AI:ソムニウム ファイル

登録日:2022/05/09 (曜日) 22:42:00
更新日:2024/10/24 Thu 23:01:45
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殺したのは…

                 

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──がほしかったから



         哀

          


AI:ソムニウム ファイル』(AI:THE SOMNIUM FILES)とは、スパイク・チュンソフトから発売されたゲーム作品の一つ。
対応機種はPS4/XboxOne/Switch/PC

数々の名作ADV作品を手掛けてきた打越鋼太郎氏が脚本を担当。
キャラクターデザインは近年のFEシリーズなどでもお馴染みコザキユースケ氏。



概要

捜査官の主人公が相棒のAIと共に難事件の解決を目指す近未来系SFミステリとなっている。
ゲームは現実を舞台にした捜査パートと、最新技術によって容疑者や参考人達の深層心理の中にダイブし、夢の世界を探索しながら手がかりを見つけるソムニウムパートによって構成される。

ADVとしては比較的珍しくフル3Dで常にキャラクターが動いており、会話中のリップシンクも凝っている。
更にはモブキャラクターに至るまでフルボイスで、非常に手が込んでいる。


シナリオ分岐を生かした緻密な設定と細かい丁寧な伏線に、個性的なキャラクターが織りなす『家族』や『親子』を扱ったストーリーが魅力。
パッケージや公式サイトの雰囲気に反してミステリ要素以外にも笑いあり、涙あり、グロあり、下ネタありの盛沢山な内容となっている

独特のノリやパロディ、下世話ネタで人を選ぶ傾向があるものの、シナリオの完成度は非常に高くUIも比較的充実しているためADVやSF、ミステリ好きならプレイして損は無い逸品となっている。


2022年には続編である『AI:ソムニウム ファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』も発売されている。
スタッフは続投で、対応機種も同様だが、CEROレーティングはCに下がっている。



システム

捜査パート

一般的な探偵系ADVと同じパート。
調査したい対象をカーソルで選択して調べたり登場人物と会話をすることができる。
アイボゥと呼ばれるAIの機能によって、ズームや赤外線、温度探知なども駆使することが可能となっている。

ソムニウムパート

本作の目玉要素。
Psyncシステムを用いて容疑者や重要参考人の潜在意識の中に入り込んで夢(ソムニウム)の世界を調査する。
基本的にはアイボゥを操作して夢の中を探索していく。
ゲーム的にもアクションアドベンチャー感がやや強くなる。

夢世界に入れるのは6分とされておりそれ以上留まることは危険とされる。なのでゲーム中でも時間制限があり、6分以内にクリアしなくてはならない。
移動する際や、オブジェクトを調査したり干渉する際にはそれぞれ決まった時間を消費するため、慎重な選択が求められる。
ただし全く移動せず静止していると時間の流れは100分の1になる為じっくり考えながら攻略していこう。
更に、選択肢を選ぶ際の時間消費を大幅に減らせる『TIMIE』という要素もあり、それらを駆使することが必須となる。

本作のシナリオ分岐は例外なくこのソムニウムパートの行動によって決まる。
基本的には夢故に支離滅裂で脈絡が無いが、ある程度行動の指針は示されるので画面左上の表示やマップなどを活用していこう。


ストーリー

AIやナノテクノロジーの発達した近未来の日本。
閉鎖された遊園地ブルームパークの廃墟で、左目をくり抜かれた女性の遺体が発見された。

主人公「伊達鍵」は捜査官として現場に赴くが、被害者の女性は親友の元妻「灘海硝子」だったことが発覚する。
更に現場には、被害者の娘であり伊達の同居人でもある少女「沖浦みずき」が隠れていた。
事件の真相を調べるため、伊達は対象者の夢の世界に侵入してその脳内を覗き見る「Psyncシステム」を用いてみずきの脳に侵入する。

そこで得た情報をヒントに捜査を進めていく伊達。
その過程で事件の裏に潜む人々の想いや暗躍、陰謀、やがて自分自身にも深く関わる更なる謎の核心に迫っていくことになる────



キャラクター


伊達 鍵(だて かなめ)

声:新垣樽助

本作の主人公。30歳。
警視庁特殊捜査班先進式人脳捜査部隊、通称『ABIS』に所属する警察官。
他人の夢の中を捜査して事件の情報を得ることを専門としている。
6年以上前の記憶を失っており、今の名前や仕事は直属の上司であるボスから与えられた謎多き男。

その如何にもクールで知的な外見とは裏腹にエロ本好きでスケベなおじさん
不器用な癖に真顔で唐突にボケたり下ネタで絡みたがるオヤジ臭い性格から同居人のみずきには死ぬほどウザがられている。
女好きな割に女性の扱いは壊滅的に下手くそで、行きつけのキャバ嬢から着信拒否される程。
ちなみにPsyncerは伊達以外にも存在するようだが本作のストーリーでは出て来ない。
目玉焼きの半熟は絶対に認めない主義。提灯怖い!提灯怖い!


アイボゥ


本作のマスコットキャラクター。5歳。
伊達の左目の義眼に内蔵された超高性能AIであり、文字通りの相棒。
正式名称は「AI-Ball」
すぐふざけ始める伊達に辛辣なツッコミをすることもあれば率先してボケるなど人間味豊かにプログラムされている。
その性能はチートの一言で、あらゆるネット媒体や99,9%のコンピュータに侵入して情報を収集したり、戦闘中即座に最適な行動を計算し未来を予想する超機能を持つ。
特に後者はどこぞの高次元予測もかくやという凄まじい精度を誇る。
伊達の戦闘力の半分は彼女(?)のおかげ。

勝手に目から飛び出して移動することも可能。
左目から出た際はヘンテコなハムスターみたいな可愛らしい外見で行動してる。
ソムニウム空間とARビジョン限定の形態で、オールバックのロングヘアーを持つ美しい女性の体にもなれる。
この姿は伊達の好みに合わせて自分でデザインして作ってみたらしい。


沖浦 みずき(おきうら みずき)


伊達と同居してる小学6年生の少女。12歳
沖浦の実の娘で、ワケあって伊達が預かっている。
序盤は硝子の遺体を見たショックで失声症になっており、最初のPsyncは事件の捜査だけでなく彼女の精神のケアも目的となっている。

性格は大人びて生意気、皮肉屋な性格をしていてあまり友達は居ない。
特異体質で身体能力が異常に高く、細い樹木くらいなら蹴り倒すことすら可能。
精神の発達も同世代の子よりも早い。
普段は家にある特大のベンチプレスでトレーニングに勤しんでいる。
伊達とはしょっちゅう言い争いをしてるようだが…

CVを務めた黒沢ともよ氏による、複雑な感情が籠もった演技は必見。
声優陣への評価が軒並み高い本作に置いて、伊達と並んで特に高い評価を得ている。


左岸 イリス(さがん いりす)

声:白城なお

ぽっかぽか!布団すいとんあせとんちゃん!
本作のメインヒロイン。18歳。
大人気ネットアイドル「A-set」として踊ってみたやゲーム実況などを投稿している。
ファンからの愛称はあせとんちゃん
とにかくダンスが大好きで、音楽が聞こえる場所では踊りたくなってしまうらしい。
最近は人気ゲーム「イクラマンふとし」がお気に入り。

天真爛漫だが伊達を脅して捜査に同行したりと狡猾さも垣間見せる。
オカルトも好きな様子で、様々な神話や陰謀論に詳しい。
メインヒロインではあるのだが本作はスポットの当たるキャラクターが多いためルートによって出番が少なかったりする。


ボス(ぼす)


伊達の直属の上司でABISの司令官を務める女性。42歳。
ノリの軽い性格で良く言えば柔軟、悪く言えば行き当たりばったりだが、根回しや策略にも長けた有能な上司。
伊達をABISにスカウトしたのも彼女である。
本部が地下室のため、執務室には窓一つなく殺風景という理由で大量の私物を持ち込んでいる。

ちなみにアイボゥの髪型は彼女を参考にしたことが窺える
もしかしたら伊達の好みなのかもしれない。
「Psyncして」


真津下 応太(まつした おうた)

声:藤原夏海

ラノベ作家を目指すドルオタニートの24歳。
イリスの大ファンで彼女を崇拝している。
他にもアニメやゲームや漫画なども大好きな雑食系オタク
他の登場人物にも言えるがかなりの童顔で、どう見ても17歳くらいにしか見えない。

ラノベ作家志望ではあるものの、実は作品をまともに最後まで書き上げたことは一度も無い。
彼と母親のまゆみの個別ルートは中々に現実感があって生々しく、精神にくる人も多いとか多くないとか。


沖浦 連珠(おきうら れんじゅ)

声:浜田賢二

芸能事務所レムニスケイトの社長。37歳
伊達の親友で、殺人事件の被害者である硝子の元夫。
そしてみずきの実の父親でもある


熊倉 猛馬(くまくら もうま)

声:高木渉

指定暴力団熊倉組組長。強面のヤクザ。
一応穏健派らしいが猟銃を所持していたり軍用車を持っていたりとどう考えても武闘派。
実はA-setことイリスの大ファンだったりする。
先代組長だった兄の逮捕に伴って、組長を引き継いだ。


熊倉 狼範(くまくら ろうはん)

声:江川大輔
熊倉組の先代組長。
6年前になにやら事件を起こして逮捕されたらしい。

真津下 まゆみ(まつした まゆみ)

声:沢田敏子

応太の母。54歳。
旦那と一緒に食堂を切り盛りしているとのこと。物忘れが激しい。
イリスのことは息子から金を巻き上げる魔女だと思っている。


左岸瞳(さがん ひとみ)


イリスの母親。37歳。
シングルマザーでイリスを溺愛しており、彼女もまた母親の瞳を大切に想っている。
とある事件で障害を負っており右腕が動かない。
ちなみに企画段階ではメインヒロインになる予定だったが、娘であるイリスのキャラデザが予想以上に良かった為に方針が変更になったとか。


ピュータ

声:後藤ヒロキ

ABISの技術者。36歳。
本名は天乃間 風太(あまのま ふうた)。他のキャラと比べても飛び抜けて近未来感のある変な服を着ている。
アイボゥの製作者も彼。


ママ


黄金横丁のスナック「マーブル」のママ。36歳
所謂オネェ系のオカマで、伊達や沖浦はこの店の常連。
常に鰹節を磨いている。豊満な体つきで、伊達からは毎回冗談で冷蔵庫と間違われる。

情報屋としての側面もあり、東京近郊の裏事情やゴシップに詳しい。
体型や声の雰囲気等モデルは明らかにマツコ・デラックスと考えられる
本名は大石理と言うらしい。


灘海 硝子(なだみ しょうこ)

声:小林ゆう

沖浦の元妻。36歳。
彼女が左目を抉り取られた無惨な死体で発見されるところから本作の物語が始まっていく…


世島 綜(せじま そう)

声:楠見尚己

有名な国会議員。60歳
何か事件について知っているようだが…?


89号

声:?

府中刑務所に収監されている凶悪な犯罪者。
本名も年齢も国籍も全て不明で89号という呼び名も刑務所での認識番号でしかない。
硝子を殺した犯人を知っている素振りをチラつかせて自身の釈放を要求するなど不敵で謎の多い人物。



用語


Psyncシステム

最新技術により対象者の夢の中に入って深層心理を探ることができる装置。
これによって強情な容疑者や何かを隠している重要参考人から情報を得ることが可能となる。
ただしPsyncシステムで得られる情報はあくまで夢であるため、対象者の記憶の断片が組み合わさって滅茶苦茶な状態になっており、作中ではソムニウム空間で観測された出来事は証拠としては認められていない。
あくまで新たな手がかりを掴む手段として利用される。

ソムニウム空間

Psyncシステムで入れる深層意識の内部のこと
ラテン語で夢を意味する

エロ本

本作の世界では何故かエロ本が過剰に規制されており、主人公の伊達はその抑圧の反動で恐ろしくエロに貪欲になってしまっている。
その執着はエロ本と聞けば反応速度が3.6倍になるほど。



補遺

序盤から割と大きめのルート分岐があり、フローチャート上の左ルートは王道ミステリ傾向が強く、右ルートはやや電波傾向が強い。
最終的には両方プレイすることになるので、どちらに進行しても問題は無いしフローチャート画面からどのシナリオにも即座に飛べるので、好きに遊ぶと良いだろう。

基本的にトゥルーエンド含めた核心に迫るルートはロックがかかっており、そのルートは途中まで進むとその時点で一旦ストップさせられ、強制的にフローチャート画面に飛ばされる。
他のルートをある程度クリアするとロックが解除され、トゥルーエンドルートのロックは最後に開放される。
そのため偶然トゥルーエンドを先に見てしまうことは絶対に無く、最終的には他の全てのルートを埋めてから真のエンディングを見ることになる。
(主人公が巨乳の受付嬢に惚れ込んで、唐突に全てを投げ出して一緒に熱海旅行に出発→そのまま射的の屋台のおじさんとして第二の人生を歩む熱海エンドだけは例外)


様々なルートを経験した上で開放されるトゥルールート『解決編』は非常に感慨深いものになっているので、ぜひ最後までプレイして欲しい。





追記修正は夢の中からお願いします


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最終更新:2024年10月24日 23:01