登録日:2009/11/08 Sun 03:15:29
更新日:2025/04/06 Sun 09:12:02
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※この先にはゲーム本編のネタバレしかありません。
ご了承ください。
ある時ルクレチア王国で開かれた武闘大会。優勝者には王女アリシアとの結婚が待っていることもあり盛大な盛り上がりを見せていた。
主人公
オルステッドは決勝戦まで勝ち残り、親友の
ストレイボウを下し、優勝の座を得ることとなった。
「オルステッド様とおっしゃいましたね?とても男らしい…戦いぶりでした。よろこんで、あなたの妃になりましょう…」
宴を経てその夜、城のテラス。
「これからは父上よりも…いいえ、誰よりも…あなたを…信じます。」
そして抱き合う二人…だが、幸せな時も束の間、突如として王女を狙う魔物が襲い掛かる。
(リメイク版ではアリシアが微妙に遠いところで恐怖に伏せる中、オルステッドが魔物と戦う光景が繰り広げられる)
からくも魔物を倒したもののそれは囮だったらしく、今度は魔王山より飛んできた魔王が、アリシアをさらっていく!
オルステッドに助けを求めるアリシアの叫びだけが、夜空に溶けていった……
この一夜を経た後、王様からの願いも受けてオルステッドは魔王討伐とアリシア奪還に向かう。
既に彼の中では特別な立場らしく、中世編のゲームオーバー時には何処かの深部で魔王と思しき存在を前にアリシアが
「助けて オルステッド…」とか弱く助けを求める場面が流れ、タイトルに戻るようになる。
親友の魔導師ストレイボウ、かつて魔王を倒した僧侶ウラヌスと先代勇者ハッシュの力を借り、勇者オルステッドは魔王をついに倒す。
これでようやく全てが終わり、後は王女を…
と思ったところでハッシュが告げる。
そんな事実に驚く間もなく病を患っていた身体に限界が訪れ、力尽き倒れるハッシュ。
偽魔王を倒した事によって部屋が揺れ出し、脱出を試みるも逃げ遅れ落盤に巻き込まれるストレイボウ。
アリシアの行方も依然として掴めぬまま、オルステッドとウラヌスは失意の帰還をすることとなってしまった…。
その夜…オルステッドの見た夢か、いや誰の視点なのかもわからぬ光景で、見覚えのある何処かの深部でアリシアは魔王を前に叫ぶ。
「来ないで!」と…
だが目覚めて間もなく何者かの術中にハマってしまったオルステッドは、国王を魔王の幻と共に斬り捨ててしまう。
勇者から一転魔王と呼ばれ恐れられ、追放されるも何処にも安息の地はなく、戻ってきたオルステッドは投獄されてしまう。
だが、拷問の末に瀕死の状態であった、隣の牢のウラヌスが力を振り絞った魔法により脱出する。
「さ、行くのじゃ…お前には…まだなすべき事が…信じる者がいるではないか…」
ウラヌスの最期の言葉を聞き、過去に自分を信じると言ってくれたアリシアとの言葉を胸に、オルステッドは王国を後にし魔王山を往く。
岩盤で塞がっていたはずの扉は開き、夢か幻かで見た魔王山の最深部に以前は見つけられなかった隠し通路を発見。その先へと駆け出し…
魔王山の最上部にそびえたつ謎の像…その中から出てきたのは死んだはずのストレイボウだった。
そしてオルステッドに対し真相を語ってゆく。
魔王山の偽魔王を倒してからの一連の展開と事態は、全てオルステッドを陥れるために、アリシアを自身が代わりに救おうとせんとストレイボウが仕組んだことだった。
そして、今まで自分に勝ち続けたオルステッドへの恨み言を吐き出し終わると禍々しい魔力を纏って、ストレイボウは叫ぶ。
「あの世で俺にわび続けろ
オルステッドーーーーッ!!」
親友への嫉妬心に狂い、多くの破滅をバラ撒いたストレイボウを倒すと魔王像の中からようやくアリシアが姿を見せる。
流れた血は少なくなかったが、これで彼女を助け出し、後は目の前で叫ばれたであろう真実を国民に伝えれば誤解が消えるだろう。
と、思われたが……
アリシアはオルステッドを前に叫ぶ。
「来ないで!」と…
まるで、どこかで見た夢のように。
「オルステッド…なぜ…来てくれなかったの…?」
「私は待っていたのに…」
「…この人は…ストレイボウは来てくれたわ!」
「…この人は…いつも あなたの陰で苦しんでいたのよ…」
「あなたには…この人の…負ける者の悲しみなどわからないのよッ!!」
アリシアの態度に動揺するオルステッド。
誤解だとも、騙されていたんだとも言い返すこともできない。最後の唐突な発言にさえも。
そんな彼をよそにアリシアは…
「ストレイボウ…」
「もう 何も苦しむことはないわ…」
「私が…」
そう言って躊躇いなくナイフを自らの腹に突き立て自害。ストレイボウの死体に覆いかぶさるように倒れるという、あまりにも後味の悪い最期を遂げた。
一人残されたオルステッドはこれまでの出来事を思い返す。
- 武闘大会の優勝後とその晩のアリシアの言葉
- ハッシュとウラヌスが最期に残したそれぞれの言葉
- 国王を手にかけてしまい、魔王という名の濡れ衣を着せられたあの晩の出来事
全てを失ったことに気付いたオルステッドは絶望と共にへたり込む。
そしてオルステッドは、プレイヤーの意志を離れ、初めて自分の心を口にする。
かつての勇者が人間に絶望し、
魔王オディオが誕生した瞬間である――
故人ではあるが、
最終編の、
僅かな生き残りを残してほぼ壊滅したルクレチアの民の魂が彷徨う『心』のダンジョン最深部にも登場する。
アキラの最強武器『ド根性グラブ』を取るとそこに現われる。
彼女の心を読むと、
「お願いです…どうか止めてください…
オルステッド(あの人)を…」
という声が聞こえ、パーティは自動的にダンジョンを脱出する事になる。(リメイク版では自動ではなく、すぐ近くに脱出ポイントが出来る形になった。)
声優の演技の光るリメイク版ではストレイボウ共々生気を失ってしまったような様子になっており、これがプレイヤーの前で自らの命をも顧みず、憎悪を爆発させたあの二人と同一人物なのか?という気持ちさえ浮かんでくる。
(真実を知らないまま死してなおオルステッドを魔王とみなしている大臣のような例もあるが…。
アリシアのあまりにも唐突な行為は、多数のユーザー達の怒りを買い、彼女は「スクウェア三大悪女」の一人として名を連ねる事となった。
『心』のダンジョンにおいて、自分の行為を後悔する発言が存在しなかった事も、ユーザーの彼女への怒りに油を注いでいる。
ただし一部では彼女を擁護する、彼女に一定の理解を示す考えもある。
まず大前提として、彼女は敵地真っただ中の魔王山に幽閉されており、外の状況が全く分からないどころか自分の命さえも危うい極限状況に置かれていた。
そんな中、「助けに来てくれたストレイボウ」と「一緒にいたはずなのに来なかったオルステッド」という現実を元にストレイボウに嘘を吹き込まれたら、
一体どれほどの人間がストレイボウを疑えるだろうか。
なお、現実でも人間に対して特定の思想を植え付ける「洗脳」を行う場合、
一定以上の期間外界の情報を遮断し、精神的に追い詰めて心神耗弱状態に追い込むというのが常套手段である。
そのような状態に追い込まれた人間は、それまでの自分とは全く異なる思想でも受け入れて人が変わってしまうのだ。
加えて言うなら、アリシアは「誰よりもあなたを信じます」とは言ったが、それは王が決めた催しに従っただけであり、最初からアリシアの本心ではなかったのではないか?という見方もある。
実際にオルステッドとは闘技大会の時が初体面であり、長い間苦楽を共にした絆などは特にない。
対して、アリシアにとってストレイボウは自分の窮地を救ってくれた英雄である。
また、彼女のそんな支離滅裂な行為に説明を付けられる推察として、「黒幕は魔王像で、ストレイボウやアリシアは魔王像に操られた」もしくは「負の感情を異常に増大させられた」という説がある。
魔王山頂点に存在する魔王像は「憎しみ」等の負の感情を増幅して力にするものではないか? というものである。
ストレイボウの裏切りは親友への嫉妬心を増幅されたのものあり、アリシアも魔王にさらわれたり、助けを待っている間にストレイボウの策略で父である王を殺されたりと、負の感情はかなり強かったので、同様に狂わされたのでは?という事である。
また、中世編冒頭では「王妃はアリシアを身籠っている時に魔王にさらわれた」という過去が語られている。王妃がさらわれている最中、つまり生まれるより前から魔王の何らかの企みに巻き込まれていたという可能性もなくはない。
この説が正しいとすれば、本当に悪いのはストレイボウやアリシアではなく、魔王像或いはそれを作った魔王であって、むしろ彼らは、
オルステッドを魔王にするために魔王像に利用された上に、説明が無かったが故に極悪人のレッテルを貼られた被害者という事になるが…
残留思念の言葉が妙に大人しいことも気になるところである。何せ、相手は魔王オルステッド。父を殺し、愛する人を殺し、国を滅ぼした憎き仇敵である。「あの悪魔を殺して」と言ってきてもおかしくはない。
この不自然さは何か。
上記を推定の一つに、リメイク版ではストレイボウもオルステッドもこの作品の定義である【魔王】=【憎しみ】にとらわれている際には赤黒くなっており、
魔王オディオの欄でもあるが、現実世界の20年以上の時を超えて新たなるオディオが出現したことにより【魔王(憎しみ)を出現(復活)させるための贄にされた】と推定することもできる。
また、「『ライブアライブ』30周年記念 公式生放送」で時田氏は「SFC版では魔王についてそこまで深い設定は考えていなかった」「リメイク版では、魔王山に魔王はいないが、魔王山は憎しみが集まる場所で、人間の負の感情が増幅されて誰でも魔王になる可能性があるという解釈」と、上記の推測を肯定する意見を述べている。
あるいはその魔王偽装事件と同じく、アリシアもまたストレイボウに騙された被害者だった可能性もある。
「恐るべき魔王に目的すら知れぬままに囚われている」という極限状態に置かれた世間知らずのお姫様の精神状態など、とうていまともなものではなかった事は想像に難くない。
そこに付け込んだストレイボウに「オルステッドは未だ二の足を踏んでいますが、俺は諦めず真っ先に助けに来ました」などとある事ない事吹き込まれていたり、もっと直接的に魔法や幻術の類で洗脳・籠絡されていた可能性だって否定はできないのである。
中世編のストーリーには、彼女の行動以外にも、「魔王がどこにもいなかったのなら、最初に倒した偽魔王は一体何だったのか?」「オルステッドは何故、ただ魔王になると宣言しただけで本当に魔王になれたのか?」といった、不自然な点が存在する。
こうした意見が出る背景として、アリシアというキャラクターがどのような存在なのかプレイヤーからはさっぱり解らないというのがある。
彼女が登場するのは中世編の冒頭と最期の2つのみで、プレイヤーとオルステッドからしてみれば、あの時初めて顔を合わせ言葉を交わした女性の、「信じてる」というあまりにも曖昧な一言を頼りに戦っている。
これはLIVE・A・LIVEという作品は、既存の王道的なヒロイックRPGのアンチテーゼとして作られた作品であるというのが大きいだろう。
中世編以外の7人は、それぞれがぞれぞれの確固たる理由を持って戦っている。
それに対して、オルステッドは何故オルステッドが戦いに赴くのかという理由付けが明確には明かされていない。
単純に、「魔王にさらわれた姫を救う」という状況があるだけで、オルステッド自身がアリシアをどう思っているか、何故魔王と戦うのかというのはプレイヤーにも一切明かされない。
オルステッドが初めて自分の意思を示したのは、すべてが終わって魔王に目覚めてからである。
中世編は、言ってしまえば最終編のラスボスである「オディオ」が何故、どのようにして生まれたのかという物語であると同時に、RPGの「お約束」の否定や問いかけを行う話でもある。
勇者は何故戦うのか?
戦うとはいったい何なのか?
そして、勇者が英雄に至るとはどのような事なのか?
英雄とは何か?
RPGの、英雄になることが約束された勇者の、その約束がなくなった時、勇者はどうなるのか。
アリシアとオルステッドが当時の王道的RPGのある種テンプレート的なキャラクターである事。
そして、そのテンプレートを覆すあのラストとは何だったのか。
その事をよく考えてみると、LIVE・A・LIVEという作品の本当の魅力が見えてくるかもしれない。
作曲を担当した下村氏曰く「時田氏の女性観みたいなのが反映されてる」らしい。
また時田氏は、公式攻略本のスタッフインタビューで、「アリシアみたいな女の子女の子してて私かわいいでしょみたいな奴ほど残酷なことするもんです」「『心』のダンジョンでの台詞でちょっとだけフォローしたつもりだった」という趣旨のコメントをしている。
あのセリフでアリシアの言動を「ちょっとだけフォロー」したつもりだったというのなら、もしかすると本来、もっとひどいことを言わせるつもりだったのでは
ちなみに、2006年に中世編を原作とした演劇「魔王降臨 Live SIDE & Evil SIDE」が公開されている。
こちらのアリシアは大まかな立ち位置こそ原作と同様ながら、フルネームが「
アリシア=ブルターク」と設定され、
政略結婚を嫌って
勇者ハッシュの様に強い男と結婚したいとわがままを言って父のユリウス王に武術大会を開かせた等、王族としても人間としても問題のある性格にされている。
ただし演劇版は原作ゲームとは異なる世界観であり、一部の設定や展開が変更されている(いわば
パラレルワールド)。
そのため、演劇での彼女の設定がゲームにそのまま反映されるわけではない点には注意されたし。
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最終更新:2025年04月06日 09:12