全角チルダと波ダッシュ

登録日:2021/11/30 Tue 09:19:09
更新日:2022/01/24 Mon 10:32:46
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vs

目次



【概要】

全角チルダと波ダッシュとは、主に範囲を示す時に使うアレな記号である。
他にも罫線や長音、漫画的表現など幅広く使われる。
ここで「全角チルダ」とはUnicode文字名「Fullwidth Tilde」、「波ダッシュ」は同「Wave Dash」の日本語訳であり、以下特筆なき限り同様である。
用例は


こんな感じ。

それぞれの出し方は以下の通り。
全角チルダはWindowsではキーボード上の日本語「へ」キーをShiftと一緒押す。もしくは「から」で変換すると出てくる。
波ダッシュはMacでは上記の方法で普通に出る。WindowsではMS-IMEで「だっしゅ」で変換すると出てくる。
なお「にょろ」で変換するとどっちも候補に出る。
Wavy Dash「〰」とかさらに訳のわからないものまで出る。
iOSやLinux、Androidといった他のOSでの状況はキミの目で確かめてみよう!



【特徴と違い】

多くの環境で見分けがつかないこの2文字だが、

まず、全角チルダとは、少なくとも文字名から判断すればチルダ(半角チルダ) ~ の全角版とされる文字である。
コンピュータ以前より、チルダという文字自体は音声、発声、発音に使われる記号で、ポルトガル語など言語の補助としてよく出てくる。
そのほか、数学やコンピュータの世界でも頻繁に使われている。
しかし全角チルダがそのような意図で使われることはまず無い。

一方、波ダッシュとは名前からして概要で記した用法に向けた記号である。

つまり我々日本人(日本語)としては波ダッシュを使った方がいいのだが、残念ながらWindowsがNT系で内部文字コードをUnicodeに変えた際、JISコードにただ1つ存在したアレ(JIS文字名「波ダッシュ」)はUnicodeになぜか2つあるアレのうち名前から想像されるWave Dashの方でなくFullwidth Tildeの方に対応させられてしまった。
つまりWindowsではUnicodeの波ダッシュを使うとShift_JISなどのJIS系文字コードで保存できず、Unicodeの全角チルダはJIS波ダッシュとして保存できるといういびつな状態になってしまった。

なおそもそもUnicodeになぜ2種類のアレが含まれているかは謎である。韓国や中国の文字コードを考慮しても、アレな字形の文字は(半角)チルダの他に全角の1種あれば十分である。(加えてTilde Operator「∼」は数学分野で必要か?)

さらに悪いことに…


< 死 ぬ が よ い

Windows「ウワーッ!何この奇怪な記号!?」






あろう事かUnicodeは由緒正しき波ダッシュを左下がり右上がりで登録してしまったのだ。原因としては縦書き字形を単純に90°回転させてしまったという説がある。
そう、これがWindowsがJIS波ダッシュをWave Dashの方でなくFullwidth Tildeの方に対応させた理由だ…と思う。(はっきり断定できればよかったんだけど昔の資料はなかなか見つからずどうにも確証が持てない…)
訂正されるまでの長い間(訂正されてからも長い間)、Windowsの標準フォントも同様の字形になっていた(いる)ため、WindowsユーザーはJISの呪縛から離れてすらこの奇怪な文字を避けて全角チルダ側を使うことがより一層定着してしまった。
メイリオや游ゴシックあたりの新しいフォントは問題ないものの、MSゴシック・明朝では2021年Windows10に至っても波ダッシュの向きは治っているもののビットマップが含まれておらず小サイズでは使いにくいままである。




Unicode 8.0「ハァ…ハァ…直したぜウィンドウズ=サン!」

Windows「XPまでずっと全角チルダ使ってたのに今さら変えられねーよ!」

Mac「私は波ダッシュ使いますね」

Windows「俺は全角チルダ推すわ。使いにくいでしょ?いまさら」

エンジニア「グワーッ!」




かくして一部のエンジニアは発狂し、全角チルダと波ダッシュの壮絶な戦争が幕を開けたのだった。

アニヲタWikiの記事名も完全に混ざっている…どころか記事本文の中で全角チルダと波ダッシュが混在している事すらある。
~で検索した結果 (全角チルダ)
〜で検索した結果 (波ダッシュ)
経緯を読んでもらえば分かるだろうが、要は追記編集する諸氏の環境によって変わってしまうのだ。
…どうしようこれ?




【正誤に関する話】

どちらが正しいなんて決められない。

文字名からは「波ダッシュ」の方がそれっぽいが、そもそもUnicode文字名は記号の意味を定義するものではない。
例えばUnicodeにはギリシャ語の疑問符を意図したGreek Question Mark「;」という文字があるにも関わらず、ギリシャ語の疑問符として使うのが推奨されているのは普通のコロン「;」の方だ。
同様にアポストロフィーとして推奨されるのはApostrophe「'」でなくRight Single Quotation Mark「’」の方。
そもそも(半角)チルダだって、ディスプレイ上に表示するとき前進を伴うこの文字を発音記号として使うことはまず無い。重ね打ちができたタイプライター時代の遺産である。

とはいえしがらみなくどちらか一方を選ぶなら、波ダッシュの方が名前としてそれっぽいというのは妥当な判断である。JISの示す公式の割当ても波ダッシュの方である。

だが肝心のWindows環境が全角チルダ推しのため、波ダッシュの使用を強要するのもまずいという難儀な状態にある。

Windows上でShift_JISで保存するには全角チルダを使う他なく波ダッシュが機種依存文字になってしまったこと、
加えて表示上の不具合もあったこと、
Unicode化の進んだ今もそこかしこに残るShift_JISの呪縛のために機種依存文字はやっぱり敬遠されること、
そしてVista以降表示が解決したと思ったら
今度は逆に区別が付かなくなった
のでどっちを使えとか以前に見分けられなくなってどうしようという話になってしまった。



Q. じゃあどっちを使えばいいのよ!?

A. 気にするな!



よくわからないという諸氏は「ルールが定められない限り」好きな方を使えばOKと思って間違いない。

ミもフタもないが、この辺のことを考えるのはエンジニアであって末端のユーザーではないからだ。
正しく波ダッシュをいくら啓蒙しようと、大勢力のWindowsが全角チルダ推しを止めない限り、
大勢の使用者にとってはそんなもんどうでもいいしメンドクサイだけなのである…現実は非情だ。


余談だが、ウィキペディアではこの辺はきっちり明文化されている。
「全角チルダは原則使うな」「波ダッシュは極力使うな」「使いたい場所は原則-を使え」とストイック。


【誰が悪いの?】

色々とみんな悪いし誰も悪くない。ミスと不運が重なった。

  • ラインプリンタで重ね打ち前提のチルダがASCIIに入ってディスプレイ表示する時代になって本来の用途に使えないのにずっと残ってたのが悪いけど、互換性を無くしてまで変えるのもやりづらい。
  • 本来の用途に使えなくなったチルダをみんな罫線とかホームディレクトリとか変な用途に使い出したのが悪いけど数少ない文字を様々な用途に使うのは便利なので止められない。
  • JIS X 0201(ANK)でチルダの代わりにオーバーラインを入れたのがこの後に起こったことを考えれば悪いといえるけど、そんなことになるとは当時知る由もなかった。
  • JISコード制定時に波ダッシュ字形だけ入れてなぜかASCIIにはあるチルダを入れなかったのが悪いけど、ANKには無かったし不自然ではない。そもそもJIS波ダッシュはチルダとしても使う設計とも考えられる。
  • Unicode以前、キーボードでチルダと関係ない全角JIS波ダッシュが半角チルダと同じキーで出るようになっていたのが悪いけど、そもそもディスプレイ上のASCIIのチルダはチルダとしてより罫線の一種としての用途が一般的で、むしろ波ダッシュ文字とだいたい同じ用途。
  • このときANKのオーバーラインとASCIIのチルダが同一視されていたのが悪い(このときキーボードにあるのがオーバーラインだったら問題は起こらなかった)けど、わりと使う波ダッシュ文字がキーボードで直接入力できるのは悪いことではない。
  • Unicodeに必要もないのにほぼ同形の波ダッシュと全角チルダ2つが存在したのが悪いけど、チルダ以外のASCII文字にすべて全角形があるのにチルダだけ無いのも不自然。波ダッシュの方を入れないのも不自然。更にミスによってこのときは同形では無かった。
  • Unicodeが波ダッシュの字形を間違ったのが悪いけど、これは単なるミスで単独では責めるほどのものではない。
  • Unicode公式が元にした文字コードとUnicodeコードの対応を示さなかったのが悪いけど、まあ出始めで仕様バグも多数あった当時にそれを正しく行う能力があったかというと…やっていたらいたでまた別のバグが出てたんじゃないかな。
  • たぶん世界で最初に(少なくとも一般ユーザーの目に触れる環境では初)JISとUnicodeを対応付けたMicrosoftがJIS波ダッシュをUnicode波ダッシュでなく全角チルダの方に対応付けたのが悪いけど、(半角)チルダと同じキー操作で出るチルダに似た形のJIS波ダッシュを全角チルダと同一視するのは自然。
  • Microsoft以外(JIS公式含む)がMicrosoftに倣わずJIS波ダッシュをUnicode波ダッシュに対応付けたのが悪いけど、文字名からしてそっちの方が自然なので仕方ない。
  • Microsoftが他との違いに気づいた時点で直さなかったのが悪いけど、互換性を捨ててまで変更するのは容易ではない。


【見分け方】

先程書いた通り、Windows Vista以降見た目が解決した事は喜ばしいのだが、
おかげでの区別がつかなくなってしまった。どう見ても一緒である。

これらは最終的にはシステムやエディタ、フォントがどう表示しているか次第なのだが、
MSゴシックかつフォントサイズが小さめにすると違いが分かる。
MS明朝の場合は逆にフォントサイズを大きくすれば微妙に違いが分かる。

なんかこう…波ダッシュの方が微妙に平べったい…気がする…?
分かるかそんなもん!




【もっと詳細な話】

文字コードは以下のようになる。

全角チルダ U+FF5E
波ダッシュ U+301C

波ダッシュは機種依存文字扱いされ、環境によっては文字化けを起こす。
Unicodeに対応していないWindows上のテキストエディタともなると当然波ダッシュはダメで、使えるのは全角チルダのみという事になる。
逆に言えばUnicodeに対応していないMac上のテキストエディタでは波ダッシュのみである…がレガシーを切り捨てていくMacの性質上あまり古いアプリは残っていないだろう。

特に弊害が起こるのはWindowsとそれ以外の間で文章のやり取りをする場合、もしくは両環境を考えたシステムの場合で、
エンジニアはこれらを統一あるいは補正のために腐心する事になる。

なお類似したコード…(環境によっては表示できない場合もあります)
  • U+007E:~
  • U+02DC:˜
  • U+1FC0:῀
  • U+2053:⁓
  • U+223C:∼
  • U+223F:∿
  • U+3030:〰

うん…ナニコレ?









エンジニア「ウィンドウズ=サン、全角チルダ推すのを止めろ!」

Windows「やだ」





追記編集は全角チルダにキレながらお願いします。


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最終更新:2022年01月24日 10:32
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