セキグチさん(ちゃおホラー)

登録日:2022/01/04 Wed 00:13:42
更新日:2024/11/02 Sat 00:57:03
所要時間:約 11分で読めます





今日はセキグチさんの日なんだよ?

セキグチさんに会っちゃったらどうすんの?

【概要】


『セキグチさん』はちゃおデラックスホラー2014年3月号に掲載されたホラー短編。
作者はコミカライズ版『闇芝居』の坂元勲。ちゃおらしからぬ固い絵柄で描く人である(それでも近年は相当少女漫画っぽくなったが)。
作風としては露伴シリーズっぽい都市伝説・伝承ものが多い。


とある街に現れる「セキグチさん」という怪異の物語。
引っ越してきたばかりの主人公。そこには「セキグチさんの日」に現れる「セキグチさん」が存在することを知る。
セキグチさんの出自も「セキグチさんの日」が来るタイミングも不明。そんな意味不明なセキグチさんに主人公は振り回されていく。
「お前だけ世界観ちゃおじゃなくてSCPになってないか?」と言いたくなる不気味なセキグチさんが魅力。

怪異が出てくるものの、本質的には「人間がいちばん怖い」タイプのホラー作品。
見方によってはセキグチさんより街の住民の方がよっぽど怖い。
もっと言うと、あの街が存在していることそのものがめちゃくちゃ怖い

現在は単行本「いちばんこわい話」を買えば簡単に読める。電子書籍化もしている。


【登場人物】


◆美由
本作主人公の中学生。
セキグチさんを除くと本作唯一のネームドキャラ。
引っ越してきたばかりであるが、大きな問題はなく新しい学校にも慣れて友達もできていた。
しかし、セキグチさんの日という、週に一度ある休日と、外に出てはいけないルールには疑問を呈している。

そのため、セキグチさんの正体を知らない内に外に出て1回、友人たちとのセキグチゲームで1回、セキグチさんの日に調べたことで1回。
合計3回もセキグチさんに遭遇しており、いずれもすんでのところで生還している。

この経験からか、最終的には慣れてしまった。
……クラスメイトは「物心ついてからの常識」であるから当たり前に思えている。
だが美由はよそ者であるにもかかわらず数か月で慣れてしまった。
意外とセキグチさんの才能があったのかもしれない……というよりは、会敵してしまったらほぼ高確率で死亡するのに三度もセキグチさんに襲われてその恐ろしさを身を以て味わい、それでも『運良く』生き残ったら『次は無いな』と達観するしかないであろう


◆セキグチさん
赤口の日に登場する謎の怪異
全身が真っ白で大きな口だけが真っ赤な怪物




クラスメイトが「生まれる前からある」と言っているので相当長い歴史があるようだ。
正午や赤口のキーワードから考えるに、赤口の日に関係しているのは間違いなさそうだが、それ以上は不明。やっぱこいつだけ世界観がSCPか『岸辺露伴』なんだよなあ……。
「自分の噂をされるのが大好き」というルールや、実際に美由のパソコンが「かまって」で埋まる、「しゃっく、しゃっこ」としゃっくりしながら読み方を教えてくれる声を上げるという描写がある。それらから考えるに、セキグチさんには何らかのバッグボーンがあるのかもしれない。
ただ、街の住人全員がそんなバックボーンを「どうでもいいのです」と考えている。
ちなみに赤口は六曜の中で仏滅に次いで悪い日。お祝い事に関しては仏滅よりも酷いとされる。

セキグチさんに関するルールは以下の通り。
  • セキグチさんの日はきちんと決まっている
  • その日は絶対に外出してはいけない
  • 建物の中に入ってくることはないので屋内にいること
  • ただし正午から1時間はセキグチさんの休けい時間なので安全である
  • そしてこの日だけはセキグチさんの話をしたり調べたりしてはいけない。セキグチさんは自分のうわさをされるのが大好きなので聞き耳たてにやってきて侵入してくる*1



◆この街の住人
本作最大のホラー要素。やっぱりセキグチさん並みに怖い。
順当に考えて死が間近にあるこの街には誰も住みたがらないはずである。普通の人間なら信じずセキグチさんに殺されるか、恐れをなして引っ越す。
だがこの街の住人はセキグチさんを当たり前だと思っているため普通に暮らせている。作中の描写だけでも、セキグチさんのことをうっかり説明し忘れ、そのことも軽く謝るだけで済まし、セキグチさん中心に生活があり、セキグチさんをゲームにし、セキグチさんの正体について考えたこともなく、セキグチさんの犠牲者が出たら「死んだ方が悪い」と割り切り、その上犠牲者を笑いの種にする。これくらいあの街ではセキグチさんが日常になっている。というか住民はセキグチさんが当たり前だと思えるほどに染まっている。
そんな人間が一定数存在するため、それでもこの街はちゃんと機能が廻っているのである
多分坂元勲作品では『あけまして、ご愁傷様です』に並んで住みたくない街*2
ただ、ある視点で彼らを見ると文字通り『自然の摂理』とも思える事になる。
それは町の住民にとってセキグチさんは『自然現象』の一つであり、雷が降る事と同じ当たり前の事象であると同時に『雷が鳴っている時に外に出て雷に打たれて死ぬ事』と『セキグチさんと出会ってしまい死ぬ事』が完全に=なのである
寧ろセキグチさんの方が会敵してしまったら死ぬ確率が高いので、猶更『セキグチさんの日に外に出れば死んでしまって当然』と思っているのである
セキグチさんの日に外に出ないのは『砂漠の民が脱水死しない様に常に水を蓄えている』のと同列で、セキグチさんの日に外に出て死んでしまった人を笑い話にするのは『冬山の奥深くにて山地に碌な装備もなく飛び込んだ愚かな登山客に苦笑する』のと同列なのである。
あくまでこの街の住民は『セキグチさんがいる』という事を『自然環境そのものがそのものである事』と同列に感じているだけであり、別に『他の町の来訪者を贄に捧げている』わけでも『犠牲者を見物にしている』わけではない。ただ『自然現象が自然現象である事をわざわざ言及しないからつい同じ様に外からやってきた者に説明をしなかった』のと『死にかねない環境下で外出した者に苦笑を漏らしている』だけなのだ
故に美由は『狂気に染まった』のではなく『自然環境に適応した』という事になる。
繰り返すが、セキグチさんが当たり前でない我々の視点ではこんな街住みたくは無いだろうが、彼らからすればセキグチさんは別に贄を寄こせと言ったりはせず『セキグチさんの日に外出』さえしなければ害は無く、その他の日には干渉してこないからそうしているだけで、苦痛とも思っていないだけである。
しかしながら、他所から来た人に対してもその態度を貫き続けているため、わだかまりは生じている様である。
作中では時間経過と共に人が移ってきており、セキグチさんによる被害は拡大している様である。

◆他の街から来た兄弟
セキグチさんを知らなかったため美由の目の前で殺された者たち。
この街の者ではないためセキグチさんを知らないのは当然のこと。
それでもこの街の住人は「死んだのなら自己責任」と考えるのである
冬山に碌な装備も持たずにくれば遭難死するのと同じ……下手すればそれよりも可能性が高い『環境下』において、それでも来たから死んでしまってもおかしくないと『嘲笑』でなく『苦笑』を以て笑いながら



セキグチさんは「かまって」と言っていた。対して街の住民はセキグチさんに無関心を貫いている
……なんだかとても皮肉な話。*3



赤口(しゃっこう)


凶日。正午のみよい。


そんな日らしいけど意味なんてどうでもいいのです


赤い口のセキグチさんの日 それだけわかっていればいいのです


そして私は今日もこの街で平和に過ごしています




出典:いちばんこわい話、小学館、坂元勲他、14年10月1日発売

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最終更新:2024年11月02日 00:57
添付ファイル

*1 先日電話で友人が話をさっさと切り上げたのはこのため

*2 年を越すと同時にランダムで人が血を吐いて死ぬ呪いにかかっている街

*3 ぬ~べ~先生もよくやる対処法。大体「ウソだから、ヘーキヘーキ」みたいに茶化して言うけど、そういうのに限ってガチでやばい上に生徒はやらかす結局ビビりまくるまでがテンプレ。