2005年F1日本グランプリ

登録日:2022/3/11 (金曜日) 10:56:30
更新日:2024/10/15 Tue 02:08:35
所要時間:約 10 分で読めます







運命を切り開く、53周の魔法の時間!
シグナルを日の丸で飾っても文句はないだろ、日本グランプリ!
(地上波実況:ポエマー塩原恒夫アナウンサー)

2005年F1日本グランプリは、同年第18戦として開催されたF1世界選手権。
日本グランプリは、アイルトン・セナアラン・プロストとのチャンピオン争いなど数多くのドラマを生んできたが、多くのF1ファンが日本グランプリベストレースとの呼び声が高い。
また、今グランプリはフジテレビ系列で初めて生放送をする日本グランプリで、F1の生中継としては1994年のパシフィックGP以来と、実に11年ぶりである。


開催地は鈴鹿サーキット。もはやおなじみの立体交差が特徴のサーキットだ。
これに関しては個別項目があるのでそちらを参照すべし。

今年の予選方式は前戦での決勝順位を逆順に1回だけ走ることになっており、予選当日は小雨が降っていたため各車インターミディエイトで出走することに。
マクラーレン・メルセデスとルノーはコンストラクターズタイトル争いで是が非でも上位グリッドがほしかったが、セッション途中から激しい雨が降り始め、思うようなタイムを出すことができず、ジャンカルロ・フィジケラが3位以外は下位グリッドに沈む大波乱。
結果、トヨタのラルフ・シューマッハが2年連続*1で日本グランプリのポールポジションを獲得。
さらにB・A・Rホンダのジェンソン・バトンが2番手と日本勢がフロントロウ独占となった。
同じくB・A・Rホンダの佐藤琢磨も5番手につけ、日本GPでの表彰台、はたまた優勝が期待された。

そして迎えた決勝。気温27℃、路面温度35℃、天気は昨日とは打って変わって晴れ。絶好のレース日和となった。
オープニングセレモニーでの国家斉唱ではEXILEが担当。全員白い袴とパッと見893に見えてしまう

2005 Formula One
Round 18
Japanese Grand Prix
STARTING GRID

Position Car No. Driver Team
PP 17 ラルフ・シューマッハ トヨタ
2 3 ジェンソン・バトン B・A・R ホンダ
3 6 ジャンカルロ・フィジケラ ルノー
4 15 クリスチャン・クリエン レッドブル・コスワース
5 4 佐藤琢磨 B・A・R ホンダ
6 14 デビット・クルサード レッドブル・コスワース
7 7 マーク・ウェバー ウィリアムズ・BMW
8 11 ジャック・ヴィルヌーヴ ザウバー・ペトロナス
9 2 ルーベンス・バリチェロ フェラーリ
10 12 フェリペ・マッサ ザウバー・ペトロナス
11 19 ナレイン・カーティケヤン ジョーダン・トヨタ
12 8 アントニオ・ピッツォニア ウィリアムズ・BMW
13 21 クリスチャン・アルバース ミナルディ・コスワース
14 1 ミハエル・シューマッハ フェラーリ
15 20 ロバート・ドーンボス ミナルディ・コスワース
16 5 フェルナンド・アロンソ ルノー
17 9 キミ・ライコネン マクラーレン・メルセデス
18 10 :ファン・パブロ・モントーヤ マクラーレン・メルセデス
19 16 ヤルノ・トゥルーリ トヨタ
20 18 ティアゴ・モンテイロ ジョーダン・トヨタ
※カーンナンバー10,16,18は予選タイムなしだが、出走が認められた。

1周のフォーメーションラップの後、各車がグリッドに収まってからのスタンディングスタート。
まずラルフ・シューマッハは好スタートを決めるが、バトンは失敗。それをフィジケラが1コーナーでパス。
さらに6番手スタートのクルサードは上空ヘリからのカメラでもわかるくらいに見事なロケットスタートを成功。4番手にまでポジションを上げた。
一方、不運だったのが佐藤。昨日の雨の影響でグリップが足りず、うまくコーナリングできなかった上、そのクルサードに押し出される形で外側のグラベルに入っていまい順位を大きく落とす。
さらに同じようにコースオフしたバリチェロが佐藤の前を横切り、バリチェロの左リアタイヤと佐藤のフロントウィングが接触。両者ピットに戻って修復せざるを得なくなった。
なお、この年はタイヤ無交換で1レース走りきるのだが、このようにパンクなどのトラブル起きた場合はそのタイヤのみ交換が認められている。
そんな中、モントーヤが最終コーナーで外側へ大きくスライドし、ホームストレートとの境目のところでバリアにクラッシュマシンの破片がコース上に飛び散った。
オフィシャルはすぐにセーフティーカーを導入。トヨタは昨日の雨を考慮して他のチームよりも柔らかめのタイヤを使い、3ストップ作戦によって軽めのマシンで差を広げたかったが、その目論見は失敗に終わった。
レース再開は7周。
再びラルフが引き離しにかかるが、セーフティーカーによって作戦が狂ってしまったためにペースを上げきることが難しくなった。
そんな中、9周目にアロンソがクリエンをパス。しかしシケインを横切ったことで審議になる可能性があり、再度クリエンを前に生かせた後に]改めてパスしなおした。

ところが、そのシケインでトゥルーリと佐藤が交錯。佐藤が強引にインへと仕掛けた結果、トゥルーリの右サイドのエアロパーツを破壊、ポッド自体にも穴が開いてしまいトゥルーリは万事休す。レースを終えることになった。
このクラッシュは審議となり、後に佐藤は13位でフィニッシュこそしたが、オフィシャルにより失格処分が下された。
日本グランプリでは3年連続入賞といい成績を残してきた鈴鹿で表彰台、あわよくば優勝も狙えただけに、佐藤は日本のファンの前で醜態をさらしてしまった。

その後は各所で大接戦。アロンソとミハエル、そしてライコネンがピットストップを交えつつオーバーテイクを繰り返す。特にアロンソとライコネンは予選下位からの上位争いなため、サーキットは大いに盛り上がった。

そんなレースのトップはフィジケラ。周りのバトルに埋もれた結果、フィジケラは残念なことにあんまり注目されず
ペースの落ちたラルフを1回目のピットストップで交わした後はほぼラップリーダーとなっていた。38周目に二度目のピットストップをするまでに、2位に20秒以上という圧倒的優位。フィジケラのタイヤは磨耗がひどくペースを上げるのは難しいが、仮に他のドライバーがペースを上げても追いつくことは困難だろう。3位にあがったアロンソも、もう届きそうにない。
誰もがそう思っていた。

しかし、一人だけ、異次元の速さを見せ付ける者がいた。
ライコネンだ。彼は17番手からスタートしながら軽めの燃料を積みハイペースを維持しながら2番手にまでポジションを上げていた。フィジケラとのラップタイムの差はなんと-2秒。
追いつく間にファステストラップ1’31.540をマーク。
31秒台。この終盤で誰もそんなタイムは出せていない。それだけライコネンのペースが異常なのだ。

そしてファイナルラップ、ついにライコネンがフィジケラとテールトゥノーズ。


勝負は、一瞬だった。


最終コーナーから1コーナーに向かって、準備は整ったかライコネン!
ファイナルラップに向けて、トップを奪い返すことができるのかどうか!
フィジケラが守る、ホイールトゥホイールとなるのか!

1コーナーだ!!アウトからかわした!!
ここでガッツポーズが出る!!

ついに最後は、マクラーレンのキミ・ライコネンが大逆転!!
トップに立ちました!!!
(地上波実況:塩原恒夫アナウンサー)

自分のマシンのポテンシャルに物を言わせ、フィジケラの抵抗をも軽く蹴散らし、ライコネンが1コーナーでアウトから抜き去る。
誰がこんなことを予想したか。壮絶なドラマを前に、鈴鹿サーキットに割れんばかりの歓声が響き渡る。


一昨年は最終戦鈴鹿までタイトル争い!
ミハエル・シューマッハを最後まで脅かした男が、ようやくここで栄光のチェッカー!

キミ・ライコネン、見事なレースでした!

後方からでしたが見事な大逆転!!ジャンカルロ・フィジケラをかわしました!!
(地上波実況:塩原恒夫アナウンサー)

普段冷静なライコネンがコックピット内で大きなガッツポーズをとる。
今季7勝目にして日本グランプリ初制覇。ライコネンはマシンも実力も確かにトップクラスだが、予選17番手という圧倒的不利からの大大大逆転劇。抜きにくい鈴鹿で、自身の実力の高さを証明して見せた。
アロンソ、ミハエルも入賞圏内に食い込むなど、同じく予選の不利を自力で覆してみせた。
逆に対照的なのはトヨタ、ホンダ勢。
ポールからのスタートだったラルフは最初のセーフティーカーによって戦略が崩壊した結果、8位入賞がやっと。バトンもスタートから3つポジションを落として5位入賞が日本勢ベストリザルトと、期待からは大きくかけ離れてしまった。
トゥルーリは佐藤と絡みリタイア、そしてそのクラッシュについてトヨタ代表とともに痛烈に佐藤を批判、佐藤自身もそのクラッシュによる失格となるなど、散々な結果に終わった。


2005 Formula One
Round 18
Japanese Grand Prix
RESULTS
Position Car No. Driver Team Start position
1 9 キミ・ライコネン マクラーレン・メルセデス 17
2 6 ジャンカルロ・フィジケラ ルノー 3
3 5 フェルナンド・アロンソ ルノー 16
4 7 マーク・ウェバー ウィリアムズ・BMW 7
5 3 ジェンソン・バトン B・A・R ホンダ 2
6 14 デビット・クルサード レッドブル・コスワース 6
7 1 ミハエル・シューマッハ フェラーリ 14
8 17 ラルフ・シューマッハ トヨタ 1
9 15 クリスチャン・クリエン レッドブル・コスワース 9
10 12 フェリペ・マッサ ザウバー・ペトロナス 10
11 2 ルーベンス・バリチェロ フェラーリ 9
12 11 ジャック・ヴィルヌーヴ ザウバー・ペトロナス 8
13 18 ティアゴ・モンテイロ ジョーダン・トヨタ 13
14 20 ロバート・ドーンボス ミナルディ・コスワース 15
15 19 ナレイン・カーティケヤン ジョーダン・トヨタ 11
16 21 クリスチャン・アルバース ミナルディ・コスワース 13
DNF 8 アントニオ・ピッツォニア ウィリアムズ・BMW 12
DNF 16 ヤルノ・トゥルーリ トヨタ 19
DNF 10 ファン・パブロ・モントーヤ マクラーレン・メルセデス 18
DSQ 4 佐藤琢磨 B・A・R ホンダ 5
※DSQは失格、DNFは完走せず

そして時は流れ、2021年9月。ライコネンは現役引退を発表。
これまでに数多くのバトルを繰り広げ、2007年にはチャンピオンにまで上り詰めたアイスマンは、
引退会見でもこの日本グランプリを自身のベストレースとしてあげている。
間違いなく、その後のレーサー人生において影響を与えたのだろう。

追記・修正はトップより2秒以上速いペースでお願いします。


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最終更新:2024年10月15日 02:08

*1 前年はウィリアムズに在籍