内にお茶やコーヒー類の飲料を用意しない。
  • SCP-3560-Jには彼の好みに合致するイングリッシュブレックファーストティー*4を提供する。

シモンズ博士より全サイト職員への通知:
この決定により全スタッフが私を憎むのはわかっている。
財団の業務はカフェイン無しでは遂行できないことも承知している。
だが私は万が一の危険も容認するわけにはいかないのだ。
施設内のカフェテリアを廃止する。 皆の理解に感謝するよ。

実験記録の抜粋

特記なければDクラスに行わせている。
実験No: T-008
実験概要: SCP-3560-Jの前でアールグレイの紅茶を作る(ティーバッグを使用)
実験結果: SCP-3560-Jはカップの中のティーバッグがアールグレイだと気づいた瞬間に テーブルをひっくり返し D-1084に大火傷を負わせた。
SCP-3560-J「 2度と私の前にあの血まみれの犬の小便を出すんじゃない!
Wikipedia先生によればティーバッグ導入当初は英国での需要は皆無だったが
現在では英国で入れる紅茶の9割はティーバッグらしい。


実験No: T-012
実験概要: お茶自体は過去の実験でわかったSCP-3560-Jの好みに合う手法で淹れたが

 I ❤️ T という文字が大きくプリントされたマグカップで提供した。
実験結果: SCP-3560-Jはお茶はまずまずの味と述べたが
野卑な趣味」「子供の振る舞い」「洗練さの欠片もない」と非難した

実験No: T-021
実験概要: Dクラスに高品質のカフェテリアのコーヒーを作る一式を与えて
SCP-3560-Jの前でコーヒーを作るように命じた。
実験結果: SCP-3560-Jは当初Dクラスの振る舞いを無視して視界の隅でそっと様子をうかがうだけだった。
Dクラスがやり方を間違えてコーヒーの粉をこぼすと溜息を付いて立ち上がり
それは私が飲む物では無いが、私の前でそれを作ろうというのならせめて努力しようとは思わないのかね?」と言って
Dクラスを何度か平手打ちした後に 美味しい コーヒー の淹れ方を指南した
完成したコーヒーの試飲を拒否しつつも
シモンズ博士、二度とくだらん飲み物で私を挑発しないでくれたまえ
と手首の砕けたDクラスを解放しながら警告した。
コーヒー嫌いだけどコーヒーの淹れ方は知ってるのか。
実験No: T-025
実験概要: D-28732にSCP-3560-Jの前で好きな手法でお茶を淹れろと命じた。
実験結果: 録音された音声の抜粋:

SCP-3560-Jが叫びながら
言っただろう!
(平手打ちの音)
ここで茶葉を浸す!
(殴打音)
時間は2分!
(破壊音)
D-28732は2分後に死亡した。



実験No: T-083
実験概要: SCP-2649に給餌した後に収容違反対策を施してSCP-3560-Jの収容室に運んだ。
DクラスにSCP-2649をティーポットとして活用するように命じた。
実験結果: SCP-3560-JはSCP-2649を見るなり恐怖し立ちすくんだ。
(この時点ではSCP-2649は静止していて見た目は普通のティーポットと変わらなかった。)
SCP-3560-Jはそのまま三度ほど十字を切りゆっくり後退りして理解できない言葉を呟いた。
その後SCP-3560-Jは叫び出してシモンズ博士に「頼む何とかしてくれ!」と懇願した。
Dクラスがお茶の準備を始めるとSCP-2649は活性化を始めて、それを見たSCP-3560-Jは[編集済]後に

シモンズ博士はSCP-3560-Jに深く謝罪してSCP-2649とのクロステストを保留した。
一応弱点あるのな。

実験No: T-103
実験概要: 英国系の年配の女性で、英国王室でメイド長の経験がある
D-33012に伝統的なティーセットで紅茶を淹れさせた
よくそんな奴を調達できたな
実験結果: SCP-3560-Jはお茶を淹れる様を綿密に観察し、時にはD-33012の手元から数cmまで顔を近づけて入念に凝視した。
驚くべきことにSCP-3560-Jはサーブの間は沈黙して時折困惑して頭をかいたかと思えば
うーむ」と唸ったり「おお!」と感嘆の声を上げた。
D-33012の差し出したお茶を味わったSCP-3560-Jはにっこりと笑い熱狂的に宣言した。
これ以上ない完璧だ!あなたにはこんな残念な世界よりもふさわしい天国が待っている!
そう言うとD-33012の周りにまばゆい光が現れて驚愕した彼女は光と共に消え去った。
SCP-3560-Jは顔にハンカチを当てて1時間ほど気を失い、目を覚ますとコリンズ博士に告げた。
完璧な一杯がここにあった。それ以上に価値のあることなどない。
財団が各種のスキャンや追跡装置を駆使したがD-33012の所在は発見できなかった。
これ以降の3週間のSCP-3560-Jは非常に上機嫌でお茶を淹れる際に起きた「違反」にも寛容だった。
まずい茶を淹れると殺される。
完璧な茶を淹れると消される。
かなり厄介だなこいつ。

実験No: T-128
実験概要: Dクラスと共に最新ブランドの紅茶とコーヒーの自動給仕機を配置した。
ボタンを押すと完全に機械の内部でお茶の抽出を行い
最終的に紙カップ内に注がれた紅茶を出現するタイプの機械で
DクラスにSCP-3560-Jの目の前でプリセットのボタンを押すように命じた。
実験結果: Dクラスが自動給茶機と共に収容チャンバーに入るや否やSCP-3560-Jは懐疑的な目で機械を見つめた。
Dクラスが電源を入れて開始ボタンを押すと著しい嫌悪感を持ちながら機械に近寄った。
開始から20秒後にはSCP-3560-Jは給茶機に悪罵の言葉を叫び始めた。
40秒後にはより大きな叫び声をあげて杖で激しく給茶機を殴打した。
50秒後にはSCP-3560-Jの悲鳴のピッチと音量はますます増大してシモンズ博士曰く「バンシーの叫び」をあげながら機械を殴った。
給茶機の外装はボコボコになったが元が大きく頑丈な装置だったので内部でまだ動作が続いていた。
1分後には 音量が200デシベルを超えて 「外に出してくれ」と哀願するD-2489の鼓膜を破壊した。
SCP-3560-JはそのD-2489の 髪の毛を掴んで 何度もD-2489の上半身を激しく給茶機に叩きつけてついに給茶機(とD-2489)は沈黙した。
SCP-3560-Jは叫ぶのをやめて息を切らせてハンカチで額を拭きながらシモンズ博士に警告した。
地獄の底を見たくはない。君たちもそうだろう」これ以降2週間ほど実験を中断した。

シモンズ博士によるメモ
以下の内容は実験参加者か紅茶愛好家以外には興味を持ちにくい可能性がある。
そうでない(つまり、普通の)人間は無理に読む必要がないことを注記しておく。



SCP-3560-J A Discerning Gentleman(違いのわかる紳士)


余談

この記事はもともと通常ナンバーに入れるつもりで作成したが
途中からジョークオブジェクトに変更してさらに通常ナンバーに改訂を目指していたりと作者が試行錯誤している。
ジョークオブジェクトとしても通常記事としても中途半端感が残っている気がするのはそのため。

追記・修正は午後の紅茶を午前に飲んでからお願いします。

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最終更新:2024年11月22日 10:02

*1 「目撃した時だけ作用して離れると無効になるんだからミーム汚染じゃなくて認識災害じゃないか?」とディスカッションで突っ込まれて作者もそれを認めているが元記事自体は修正していないのでこの項目でもそれを踏襲して「ミーム攻撃」で統一する。

*2 SCP-1867に指定された「自分を19世紀の英国貴族ブラックウッド卿と自称するウミウシ」こいつ単体ではコミュニケーションが取れるウミウシでしかないが持っている知識記憶や保有してるコレクションが無視できない性質がある。

*3 ティーポットに8本の足が生えたような外見の蜘蛛。満腹になると鎮静化して普通のティーポットと区別できないほどに静止するが空腹になると人を襲ったり危険なことになる。

*4 英国で朝食に飲む紅茶…ではなくそういう名称の紅茶のブレンドのこと。