ラジオ体操

登録日:2022/08/01 Mon 06:30:06
更新日:2025/04/11 Fri 03:59:06
所要時間:約 12 分(ラジオ体操第1を4回分くらい)で読めます






ラジオ体操とは、日本の伝統的な民族舞踊ポピュラーな体操である。



【概要】

ラジオで体操についての情報を放送すれば何でもラジオ体操と言ってしまえそうだが、ここでは
  • 日本放送協会(NHK)が提供する、視聴者が体操を行うためのガイドとなるラジオ番組
  • 上記の番組で行う体操そのもの
を指す。
なお、以下に説明する番組の編成や体操のデータについては、ことわりがなければ2022年7月時点のものとする。



【番組】

ラジオ体操

音声による振り付けの指導やかけ声を音楽に乗せて放送する番組である。
スケジュールは以下の通り。
チャンネル 放送日時 備考
NHKラジオ第1放送(ラジオ第1) 毎日
6:30-6:40
朝の本放送
NHKラジオ第2放送(ラジオ第2) 月曜から土曜
8:40-8:50
朝の再放送
月曜から土曜
12:00-12:10
昼の本放送
月曜から土曜
15:00-15:10
昼の再放送
番組の構成は概して、オープニング→ラジオ体操の歌→簡単なウォーミングアップ→ラジオ体操第1→首の運動など→ラジオ体操第2、という流れである。
夏休み期間には全国各地の公園などから中継される。


テレビ体操

音声に加え、アシスタントによる振り付けの映像つきで放送される番組である。
スケジュールは以下の通り。
チャンネル 放送日時 備考
NHK総合テレビジョン(総合) 月曜から金曜
9:55-10:00
みんなの体操のみ
月曜から金曜
13:55-14:00
ラジオ体操第1、ラジオ体操第2、その他の体操からいずれか1つ
NHK教育テレビジョン(Eテレ) 毎日
6:25-6:35
ラジオ体操第1、ラジオ体操第2、みんなの体操、その他の体操からいずれか2つ
放送タイトルは総合チャンネルの9:55-10:00が「みんなの体操」、それ以外は「テレビ体操」となる。



【体操の種類】

現役の体操

ラジオ体操第1

1951(昭和26)年5月から現在に至るまで放送されており、三代目のラジオ体操第1にあたる。作曲者は、服部正。
ぜんぶで13種類の運動があり、幅広い年代の人々が全身をバランス良く動かせる体操として親しまれている。
ラジオ番組ではラジオ体操第1と第2を通しで放送するが、各種の行事や職場での運動では第2を省略してこちらだけ行うことも多い。

ラジオ体操第2

1952(昭和27)年6月から現在に至るまで放送されており、三代目のラジオ体操第2にあたる。作曲者は、團伊玖磨。
ぜんぶで13種類の運動があり、職場(=青年層、壮年層向け)での体力向上や筋力強化のために考案された。
ラジオ体操第1よりも動きが複雑で、運動強度が大きい。

みんなの体操

1999(平成11)年10月からテレビ体操にて放送されている。名称は一般公募により決定した。作曲者は、佐橋俊彦
高齢者向けにラジオ体操第1、第2よりも運動量が少なくなっており、番組では座ったままでできる座位の体操も同時に行われている*1
ぜんぶで8種類の運動がある。
また、みんなの体操の放送開始に伴い、ラジオ体操第1、第2にも座位の体操が考案された。
なお「みんなで筋肉体操」は名前は似ているがまったくの別モノ。うっかりマッチョになってしまうかもしれないので気をつけよう。


かつて放送されていた体操

現在放送されているラジオ体操は三代目であり、それより前には初代、二代目のラジオ体操が放送されていた時期があった。
初代、二代目のラジオ体操には第1-第3までの体操が存在した。
体操の区分 放送開始年月 放送終了年月
ラジオ体操第1(初代) 1928(昭和3)年11月 1946(昭和21)年4月
ラジオ体操第2(初代) 1932(昭和7)年7月 1946(昭和21)年4月
ラジオ体操第3(初代) 1939(昭和14)年12月 1946(昭和21)年4月
ラジオ体操第1(二代目) 1946(昭和21)年4月 1947(昭和22)年8月
ラジオ体操第2(二代目) 1946(昭和21)年4月 1947(昭和22)年8月
ラジオ体操第3(二代目) 1946(昭和21)年4月 1947(昭和22)年8月



【ラジオ体操の歌】

ラジオ体操の歌は、体操そのものと同時期に放送開始されたわけではなかったが、それでもずっとラジオ体操の放送と同時に存在し続けている。
現在のラジオ番組で流れる、「新しい朝がきた」から始まるラジオ体操の歌は三代目の歌である。
ちなみに代替わりのタイミングは体操とは異なる。
歌の区分 発表年月 作詞者 作曲者
ラジオ体操の歌(初代) 1931(昭和6)年7月 小川孝敏 堀内敬三
ラジオ体操の歌(二代目) 1951(昭和26)年9月 脇太一 大中恩
ラジオ体操の歌(三代目) 1956(昭和31)年9月 藤浦洸 藤山一郎



【ラジオ体操の歴史】

大正から戦前にかけて

上述したように初代のラジオ体操は1928(昭和3)年から放送開始されているが、ラジオ体操が制定され放送されるまでのあらましを含めると起源はもう少し過去に遡る。

そもそも、ラジオ体操は逓信(ていしん)省の簡易保険局(現在の株式会社かんぽ生命保険)により、日本国民の体格向上、健康増進を目的としてつくられたものであった。
1916(大正5)年に簡易保険事業を始めた逓信省は、他国での保険事業の視察のため局員を海外に派遣した。
それにより、アメリカにおいて保険会社がラジオ番組で健康体操を放送していた事例が知られるようになる。
さらに、当時のチェコスロバキアで行われていた「ソコール運動」の影響もあり、国民的に行える体操を制定することとなった。
なお「なぜ保険業界が国民の健康増進を気にするのか」という点はかんぽ生命のラジオ体操の歴史のページ等では言及されていないのだが、たぶん保険金の支払いを減らしたいとかそういう動機のような気がする。

ラジオ体操はこのような経緯で制定、放送開始された。
1930(昭和5)年には子供たちを集めてラジオ体操を行うイベント(子供の早起き大会)が、1932(昭和7)年には全国ラジオ体操の会が始まり、ラジオ体操は全国的に普及する。


終戦直後

1945(昭和20)年8月に日本はポツダム宣言を受諾し、太平洋戦争が終結する。
このときラジオ体操は終戦の日である8月15日からの約1週間を除いて放送されていたが、GHQに軍国主義的と見なされたことにより翌1946(昭和21)年4月に放送中止となる。
ただ、ラジオ体操の制定に影響があった先述の「ソコール運動」は民族主義、国家主義色が強く、祭典のメインの催しはマスゲーム、というようなムーブメントであったので、思想的なルーツのことだけを言うならGHQが危惧するような要素は含んでいた。*2

そのような経緯で初代にかわって二代目のラジオ体操が制定、放送開始されるが、これは動きが複雑でラジオの音声をたよりに身体を動かすのが難しかったこと*3から支持を得られず、約1年後の1947(昭和22)年8月には放送中止となった。


戦後復興から現在に至るまで

二代目が振るわなかったことからラジオ体操の命脈は一度は途切れることになるが、何だかんだで需要は大きかった*4ようで、1951(昭和26)年にラジオ体操は新しい振り付けと歌を得て再出発を果たす。
1953(昭和28)年には早くも夏期巡回ラジオ体操会を開始、1962(昭和37)年には全国ラジオ体操連盟が創設され、同年に「1000万人ラジオ体操祭」のイベントが始まる。
「1000万人ラジオ体操祭」は毎年8月(7月のときもある)に開催され、夏期巡回ラジオ体操会とあわせて夏の風物詩としてのラジオ体操のイメージを確立するに至った。

そうして三代目ラジオ体操は国民的シリーズの最新作50年以上かわりばえしてないけどとして戦後の昭和時代を駆け抜けた。
1999(平成11)年には国際高齢者年を記念し「みんなの体操」を制定し、これにより「1000万人ラジオ体操祭」も「1000万人ラジオ体操・みんなの体操祭」と改称。
2018(平成30)年にはラジオ体操90周年を記念してロゴマークを制定している。

令和に入ってからは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により2020(令和2)年および翌2021(令和3)年の1000万人ラジオ体操・みんなの体操祭が開催中止となるものの、屋外で広い間隔をあけて行える*5、あるいは外出しなくても手軽に運動できることから国民的体操の地位を保持し続けている。
2028(令和10)年には100周年を迎える。



【ラジオ体操文化】

夏の風物詩

ラジオ体操といえば、夏休みの朝に小学生が公園などで行うもの、というイメージをお持ちの方も多いだろう。
ラジオ体操の歴史の項で述べた通り、子供たちを対象としたラジオ体操の集まりは戦前から連綿と受け継がれている活動である。
子供たちが朝の6:30に公園などに集まってラジオ体操を行い、終わったら出席カード*6にスタンプを押してもらう、という流れが一般的。
期間は夏休み期間中ずっとだったり、1週間や10日だったりする。
スタンプをたくさん集めるとお菓子や景品をもらえることもある。

夏の風物詩であるため、日本を舞台に小学生が出てくるフィクション作品ではしばしば描写がある。
漫画『ちびまる子ちゃん』では夏休み期間中ずっと早朝のラジオ体操があり、ねぼすけのまる子にはつらい課題だった。
まる子は早起きを渋って母親と大バトルを繰り広げ、ついには出席カードを姉に押し付けることでぐうたらな夏休みを勝ち取ったのだったが、新学期になってから南の島に行ったことを日記に書いていた日付にも出席カードにスタンプがあることを先生に指摘され、答えに窮するというオチが待っていた。

以上のように夏の風物詩としての認識が日本人に広く共有されていることから、「ラジオ体操」は夏の季語として認められている。


その他の行事

みんなが知っていて手軽にバランスよく身体を動かせる体操ということで、みんなで身体を動かすことを目的に行われることがある。
工場や建築の現場など、職場の始業前のウォーミングアップとして行われたり、学校の運動会で最初のプログラムがラジオ体操だったりする。

ほか、音楽グループのゆずのライブでは、開演前に全員でラジオ体操第1を行うのが恒例となっている。
2020(令和2)年にはコロナ禍中での運動不足解消のためにYouTubeでラジオ体操の動画を公開したのだが、なんか動きが怪しい*7


健康増進、体力向上、ダイエット

みんなが知っていて手軽にバランスよく身体を動かせる体操なので、家庭での運動としても親しまれている。
腕や肩を大きく動かす種目がたくさんあるので、肩こり解消に役立つ。
本気で行えば見た目以上の運動強度がある。第1、第2を通しで行えばなおさら。
ダイエットのおともとしてもポピュラー。ただし、より大きな効果を期待するなら筋トレ等その他の運動*8やカロリー計算と組み合わせたほうがよいだろう。

なんにせよ、かつて小学生だったときには大したことなかったラジオ体操をやってみたら思ったよりキツくてびっくりするのは誰しも通る道である。


アレンジ

みんなが知っているので、津々浦々の人々がいろんなアレンジをして動画サイトで公開したりしている。
振り付けのアレンジとしては、様々なダンスの要素を加えたアレンジ体操や、様々なジョジョ立ちを行うものすごく身体を痛めそうなものなどがある。

また、ラジオ体操のバックで流れるBGMにもいろいろなアレンジが加えられており、動画サイトで視聴したりできる。
某ニコニコ動画で公開されたロマサガ風アレンジが草分けであろうか?

上記のアレンジの多くは市井の人々によるものであるが、2010(平成22)年ごろからナレーションやかけ声を日本各地の方言や外国語で吹き替えたり、BGMを伝統楽器で演奏したりしたローカル向けのアレンジが登場している。
これらは、商業放送されたり音源をCD媒体等で販売されたり企業のホームページにアップロードされたりしている。



【関連キャラクターなど】

ラジオ体操坊や

公式のイメージキャラクターとして「ラジオ体操坊や」(通称:ラタ坊)がいる。
外見は赤いシャツを着た男の子で、右腕を伸ばして体側を伸ばす運動をしている。
LINEスタンプもなぜかあるのだが、どんなシチュエーションでも姿勢や表情が変わらないため全体的にシュールな印象を受ける。


ラジオ体操の日

日本記念日協会により、2018(平成30)年より11月1日が「ラジオ体操の日」として認定および登録されている。
これは、ラジオ体操の最初の放送日が1928(昭和3)年11月1日であることにちなむ。
当時はラジオ体操の放送は朝7:00から行われていた。



【余談】

日本人ならだいたいみんな振り付けを知っているので、(特に外国人に)日本の伝統的な民族舞踊だと思われる、というネタがある。
実際はラジオ体操は大正から昭和にかけて生まれたので、歴史としては歌舞伎や盆踊りや日本舞踊などに比べると新しい。
そもそもラジオ放送が普及してないと成り立たないしね!
とはいえ、日本の人々への浸透ぶりを考慮すれば、まさしく国民的、民族的な踊りだと見なしてしまってもよいのかもしれない。
まあ、そもそも踊りではなく単なる準備体操なのだが……

アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージの派生アプリ『スターライトスポット』(デレスポ)に2020年9月に実装されたラジオ体操第1・第2という3Dコミュが存在する。
関裕美荒木比奈喜多見柚・三船美優の4人が事務所のレッスンルームでラジオ体操をする様子が3Dムービーで見ることが出来る。これを見ながらラジオ体操に励むのも良いかもしれない。
またアニメシンデレラガールズ劇場のエンディングテーマを収録したCD『LITTLE STARS!』シリーズの『いとしーさー♥』には日野茜指導のラジオ体操第一が、『なつっこ音頭』には新田美波指導のラジオ体操第二がそれぞれ収録されている。

楽曲としての著作権はかんぽ生命が所有しているが、著作権法で認められた理由*9の他、「自治体が主催するイベント」「スポーツイベント等で参加者の準備運動として使用」「職場において従業員の健康増進を目的として使用」「個人が動画投稿サイトへラジオ体操第一を行っている動画をアップロード」の4つの利用形態については自由に使用して良いと同社ホームページで宣言している。

追記・修正は、出席カードにスタンプを押してもらってからお願いします。

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最終更新:2025年04月11日 03:59

*1 怪我や加齢や障害などにより立位の体操に支障がある人向け

*2 ソコール運動は旧チェコスロバキアがオーストリアに支配されていた時代に興っているので、民族が団結して国体を樹立し護持する、という主義主張になるのは無理からぬところである。なおソコール運動の祭典は現在でも定期的に開催されているのだが、若い世代にはそのような活動は束縛だと見なされているらしい。

*3 初代が放送中止になった経緯からか、二代目のラジオ放送ではかけ声もなかったようだ。

*4 白黒テレビが一般家庭にも普及しだすのは1950年代後半になってからで、それまではラジオ放送がメディアの主役だった。

*5 朝6:30のラジオ本放送にあわせて行うならまだ人出も少ない、という点も有利。ただし2022年は7月に入ってから感染者数が急速に拡大しているため、地域などでのラジオ体操会の開催に関しては難しい舵取りを迫られている。

*6 カードは例年6月ごろから8月末まで配布している。また、かんぽ生命のホームページでは印刷用のデータも公開されている。

*7 映像そのものは2015年のライブで行ったラジオ体操を録画したものであるらしい。

*8 ラジオ体操オンリーだと動かす部位が上半身に偏りがちである。

*9 上記の「子供向けの地域行事(=非営利活動)としての利用」や「学校教育での利用」がこれに該当する。