SCP-5635

登録日:2021/08/19 Thu 00:57:48
更新日:2025/03/29 Sat 07:17:10
所要時間:約 7 分で読めます




SCP-5635とはシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラス Euclid 撹乱クラスはDark、リスククラスはNotice。
危険性は低くて世間から隠し通すのも簡単で、概ね収容できているのだが油断できないと言ったところ。

概要

SCP-5635は熱圏上部の静止軌道上に位置する所属不明の人工衛星で、
大きさはCubeSatという規格(10cm×10cm×11cm、約1kg)に属するかなり小型の部類。
CubeSatはサイズが小さいため搭載できる機器も限られていて
そのため機能や活動可能時間が劣るが、打ち上げに必要なコストも少なくて済むので
日本の大学が学生向けの研究で上げた実例もある ほど手軽に飛ばせるのが特徴。*1

だがこのSCP-5635、生きた人間と変わらないほどの 知性と対話能力を持っている
SCP-5635の人格は寡黙で思慮深く、基本的には敵対的な言動をしてくることはない。
そんなSCP-5635は衛星軌道から地球のほぼ全域に無線通話を仕掛けることができる。
一つ一つなら既存技術でも再現できなくはないが、
CubeSatに積めるサイズの機器でそんなことを長期にわたって行うことは難しい上に
後述の作用はアノマリーでなければ不可能な行為である。

SCP-5635はどうやってそれを行なっているのかは不明だが
地球上にいる特定の条件を満たした人間(SCP-5635-1に指定)を探し出して接触を図ろうとする。
SCP-5635-1の手持ちの電子機器、音声の送受信ができればスマホやパソコンなど何でもよいが
それが SCP-5635との交信機材と化して SCP-5635とSCP-5635-1が通話できるようになる。
そうやってSCP-5635は回線を開いて「コンソール・イベント」を開始する。

SCP-5635の作成元

財団がSCP-5635内部を透過監視すると、基部の金属板に刻印が刻まれているのを発見した。
刻まれていた内容は以下の通り。
テロメア・ヘルプボット2.1
“光はあなたが求めるべきもの 主は奇跡を分け与えてくださる”
それに加えてイングランド・セントクレストアベニューの住所も書かれていた。

当該住所を調査したところマナによる慈善財団が倉庫として使っていたことが判明。君たちかよ…。
さっそく襲撃してみたが中身はもぬけの空でアノマリーの残滓は見つからなかった。
しかしあの衛星を組み上げるのに必要な部品や資材の残滓が散らばっていた。


どうやらこいつはMCFが作成した自我のある衛星で
名前は「テロメア・ヘルプボット2.1」らしい。
そいつが宇宙から人に話しかけてくる目的とはいったい…?

コンソール・イベント

改めて解説するがSCP-5635は地上にいるSCP-5635-1に話しかけることがある。
SCP-5635-1が持つ電子機器で(本来の性能では不可能な)地上と衛星軌道間を繋いで
会話を行うことを財団はコンソール・イベントと名付けている。
コンソールイベント中に両者が交換しているのは異常性のない電波信号なので
その気になれば傍受可能であり財団も調査や追跡ができる。

さて、SCP-5635がどういう基準でSCP-5635-1を選んでいるかというと
若者が多く、特に精神に深い傷を負っている者 だった。
SCP-5635はそんな子供の心を癒し、完全に立ち直るまで懸命に励まし続けていたのだった。

ちなみにコンソールと聞くと、機械の そばにある 制御装置を思い浮かべる人が多いだろうが
元々は 近くにいて支える という意味のラテン語が由来で
動詞のConsoleは「慰める、元気付ける」の意味である。

財団が掴んだSCP-5635-1はタイ在住のマリー・チャンタラちゃん11歳。(女子)
彼女は 解離性遁走障害 の診断を受けていた。

財団によるコンソール・イベントの傍受記録の抜粋
日時 :2020年3月24日
※実際の会話は中央タイ語で行っている。
SCP-5635:
さあ、僕のやり方がうまく行ったかを確認したいな。前回から良くなったことはあるか教えて?
マリー:
そうね。少しだけ心が楽になったわ。でも時々怖いことが起こるの。
SCP-5635:
そうなったらまた想像してみて。君は島にいるんだ。その島には君の大好きな動物が…
マリー:
(遮って)象!
SCP-5635:
うん、象だよ。また何か悪いことや怖いことが起きそうになったら息をゆっくり吸って吐いて、
「わたしは象がいる島にいるんだ!」って考えるようにしてほしいな。
マリー:
テロメア。
SCP-5635:
えっ?何か気になることがあったの?僕に教えて。
マリー:
ううん、ただのわたしの気持ち。あなたと話すようになってからわたしはずっと気持ちが楽になったの。
学校はそれほど嫌じゃないのよ。今でもいくつかの授業が好き。
でもパパやママはまだわたしのことが嫌みたい。
まだ学校に行く勇気がないの。でもそれはずっとじゃないって思ってる。
テロ、 わたしの友達になってくれてありがとう。
[記録終了]

SCP-5635とのコンソール・イベントを重ねるたびにマリーの状態が回復しているのを財団も確認していた。

インタビューログ

SCP-5635とマリーが約束していた次回のコンソール・イベントのタイミングに合わせて
サイト-111からSCP-5635に通話を試みることにした。
インタビュアー : デイビス博士
インタビュー対象 : SCP-5635
デイビス博士:
ここからは私が会話を引き継ぎます。まずは私から質問を…
SCP-5635:
ちょっと待ってください。君はどなたです?僕が話すべき人の中に君は入っていません。話すことはないですよ。
デイビス博士:
あなたはよく理解していないようですね。
あなたが知るべきなのは今からはあなたは私たちの管理下に置かれるということです。
そして今は私が質問をしています。
SCP-5635:
ねえ、今君は人の大事な土地を土足で踏みにじっていることを認識していますか?
「私たち」が僕の責務を邪魔する理由を是非とも聞かせて欲しいのですがね?
デイビス博士:
それは私のボスの命令です。実際の話に移りましょうか。
あなたはこれらの子供達と何のために話をしているのですか?そうすることであなたは何を得られるのです?
SCP-5635:
僕が何か利益を得たくてやっていると思うのは君の勝手だけども下世話な考えですね。
僕の唯一の目的は暗闇の片隅にいる者に光を与えることで、それが僕の存在意義だよ。
デイビス博士:
あなたは目的を述べました。だが創造者がいない” モノ ”が目的など持つはずがありません。
あなたを作ったのは誰ですか?
SCP-5635:
僕の上司について君に話す必要はありません。僕は彼が作った多くの発明品の一つに過ぎないし
僕がどうなったとしても彼が動くような特別な” モノ ”ではないですよ。
さあ、もういいでしょう?そろそろ患者であり僕の友達でもある人の所へ戻らなくては。
デイビス博士:
友達…SCP-5635-1?マリー・チャンタラでしたか?もうそれは不可能でしょう。
SCP-5635:
どういうことだ!?あの子は僕を必要としている、いやあれらの子供達は皆僕が必要なんだ。
いい加減に邪魔はやめてくれ!
デイビス博士:
簡潔に言いましょう。マリーにはもうあなたの言葉は効果はありません。
彼女の 記憶の中にあなたの姿は残っていない のです。
彼女については正常化を行い、あなたと会う前に戻りました。
SCP-5635:
(沈黙)
君は自分が何をしたかわかっているのか?
[記録終了]
SCP-5635はこれ以降の問いかけには沈黙した。その後当面の間はコンソール・イベントは起きていない。


財団の責務はアノマリーの影響から人類を守ることである。
だからそれが心の病に苦しむ子供にとって癒しとなっていてもアノマリーは取り除く。
そして対象の人物が精神の障害を招くような環境にあったとしても
それがアノマリー由来でないのであればそのまま維持するのであった。

収容プロトコル

  • サイト-111の職員はSCP-5635を監視して電波の発信があれば傍受記録する
  • コンソール・イベントを起こした場合は迅速に電波発信源を突き止めSCP-5635-1を特定して周囲の人間も含め 確実に記憶処理する。

デイビス博士「まったくMCFの連中は余計な仕事を増やしてくれる」


SCP-5635

Hello,this is space speaking(宇宙からこんにちは)


追記・修正は衛星を一基打ち上げてからお願いします。

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最終更新:2025年03月29日 07:17

*1 頑張って切り詰めれば衛星の作成から打ち上げ、大気圏へ落とすまでの一連の費用が1千万くらいで済むらしい。