ウィリアム・ベルグシュライン

登録日:2022/3/06 (日) 2:00:00
更新日:2024/11/03 Sun 20:16:46
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この天地に、俺が忠誠を誓う主君はただ一人

斬空真剣(ティルフィング)を担う神は未来永劫、大神素戔王(ヴェラチュール)のみ。

あの方の行く道を遮るなら、俺は迷いなく神祖であろうと斬り捨てる



ウィリアム・ベルグシュラインとは『シルヴァリオ ラグナロク』の登場人物である。
CV:伊達邦彦



◆概要

カンタベリー聖教皇国の聖騎士で、皇都守護を担う金剛騎士団(ダイヤモンド)の現団長。斬空真剣(ティルフィング)の異名を持つ非人間的なまでに寡黙で冷静沈着な男。
同時に総代聖騎士グレンファルト・フォン・ヴェラチュールの洗礼を受けた使徒である。
ベルグシュラインにとって彼は育ての親にして剣の師匠、そして仕えるべき主君であり、その忠義は厚い。



◆来歴

聖教国が軍閥の長、ヴェラチュール家が擁する施設の一つに、身寄りのない孤児へ戦闘技術の粋を教え、神祖のために戦う優秀な兵士を育成する養育機関があった。
千年をかけて培われた教育課程によって修了者は誰もがそれなり以上の精鋭となって国家に貢献し、中でも突出した存在はその代のグレンファルトの使徒となる栄誉を授かる。
今から30年前、そんな学び舎に1人の孤児が拾われ「ウィリアム・ベルグシュライン」と名付けられた。

端的に彼は武において究極の天才であり、また驕りも慢心も不満もなく誰よりも真面目に訓練に取り組み、同等に競えるライバルや有力なダークホースも歩みを止める挫折もなく、少年は若くして歴代最高傑作と称賛されるようになる。
何の波乱もドラマもなく、誰より優れた天賦の素質の持ち主が誰より優れた者に見出され、一流の教育環境下で真面目に勉強・訓練して成長した結果、心技体全て揃った世界最強の剣士に至ったという極めて順当な話であった。
それからも特別語るようなことはなく、育ててもらった恩義に応えるため望まれた役割のままに剣を振るい続ける。
彼が主に疑問を口にしたのはただ一度だけ。



何故、彼らを快く市井に送り出したのですか?それもあそこまで厚遇して


それはベルグシュラインと同じ養育機関で育った一組の男女が起こした叛逆の結末。端的に言えば、彼らは駆け落ちを図り、神祖の箱庭から逃げ出そうとして捕らえられたのだ。
「戦いは嫌で、2人でパンを焼いて暮らしたい」と話す彼らにグレンファルトは未来への門出を祝う激励と、生活していくのに十分な金銭と身分を授け、商店への紹介状までその場で書き綴った。
戒厳令やそれを確認するため特定区画でしか商売を行えない等一応の制限は課せられるものの、それらを差し引いたとしても、神々を裏切った不忠に与えられる罰としては余りにも優しい裁きだった、彼らは神の大器に心から敬服し、晴れて切望していた自由を手にしたのである。

ゆえにベルグシュラインにはその行動の真意がわからなかった。彼らにそれほどの恩情を与える価値があったとは思えなかったのだ。
だがグレンファルトは「我々は人類種が起こす理不尽に何度も何度も手を焼いてきた、余計な恨みはなるべく買わないに越したことはない」と返す。
千年もの努力と研鑽を重ねてきた神祖に対し、たった数十年生きた程度の人間が喉元まで食らいつく。
1は100に勝てないという当たり前の数式を心一つで破壊する。

強いから、優れているから、心技体が完全だから──当然のように最強となったお前の逆だよ、絶対剣士

まるで運命を味方につけたかのような怪物に、人類はきっかけ一つであっさりと変貌してしまう



だが、だからこそベルグシュラインの中で興味が湧いた。
今まで一度も出会ったことのないその不条理とやらに、自分もまた相対する可能性を知ったから。

私も、運命と出会う日が来るのでしょうか?

さあな、詳しい未来は俺にも分からん。しかし恐らく、これだけは間違いないと言えるだろう。最初に告げた神託通りさ。──運命がお前の分岐点になる

たとえその時が訪れようとも、あるがまま、神の担う刀剣であり続けるだけのこと。
そう思っていたが、しかし。

であれば、期待しておきます

相も変わらず、淡々とした返答が男の小さな変化だった。



◆能力

現在の聖教国、そして過去千年の歴史の中でも頂点に立つ最強の使徒。
裁剣女神(アストレア)審判者級の完成度に断刃(ムラサメ)並の剣技、人外じみた戦闘勘、学習能力、加えて使徒の不滅の肉体を備えた総合値の怪物。

剣術は師であるグレンファルトを超え、一つの極みに至っているが、あろうことかベルグシュラインは剣に対し誇りも執着も抱いていない。
だから剣を競うことに興味はなく、正面から戦うよりも勝算が高いと判断すれば何の躊躇もなく暗殺なり毒殺なり卑怯な手段を検討できる。
その性格上気合と根性による覚醒・出力上昇は欠片も見込めないが、素で高すぎる総合値は歴戦の光狂いが覚醒を果たしてなお追いつけない。無属性の最強。

グレンファルトは「その身に神殺しを宿していたら我々は終焉吼竜の来訪以前に全滅していたかもしれない」とまで称えるが、本人は「主従関係を抜きにしても自分は御身に届かないでしょう」と否定している。
…それはつまり、ベルグシュラインは彼以外の神祖なら実力で斬殺できると自ら認めているも同然である。



◆絶対剣士

剣の腕前はシルヴァリオシリーズで唯一クロウ・ムラサメと同格にある新西暦最高の剣聖。*1
その上で2人が純粋に剣士として勝負した場合、紙一重でムラサメに軍配が上がるとされる。
剣に愛され、剣を愛し、生涯を一振りの鋼に捧げた男の矜持と覚悟。技術面の優劣ではなく、それはベルグシュラインの才をも上回る。

…だが実際に殺し合った場合、剣を道ではなく手段と捉えるベルグシュラインは剣士勝負に付き合わず後方に跳躍しながら星を解放。遠距離から淡々と磨り潰しにかかる。グレンファルトから「最後まで剣術勝負してやれ」とでも命令されていない限り、ムラサメの情熱は白けた合理性にへし折られて終わる。



◆星辰光



創生せよ天に描いた星辰を――我らは煌めく流れ星

剣の閃き、限りなく。黄金(こがね)の柄に鋭き刃、鋼を両断する度に王器を彩る栄光が地平の果てまで鳴り響く

三度振るえば訪れる破滅の波など知りはしない

我が所有者こそ絶対神。侏儒(ひきうど)鍛冶(かぬち)が遺せし呪怨など、至高の神威は跳ね除けん。

断ち切る魔物を御示しあれ。八つ頸唸る邪竜とて、語らず、逸らず、粛々と

一切斬滅。唯其れのみ。此れより神敵、調伏致す


超新星(Metal Nova)――抜刀・天羽々斬空真剣(Orotinoaramasa Tyrfing)

基準値 発動値 集束性 拡散性 操縦性 付属性 維持性 干渉性
B AA AA E A A D E

オロチノアラマサ・ティルフィング。
能力は「あらゆるものを切り裂く」…ではなく「斬閃延長能力」
分かりやすい例えだと「13kmや」をイメージすると概ね合ってる。
振り抜いた切っ先から斬るための衝撃を伸ばす。すなわち単純に得物の射程距離を延長するだけの異能。
多くの星辰奏者にとって星辰光は切り札で、基礎の肉弾戦闘能力はそれを支える土台として扱われるが、ベルグシュラインは素の剣技こそが切り札であり、星辰光はそれを刃の届かない間合いに届かせる補助能力として機能している。

単体では「外れ」と評されてもおかしくないが、ベルグシュラインにとっては相性最高、最適の星と言う他ない。
彼が使い手ならば間合いは視界全域、しかも平面上だけでなく垂直方向にも届き、殲滅能力はダインスレイフの四枚は上を行く。

元ネタは北欧神話に出てくる伝説の魔剣「ティルヴィング」と、日本神話に出てくる神剣「天羽々斬剣」。



◆本編の活躍

グレンファルトの命でのみ動くが、自分が殺し損ねたラグナと純粋な戦闘能力でラグナを上回るジェイスをかつてない困難…「運命」と断定し、興味を抱くようになる。

アンジェリカルート終盤ではラグナとの一騎打ちに挑み、剣戟の末に見事彼の鉄塊剣を破壊。
しかし結晶化能力によって気力の限り剣は新しく創造され、何度壊しても怒涛の攻めは止まらない。結果耐久力の限界が訪れたのはベルグシュラインの持つ長刀
ベルグシュライン本人が不死身であろうと得物の剣はそうではない。そして武器(発動体)無しでは能力の行使ができなくなる点は使徒であっても同じであった。

自身が持ちえない執念、狂気、渇望──心の力で実力差を埋められ敗北するというとても不条理な現実を前に、彼は満足し悔いなく散って行った。



ミサキルートではジェイスと対戦。歴戦の光狂いの覚醒をもその才能だけで終始圧倒し、第三世代型人造惑星たる彼の切り札である極晃星との接続をその一刀で断ち切った。
つまりは技術的に再現された神殺し。
何の感慨もなく、一度自身が喰らい「できそうな気がした」という予感に従って、ここに剣技のみで不可視の接続を破断するという彼しか成しえない空前絶後の大業が実現した。

ラグナが星を観る者(スフィアゲイザー)──人奏に至ってからは三柱の神祖が倒れた後、グレンファルトへの最後の障害として立ち塞がる。
人奏の特性もあって技量では未だ上回るものの互角に切り結ばれ、彼は小さな笑みをたたえた。

見事だよ、流石は主と■■を同じくする神魔。やはり貴公こそ我が好敵手(うんめい)。つまらぬ男に生きる目標を授けてくれる、唯一無二に他ならぬと──

寝言を吐くな、それさえお前の願望などではない癖に。奴の命令がなければ自分探しも出来ない男が、笑わせる

貴様は単に今この時も、主君の神託(ことば)をなぞり続けているだけだろうが

敵手の言葉にベルグシュラインは無言だった。違うというべき、なのだろう……恐らくは。
しかし、本当に自分はそう思っているのか?
相応しい反論が見当たらぬから沈黙しているのは、つまりそういうことなのでは?
などと、疑念を感じながらも絶技の嵐は止まらない。心を乱して動きを鈍らせるのは間違いであり、勝つために最善を尽くすのは正しいからだ。どこまでも一切の可愛げなく、彼は今も敵を刈り取る無謬の刃であり続けていた。
悲しくなるほど命令に忠実な、ただの最強を誇っている。そして──


────ぐ、かはッ


決着はどこまでも順当に訪れた。何もおかしなことはない、単に極晃奏者と化したラグナの総合値が、ベルグシュラインの総合値を完全に上回ったから勝利したというだけのこと。
気合による覚醒だとか、誓いや信念の衝突だとか、守るべきものの有無だとか、そういう要素が一切入り込まない寒々とした幕引きはいっそ物悲しいほど明瞭で、笑ってしまうほど当然だった。
才能も、努力も、環境も、運も、師に至るまでがすべてがすべて、完全無欠の絶対剣士。あればあるほどいいという無慈悲な理屈の体現者。
だがしかし──いや、だからこそ。

たった一つ、物語(うんめい)だけをおまえは欠片も持っていない

自分より大切な誰かや、守るべき民草への親愛。それに興味さえ抱くことなく、無関心に神の敷いた秩序へ倣い続けた結果がこれだった。
絶対剣士は文句なく史上最強を誇りながら、どこまで行ってもよく斬れるだけの道具でしかなかった。

否、まだだ。まだ終わらぬ──などと咆哮できぬからわが身は所詮、刀剣か

奮い立たせようとする心は当然、まるで鼓動を鳴らさない。
奇跡も覚醒も起こらぬまま、運命の車輪を回す歯車は部品に過ぎない自分自身に小さな自嘲の笑みを浮かべて。

……無念だ。初めて口惜しい

ほんの小さな、常人では悔いとも言えない一握の悔恨を口にしながら……無価値な刀剣は終焉の彼方に消え失せたのだった。





◆余談

『ラグナロク』発売後に行われたシリーズ全キャラ総選挙では9位(ラグナロクの登場キャラに限定すれば3位)。
主のグレンファルト(23位)を大きく引き離してトップ10にランクインした。

ティルフィングは北欧神話の魔剣ティルヴィングの音揺れ。
蛇之麁正(おろちのあらまさ)天羽々斬剣(あめのはばきりのつるぎ)天十握剣(あめのとつかのつるぎ)の別名である。

神の使徒たちは「主人公属性を持ちながら主人公になれない」というキャラクターコンセプトを基に作られた存在であり、その中でベルグシュラインは最強主人公のステータスを持ちながら運命力0という男。
これにより想いの強さが重要な新西暦ワールドにいながら純粋な性能だけで圧倒的に強いベルグシュラインは強烈な存在感と異物感を発揮するに至った。

もし彼が聖教国ではなく帝国に生まれ、ヴァルゼライドと同じ時代を生きた場合、本編に比べ完成度はやや落ちるがなんと光の覚醒を習得する。ただし使えるのは生涯で一度きり。
ベルグシュラインは偉大な者に仕え、ふさわしい性質を帯びるという本質を持つ。
そのため主がグレンファルトなら絶世の名刀となり、ヴァルゼライドなら熱を持った刀剣になるのだとか。





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最終更新:2024年11月03日 20:16

*1 ムラサメの剣は星光を抜きにした純粋な近接戦ならチトセ・ギルベルト・ヴァルゼライドですら絶対敵わないと作者から太鼓判を押されている。一応ヴァルゼライドのみ長期戦に持ち込んで覚醒を繰り返せば勝機が生まれる